ロングテールキーワードの探し方と選び方とは?顧客と企業のニーズがマッチするコンテンツを作りの基本をわかりやすく紹介

2023/06/02
BtoBマーケティング ロングテールキーワード ロングテールキーワードの探し方と選び方とは?顧客と企業のニーズがマッチするコンテンツを作りの基本をわかりやすく紹介

ロングテールキーワードは、競合数が少なくユーザーニーズが明確になっているため、BtoBにおける新規リードの獲得に有効です。実際にWordStreamの調査では、「バイヤーの56%が3語以上で構成される検索クエリを使用している」と判明しています。

しかし、ロングテールキーワードの有効性を理解していながらも、「自社に最適なキーワードを見つけられない」「そもそも、どうやって探せばいいのか?」と悩む担当者の方は多いです。

本記事では、ロングテールキーワードの特徴や親和性の高いピラークラスター、探し方と選び方を解説します。

ロングテールキーワードとは

ロングテールキーワードとは、検索ボリュームが少ない検索クエリです。「ロングテールキーワードは3語以上」など検索クエリの語数で定義されることが多いですが、語数ではなく、検索ボリュームで決まる点には注意しましょう。世界中で利用されるSEOツールを提供するSemrushahrefsの定義を踏まえると、月間検索数1000以下のキーワードがロングテールキーワードと言えます。

ただし、複数の語句で構成される検索クエリがロングテールキーワードになる傾向なのも事実。日本のBtoB業界でのキーワードのボリュームを考慮すると、ロングテールキーワードは100前後になることが多く、おおよそそれくらいがロングテールだと考えておくほうが自然と考えられます。以下がロングテールキーワードの例です。

【ロングテールキーワード】

  • プロジェクト管理 ソフトウェア SaaS
  • 小規模ビジネス向け CRM ソフトウェア
  • クラウドベースの財務管理ツール

【一般的なキーワード】

  • プロジェクト管理ソフトウェア
  • CRMソフトウェア
  • 財務管理ツール

ロングテールキーワードは、より具体的で詳細な検索クエリのため、特定の需要や意図に合致したユーザーをターゲットにできます。例えば、2つ目のロングテールキーワードにおいては、ユーザーはCRMソフトウェアを探す小規模事業者だと言えるでしょう。

一般的なキーワードの例では、より広範な概念やサービスを表していますが、具体的な要素やニーズは明示されていません。

考え方

そもそも「ロングテール」とは、AmazonなどのECサイトでニッチな商品が、上位のベストセラーよりも総売上高を占める傾向があることを示す言葉です。そして、需要の少ないアイテムの集合体を分布グラフにしたとき、ロングテール(長い尻尾)のようになっているため、「ロングテール」という名称がつきました。ロングテールは検索クエリにも当てはまります。

ビックワードVSロングテールキーワード

SEOにおいては、少数の人気の高いキーワードが検索ボリュームを持つ一方、検索ボリュームが低い大多数のキーワードがロングテールを形成しています。上記画像が示す通り、ロングテールキーワードはニッチな検索クエリのため、競合コンテンツが少なく、上位表示を狙いやすいです。

ahrefsの調査によれば、アメリカの検索クエリの95%は月間検索ボリューム10未満のロングテールキーワードとのこと。

BtoB企業がオウンドメディアを運用する目的は、問い合わせやメルマガ購読などのコンバージョン獲得のため、ニッチなロングテールキーワードを中心に対策し、優良な潜在リードを集客するのが賢明です。

ロングテールキーワードの対義語「ファットヘッドキーワード」

ファットヘッドキーワードとは、検索ボリュームが極めて多い人気の検索クエリです。ahrefsによれば、検索ボリューム1001以上10万以下の検索クエリ数は全体の0.10%、10万以上の検索クエリは0.0008%しか存在しないとのこと。

ファットヘッドキーワードの例として「Amazon」や「Netflix」などが挙げられます。ファットヘッドキーワードで上位表示できれば、大きな流入を見込める一方、競争が激しいため上位表示が難しい、ユーザーニーズが曖昧なためコンバージョンにつながりにくいなどのデメリットがあります。

ファットヘッドとロングテールのどちらを狙うかは、目標やビジネス戦略によって異なります。ニュースブログやアフィリエイトサイトなどを運用する場合は、ファットヘッドキーワードを狙い、自社サイトの露出を増やすのが有効でしょう。

一方、BtoBや中小企業のECサイトなどコンバージョン数がKPIなら、ニーズが明確になっているロングテールキーワードを狙い、確度の高い潜在リードを集めるのがおすすめです。

ロングテールキーワードが持つメリット

ロングテールキーワードでSEO対策するメリットは以下の通りです。

  • 競合数が少ない
  • 質の高いリードを集客できる
  • 価値あるコンテンツを作りやすい
  • ネタ不足にならない

以下では、各メリットの詳細を解説します。

メリット1:競合数が少ない

ロングテールキーワードは競合数が少ないため、上位にランクインする難易度が低いです。例えば、「maツール」で検索すると、1130万件のページが表示されます。

maツールで検索した際の表示ページ数

対して、「中小企業向け btob maツール」で検索した場合は、約89万ページしか表示されません。

表示ページ数が少ない例

当然ながら、競合数1130万と89万では、89万の方が上位表示できる可能性が高いでしょう。リスティング広告においても、ロングテールキーワードの方が競合数が少ないため、入札単価は低くなる傾向にあります。

メリット2:質の高いリードを集客しやすい

ロングテールキーワードはファットヘッドキーワードよりも、コンバージョン率が2.5倍高くなるという調査結果があります。その理由として、ロングテールキーワードは①ユーザーニーズが明確になっているため価値あるコンテンツを提供できる、②比較検討段階のユーザーにアプローチできることが挙げられます。

例えば、「CRMソフトウェア」と検索するユーザーニーズは、以下のように多岐にわたります。

  • CRMソフトウェアとは何かを知りたい
  • CRMソフトウェアの比較をしたい
  • 機能や特徴を知りたい
  • 導入方法や手順を知りたい
  • 価格を知りたい

情報収集段階のユーザーが多数いるため、コンバージョンにつながりにくいです。一方、「中小企業向け crm トライアル」と検索するユーザーは比較検討段階なので、コンバージョンにつながる確率が高いと言えます。

メリット3:価値あるコンテンツを作りやすい

ロングテールキーワードは、ユーザーの検索意図が具体化されているため、価値あるコンテンツを作成しやすいです。

国内最大規模のコンテンツマーケティング調査「CONTENT MARKETING SURVEY 2021 - 2022」によれば、約3分の1の企業が「コンテンツマーケティングの専任担当者がおらず兼業で担当している」と回答。他の業務と兼ねあう中で、価値あるコンテンツを作成するのは困難ではないでしょうか。

ウェブライター代表でSEOの権威として知られる松尾氏は、検索エンジンの役割はユーザーの悩みの解決であり、解決策を網羅的に整理したコンテンツがSEOに強いと言います。例えば、キーワード「crmソフトウェア」を狙う場合、特徴やメリット・デメリット、事例、おすすめのベンダーなどを紹介する必要があり、制作負担の高い長文記事となる可能性が高いです。

対して、ロングテールキーワードの「crm なぜ 必要」ならば、CRMの必要性や活用ポイントを解説するだけで十分でしょう。実際に、「crmソフトウェア」の上位記事の平均文字数が6884文字なのに対し、「crm なぜ 必要」の平均文字数は5340であり、5000字以下で上位2位につけている記事もありました。

ロングテールキーワードは、ユーザーニーズを把握しやすい、かつ少ない文字数の記事で対応できるという点で、価値あるコンテンツを作成しやすいです。

メリット4:記事のテーマ(ネタ)不足にならない

長期間にわたってコンテンツマーケティングに取り組むと、「コンテンツにするネタがない」と一度は悩みます。サイトエンジン株式会社の調査によれば、デジタルマーケティング担当者の42.4%が「記事ネタがない」と回答。

しかし、先にご紹介したahrefsの調査が示すように、ロングテールキーワードは全体の95%を占めるため、ネタ不足に悩むことはないでしょう。ロングテールキーワードの探し方については、後ほどご紹介します。

ロングテールキーワードが持つデメリット

ロングテールキーワードのデメリットも理解すれば、潜在的なリスクを意識しながら、効果的な戦略立案ができます。以下では、ロングテールキーワードが持つ3つのデメリットを見ていきましょう。

  • 流入に期待できない
  • キーワード調査に時間がかかる
  • 質の高いコンテンツが求められる

デメリット1:流入に期待できない

ロングテールキーワードのデメリットは、各キーワードの検索ボリュームが少ないため、多くの流入に期待できないことです。例えば、10個のロングテールキーワードで上位表示できても、トータルの流入数は200〜300程度でしょう。

マーケティング担当者は、多くの潜在顧客を獲得するために、ロングテールキーワードとファットヘッドキーワードのバランスをとる、もしくはウェビナーやWeb広告などの潜在層との接点構築を目的とした施策と組み合わせるなどの工夫が必要です。

デメリット2:キーワード調査に時間がかかる

自社に最適なロングテールキーワードを発見するためには、顧客の抱える課題や実際に使用する検索クエリなどを理解しなければいけません。しかし、EXIDEAが大手BtoB企業のマーケティング担当者を対象にした調査によると、「約3割が自社顧客の解像度を十分に具体化できていない」と回答。

自社顧客の解像度が低ければ、有益なロングテールキーワードになりうる最適な単語の組み合わせを見つけるのは困難なため、まずはペルソナの作成をしましょう。また、ロングテールキーワードの特定には徹底したキーワード調査やツールの利用、顧客との対話、アンケート調査、自社業界に関連するメディアの読み込みなども必要です。

デメリット3:質の高いコンテンツが求められる

ロングテールキーワードでは、潜在リードのニーズに対応するために、より詳細で具体的なコンテンツが求められることが多いです。例えば、「maツール ナーチャリング」をキーワードにする場合、MAツールと親和性の高い施策やナーチャリング施策を進める手順など、専門性の高いコンテンツ作成をしなければいけません。

高品質なコンテンツを作成するには、広範なリサーチや専門知識、テーマに対する深い理解が必要です。Forrester社によれば、BtoBマーケティング担当者の85%が「コンテンツをビジネスの価値に結び付けられていない」と回答しており、大多数の企業がエンゲージメントの高いコンテンツ制作ができていないと言えます。

専門知識や十分な調査がなければ、深く掘り下げるロングテールキーワードで、質の高いコンテンツ制作は難しいでしょう。

ロングテールキーワードのデメリットを解消するピラークラスターの考え

ロングテールキーワードの最大のデメリットは、各検索クエリにおけるボリュームが少ないことでした。このデメリットを解消するのがピラークラスターです。

トピッククラスターモデル

ピラークラスターとは、特定のトピックの柱となる記事「ピラーコンテンツ」を中心に、「クラスターコンテンツ(詳細記事)」を展開する考えです。つまり、ピラーコンテンツではトピック全般を浅く解説し、内部リンクでつないだクラスターコンテンツで各トピックの深堀をするということ。

例えば、ピラーページのトピックが「チャットボット」ならば、クラスターコンテンツのキーワード案は以下の通りになります。

  • チャットボット 種類
  • チャットボット 事例
  • チャットボット 効果
  • チャットボット カスタマーサポート

ピラークラスターで構成すれば、関連記事同士がリンクでつながるため流入増加を見込めるだけではなく、ユーザーが情報を探しやすくなるメリットもあります。

ロングテールキーワードの探し方とおすすめのツール

多くのBtoBマーケティング担当者が、キーワードプランナーでキーワード調査をしていると思います。もちろんキーワードプランナーも有益なツールですが、これから紹介するツールも用いることで、ロングテールキーワードを網羅的に探せます。

Semrushを使っての探し方:

semrush

(出典:Semrush)

Semrushは、オールインワンの競合分析ツール。Keyword Magic Toolを活用すれば、軸となるキーワードの関連語句やロングテールキーワードを調査できます。キーワードごとの検索ボリュームや上位表示する難易度、クリック単価などが表示されるため、上位表示できる可能性が高いロングテールキーワードを効率よく発見することが可能。

また「引っ越し 見積もり」や「引っ越し 業者」のように、キーワードは関連する語句で自動表示されるので、ピラークラスターの構築にも有効です。SEOやリスティング広告を運用していて、競合分析やロングテールキーワードの選定を効率化したい方は、まずは14日間の無料トライアルに申し込むとよいでしょう。

Ubersuggestを使っての探し方:

Ubersuggestは、海外の著名なマーケターNeil Patel氏が提供するSEOツールです。ロングテールキーワード調査のほか、競合分析や非リンク数の確認、SNSシェアや非リンク数が多いコンテンツの分析などができます。下記画像は、本ツールを活用して「MAツール」のキーワード候補を抽出した画面です。

Ubersuggest

(出典:Ubersuggest)

ご覧のとおり、キーワードごとの検索ボリュームやクリック単価、SEO難易度などが表示されます。ロングテールキーワードの選定機能はSemrusuと似ていますが、Ubersuggestは安価なため基本的なSEO機能しか搭載されていません。

対して、Semrushは豊富な機能を提供しています。例えば、自社サイトと競合サイトを比較して競合のキーワード状況を明らかにする「キーワードギャップ」や、キーワードの順位変動を毎日追跡する「Position Tracking」などがあるのです。

自身の業務領域に合わせてツールを選定するとよいでしょう。

営業資料や顧客の声を使っての探し方:

ツールだけでは、有望なロングテールキーワードを見落とす可能性があるため、筆者は営業資料や実際の顧客の声、業界関連のメディアや書籍の活用を推奨しています。

  • 浅い状態の見込み客に会う(認知のピラークラスター)
  • 業界関連のメディアや書籍の読み込み(検討のピラークラスター)
  • 営業資料の読み込み(決定/検討のピラークラスター)

これらのリソースを活用すれば、実在する顧客の悩みや課題を理解でき、ロングテールキーワードにつながるヒントや洞察を得られます。その他にも、既存顧客からの質問や商談への同行、自社/競合の事例を参考にするのも有効です。

ロングテールキーワードの選び方をわかりやすく解説

ロングテールキーワードを探す手順は以下の通りです。

  1. ペルソナとカスタマージャーニーマップの作成
  2. ピラーページのキーワード選定
  3. トピッククラスターのキーワード選定

以下では、各選び方の詳細を見ていきましょう。

選び方1:ペルソナとカスタマージャーニーマップの作成

ロングテールキーワードで有望なリードを獲得するためにも、まずはペルソナとカスタマージャーニーマップを作成し、認知から購買に至るまでの顧客の課題や悩みを可視化しましょう。

ペルソナ作成のポイントは、顧客インタビューやアンケート調査などで顧客の一次情報を収集し、一人の人物を思い浮かべるまで具体性の高いペルソナを作成することです。特に、課題や購買動機の設定に注力しましょう。

ジャーニーに沿ったピラークラスターの例

その後、ペルソナの行動や課題、購買動機などをカスタマージャーニーマップに落とし込みます。BtoBのウェブサイトの多くは、決定段階におけるコンテンツが充実している一方、認知・検討段階のコンテンツが不足している傾向にあります。

しかし、これでは主なトラフィックが既知のマーケティング施策でリーチしているユーザーばかりになり、多くの新規リード獲得には期待できません。カスタマージャーニーに沿ったピラークラスターを構築すれば、認知と検討段階の潜在リードにもリーチできるため、新規リードの獲得効率を高められます。

選び方2:ピラーページのキーワード選定

まずは、ピラーページのキーワード選定をします。選定ポイントは、キーワードだけを意識するのではなく、カスタマージャーニーの各段階におけるペルソナの課題や関心に合わせることです。

また、ピラーページのキーワードは深く掘り下げる必要がある一方、あまりにも広すぎるトピックはおすすめしません。例えば、「マーケティング」は幅が極めて広いため、ピラーページでトピックを網羅するのは困難です。一方、「コンテンツマーケティング」や「BtoBマーケティング」、「YouTubeマーケティング」などはピラー記事で必要なトピックを網羅できます。

選び方3:トピッククラスターのキーワード選定

最後に、ピラーページにつなげるトピッククラスターのキーワード選定をしましょう。例えば、ピラーページのキーワードを「コンテンツマーケティング」にすると仮定し、Ubersuggestでキーワード調査をした結果は以下の通りです。

トピッククラスターのキーワード例

検索ボリュームやSEO難易度などを考慮すると、「コンテンツマーケティング 本」や「成功事例」、「ツール」などがトピッククラスター候補となるでしょう。ただし、キーワードありきで考えるのではなく、ペルソナの課題に沿ったキーワード選定をしなければいけません。

まとめ

BtoB企業がオウンドメディアの運用で、新規リードの獲得を目指すのなら、競合コンテンツ数が少ないニッチなロングテールキーワードを中心に対策することを推奨します。

ロングテールキーワードは、検索ユーザーのニーズが明確なため、良質なリードを獲得しやすいです。ただし、検索ボリュームが少ないというデメリットがあり、これを解消するためにもピラークラスターと組み合わせて新規リードの獲得効率を高めましょう。

ロングテールキーワードの探し方としては、ツールを使うのが一般的ですが、顧客ヒアリングや営業資料の読み込みなども有効です。ロングテールキーワード候補を探したら、ユーザーの課題や関心にあったものを選定しましょう。

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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