オプトイン・オプトアウトとは?BtoBマーケティング担当者が個人情報保護法とあわせて知っておくべきこと

2022/07/25
BtoBマーケティング オプトイン オプトアウト オプトイン・オプトアウトとは?BtoBマーケティング担当者が個人情報保護法とあわせて知っておくべきこと

企業のコミュニケーションツールとして社内外でチャットツールがより一般的になり、Eメールの重要性や利用の頻度が減ってきているように感じる方も多いかと思います。

しかしながら、BtoBビジネスにおけるやりとりは、Eメールが起点になっていることが多いのが現状です。CRMやマーケティングオートメーションは、Eメールアドレスのエイリアス(@以下の情報)の存在と、その数を増やすことがマーケティング活動の精度の鍵を握っています。

実際、普及しているように見えるビジネスチャットツールの普及率は2017年にて30%程度です。ほぼ100%の普及率のEメールとは大きな開きがあり、BtoBビジネスのコミュニケーションの起点がEメールであることは、今後しばらくは変わらないでしょう。

そんなこれからも当たり前のように利用するであろうEメールには、扱いに関する法律が存在します。メールマーケティングなどを行うマーケティング担当者であれば、知っておかなければいけないポイントがあるのです。

本記事ではオプトイン・オプトアウトの仕組みや、マーケティング担当者が知っておくべき法令、オプトインを増やす方法を解説します。

オプトイン・オプトアウトとは

メールマーケティングにおけるオプトイン(opt in:同意する)とは、買い手の同意を得てからメールを配信すること、または買い手が宣伝広告メールの受信を許可することです。ウェブサイトからのメルマガ配信登録や会員登録の申込フォームの中に「メールマガジンに登録」のような項目を作り、メール配信の希望を聞く形式などがオプトインに該当します。

オプトインのイメージ

(オプトインのイメージ)

たとえ買い手のメールアドレスを保有していたり、買い手が自社製品を購入していたりしても、買い手の同意がないまま広告宣伝メールを配信すると、迷惑メールとみなされ処罰の対象となります。

オプトイン方式では、買い手が能動的にメール配信を希望するため、迷惑メールフォルダに振り分けられるリスクが低下し、開封率や広告パフォーマンスの向上を見込めるでしょう。

オプトアウトのイメージ

(オプトアウトのイメージ)

一方、オプトアウト(opt out:脱退する)とは、買い手がメール配信を解除すること、または買い手の同意なく宣伝広告メールを送ることです。オプトインを設置しても、買い手はメール配信を解除したくなる可能性があるため、オプトアウト(配信停止)の方法は明記しなければいけません。

その考え方と発展の歴史

オプトイン方式が日本に導入されたのは平成20年のころです。それ以前は、オプトアウトの導線さえあれば、受信者の同意がなくとも自由にメールを送れる状況でした。総務省によれば、オプトイン導入の背景には迷惑メールの増加が挙げられます。

代表的な迷惑メールの例が、悪質業者による配信停止リンクが記載されたメールです。受信者がメール配信の停止を申し込もうと、メール内に明記されたURLやリンクをクリックすると、悪質業者はメールアドレスが有効だと確認でき、さらなるスパムメールが送信される仕組みなどです。

また、オプトイン導入前の平成18年にシマンテックが実施した調査によると、従業員が1日に受信するメールのうち、迷惑メールが2割を占めていると判明しました。さらに、従業員が受信するメール内容はスパムメールが70.4%で最も多く、その次が不要なメルマガ/MLの52.1%だったのです。

オプトインが迷惑メールの規制を目的に導入されたことはお分かり頂けたと思いますが、そもそも迷惑メールとは何なのでしょうか。迷惑メール対策推進協議会は「迷惑メール白書2019」の中で、迷惑メールの具体例として下記4つを挙げています。

  1. 事前同意のない広告宣伝メール
  2. 詐欺メール
  3. ウイルスメール
  4. チェーンメール

迷惑メール=詐欺メールやウイルスメールというイメージがあるかもしれませんが、企業からの広告宣伝メールも迷惑メールになりうるのです。毎日のように、あらゆる企業からの広告宣伝メールが受信ボックスを埋めつくす日々を想像してみてください。企業側に悪意はなくとも、受信者にとっては迷惑な行為ではないでしょうか。

オプトアウトのみでの規制の場合、企業や悪徳業者はメール配信停止を申請されない限り、誰にでも自由にメールの送信ができたため、従業員の生産性の低下や詐欺の蔓延などが起こっていました。

消費者が能動的に受信するメールを選択できるオプトインの導入により、企業や業者は同意がなければ広告宣伝メールの送信が禁止されたため、健全なインターネット環境を保てるようになったのです。

オプトイン・オプトアウト以前に知っておくべきメール配信に関する法令

メール配信における法令への理解が不足している状況では、法律違反やブランド毀損などの懸念があるため注意が必要です。以下では、マーケティング担当者が知っておくべき、メール配信に関する2つの法令を解説します。

特定電子メール法

特定電子メール法について

(参考:総務省

特定電子メール法とは、営利を目的とする企業や個人が広告宣伝メールを送信する際の法律であり、別名「迷惑メール法」とも呼ばれます。特定電子メール法に関して、マーケティング担当者が抑えておくべきポイントは以下4つです。

  • 原則として同意を得ていない買い手へのメール配信の禁止
  • 送信者の氏名や住所、受信拒否の通知を受けるメールアドレスやURLなどの表示義務
  • 送信者情報の偽りの禁止
  • 送信を拒否した消費者へのメール配信の禁止

これらのルールを踏まえると、事前にメール配信のオプトイン(同意)を得て、メール内で送信者の氏名や住所、オプトアウト(配信停止)の方法を明確にすれば、メール配信で法律違反になることはありません。

特定電子メール法に違反した場合、総務大臣や消費者庁長官から措置命令が出されます。送信者情報を偽った場合や措置命令に背いた場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金(法人の場合は3,000万円以下の罰金)が課せられます。

参考:総務省「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイント

改正個人情報保護法

令和2年に成立した「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」に伴い、令和4年4月1日よりオプトアウト提供における個人データの範囲や届出事項等が変更されます。

変更前から、個人情報をオプトアウト形式で第三者に提供する場合は、本人への通知および個人情報保護委員会に届け出る必要がありました。今回の改定により、オプトアウト方式による個人情報の利用がさらに厳格化します。具体的な変更点は以下の通りです。

【オプトアウト方式で第三者提供できないデータ範囲の拡大】

  • 不正な手段で取得した個人データのオプトアウト提供の禁止
  • オプトアウトで提供された個人データの提供禁止

【届出事項の増加】

  • 事業者の氏名・住所・代表者の氏名
  • 第三者に提供される個人データの取得方法
  • その他、個人の権利利益を保護するために必要な事項

改正個人情報保護法については、個人情報委員会によるこちらのページで詳しく解説されておりますので、BtoBマーケティング担当者は一度目を通しておくのをおすすめします。

オプトイン・オプトアウトの仕組みとは

前述のとおりオプトインとは、メルマガや広告メールの配信を許可したユーザーにのみ、メールを配信できる方式でした。

オプトインで配信の許可を得る方法は2つあります。1つめが受信者に配信許可を依頼するパターンであり、会員フォームの「メール配信に同意する」ボタンなどが該当します。2つめは受信者が配信の許可を与えるパターンで、受信者がウェブサイト上よりメルマガ購読を申し込むケースなどです。

オプトイン方式について

オプトインとオプトアウトの大きな違いは、主導権を持つ人です。オプトアウトでは企業が主導権を持つのに対し、オプトインではユーザーが主導権を持って能動的に受信するメールを選べます。そのため、企業はユーザーから選ばれるように、メールマーケティングを推進しなければいけません。

オプトインを増やす方法

ここでは、オプトインを増やす方法を解説します。

デマンドジェネレーションに注力する

デマンドジェネレーションとは、新しい見込み客との接点を創出し、信頼関係を醸成して製品サービスの購入を検討してもらい、購入後も取引を長く続けてもらうための一連のマーケティング戦略を示します。

デマンドジェネレーションの図

デマンドジェネレーションは、下記3つのステージで構成されます。

  • リードジェネレーション(見込み客創出)
  • リードナーチャリング(見込み客育成)
  • リードクオリフィケーション(見込み客の絞り込み)

BtoB企業の場合、リードジェネレーションへの注力がオプトインの増加に有効です。売り手から発信されるコンテンツが買い手の課題解決に役立つ時などに、売り手側がメルマガ登録などを促します。

買い手側に「さらにコンテンツを読みたい」「この企業の情報を定期的に確認したい」という想いを抱えてもらえれば、メルマガ登録につなげられるでしょう。

オウンドメディアやSNSなどのタッチポイントで、買い手にとって有益な情報を発信すれば、買い手の興味関心を醸成でき、オプトインは自然と増える傾向があります。

オプトインを増やす方法はいくつもありますが、大前提として買い手にとって有益なコンテンツを発信し、デマンドジェネレーションの流れを構築することが有効ということを念頭におきましょう。デマンドジェネレーションについては、こちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

適切なターゲット層を設定する

当然ながら、コンテンツや製品サービスに興味のない買い手が、メール配信に同意することはほとんどありません。自社にふさわしくない買い手がメールマガジンに登録をして、製品サービスに契約をしてくれたとしても、いずれは途中解約につながり、SaaS企業などであればLTVやチャーンレートに悪影響を与えることになります。

そのような場合、誤った買い手を獲得するためにかけた甚大なコストや人材、時間はすべて無駄になってしまいます。さらに、間違った買い手が自社に関する悪い口コミを広める懸念もあるのです。

オプトアウト数を増やし、売上げにつなげるためには、正しいターゲット設定が欠かせません。メールマーケティングに取り組む前には、自社の理想の買い手像であるペルソナを作成し、ペルソナの抱える悩みや解決策を考えましょう。

ペルソナの悩みを解決するコンテンツを各タッチポイントで発信すれば、買い手に興味を持ってもらえ、オプトインの増加を実現できます。

ポップアップを設定する

また、自社サイトへの訪問回数が多いユーザーに対し、ポップアップ形式でメルマガ登録の行動を促すのは有効な施策です。

海外のEコマース向けポップアップ制作会社Getsitecontrolのケーススタディによれば、スライド形式のポップアップの場合はコンバージョン率2%以上、動的なポップアップの場合は約100%の増加が期待できると判明しています。ただし、表示回数の多すぎるポップアップなどはユーザーに不快感を抱かせるため、適切な表示設定が欠かせません。

ポップアップでオプトインにつなげるには、パーソナライズ化が効果的です。HubSpotによれば、パーソナライズ化したCTAは通常のCTAと比較して202%も高いパフォーマンスを出しています。コンテンツや訪問者の属性などに応じたポップアップを作成してみましょう。

ポップアップ設定

(参照:HubSpot

上記画像は、英語版HubSpotブログが設定しているポップアップ形式でのメルマガ登録フォームです。数記事読んだあとに、このポップアップが表示されたことから、興味関心の高いユーザーのみに表示していると考えられます。

魅力的なマイクロコピーを作成する

マイクロコピーとは、CTAボタン上や周辺、フォームなどに用いられるユーザーの行動を促す文言のことです。

コンテントバーブのMichael Aagaard(マイケル・アーガルド)氏の実験では、マイクロコピーを改善するだけで、登録率が83.75%も増加したことが分かっています。もし「メールマガジンの配信登録はこちらから」や「最新情報をすぐにお届け」などの定型文を使っている場合、マイクロコピーの改善に取り組んでみましょう。

マイクロコピー/ユーザーエクスペリエンスの権威Kinneret Yifrah(キネレット・イフラ)氏は著書「UXライティングの教科書」の中で、メールマガジンの配信登録を促す方法として、以下3つを挙げています。

  • タイトルの変更
  • 配信登録をするメリットを伝える
  • 配信頻度と個人情報保護に関する障壁を取り除く

メールアドレスを登録

(参照:HubSpot

デジタルマーケティングに強いHubSpotは「ハブスポットはお客様のプライバシー保護に全力で取り組んでいます」と強調することで、ユーザーの個人情報の保護に関する懸念を取り除いています。

アナグラム株式会社のメールマガジン

(参照:アナグラム株式会社

運用型広告のリーディングカンパニーであるアナグラムは、配信登録をするメリットは当然ながら、配信頻度は多くないと伝えることで、メルマガ登録の障壁を取り除いているのです。マイクロコピーはオプトインに大きな影響を与えるため、ABテストなどを実施し、最適なコピーを作成するようにしましょう。

リファラルプログラムを実施する

リファラルプログラムとは、報酬と引き換えに、既存の買い手に自社商品やサービスを紹介してもらう手法のことです。PayPalやDropbox、Airbnbなどのメールマーケティングに強みを持つ企業は、リファラルプログラムを巧みに活用しています。

WiseのHP

(参考:Wise

既存の買い手が紹介する人物は、同じような興味関心を持つ可能性が高いです。例えば、海外送金サービス「Wise」のユーザーが紹介するのは、海外移住者や家族が留学している友人知人となるでしょう。

質の高い買い手が紹介され、新規買い手にサービスを満足してもらえれば、さらなる家族友人の紹介と継続率の向上へとつながります。リファラルを導入すれば、効率よくオプトインの数を増やせます。

オプトアウトを減らす方法

ここからはオプトアウトを減らす方法を紹介します。

買い手に価値あるコンテンツを配信する

期待した内容のメルマガが配信されないために、オプトアウトをした経験がある方は多いのではないでしょうか。

買い手に価値あるコンテンツの配信

実際に、株式会社Benchmark Japanの調査「日本のメールマガジン購買状況調査2021年度版」によると、メルマガの購読を停止(解除)する理由として全体の約7割を占めたのが「メルマガの内容に興味がなくなった」と「配信数が多すぎる」の2つです。

この問題の解決策として、セグメント配信が挙げられます。メールマーケティングプラットフォームKlaviyoが行った調査では、ターゲットを絞ったセグメント配信により、平均オプトアウト数の減少の他、平均開封率やクリック率、受信者一人当たりの平均売上げが向上しています。

「オプトアウトの増やし方」でもお伝えした通り、自社に最適な買い手へのアプローチが重要であり、それにはセグメント配信が有効です。

ダブルオプトインを導入する

ダブルオプトインを導入

(参考:アイティメディア株式会社

ダブルオプトインとは、ユーザーがメールマガジンの受信を申し込んだ段階を仮登録とみなし、登録アドレスに送信されたメールURLをクリックして、正式にオプトインが完了する方式です。

オプトインの数が減る懸念こそありますが、確度の高い買い手だけが残るため、オプトアウトの減少はもちろん、到達率やコストの改善などが期待できます。

分析と改善を繰り返す

結局のところ、オプトアウトを減らす最善の方法は、買い手にとって最適な頻度で、魅力的な件名を用いて、価値あるコンテンツを届けることです。メール配信に関する有益な調査は多々ありますが、それが必ずしも自社に有効とは限りません。

最適な配信時間帯や件名などを解明するには、A/Bテストがおすすめです。A/Bテストを用いれば、パフォーマンスが最も高くなる配信時間帯や件名、コンテンツ、CTA、デザインなどを特定できます。テストで判明した最適な要素を組み合わせて、各買い手が求める価値を届けるようにしましょう。

まとめ

メール配信におけるオプトインは、ユーザーの同意を得てから広告宣伝メールを配信する手法のことです。メールマーケティングは新規買い手の創出に有効な施策ですが、法令を順守しなければ、ブランド毀損や罰金などのリスクが生じます。

法令によりオプトイン方式が導入された今、買い手に選んでもらえるメールマーケティングの実施が必要です。買い手の課題や興味を検討し、メールやオウンドメディア、SNSなどのタッチポイントで、買い手にとって価値ある情報を発信しましょう。そうすれば、オプトインの数を増やしつつ、オプトアウトを減らせます。

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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