SEMとSEOの違いをわかりやすく解説!SEOだけに捉われないSEMの有効な施策とは

2024/05/09
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ウェブマーケティングの世界では、「SEM」と「SEO」はよく耳にする用語ですが、これらがどのように異なり、またどのように連携して機能するのかを正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。

株式会社Digital Arrow Partnersの調査によると、なんと9割以上の企業がSEO対策を行っているそうです。ウェブマーケティングではSEOが中心的な位置を占めていますが、必ずしもSEOだけが最適な方法とは限りません。特にこれからウェブマーケティングに取り組もうとしている企業にとっては、SEMとSEOの違いを理解し、自社に最適な施策を選択することが重要になります。

本記事では、SEMとSEOの基礎知識から、具体的な種類や違い、さらには先に実行すべき施策までを、わかりやすく解説していきます。ウェブマーケティングの成功に欠かせない両者の違いを理解し、自社に最適な活用法を見出していただけるはずです。

SEMとは

SEM(Search Enjine Marketing)とは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンに出稿する広告マーケティングのことを指します。検索結果画面の上部または下部に自社広告を掲載できるため、検索エンジンを活用して調べ物をするお客様に効果的にアプローチできます。

基本的な仕組みとしては、ユーザーの検索ワードや興味関心に合致した広告が配信されます。たとえば、「名刺管理ツール」と検索したユーザーには、SFAやMAツールの広告ではなく、名刺管理ツールに関する広告が配信されるのです。キーワードのほかにも、地域や時間帯など細かいターゲティングが可能です。

つまり、SEMはユーザーの検索ニーズに合わせて、自社の広告を配信する手法です。広告費用こそ発生しますが、予算の上限を設定できるため、予算の範囲内で運用が行えます。

SEOとは

SEO(Search Enjine Optimization)は、検索エンジンの自然検索結果で上位表示させるための対策を指しています。ユーザーにとって、関連性が高く有益なコンテンツを作成し、サイト内でも最適な体験を提供することが目的です。

SEOで上位表示できれば、継続的な集客効果を見込めます。また、サイトの運用コストや記事制作コストなどは発生しますが、一度上位表示できれば追加コストをかけずに継続的な集客効果を発揮することが可能。一方、成果が出るまでに時間がかかる、Googleなどの検索アルゴリズムの影響を受けやすいというデメリットもあります。

SEMの種類

SEMには、リスティング広告やディスプレイ広告、ショッピング広告などさまざまな種類があります。各広告の特徴を理解したうえで、自社に最適な広告種類を選べるようになりましょう。

リスティング広告

リスティング広告は、検索エンジンの上部・下部に配信される広告です。ユーザーの検索語句に合った広告が配信されるため「検索連動型広告」とも呼ばれます。電通株式会社の「2023年日本の広告費」によれば、リスティング広告は推定開始以降初めて1兆円を突破し、前年比109.9%の1兆729億円となり、構成比では最も高い39.9%でした。

リスティング広告

リスティング広告が最も人気な理由としては、やはり売上げにつながる成果に直結しやすいためでしょう。リスティング広告がアプローチできるのは、自身の課題や悩みが明確化している顕在層です。

課題の解決法を求め、GoogleやYahoo!などで検索するユーザーに、自社の広告を配信すればクリックしてもらえ、問い合わせや購買などのコンバージョンにつながる可能性が高いです。短期間で成果の創出をする必要がある場合は、リスティング広告が向いています。

ローカルSEO

ローカルSEOとは、自社の実店舗や営業所の検索上位表示を目指す施策です。ローカルSEOのアプローチ法は2つあります。

ローカルseo

1つ目は、地名で自社ページを上位表示する施策です。たとえば、「渋谷 ランチ」といった具合に、ユーザーが特定の地域を検索した場合に、自社のページが上位に表示されるよう工夫します。これにより、ユーザーに自社店舗の存在を認知してもらい、訪問につなげることができます。

2つ目は、目的に関するキーワード検索で自社ページを上位表示する施策です。渋谷にいるユーザーが「焼肉」と検索した際に、端末の位置情報をもとに、渋谷区内にある焼肉店が表示されるよう最適化します。

ローカルSEO対策の基本は、Googleビジネスプロフィールへの登録後、店舗情報の最新化やレビュー集めなどを行うことです。これらの取り組みにより、自社店舗の検索上位表示を実現し、地域のユーザーを集客することができます。

ディスプレイ広告

ディスプレイ広告とは、ウェブサイトやSNSの広告枠に配信される広告のことです。リスティング広告がテキストのみで構成されるのに対し、ディスプレイ広告は画像や動画を使って訴求することができます。

ディスプレイ広告

(出典:Sundry Street

上記の画像の赤枠部分がディスプレイ広告の例です。この広告は、ドメインレンタルプラットフォームのGoDaddyが配信しているものです。スペイン語で表示されているのは、筆者がスペイン語圏の国でブラウジングをしていたためです。

ディスプレイ広告は、まだ購買意欲が明確ではない潜在層にアプローチできるという特徴があります。そのため、コンバージョンよりも、ブランド認知の向上や第一想起率の向上などの目的に適しています。

ニールセン社の調査

(出典:Meta

たとえば、ニールセン社の調査によると、動画広告は1秒未満でもユーザーの目に触れただけで、ブランド認知や購買意欲の向上につながるといわれています。そのため、自社サイトに訪問した経験のあるユーザーに、動画や画像を使ったディスプレイ広告を何度も表示すれば、ブランドや製品を覚えてもらい、比較検討の候補に挙げてもらえる可能性があります。

ディスプレイ広告の広告費用は、リスティング広告よりも割安な傾向にありますが、認知度や想起率など、効果の測定が困難な面もあります。

ショッピング広告

ショッピング広告とは、ECサイト上や商品データをもとに作成し、検索広告として出稿する手法です。ユーザーが広告をクリックすると、自社の製品詳細ページへと遷移します。広告には商品名、価格、店舗情報、製品画像などが表示されるため、自社製品の魅力を効果的に訴求できます。

ショッピング広告

そのため、BtoC製品を中心とした、比較的安価で価格競争力のある商品は、ショッピング広告との相性が良いでしょう。たとえば、ティッシュペーパーや洗剤などの日用品、特に機能に大きな差がない電池やUSBケーブルなどは、価格が大きな購買要因となります。そのような商品の場合、ショッピング広告でトップに表示することで、ユーザーに選んでもらえる可能性が高まると考えられます。

Eコマースサイトを運営している企業は、ショッピング広告の活用を検討するとよいでしょう。製品の特徴を効果的に訴求でき、価格競争力のある商品であれば、ショッピング広告はユーザーの購買意欲を喚起する強力な手段となります。

リターゲティング・リマーケティング広告

リターゲティングおよびリマーケティング広告は、過去に特定のウェブサイトを訪れたり、特定の製品やサービスに興味を示したりしたユーザーに対して、再び広告を配信する手法です。

自社に一度興味関心を示した顧客に、繰り返し広告を表示することで、比較検討段階に入った際に自社製品を候補に入れてもらえる可能性が高まります。リターゲティング広告を知るうえで、その仕組みの理解は欠かせません。

簡単に説明すると、訪問者がウェブサイトを訪れると、ブラウザに小さなデータファイル「クッキー(Cookie)」が保存されます。広告プラットフォームは、ユーザーのクッキーを読み取り、他のウェブサイト上でも自社の広告を配信してくれるのです。

しかし、近年はプライバシー保護の観点からサードパーティークッキー廃止の流れが進んでいます。すでにSafariとFireboxはサードパーティークッキーを廃止しており、2024年にはChromeも廃止する予定です。Chromeはプライバシーサンドボックスという代替手段を提供しますが、それ以外のブラウザは対象外のため、ゼロパーティー、ファーストパーティー、セカンドパーティーデータの収集に取り組むようにしましょう。

リターゲティング広告は、ただ単に売上げを増やすためだけではなく、ブランドの認知度を高める、顧客ロイヤリティを構築する、放置されたカートの中身の購買を促すなど、多様なマーケティング目標を達成するために使用されます。

SEOの種類

SEO対策では、コンテンツ制作が重要ですが、サイトの最適化や外部からの評価を高める施策も欠かせません。各施策を最適化することで、SEO効果が得られます。ここでは、SEOの3つの種類をご紹介します。

オンページSEO

オンページSEOとは、ウェブサイトの中身(コンテンツ、タイトル、ページ構造など)をユーザーと検索エンジンにとって最適化する施策を指します。コンテンツを検索エンジンがわかりやすい形に整え、ユーザーの検索ニーズにマッチするよう心がけます。具体的には、以下の項目の最適化を目指します。

  • キーワード
  • タイトルタグ
  • メタディスクリプション
  • URL
  • コンテンツの構造化

検索エンジンは、上記のようなオンページSEO要素を用いて、各ページがユーザーの検索意図に合致しているかどうかを評価します。たとえば、キーワードは特定のトピックや質問に対するウェブページの関連性を示す重要な指標です。適切に選ばれ、配置されたキーワードは、検索エンジンに対してそのページが何について話しているのかを明確に伝える役割を果たします。

このように、Googleはページのランク付けにおいて、オンページSEOの要素を重視しているのです。一見すると難しそうですが、考え方はシンプルであり、ユーザーに最適なコンテンツ作成とサイト構築をするということ。この意識を持てば、自然とオンページSEOは最適化されるはずです。

オフページSEO

オフページSEOとは、他のウェブサイトに自社リンクを貼ってもらったり(被リンク)、SNSで言及してもらったりするなどの、自社サイト「外」での取り組みとなります。

オフページSEOが重要な理由は、検索エンジンは信頼性のある情報を重視しているためです。そして信頼性の高さを判断するために、第三者である他サイトによる評価を利用しています。

たとえば、自社サイトへのリンクが他サイトから多数あれば、それは「このサイトは良質な情報を提供している」「信頼性が高いサイトである」という第三者からの高い評価になります。検索エンジンはこの評価を参考に、検索結果の順位を決めます。

似たようなサイトが2つあり、オンページSEOが同じくらいなら、オフページSEOが優れたサイトの方が上位表示されるでしょう。つまり、オフページSEOで第三者から高く評価されることが、検索順位を左右する大きな要因になるわけです。

ただし、あくまでオフページSEOはオンページSEOの補助的な役割であり、最重要事項はユーザーにとって優れたコンテンツ作りをすることです。

テクニカルSEO

テクニカルSEOとは、ウェブサイト最適化を指し、検索エンジンやウェブサイト訪問者に対してサイトをわかりやすく、使いやすくするための施策です。具体的には、ページ速度の改善や内部リンクの設置、サイトマップの作成などが挙げられます。

テクニカルSEOが重要な理由は、検索結果の順位に影響を与えるだけではなく、ユーザーの行動と意思決定にも影響を及ぼし、結果的にリード獲得数や売上げにも影響を与えるためです。

たとえば、ページの読み込み速度が遅いと、訪問者はすぐに離脱してしまい、サイトの離脱率が上昇します。このような行動は、Googleなどの検索エンジンによって、サイトがユーザーにとって魅力的ではないと評価される可能性があり、検索ランキングが低下する原因となります。一方で速度の速いページは、ユーザーエクスペリエンスを向上させ、サイトの評価を高めることができるのです。

つまり、優れたコンテンツを作成しても、それを提供する土台が整っていなければ、ユーザーや検索エンジンに適切な評価をしてもらえません。そのため、オンページ・オフページSEOの効果を最大化するためにも、テクニカルSEOにも取り組むことが重要です。

SEMとSEOの違い

SEMとSEOの違いは主に以下の5つです。

  • コスト
  • マーケティングタイプ
  • ターゲティング
  • チャネル
  • PDCAサイクルの回しやすさ

ここからは、各違いの詳細を見ていきましょう。

コストの違い

コストの違い

SEMとSEOでは、コスト面で大きな違いが生じます。

まず、SEMは広告出稿のため、必ず広告費用が発生します。リスティング広告の場合、広告がクリックされるたびに広告費が発生するのです。ディスプレイ広告などの場合は、クリック課金やインプレッション課金(ユーザーに表示された回数に基づく)などの課金モデルを採用しています。

広告費は、出稿するキーワードや広告の品質、ターゲティング条件などによって変動しますが、多くの企業がSEMに取り組んでいるため、数年前と比べるとコストが高くなっているのです。

また、ウェブ広告の運用を代理店に依頼する場合、原則として月額広告費の20%が運用手数料として発生します。そのため、月に100万円以上かかることは珍しくありません。実際に株式会社ロックオンの調査によれば、1カ月のウェブ広告費で最も多い回答が「100~300万円」とのことです。

一方のSEOは、サイトの保守運用費やツールの利用料、場合によっては外注による記事制作費用などが発生しますが、多くても月30万円程度です。(ただし、今サイトを保有しておらずこれから作成する場合、制作費用は初期段階でかかってきます。)さらに、SEOで作成したコンテンツは企業資産となるため、質の高いコンテンツをそろえれば、多額の投資をしなくても集客効果が得られます。

マーケティングタイプの違い

マーケティングタイプの違い

SEMはアウトバウンド型のマーケティングです。アウトバウンドとは、企業が積極的に外部に向けて情報を発信し、顧客を獲得しようとするマーケティング戦略であり、広告のほか、DMやテレマーケティングなどが挙げられます。

SEMは、自社の広告を配信することで、能動的にユーザーにアプローチするアウトバウンドに分類されるのです。しかし、一般的なアウトバウンドは顧客の興味関心を無視する傾向にあります。たとえば、テレマーケティングやテレビCMは不特定多数の顧客にアプローチし、中には自社に興味関心がないユーザーにもアプローチします。

対して、SEMはユーザーの興味関心に基づいて広告が配信されるため、完全にアウトバウンドとはいいがたいです。インバウンド寄りのアウトバウンドということにしておきましょう。

SEOはインバウンド型のマーケティングです。インバウンドは、顧客に能動的に自社とかかわってもらうことを目的としたマーケティング手法です。インバウンドは顧客が主語であるのに対し、アウトバウンドの主語は「自社」という違いがあります。

SEOでは、あくまでも顧客が主役です、顧客にとって最適なコンテンツを用意し、自社コンテンツを閲覧するかどうかは顧客にゆだねられます。ユーザーのニーズを意識しながらコンテンツ制作をしなければ、SEOで成果を出すのは困難でしょう。

ターゲティングの違い

ターゲティングの違い

SEMとSEOでは、ターゲティングの手法と精度が大きく異なります。

SEMは詳細なターゲティングが可能です。リスティング広告であれば、キーワード別に広告を出稿できるため、ユーザーの検索ニーズに合わせた絞り込みができます。さらに地域、時間帯、デバイスなどの条件も組み合わせることで、より的を絞ったターゲティングが可能です。

SEOにおけるターゲティングは、基本的にユーザーの検索語句に依存します。ターゲットとなる顧客が使用する検索語句を特定し、その検索語句に適したコンテンツ制作をしなければいけません。そのため、必ずしも自社に興味関心のあるユーザーにアプローチできるとは限らないのです。

チャネルの違い

チャネルの違い

SEMでは、リスティング広告、ディスプレイ広告、ショッピング広告、動画広告など、さまざまな広告手法を組み合わせて運用します。検索エンジンはもちろん、動画サイト、ニュースサイト、SNSなど多岐にわたるウェブサイト・メディアを広告チャネルとして利用できます。

一方、SEOは検索エンジンがメインのチャネルです。検索エンジンの自然検索結果で上位表示を狙うわけですから、基本的に活用できるチャネルは限られています。ただし、近年ではニュース検索や動画検索への対応も重要になってきています。

つまり、SEMではさまざまなオンラインチャネルを使って幅広くユーザーにリーチできますが、SEOの場合は検索チャネルに特化される傾向にあります。マーケティング目的によっては、SEMの方が訴求対象を広げやすい可能性がありますが、それぞれのチャネルの特性や目的別のユーザー行動も考慮に入れなければいけません。

効果が出るまでの時間の違い

効果が出るまでの時間の違い

効果が出るまでの時間の違いは、SEMとSEOを選定する上で重要な要素です。

SEMは効果が早く出る傾向にあります。基本的にどの広告種類であっても、広告品質・入札単価・ターゲティングが最適化されていれば、どの企業にも上位表示のチャンスがあるのです。

「それでは、多くの入札ができる大企業が有利では?」と思われるかもしれませんが、入札額が全てではありません。詳しくは後ほど解説しますが、SEMは広告品質と入札単価の掛け合わせで順位が決まります。仮に入札単価が高くても、広告品質が低ければ上位表示は困難です。逆に入札単価が低くても、広告品質が良ければ上位表示できる可能性は十分にあります。

wacul株式会社の調査

(出典:WACUL株式会社

一方、SEOの場合は長期的な取り組みが必要で、効果が出るまでに時間を要します。WACUL株式会社の調査によれば、コンテンツ本数とSEO成果は比例し、60本目の投稿あたりから徐々に成果が現れ、100本目ころから成果は加速化して高まると判明しています。月に4本投稿する場合、1年後に少しの成果が現れるのです。また、SEO経由のユーザーは検討の浅い段階のため、適切なコンバージョン設計とナーチャリングプランが重要となります。

PDCAサイクルの回しやすさの違い

PDCAサイクルの回しやすさの違い

SEMでは、リアルタイムで広告の配信回数やクリック数、コンバージョン数などのデータを収集できるため、高速でPDCAサイクルを回せます。実際のところ、SEMではいかにPDCAサイクルを迅速に回せるかどうかが成果のカギとなります。広告は十分に配信されているか、クリックされているか、そしてしっかりと売上げにつながっているかなどを確認し、定期的に改善と効果検証を行いましょう。

対してSEOにおいては、PDCAサイクルを回すのが難しい側面があります。検索ランキングや流入数、コンバージョン数などのデータは収集できますが、自社の施策がどの程度影響しているかを判断するのが難しいためです。検索エンジンのアルゴリズムの変更や競合他社の施策の影響を常に考慮する必要があり、要因分析が難しくなります。また、SEOの施策自体に時間を要する点も、PDCAのサイクルを短期間で回すことが難しい要因です。

SEMで効果を上げるために考えるべき要素

SEMは比較的短期間での成果を見込める施策ですが、単に広告を出稿するだけでは、費用が無駄になるだけです。そこでここからは、SEMで効果を上げるために考えるべき4つの要素を見ていきましょう。

アカウント構造

SEMの広告アカウントは、キャンペーン、広告グループ、広告の階層構造で構成されています。この階層構造をどのように設計するかが、効果的なアカウント運用の肝となります。それでは、どのようなアカウント構造を作成するべきなのでしょうか。

hagakureのイラスト

(出典:Think with Google

Googleは、Hagakure(葉隠れ)というアカウント構造を推奨しています。これは広告グループを大量に作成するのではなく、少数の広告グループに多くのキーワードを集約するアカウント構造です。Hagakureにより、各広告グループにデータが集約され、GoogleやYahoo!、各SNSプラットフォームの機械学習が効果的に働くようになります。

GoogleによればHagakureの導入により、従来の広告キャンペーンよりも10倍のキーワードをターゲットにし、同じ獲得コストで全体のコンバージョンが40%向上したとのこと。シンプルなアカウント構造は管理もしやすいため、まずはHagakureをアカウント構造に採用するとよいでしょう。

入札額

SEMでは、入札額の設定が肝心となります。入札額を高くすれば、上位に広告が表示されやすくなりますが、その分広告費も高くなってしまいます。

そこで、キーワードごと、商品ごとにコンバージョン率や購買単価などを慎重に検討し、許容されるコストを上回らない範囲で入札額を設定する必要があります。さらに、広告データを継続的に収集・分析し、パフォーマンスに応じて入札額の見直しを行いましょう。

入札額の設定を怠れば、コストがかさむだけではなく、広告が表示される機会すらなくなってしまいます。コストと収益のバランスを常に意識し、定期的な入札額の見直しが重要です。

品質スコア

品質スコアとは、広告のクオリティを示す指標です。具体的には、以下の3つの要素から計算されます。

  • 推定クリック率:広告が表示された際にクリックされる可能性の高さ
  • 広告の関連性:広告とユーザーの検索語句の一致度の高さ
  • ランディングページの利便性:ランディングページの関連性と有用性

リスティング広告の表示順位は、入札単価と品質スコアの掛け合わせた広告ランクで決まるのです。具体例を見てみましょう。

企業名

広告品質

入札単価

広告ランク

表示順位

A社

8

250円

2000

2

B社

6

300円

1800

3

C社

9

300円

2700

1

この例で注目したいのが、A社とB社です。B社の方が入札単価は高いですが、広告品質はA社の方が優れています。結果、広告ランクはA社の方が高くなり、A社の広告がB社よりも上位に表示されるのです。

特に、予算の限られた企業や競争の激しい業界に属する場合、いかに広告品質を高められるかが重要となります。広告品質を意識しながら、ユーザーにとって魅力的な広告とLPを作成しましょう。

広告アセット

広告アセットとは、コピーや画像・動画などの広告の構成要素のことです。SEMで成果を上げるためには、広告アセットの最適化も欠かせません。どのアセットに注力するのかは、広告運用の目的や種類によって異なります。

たとえば、リスティング広告なら青字で最も大きく表示される見出しが重要です。一方、ディスプレイ広告の場合、他の情報を閲覧するユーザーの興味関心をひくためにも、画像や動画に注力すべきでしょう。

しかし、広告アセットの作成に多大な時間をかけるのは避けるべきです。機械学習や生成AIが発展した現代においては、多くの広告を出稿し、膨大なデータを集めて、成果を出せるパターンを見つけることが重要と言えます。

いくつもの広告アセットを用意し、どの組み合わせが広告効果を高めるのかを検証しましょう。広告アセットの最適化とは、単に魅力的なビジュアルやキャッチーなコピーを作成することだけではなく、データに基づいた意思決定を行い、ターゲットオーディエンスに最も共鳴するメッセージを届けることを意味します。

SEMとSEOどちらを先に実行した方が良いか?

SEMとSEOのどちらを先に実行するべきかについては、一概に言えるものではありません。状況によってベストな順序は変わってきます。それぞれの特性を理解し、自社に最適な選択をすることが重要です。まず検討すべきは、コストと効果が出るまでの時間です。

SEMは広告費用こそ発生しますが、短期間で成果を出せる施策です。たとえば、新製品を投下するにあたって、最初の100人のリードを迅速に獲得することが目的ならば、リスティング広告をはじめとしたSEMが有効でしょう。また、継続的にまとまった広告予算を確保できる、各広告キャンペーンごとにLPを作成できる場合もSEMが向いています。

一方、SEOは大きなコストこそ発生しないものの、成果が出るまでには1年以上を要する中長期的な施策です。この特性を踏まえると、ある程度の顧客・売上げ基盤が確立されており中長期的に継続的な集客効果を発揮するチャネルを構築したい企業、1年以上効果が出なくても予算に影響を受けず継続できる企業などに向いています。

また、商材単価の高いBtoB企業などはSEOに投資をするべきでしょう。SEOの魅力は費用対効果が高いことです。月30〜50万円で継続運用でき、検索ランキング1位の平均クリック率は27.6%とのこと。たとえば、月間検索ボリューム1万のキーワードで1位を獲得した場合、月に2760の流入を見込めます。

コンバージョン率が2%とすると約55名がメルマガ登録や資料請求を行い、その中から2%が購入に至るとしても1人が売上げに貢献することになります。商材単価が50万円以上の場合、十分に投資費用を回収できるわけです。

ウェブマーケティングといえばSEOと思われがちですが、必ずしも自社に最適な施策とは限りません。基本的には、まずはSEMで顧客基盤を固めることを推奨します。それから、中長期的な視点でSEOに取り組むとよいでしょう。SEOが種まきならば、SEMは収穫であり、成果という実がなるまで待ち続けては企業は倒れてしまいます。ある程度の実を蓄えてから、自社での収穫に取り組むとよいでしょう。

SEMとSEOの違いを理解して自社に合わせて補完し合うのがベスト

理想はSEMとSEOの両方に取り組むことです。SEMだけに依存した場合、雪だるま式で広告費や運用代行費用などが積み重なります。事業がうまくいっているときは問題なくとも、十分なキャッシュを確保できなくなったとき、広告費を減らすことになるかもしれません。そのとき、他の集客チャネルが育っていなければ、新規リード数が減ることで、さらなる売上げの低下につながる悪循環に陥ってしまうのです。

一方、SEOは低コストで上位表示できれば大きな集客効果を発揮しますが、検索アルゴリズムの影響を受ける点は忘れてはいけません。多くの記事が上位表示できていても、アルゴリズムの変更で、流入数が大幅に低下する可能性は十分にあります。

このようにSEMとSEOは一長一短なため、自社のマーケティング目標や製品サービスの特性、自社の状況に合わせて、両者を上手く組み合わせて補完し合うことが最善の策だと言えます。

SEMとSEOの違いを理解して自社に合わせて補完し合うのがベスト

たとえば、新製品の立ち上げ時はSEMを先行させて集客を加速し、SEOで自然流入の裾野を広げる、といった使い分けが考えられます。既存サービスの認知向上ではSEOを主体にブランディングを図り、SEMでスポット的な集客を狙うなどです。

上手くSEMとSEOを組み合わせることで、お互いの強みを活かし弱みを補完し合える相乗効果が生まれます。コストと効果のバランスを考慮しつつ、シーンに合わせた最適な施策ミックスを見極めることが成功の鍵となります。

SEMとSEOの相乗効果で成果を上げた事例

事例サイトのトップ画像

(出典:Delante

SEMとSEOの相乗効果を活用して大きな成果を上げた事例として、Decorlabs社の取り組みを紹介します。

Decorlabs社は壁紙や壁掛け金具の分野で事業を展開する企業ですが、Googleでの露出が低く、十分な顧客認知を得られていない状況にありました。そこで、オンラインプレゼンスの改善、ウェブサイトへの訪問者数増加、訪問者の顧客化を主要な目標として掲げ、SEOとSEMの専門家であるDelante社に相談し、以下の取り組みを行いました。

【SEO対策】

  • メタデータ(タイトル、説明文)の最適化
  • カテゴリ構造の見直し、流入の多いキーワードに合わせた新カテゴリの追加
  • 製品ページの最適化
  • ブログ記事の定期的な公開とデザイン改善
  • 外部サイトからのリンク獲得

外部サイトからのリンク獲得施策としては、顧客にとって有益かつ実用的なコンテンツを継続的に発信し、関連するウェブサイトに外部リンクの提案をしました。また、おそらくプレスリリースや記事広告などの有料チャネルも利用することで、効果的に認知度を高められました。

【SEM(Google広告)】

  • P-MAX キャンペーンの導入
  • 動的検索広告の活用
  • 広告予算の最適配分
  • 人気商品の個別広告の作成

壁紙、壁画、その他の製品に分けた3つのパフォーマンスマックス製品キャンペーンと、壁紙と壁画のダイナミックサーチ広告キャンペーンを運用し、2カ月で大きな成功を収めたとのこと。しかし、運用から3カ月目になると、取り扱い製品数が多すぎるゆえに、取引数の減少が起きました。そこで予算調整、壁紙と壁画を1つのキャンペーンに統合、人気製品には個別の広告を作成することで、パフォーマンスの改善に成功しました。

SEOとSEMの両面から施策を実行したことで、6カ月で以下の成果を上げられました。

  • Googleからの流入が287%増加
  • ページビュー数が430%増加
  • 売上げが290%増加

SEOとSEMを組み合わせ、短期的な成果と長期的な集客を両立する戦略を実行したことで、Decorlabs社は大幅な業績向上を実現できたのです。

この事例が示すように、SEOとSEMを相乗効果的に活用することで、ウェブマーケティングの大きな成果につながる可能性があります。

まとめ

SEMとSEOは、ウェブマーケティングの代表的な二大施策ですが、コストや成果が出るまでの期間など、さまざまな違いがあります。

SEMは、定期的にコストが発生するものの短期間で成果を出せる「刈り取り」の施策です。一方、SEOは成果が出るまでに1年以上かかりますが、費用対効果が高い「種まき」の施策と言えます。

顧客基盤が整っていない状態でSEOのみに取り組んでも、成果が出る前に挫折してしまうでしょう。一方で、SEMだけに頼っていては、広告費が積み重なり、他の集客チャネルを構築できないリスクがあります。

理想はSEMとSEOの両方に取り組み、相乗効果を発揮することです。しかし、リソースが限られている場合は、自社の成長ステージや予算、目標などを考慮して、最適な施策を選択する必要があります。

SEMとSEOの違いを理解し、両者の長所を活かした適切な組み合わせを見出すことで、集客力と売上げアップにつなげられます。ぜひ本記事を参考に、ウェブマーケティングの戦略立案をしていただければ幸いです。

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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