サンクコストとは?経済・心理学との関係やサンクコストの誤謬の具体例とその回避策をわかりやすく解説!

2024/08/15
BtoBマーケティング サンクコスト サンクコストとは?経済・心理学との関係やサンクコストの誤謬の具体例とその回避策をわかりやすく解説!

仕事においても人生においても、「何かを中止する」「割り切ってあきらめる」タイミングはとても重要です。「あのプロジェクト、もっと早くやめていれば損失は少なくなったのに……」「あのサブスクリプションはすぐ退会しても問題なかった……」と、やめた後は簡単にわかることが、やめる前は迷ってしまいなかなか決断できません。

なぜなら、ほとんどの人が自分が費やした費用や時間の価値を実態より高く評価してしまい、もう戻ってこないコストにこだわる「サンクコストバイアス」を持っているからです。

ビジネスに撤退はつきもので、経済産業省の『新事業展開の促進』を参照すると、新規プロジェクトとなると8〜9割は失敗しているとわかります。であれば、経営者やプロジェクトリーダーは、撤退のベストなタイミングを決断できる力をつける必要があるでしょう。

サンクコストバイアスの存在を知っていると、日々の仕事上での判断はもちろん、経営幹部になったときの決断、個人のキャリア形成などいろいろなシーンで役立ちます。

サンクコストとは?

サンクコストとは、直訳すると「埋没費用」です。経済学の領域では「すでに発生し、回収できないコストのこと」を指します。

Sunkは、英単語「sink(沈む)」の過去分詞であり、Sunk(沈んでしまった)cost(費用)という意味になります。

  • Sunk=沈んだ ※sink(沈む)の過去分詞 sink -sank -sunkの不規則変化
  • Cost=費用、労力

簡単にいえば、払いこんでしまい絶対に戻ってこないお金や時間です。

サンクコストの考え方とその概要

サンクコストバイアスは、米国の行動科学者Richard Thaler(リチャード・セーラー)氏(以下セーラー氏)によって初めて紹介されました。

セーラー氏は「最初に財やサービスを利用する権利にお金を払うと、その財が利用される率が高まる」ことを提唱します。

その後、米国の心理学者Catherine Blumer(キャサリン・ブルマー)/Hal Arkes(ハル・アルケス)両氏の共同研究によって、「サンクコスト(埋没費用)がお金だけでなく、時間、労力、投資などの後にも同様に影響する」ことが示され、サンクコストの定義は拡張しました。

人間は、これまで費やした金額や時間が大きければ大きいほど「これだけ投資したから価値がある」と考え、非合理的な判断をしがちです。

このようにサンクコスト(埋没費用)が、合理的な判断をはばむことを、「サンクコスト効果」「サンクコストバイアス」「サンクコストの誤謬(ごびゅう)」「埋没費用効果」などと表現します。

<サンクコストバイアスの例>

  • 投資した株が下落し続けているのに、損切りできない
  • 買った本が役に立たないが、とりあえず最後まで読み続ける
  • 古くて非効率的な社内のパソコンを、高かったからと買い替えられない

もちろん、人間は経済合理性だけで生きているわけではないため、買った本が面白くないまま読み続けても本人が満足なら問題ありません。

しかし、ビジネスマンが来週のプレゼン書類作成用に本を読むのであれば、役に立たない本は途中で見切りをつけ、役立つ本を読むほうが合理的でしょう。

企業が古いパソコンを刷新せず延々使い続けると、最新のITインフラにすることで得られた仕事の効率化、それによって生まれる「時間」「従業員のスキル向上やモチベーションアップ」などを得る機会を失います。

このようにサンクコストは、すでに払った費用だけでなく未来の機会をうばうことから、「機会費用=ある経済行為を選択することで失われる利益」と共に語られます。

別名「コンコルド効果」

サンクコストは「コンコルド効果」とも呼ばれます。サンクコストにとらわれた失敗の代表格が、1970年代にイギリス政府とフランス政府が開発した超音速ジェット機コンコルドだからです。

1970年代にフランス、イギリス政府によって開発された、音速の2倍の速さで空を飛ぶコンコルドは、「ニューヨーク→ロンドン」が通常7時間かかるところを、3.5時間で飛べる「怪鳥」と異名をとった旅客機です。

しかし、開発費は予想の6倍を上回り、さまざまな問題が噴出しプロジェクトは難航。それでも、イギリスとフランスの政府は中止の決断をできず、30年近くコンコルドプロジェクトに投資し続けたことに由来しています。

コンコルド効果

(出典:dreamstime.com

サンクコストを認識することがなぜ大事なのか?

サンクコストを認識することがいかに重要なのか、その理由を詳しく紐解いていきましょう。

損失回避行動」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、「人は、損失を回避しようとする傾向」を示し、「同等の利益よりも損失のほうが、より強く痛みを感じる」という心理現象を指します。

たとえば、「1万円を得ること」と「1万円を失うこと」を比較してみましょう。ご自身に当てはめて考えてみてください。利益および損失の金額は同じですが、「1万円を得ること」は「ちょっと嬉しい」といった感じで、一方で「1万円を失うこと」は「すごく損した気がして悔しい、どうにかして取り戻せないかと考えてしまう」といった感覚があるのではないでしょうか?

これは、認知バイアス(偏見や経験則に基づく、認識の偏り)の一種で、ときに人は偏って不合理な判断をしてしまう、という一例です。

損失回避行動のイメージ

(出典:Loss aversion - The Decision Lab

損失回避行動について理解しておくことは、ビジネスにおける意思決定においても非常に重要です。ビジネスを継続していく中で不合理な意思決定を下すと「長期的に損を被り続ける」ことにもなりかねません。利益が見込めない取り組みに長期間、投資を続けていると、結果的に大きな損失を被る場合があります。

また、投資に費やすことのできる資金繰りが悪化し、新たに投資すべき領域を見送ったり、見逃したり、新たなチャンスを逃したりするリスクを伴います。

どこかで「ダメージを最小限に食い止めるため、リスクを取る」という判断を下し、ビジネスの収益悪化を防がなくてはなりません。「損切り(少し損が出ている、あるいはこれ以上の成長が見込めないと分かったら、早々に見切りをつけて取り組みを中止したり、手放したり、撤退したりすること)」をする勇気を持つことが必要なのです。

サンクコストの代表的な種類例

ここからは、ビジネスにおけるサンクコストの代表的な事例を見てみましょう。

機械設備K

機械設備は、製造業における代表的なサンクコストのひとつです。

例えば、工場そのもの(設備)や工場内で稼働させている機械や装置といった機械設備のリース契約などは、一度支払ったら戻すことができないため、サンクコストとなります。

また、これらの設備は高額であることが多く、その費用を回収するためには長期的な使用が前提です。ところが、機械が故障したり、技術革新によって陳腐化したりした場合には、投資額を回収できない場合もあります。

そのため、企業はこれらのサンクコストを慎重に見極め、「本当に必要な設備や機械なのか?」「もっと生産性を高めるために、機械設備をどのタイミングで刷新するべきか?」などと、柔軟に投資判断を下すことが重要なのです。

マーケティング費用

マーケティングに費やしたお金は、サンクコストになりえます。例えば、新しいプロダクトのPR(認知獲得や、新規顧客獲得など)に100万円投入したけれど、そのキャンペーンが思った通りの効果がなかった場合、既に使った100万円は回収不可能な費用となります。これもサンクコストに該当します。

長期的に施策に取り組む中で、「これまで100万円ものコストをPR施策に投下してきた。元を取らなければいけないから、ここで取り組みを諦めてはいけない」と損失を回避しようとする心理が働きます。

しかし、そう考えている段階では、この先本当に成果が得られるかどうかは不確実です。前章でも述べたとおり、損失回避行動について理解しておかなければ合理的な判断を見失い、長期的に損が拡大してしまう可能性もあります。よって、成果を得られる見込みの薄い施策は、続行せず撤退する判断を早急に下すことが重要です。

研究開発費用

ビジネスが成長するにつれて、製品・サービスの改善や拡張のために研究開発(R&D)に投資する場合もあるでしょう。しかし、研究開発がビジネスの成功に結びつくかどうか予測が難しいうえに、しばしば多額の資金が投入されます。

利益が見込めるかはっきりわからないプロジェクトに対して、過剰に投資することは避けるべきです。研究開発がビジネスにもたらした成果を継続的に評価し、利益をもたらさない場合は早期に損切りを行うことが重要です。その結果、無駄なリソースの浪費を防ぎ、他の有望なプロジェクトに資源を振り向けることができます。

労働力(時間)

給与は企業にとって重要な経費であり、同時にサンクコストでもあります。

アメリカン・エキスプレスが提供する、ビジネス戦略を洞察するメディア記事によれば、従業員のパフォーマンスを四半期ごとや年次レビューで評価することが、人材への投資から最大限の成果を得るための有効な方法であると説明されています。従業員の成果を把握し、必要に応じて戦略を見直すことが可能です。

例えば、あなたの会社で新規事業立ち上げに挑戦し、数十人の人員を割いてきたとします。しばらく経って取り組みを評価し、「あまり成果が芳しくない」という状況だったとしましょう。しかし、「これまでの数十人の人件費や労働力、時間を割いてきた。それを簡単に否定したり、切り捨てたりすることは、会社としての『失敗』を認めることになってしまう」といった想いを抱くかもしれません。

そこで「新規事業立ち上げを続行する」と判断し、結果として取り組みがスケールしない、もしくは、さらに失敗が拡大してしまうこともあるでしょう。よって、適切な評価を通じて効果的な人材運用を行い、無駄なリソースの浪費を防ごうとする視点が重要です。

設備や諸経費

次のような経費もサンクコストに含まれます。

  • 家賃
  • 社屋などに関するローン
  • 公共料金(電気や水道など)
  • 保険(火災保険、地震保険など)
  • メンテナンス(掃除、修繕など)
  • ハードウェア(パソコンやサーバー、電話機など)

これらの経費は一度支払うと回収できないため、定期的に見直し、現在の自社のニーズに合っているかどうかを評価することが重要です。

例えば、リモートワークでも業務ができる環境があるのに(あるいは、既にリモートワークに取り組んでいるのに)全従業員が入る規模のオフィスをずっと保持し続けるのは、ビジネス上、不合理な判断となるかもしれません。

オフィスの家賃は、一度支払ったらもう二度と返ってこない「サンクコスト」だからです。今後もリモートワーク体制を継続するのであれば、思い切って小規模なオフィスに移転してオフィススペースを縮小したり、コワーキングスペース利用を検討したりすることで、無駄な費用を抑えることができるでしょう。

サンクコストと機会費用の関係

「サンクコスト」と「機会費用」は両者ともに、経済学やビジネスの意思決定において重要な概念です。しかし、その性質と影響範囲は異なっています。

機会費用は、何かものごとの選択を行う際、「選ばなかったほう」から得られるかもしれない、利益・価値を指します。自社の将来に向けた複数の選択肢を評価するうえで、非常に重要な要素です。たとえば、企業が新しい製品ラインに投資するか、既存の製品の拡張に投資するかを検討する場合、各選択肢の潜在的な利益を比較して評価する必要があります。そのうえで、企業は最も効率的で価値の高い選択をすべきです。

しかしサンクコストは、「自社は今後、どのような選択をすべきか?」という意思決定には、直接は影響を及ぼすことのない要素だといえます。たとえば、「自社のSaaSの今後の市場拡大のために、北米に進出するための研究・調査に既に100万円費やした。

今後、実際に北米進出を実行するか否かにかかわらず、その100万円はもう戻ってこない」といった、あくまで「過去にもう支払ってしまい、今後いかなる選択を取ろうとも、二度と返ってくることのない支出」を指しています。

ここで「これだけ研究・調査に投資したのだから、北米進出を実行すべき」といった判断を下すことは、場合によっては「サンクコストの誤謬」(次章で解説)に陥ってしまう可能性があります。ビジネス上、合理的で利益を最大化する意思決定を下すためには、両者を正しく理解し、区別することが重要です。

サンクコストの誤謬につながる要因

前章までで、「サンクコストの誤謬(ごびゅう)」という言葉が複数回出てきました。

「誤謬」とは「論理的な誤り、まちがい」といった意味で、「サンクコストの誤謬」とは、サンクコスト(過去に支出した費用)にとらわれてしまい、無駄な投資を続けるなど、合理的な判断ができなくなった状態を指します。

サンクコストの誤謬は、なぜ起きてしまうのでしょうか。次の4つの切り口から解説します。

損失回避

サンクコストの誤謬が発生する主な要因のひとつとして、「損失回避」があります。

前半で紹介した、「同じ金額の利益よりも、損失の方が心理的に強い痛みを感じてしまいがち」という認知バイアスの話を思い出してください。このバイアスが、サンクコストの誤謬に大きく影響します。

たとえば、既に多額の資金を投じたプロジェクトが失敗しそうだとわかっても、その損失を回避したいという心理のほうが強く働き、「過去の投資を無駄にしたくない」「既に支出した費用を、プロジェクトの成功によって回収しなくては」「いま撤退したら、今後はもっと損をするかも」なとど、さらなる投資を続けてしまう場合が挙げられます。

人は損失を避けたいがゆえに合理的な判断を忘れてしまい、結果として非合理的な行動を取る傾向があるからです。

コミットメントバイアス

コミットメントバイアスとは、「行動に一貫性を保ちたい」という心理的な傾向から、過去の決定や行動に固執してしまうことを指します。これもまた、サンクコストの誤謬を引き起こす主要な要因のひとつです。

一貫した行動を取ることは他者(同僚や、上司など)からの信頼・評価を得るうえで少なからず重要です。ところが過度になると、損失を拡大させる原因になり得ます。

たとえば、「一度スタートさせた取り組みだから、最後まであきらめずにやりつづける」という姿勢・熱意自体は人として決して悪いことではないものの、「途中で立ち止まって、取り組みの成果を客観的に評価しない、軌道修正しない」「やみくもに、取り組み続けること自体に固執している」といった状況が続けば、ビジネス上、同僚や上司が評価できるとは言い難いでしょう。

意思決定の肯定化

人は、自分の過去の決定や行動を「無駄だった」と認めたくないために、それを正当化し続ける傾向があります。つまり、自分自身の意思決定を肯定化したいのです。この心理的な傾向がサンクコストの誤謬をもたらします。

たとえば、多額の資金を投入した自社製品のPRプロジェクトが失敗しそう(会社全体で見て、財務状況を圧迫しそうなど)でも、「ここまで施策を進めてきたのだから」「自分が率いるマーケティング部門が皆毎日頑張ってくれているから」などと考え、追加の資金を投入してしまうケースもあるでしょう。

しかしその結果、社会経済の最新動向(円安など)、状況の変化(競合急増による広告費用対効果の悪化など)に対応できず、非合理的な行動を続けることにもなりかねません。

サンクコストの誤謬のイメージ

(出典:The Sunk Cost Fallacy - The Decision Lab

また、他者からの期待や評価も「自己決定の肯定化」を強化します。プロジェクトに多額の資金を投入している場合、それを中止することは他社から「失敗」と見なされ、評価が下がる恐れがあります。

たとえばあなたは、自社のマーケティング責任者で、長期的な広告施策のため、どこかのエージェンシーと長期的に契約しているとしましょう。その取り組みの成果があまり思わしくなくても、「ビジネス上の過去の判断が失敗だったと、認めるのが恥ずかしい」「責任者として、失敗を認めづらい」といった心理がはたらいて、取り組みを継続してしまう場合も起こり得ます。

つまり、時間、労力、感情を多く注ぎ込んだプロジェクトや関係を放棄することは心理的な痛みを伴うため、非合理的であっても投資を続ける、といった傾向もあるといえます。

楽観的に将来を見据える

サンクコストの誤謬は、楽観的な将来展望によっても強化されることがあります。「うまくいくだろう」「心配しているほど悪いことは、実際には自分の身には起きないだろう」などと思い込んでいる場合です。

人はしばしば、自分の成功確率を過大評価し、失敗の可能性を過小評価する傾向があります。この「楽観バイアス」により、既に投資したプロジェクトが将来成功すると信じ続ける場合があるのです。

しかし、既に多額の資金や時間を投じたプロジェクトに対して、希望的観測だけを持ち続け、感情的な満足感だけを追求し、現実的なデータや現状の分析を無視するのは、合理的な判断を妨げ、損失を招くリスクが高まります。市場経済のなかでビジネスを継続していくうえでは、突然の市場の動向変化など、取り組みの成功を左右する「外部要因」も考慮する必要があるからです。

サンクコストバイアスが起因した世紀の失敗例

ここでは、サンクコストバイアスが起因した世界的に大きな失敗例を紹介します。

事例1:超音速旅客機「コンコルド」の開発

前述のように「超音速旅客機コンコルド」、サンクコストを起因にした世紀の失敗の代表例です。

イギリス政府、フランス政府の肝入りでスタートしたプロジェクトは1962年に開発着手後、あっという間に予定した6倍の予算2300万ポンド(2020年の1億4000万ポンドに相当)まで膨らみました。

さらに、超音速飛行によっておこるソニックブーム(衝撃波)が問題視され、米国で激しい反対運動がおきたことで米国大陸上空を飛べなくなり、注文のキャンセルが相次ぎました。結局、採算ライン250機に対して、わずか16機しか製造できなかったとのことです。

コンコルドは、イギリス→ニューヨークを約3時間で飛べるまさに夢の音速旅客機。美しいフォルムと高スペックさで人気はあり、当時乗ったセレブたちはみな素晴らしいと絶賛しました。「どんなVIPが乗っても主役は飛行機」と表現されるほど、話題になった機種でもあります。

とはいえ、運賃は約100万円。一般人はそうそう使用できません。維持費もかかる機種であり、旅客機としての経済合理性はなく、コンコルドプロジェクトの支出は増大します。にもかかわらずイギリス、フランス領政府は1976年から2003年までの30年近くコンコルドを飛ばし続けました。

コンコルドは、2000年に別機が落とした部品が原因の墜落事故や、アメリカ同時多発テロ以降、航空需要が低迷したことが影響し、2003年11月に全機が退役しました。

その損失額の巨大さから、サンクコスト効果の別名として「コンコルド効果」という表現が使われるようになりました。現在、コンコルドは各国の航空博物館で展示されています。

事例2:米国にとってのベトナム戦争

戦争の中止、撤退の決断時にもサンクコストバイアスが影響して遅れることが少なくありません。ここでは、米国のベトナム戦争を紹介します。

ベトナム戦争とは、1955年11月から1975年4月30日まで、分断された南・北ベトナムの統一をめぐって展開した戦争です。

1961年に、米国はジョン・F・ケネディ大統領が「南ベトナムにおける共産主義の浸透を止めるため」という名目で派兵を決定。ケネディ大統領が暗殺された後を引き継いだジョンソン大統領は、さらにベトナム戦争への軍事介入を拡大させました。

その後、長引く戦争の成果が見えないことや、テレビで戦地の映像を見た庶民が戦争の正当性を疑問視し、米国各地で反対運動がおこります。1967年には、3万人規模のベトナム反戦帰還兵の会(VVAW)まで結成されました。

ベトナム戦争

(出典:立命館大学国際平和ミュージアム

米国政府内でも戦争継続に疑問の声が出るようになりましたが、ジョンソン大統領は、1968年初頭にも最大54万人のアメリカ合衆国軍人の南ベトナム領土内投入をするなど介入し続けました。

結局、ベトナム戦争からの撤退を決断したのは、1969年に大統領となったリチャード・ニクソン氏です。1960年にケネディとの大統領選でやぶれたニクソン氏は、再出馬しベトナム戦争からの「名誉ある撤退」を主張し大統領選に勝利しました。

このように、大統領が変わるまでの長期間、勝てない戦争から撤退できなかったことから、ベトナム戦争は米国のサンクコストバイアスの失敗例として語られています。

事例3:米国ゼネラルモーターズの倒産

書籍覇者の驕り

(出典:Amazon

世界最大の自動車メーカー、米General Motors社(以下GM)は、2009年6月にリーマンショックの影響を受けて倒産し、国有化されました(2013年12月9日に国有化は解消しています)。

倒産にはさまざまな要因が絡みますが、大きな要因のひとつに自動車メーカーでありながらファイナンス利益を追及し、収益の75%を占めていたことが指摘されます。

当時の経営層はモノづくりより金融収益が莫大なキャッ シュフローを生むことを、戦略の成果だと過大に評価していました。(参考:経営志林)

ジャーナリストのDavid Halberstam(デビッド・ハルバースタム)氏の著書『覇者の驕り―自動車・男たちの産業史』では、GMなどのビッグスリーが驕り高ぶり、日本車の攻勢に破れながらも改革を拒み続けていた様子が描かれています。

以前、トランプ元大統領が「米国車が日本で売れないのは本当に日本のアンフェアな貿易政策のせい」と発言し話題になりましたが、このような発言は米国自動車メーカーも1970年代からしばしば発信していました。

GMは、経営学者のPeter Drucker(ピーター・ドラッカー)氏がGMを研究して好意的に提案を書いた本に対し「世界最強の企業が、なぜ自分からやり方を変えなければならないのか」と激怒した逸話も知られています。


No.1であり続けたGMが、過去に投資したさまざまなサンクコストに捕らわれて、市場の求めるビジネスモデルに改革できなかったことがうかがえます。

なお、一度倒産し国有化された経験を持つ現在のGMは、EVに功勢をかけており、テスラ越えを目指すなど改革路線です。

サンクコストと経済学とマーケティング

企業全体から部門単位まで、施策が上手くいかず、硬直した組織がサンクコストにはまっているケースは少なくありません。ここからは「経済学」と「マーケティング」の観点におけるサンクコストの罠についてみていきましょう。

罠の例1:信念・理念に囚われる

旧来から組織が抱える信念・理念に囚われるあまり、柔軟性を失ってしまっている事例はさまざまあります。

例えば、毎日新聞の青野 由利氏が寄稿した論文『サンクコストの呪縛』では、従来の慣例や価値観に縛られ、合理的な判断ができないでいる日本の原子力政策の現状が述べられています。

同論文では、原子力の専門家であればあるほど、それまでの積み重ねから、合理的な方針転換が難しいのではないか、とのことです。

その最たるものとして、「再処理・核燃料サイクル政策」があげられています。そもそも、日本の実質GDPあたりのエネルギー消費が世界主要国の平均を大きく下回っているにも関わらず、経済的合理性がなく、マイナス面もある「プルーサーマル(プルトニウムの再利用)」に固執しています。

実質GDP当たりのエネルギー消費の主要国比較

(出典:経済産業省「日本が抱えているエネルギー問題」)

この背景にあるのは、お金も時間も技術も投下してしまったことによる「サンクコストの呪縛」であり、原子力の専門家ほど、過去の投資に縛られているという現実です。

罠の例2:間違ったKPIに固執する

KPIとは「Key Performance Indicator(重要業績評価指標)」の略語であり、企業がマーケティング活動を行う際には必須の要素といえます。しかし、必須であるが故に「間違ったKPIを追い求めてしまって、事業が大きく傾く……」という事例は珍しくありません。

例を挙げると、Facebookは、自社製品へのエンゲージメントを高めることに注力しています。しかし、その目標ばかり追いすぎた結果、組織から柔軟性が損なわれる事態にもなりました。

近年、Facebook内部のFrances Haugen(以下ホーゲン氏)からも告発があったように、同社上層部は、デイリーアクティブユーザー数(DAU)の獲得を、道徳的・倫理的な事柄よりも優先した取り組みを行なっていたとのこと。ホーゲン氏の証言によると「指標が意思決定を行う」状態に陥っていたとのことです。

間違ったKPIに固執する

(出典:Statista「Number of daily active Facebook users worldwide as of 1st quarter 2023」)

ホーゲン氏いわく、Facebook上層部は「ユーザーに悪影響をもたらすと証明された取り組み」であっても、DAUを増やそうとしていたと報告されています。

Facebookは、実際にDAUというKPIを改ざんしたわけではありません。しかし、DAUを何よりも優先することで「会社全体の健全性・成長性を把握するためのKPI」というDAU本来の意図から外れ、自社の事業展開に悪影響を与える結果になってしまったのです。

罠の例3:不健全な人事制度を是正しない

誤った人事評価制度が組織運営に悪影響をもたらすケースもあります。日本の電機メーカーである東芝のかつての人事評価制度は、サンクコスト効果によって硬直状態に陥った人事制度の事例として挙げられるでしょう。

東芝では財務・経理部門に配属されると、定年まで同じ部署で過ごし、他の部署に異動することがない「人事ローテーション」制度が採用されていました。ただ、これが自部門の利益のみを守ろうとするセクショナリズム(企業や組織内での割拠主義)を生み出したとされています。

かつての人事評価制度

(出典:日本人材ニュース「【東芝不正会計事件】改めて問われる企業の組織風土とリーダーの資質」)

その結果として、2011年のオリンパスの粉飾決算事件、続く大王製紙事件に加え、2015年の東芝不正会計事件につながっています。つまり、不適切な会計処理が行われたことに気づいても、仲間意識により実際にこれを是正することは困難な状況に陥っていたということです。

「業績評価制度」が、幹部社員に不正を半ば強要する仕組みとして悪用されてもいました。例えば、東芝で執行役に対する職務報酬の40%〜45%は、全社・担当部門の期末業績に応じて「0倍(=支給されない)〜2倍」で評価されています。

このような業績評価部分の割合の高い評価制度では、チャレンジに対する動機づけはなかなか生まれず、「業績改ざん」という不正を招く要素にもなるでしょう。

サンクコストバイアスによる損失を防ぐには?

以上のようなサンクコストによる判断ミスは、日常のビジネスのいたるところで起こっています。とはいえ、ビジネスに関する重要な意思決定を行えない現場目線では「サンクコストに陥っているだけだと思われるので、撤退すべきではないだろうか」という判断は非常に難しいものでしょう。

ベンチャー企業ではよくあるケースだと思いますが、最初の事業はまったく上手くいかなかったけれども、そこで得たノウハウ・ヒントを次の事業に活かして、成長軌道に乗せたという事例は少なくありません。

もちろん、何でもコストカットすると未来の芽を詰む可能性があります。かといって、サンクコストバイアスに影響されて、コスト超過によって母体が危うくなっては元も子もありません。

サンクコストバイアスによる判断ミスを防ぐには、どうすればよいでしょうか?

一つは、プロジェクトの当初から8〜9割は失敗するという前提で、撤退基準を改めて決めておくことです。サンクコストはあくまで埋没費用。それと今後も活用できる無形・有形の資産は別に捉える必要があるでしょう。

つまり培われた技術、従業員のスキルは転用可能なのです。サンクコストを正しく理解し、いざというときサンクコストバイアスに影響されない撤退の仕組みを用意しておくことがポイントといえます。

以上を踏まえたうえで、前述の「サンクコストと経済学とマーケティング」で挙げたサンクコストの罠を回避する方法をみていきましょう。

「自分がサンクコストバイアスに囚われている可能性がある」と感じている方は、前章とあわせて参考にしてください。

罠1の回避法①:撤退基準をあらかじめ決めておく

「新規事業の立ち上げ時には、撤退基準を設定しておくべき」とはビジネスの世界では頻繁に述べられる文言です。確かに、俗にいう「勝つ企業」とは、撤退ラインの線引きを明確に定めていることでしょう。

あらかじめ撤退基準を定めておくことで、前述した「信念・理念のサンクコスト」に囚われることなく、合理的な舵取りが可能。「自社が立ち行かなくなるほどの損失は回避できる」という認識のもと、事業を推進できるでしょう。

撤退ラインの定め方については、「①:計画に対する『達成率』で判断する」「②:撤退を行うタイミングの市場・競合・自社の『状況』で判断する」のどちらかのパターンが考えられます。

新規事業の撤退基準をどのように定めるべきか

(出典:unlock「新規事業の撤退基準をどのように定めるべきか」)

①は、あらかじめ定量データに基づいた計画を立てられる点がメリット。②は、計画を当初では予測できなかった最新情報に基づいた判断を行えるという利点があります。

ただし、前述したサンクコストバイアスを避ける意味では、初期段階に撤退基準を定める①の方がより効果的でしょう。

罠1の回避法②:意思決定に独立性を持たせる

サンクコストバイアスを回避するための一つの方法は、意思決定に独立性を持たせることです。

つまり、「過去にどれだけ投資したか」「これまでどれだけ頑張って心血を注いできたか」といった感情にとらわれるのではなく、現在および未来の状況を冷静に見て(データに基づくなどして)合理的に判断することが重要です。

投資の成果やプロジェクトの進捗状況を、KPIにしたがって定期的に評価し、客観的なデータに基づいて判断をしてください。

そして、第三者の意見を取り入れることで、感情的なバイアスを排除しやすくなります。これは、特に大きな投資や長期間のプロジェクトにおいて重要です。

たとえば外部のコンサルタントや、独立した監査チームの意見を聞くことで、より客観的な判断が可能になるでしょう。定期的にプロジェクトや投資の状況を見直し、必要に応じて計画を修正することが重要です。無駄な投資を避け、リソースを適切に活用することができるようになるでしょう。

罠2の回避法:目標の大きさ、スキルに合わせたKPIを設定する

特定のKPI、あるいは間違ったKPIに固執して失敗する状況を避けるためには「KPIはあくまで大きな目標を達成するための小さなゴールに過ぎない」と認識することが大切です。

KPIを設定する際には、達成目標の大きさや、施策を実際に運用する本人のスキルによって最適なKPIは異なります。

例えば、マーケティングにおいては「リードライフサイクル」を活用することもあります。リードライフサイクルとは、当初は匿名だったサイト訪問者が、氏名やメールアドレス入力などにより「リード」となり、さらに「MQL(有望な見込み客)」に至る一連のプロセスです。

以下の図のように「匿名の訪問者」「リード」「MQL」の各顧客フェーズで「1次KPI→2次KPI→3次KPI……」といった形で、KPIを構造的に設計することもできます。

KPI設定

このように構造化することで、各担当者のスキルに応じたKPIを設定すれば、適切で現実味のあるKPIを複数設定できます。

さまざま指標を組み合わせ、施策のパフォーマンスを把握することで、適切な目標達成を目指しましょう。

罠3の回避法:透明性のある人事制度を構築する

前述した東芝のように、組織に悪影響をもたらす人事制度に縛られ続けるという状況を回避するためには、透明性(あるいは公平性や納得性)のある仕組みづくりが求められるでしょう。

透明性のある人事制度を作るための手段のひとつとして「人事評価システムの導入」が挙げられます。人事評価システムとは、従来は担当者が行っていた人事評価に付随する業務を自動化できるシステムのことです。

smartHR

(出典:SmartHR

組織体制や規模に合ったシステムを導入し「個人のスキル管理→目標設定→成果管理→フィードバック」といった一連の流れをデータベース化することで、伝統的な制度に縛られることのない人事評価体制を築けます。

データベースを活用して人事の基準を可視化しておけば、社内で相互監視の状態も生まれ、「機能不全に陥った制度に固執し続け、組織が硬直化・隠蔽体質化する」といった事態も防げるでしょう。

サンクコストバイアスをマーケティングに活用する方法と例

サンクコストバイアスは、人間が元来もっている非合理的な判断傾向です。このサンクコストバイアスをプラスに働かせられます。

例えばプライベートなら、何かの資格をとるために有料スクールに入り、授業料がもったいないから勉強する。あるいは、筋トレを習慣化するために高いトレーニングウェアを買うなど、無意識にサンクコストバイアスを活用する人はいるのではないかと思います。

以下より、サンクコストバイアスをマーケティングに活用している例をみていきましょう。

事例1:転職希望者に課金してもらったビズリーチ

BIZREACH

(出典:ビズリーチ

一般の転職サイト、転職エージェントは利用者は無料、企業は有料(掲載ベース、成果報酬ベース等)ですが、ビズリーチは、転職者が課金する転職サイトを日本に初めて持ち込みました。

ジムや習い事と同じように転職サイトの会費をとるようにしたのです。同時に、入会資格を当時年収1000万円クラスにしぼり、逆に企業の利用は無料として、多数の優良求人を集めることに成功しました(現在は企業も有料)。

2022年現在は年収の指定はないようですが、ハイクラス層にしぼって課金するビジネスモデルは継続しています(無料会員登録もできますが応募は有料会員のみ)。

ハイクラス層にとって月会費3000~5000円程度は痛手のある額ではないこと。加えて、数ある転職サイト、転職エージェントに同時に登録しても「課金した以上は元をとりたい」という心理(サンクコスト効果)が働くため、ビズリーチをより活用するようになる効果もあったのでしょう。

スタート当初、「日本ではうまくいかない」という評判もかなりあったビズリーチのサービスですが、大方の予想に反し大きく成長しました。

事例2:製品トレーニング・教育プログラムの実施

Salesforce

(出典:Salesforce

SaaSのように操作が難しいサービスのベンダーは、ユーザー教育に熱心です。例えば、CRM世界No.1のSalesforce社は「Trailhead」というSalesforce のスキルを身につけるツールを無料で提供しています。

米国の心理学者 Martin Coleman(マーティン・コールマン)氏の研究によると、埋没費用(サンクコスト)の誤謬は教育にもあてはまり、人は教育に投資すればするほど、教育を継続する可能性が高いそうです。

学べば学ぶほどその内容に価値があると思うようになるなら、ユーザー教育への投資は、ファンを増やしサービス継続率を高めることにつながるでしょう。無償の教育サイトにはサンクコスト効果があったのです。

事例3:リウォード、ポイントの活用

楽天市場

(出典:楽天市場

米Forbes社の2020年のデータによると、米国企業の90%以上は何らかの報酬を発生させるロイヤルティプログラムを活用しています。


米国レビューサイトSmallbizgeniusの2021年の統計では、消費者の75%は報酬を提供するブランドを好み、優れたロイヤルティプログラムがある場合、70%以上の人がそのブランドを他者に推薦するというデータが出ています。

もちろん、日本でも今やまったく珍しくはありませんが、ECサイトなどが活用しているポイント付与、リウォード提供は、ユーザーの継続利用につながります。

消費者にとって、これまでそのブランドで買い物をした費用、使った時間はサンクコストですが、金銭的なバックがあれば、買い物の後悔をやわらげ、満足度がやや上回るでしょう(還元率によります)。

人は自分がお金や時間を使ったことについて実際より高く評価するサンクコストバイアスが働くため、還元があるとますます高く評価するようになる。その結果、エンゲージメントが高まると予測できます。

事例4:進捗インジケーターの活用(〇%完了の表示)

進捗インジケーターの活用

(出典:skygate

サンクコストバイアスは、アンケートや問い合わせフォーム完了率向上にも活用できます。問題数があまり多くないアンケートだと、パーセンテージが小気味よく上がると快適で、最後の送信ボタンまで一気に進められるでしょう。

「問い合わせフォーム」にも、7割入力を超えたあたりでインジケーターを表示すると有効です。米国のビジネスニュースサイトTHE MANIFEST社の調査によると、エントリーフォームまで到達しても入力を完了させるユーザーは約20%しかいません。80%は入力中に気が変わってしまうのです。

コンバージョン率をアップさせる前提として、よりユーザーがスムーズに入力できるようにするための問い合わせフォームの最適化が必要です。

ただし、7~8割完了しているインジケーターが表示されれば、ここまで費やした労力をムダにしたくないサンクコスト効果によって、より完了率が上がることが期待できます。このようなテクニックも有効に活用しましょう。

事例5:セミナー・講演

セミナーや研修において、事前に申し込みをして参加費を支払う形式を採ることで、主催者側はサンクコスト効果の恩恵を受けられます。

事前に参加料を支払い、キャンセルする場合はキャンセル料がかかるよう規定しておけば、参加者はすでに支払った費用を無駄にしないよう、イベントに参加する確率が高まるでしょう。

JMAマネージメントスクール

(出典:JMAマネジメントスクール「BtoB企業のための技術営業スキル基礎セミナー」)

これは特に、参加者が気軽に参加できるオンラインイベントではなく、会場費がかかり、集客可能人数が限られる(=欠席リスクが高い)オフラインのセミナー・研修で有効といえます。

事前支払いを促す手段としては、旅行代理店が行なっているように「グループ割引」「早期割引」を設定するという手段もあるでしょう。

事例6:継続購入で付録が完成する月刊誌

サンクコスト効果は、継続購入で付録が完成する月刊誌でも活用されていると推察できます。継続購入で付録が完成する雑誌は、一定期間にわたって同じシリーズの雑誌を購入することで、最終的に完成する特典やコレクションが設けられているのが特徴です。

このタイプの雑誌は、TVCMなどで「創刊号は特別価格◯◯円」といったプロモーションを行なっているのを見かけた方も多いのではないでしょうか。

継続購入で付録が完成する月刊誌

(出典:Amazon

こういった雑誌は、一度購入し途中で購入をやめてしまうと、すでに購入した分の価値が低下するという心理が働きやすいといえます。したがって、すでに投資した分が無駄にならないように、一般消費者は定期購入を続ける傾向があると考えられるでしょう。

まとめ

ビジネスが成功率100%ということはありえません。撤退スキルがあるかどうかは、企業にとって非常に重要です。

撤退する場合、すべてがサンクコストではないことに留意しましょう。あくまで返ってこないコストがサンクコスト。撤退する事業には転用できる資産もあります。あのサンクコストによる世紀の大失敗「コンコルド」ですが、「コンコルドは去ったがエアバスは躍進した」といわれるように、技術がその後のエアバスの成功に活かされました。

サンクコストを正しく理解して、最適なタイミングで「戦略的撤退」ができる仕組みをあらかじめ用意しておけば、致命傷を負うことを避けられます。また、新規事業にチャレンジし失敗しても、そこで得た経験をもとに、また新たなチャレンジができるレジリエンスの高い組織を作ることができるでしょう。

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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