顧客維持率(リテンションレート)とは何?マーケティング担当者や営業担当者も知っておくべきこと

2022/02/23
顧客維持率(リテンションレート) 顧客維持率(リテンションレート)とは何?マーケティング担当者や営業担当者も知っておくべきこと

マーケティング領域では、1:5の法則(既存顧客の販売コストは新規顧客の5分の1ですむという経験則)、5:25の法則(顧客維持率を5%増加させると、利益が25%~95%増加するという米国コンサルティング会社Bain & Company社の調査結果をもとにした法則)をご存知かと思います。

5:25の法則

既存顧客からの売上げは新規開拓よりもはるかにコスト・労力が少なく、顧客数を維持すればそれに新規顧客がプラスされるので、売上げが上がりやすくなり企業は成長軌道にのります。

例えば、日本発のSaaSユニコーン「SmartHR」はサービス利用継続率99.5%です。日本のVertical SaaSの成功例の代表格「ANDPAD」のサービス利用継続率も99%と、大きくスケールした企業は顧客維持率も驚異的な数値です。

ちなみに、自社の製品・サービスの顧客維持率(リテンションレート)は何%でしょうか? 業界他社と比較してその率が高いでしょうか。そもそも、どのくらいの顧客維持率(リテンションレート)が望ましいでしょうか?

本記事では、マーケティング初心者向けに、営業やマーケティングの重要指標のひとつである顧客維持率(リテンションレート)の意味、顧客維持率の定義の仕方、計算方法を紹介します。

顧客維持率(リテンションレート)とは?

顧客維持率(リテンションレート)とは、もともと英単語の「Customer Retention Rate」を訳した言葉です。「顧客定着率」「顧客保持率」「カスタマーリテンションレート」「リテンション率」「CRR」と言われることもあります。

顧客維持率(リテンションレート)の意味

顧客維持率(リテンションレート)とは「既存顧客が一定の期間に取引を続けている割合」です。顧客維持率(リテンションレート)は、顧客の満足度を反映するため「顧客維持率が高い」「顧客維持率が低い」は以下のように解釈できます。

  • 顧客維持率(リテンションレート)が高い

・取引を続ける顧客が多い
・多くの顧客が製品・サービスに満足している
・多少の不満があっても他に代替となる有力なサービスがない
・顧客数が順調に増えるため売上げの基盤が安定
・売上げが順調に伸びていく傾向がある

  • 顧客維持率(リテンションレート)が低い

・去った顧客が多い
・顧客が製品・サービスや企業のサポートにあまり満足していない
・顧客数が増えるスピードが遅い
・アップセル、クロスセルにつながる顧客が増えにくい
・新規開拓で売上げを上げても既存顧客からの売上げが伸びずトータルで売上げがあまり伸びない

業界別の顧客維持率(リテンションレート)

顧客維持率の平均は業界ごとに異なります。以下は2018年の米国の統計データでIT業界は77%。年によって変わりますが、IT業界の顧客維持率は80%前後のようです。

業界別顧客維持率

(出典:https://www.mageplaza.com

SaaSの顧客維持率は95%が平均と言われます。米国の中小企業向けSaaSの顧客離脱率は毎月3〜5%。エンタープライズ向けSaaSの顧客離脱率は毎月1%未満(しかし初年度の解約率が15%に達することもある)とあるので、単純計算で中小企業向けSaaSの月次顧客維持率は95〜97%、エンタープライズ向けSaaSは99%という計算ができます。統計によって細かい数値は異なるものの、やはり95%あたりと解釈してよいでしょう。

顧客維持率の高さと売上拡大の関係性

顧客維持率が向上すると売上げが拡大することを示すデータは、EC業界などで顕著な数字が出ています。最近のアドビ社のレポートでも、ネットショップが既存顧客の10%を維持すれば、収益は2倍になると試算されているのです。

SaaS企業のリテンション率と成長率については、2016年に米国のベンチャーキャピタルSaaSCapital社が調査した結果、以下の図のように若干の外れ値を除き単純な相関関係でなく直接的な因果関係があると解釈できるデータも出ています。

SaaS企業のリテンション率と成長率

(出典:SaaSCapital

SaaSの場合、月額課金を積み上げていくビジネスモデルなため、顧客維持率(リテンションレート)がより重要であることは業界関係者の誰もが知っていると思いますが、美しい右肩上がりのグラフを見ると腑に落ちるものがあるのではないでしょうか。

考え方の発展の背景>

顧客維持率(リテンション率)は、営業やマ―ケティング部門で昔から存在する指標です。しかしオフラインの営業が主流の時代、既存顧客営業は営業マンの企画力、営業力に依存しており、売上げが伸ばせないのは担当者の営業不足という判断だったかと思います。

近年は営業管理がかなり科学的になり、各社がCRMを導入することで、顧客維持率もシステムで簡単に計測できるようになりました。

顧客層やプロダクトごとに、期間別の顧客維持率もすぐ算出できるので、数値の推移を見ながら自社にとってマッチングする層を把握したり、リテンション率の低い層にフォーカスして施策を実施したりできます。営業、マーケティング目標を達成するための指標として活用されています。

また、SaaSのようなサブスクリプションビジネスが増えたので、ユーザーの初期費用は下がり、企業は新規開拓が比較的楽になりました。逆に取引を継続させることの重要度が増したことも影響しているでしょう。

サブスクリプションの場合、ユーザーは月単位、年単位で簡単にサービスを切り替えることができるので、不満ならあっさり去ってしまうからです。頑張って新規顧客を獲得しても導入後すぐ去る顧客が多いと、なかなか売上げが積みあがりません。

そのため、これまでより顧客維持率(リテンションレート)がより重要視されるようになりました。

顧客維持率(リテンションレート)の定義の仕方

顧客維持率(リテンションレート)公式自体はシンプルです。

【(期間終了時の顧客数150-期間中の獲得顧客数70)÷ 期間開始時の顧客100 】×100

計算自体は簡単です。しかし顧客の定義、期間の定義などは企業のビジネスモデルによってさまざまな設定が可能であり、一口に顧客維持率(リテンションレート)といってもさまざまです。

例えば、毎月売上げが上がるビジネスモデルと3年契約一括払いのビジネスモデルでは「顧客を維持している」定義は、まったく違うことが容易に推測できるかと思います。

顧客維持率(リテンションレート)の定義3種類

大枠では、顧客維持率(リテンションレート)の定義の仕方は3種類あります。

  • フルリテンション:
    サービスを毎日利用した顧客のみをユーザーと定義
  • クラシックリテンション:
    サービス利用開始から1カ月経過した日に、サービスを利用したユーザーのみを継続ユーザーとして数える方法
  • ローリングリテンション: 
    任意の期間を定めて、リテンション率を計算する。

(参考:Freshdesk

SaaSの場合、クラシックリテンションかローリングリテンションが該当するでしょう。

さらに、自社のビジネスモデルと、顧客維持率(リテンションレート)を出す目的に合わせて、期間や顧客の定義を変えて計算できます。

顧客維持率(リテンションレート)の方程式の考え方

顧客維持率(リテンションレート)の方程式は、あくまで方程式です。目的に応じて顧客の定義、期間の設定を変えることが可能です。

顧客維持率を出す目的には、マーケティング施策の検証、売上げ・収益の予測、社外への経営指標公開などさまざまなケースがあります。

目的に応じて「期間」を設定する
製品・サービスによって販売サイクルは違います。ECのように毎日売れる製品・サービスもあれば、業界によっては何年に1回しか発注しないプロダクトもあります。

顧客維持率は自社の製品・サービス、企業姿勢にお客様が満足しているかを測る指標なので、必要に応じて対象期間を、1年あるいは四半期、1カ月、1週間など設定します。

例:

  • 1年度の顧客維持率

・年度の施策の検証
・次年度の収益予測
・経営指標公開のため

  • 月次顧客維持率

・離脱が多い月の把握
・マーケティングキャンペーンの結果を検証(前後月の%の差)
・価格改定の顧客維持率への影響が知りたい(同上)

  • 1週間単位の顧客維持率

  • 1日単位の顧客維持率

「既存顧客」を定義する

一般に、既存顧客とは取引実績がある顧客ですが、企業によって一年取引がなければブランク顧客とみなすなど、いろいろな定義をしているでしょう。

顧客維持率(リテンションレート)を出すときは、この「顧客」の設定も自社できめられます。例えば、SaaSの場合、以下の定義の方法があります。

  • 課金している顧客だけを顧客と定義 → レートの増減で収益を予測できる
  • 無料ユーザーも顧客数にカウント → サービスの満足度を把握できる
  • 有料顧客限定かつアクションベースで顧客を定義

    例:一定期間内に1回以上、〇〇サービスを活用している顧客。

年に1回だけ課金されるサービスの場合、課金があるまでの一年間の顧客の動向が見えにくくなります。アクションベースで顧客を定義するとサービスが活用されているかどうかがわかります。
※取引が継続していると判断するアクションは製品・サービスによって違います。

目的に応じ細かくさまざまな顧客維持率を計算可能

顧客企業の規模、エリア、プロダクトなど細かくセグメントして顧客維持率を出すこともできます。

  • 顧客の企業規模別に顧客維持率を出す
    ・どの顧客層が離脱するのか把握し対策を立てる
    ・自社が集中すべき顧客層を特定する

  • プロダクト別の顧客維持率
    ・各プロダクトの顧客の満足度が把握できる

  • エリア別の顧客維持率

・国別・地方別の傾向を把握
・エリアの営業・サポート状況の改善につなげる

このように方程式の項目の定義を自在に変えることで、さまざまな顧客維持率を出し、営業やマーケティング戦略の参考にできます。

顧客維持率(リテンションレート)の計算方法

前述のように、業界によって顧客維持率(リテンションレート)の計算方法は異なります。ここでは、SaaSを前提とした計算方法を解説します。

ステップ1:対象期間と顧客の定義を決める

まず、対象期間を決めましょう。SaaSの場合は月額課金が多いため、毎月去っていく顧客が一定数でます。1カ月単位の顧客維持率(リテンションレート)を計算してみましょう。顧客の定義は、ここでは「有料顧客」とします。

ステップ2:顧客数をカウントします。

  1. 期間開始時の顧客数
  2. 期間終了時の顧客数
  3. 期間中に獲得した顧客数

※既存顧客の定義は前述のように自社設定でかまいません。

ステップ3:計算する/h3>

ステップ1までに以下の数値がで出たとします。

  1. 期間開始時の顧客数=100
  2. 期間終了時の顧客数=150
  3. 期間中に獲得した顧客数=70

この数値を、以下の計算式に当てはめて計算します。

顧客維持率(リテンションレート)の計算式【(期間終了時の顧客数150-期間中の獲得顧客数70)÷ 期間開始時の顧客100 】×100

   ↓

(150-70)÷ 100)x 100 = 80

   ↓

  • 顧客維持率=80%

ステップ4:検証する

顧客維持率(リテンションレート)を計算するのは、顧客維持率を向上させて売上げを拡大することが目的です。顧客維持率(リテンションレート)が計算できたら、数字を分析し次のマーケティング施策に反映させていきます。

  • 業界平均より高いか低いか
  • どのような顧客が離脱していったか
  • 考えられる理由は何か?(離脱時のアンケート、顧客の特徴をもとに分析)
  • 離脱を防ぐための対策を企画する。あるいはペルソナを絞り込んでいく

ステップ5:新しい施策を試す→顧客維持率を計測、PDCAを回す

新しいマーケティングキャンペーンを実施したあとも、継続して顧客維持率を計測し、PDCAを回し続けることで、顧客維持率は改善されていきます。

まとめ

売上げを拡大する方法は、簡単に言えば2つしかありません。「顧客の数を増やす」と「各顧客の売上げを最大化する」です。もし、顧客がたった1〜2回の取引で去ってしまえば、既存顧客の数はなかなか増加しません。いかに新規顧客を獲得してもかごで水を汲んでいるような状況です。

数は力です。顧客維持率(リテンションレート)を常にチェックし、施策を改善し続け、リテンション率を1%でも高め、既存顧客数を減らさないようにしましょう。その上で新規開拓した顧客を積み上げて、売上げの母集団となる顧客数をさらに増やしていってください。

戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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