オフライン広告とは? オフライン広告の種類とメリット・デメリット、効果測定の際の指標まで紹介

2024/03/07
BtoBマーケティング オフライン広告 オフライン広告とは? オフライン広告の種類とメリット・デメリット、効果測定の際の指標まで紹介

現代のマーケティング環境では、デジタル広告が急速に普及し、企業の広告戦略の主流を占めるようになりました。しかし、オフライン広告も依然として重要な役割を果たしており、特に一部の業界ではデジタル広告よりも効果が高い場合があります。

これは、サードパーティーCookieの廃止に伴うオンライン広告のターゲティングと効果測定の困難さ、業界の特性、そして多くの競合がオンライン広告に参入することによるクリック単価の高騰などが影響しています。

現代のビジネス環境では、オンライン広告とオフライン広告の両方をバランス良く組み合わせることが、成功した広告戦略の鍵となります。オフライン広告のメリットや種類、そして効果測定の指標についての基本的な知識は、マーケティング戦略を策定する上で非常に重要です。

本記事では、オフライン広告の基礎知識やメリット・デメリット、種類別の特徴と事例、効果測定の指標について、分かりやすく解説します。現代マーケティングの本質を理解し、より効果的な広告戦略を立てるための一助として、ぜひご一読ください​​。

オフライン広告とは

オフライン広告とは、インターネットやデジタルメディアを介さずに行われる広告のことです。具体的には、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、看板、ポスターなど、その種類は多岐にわたります。

オンライン広告が急速に普及し、オンライン上でのターゲティングが容易になる中、オフライン広告は異なる強みを発揮しています。たとえば、地域に根ざしたコミュニティや特定の層に焦点を当てた広告展開、デジタルで情報収集をしない層へのアプローチなどです。また、オフライン広告は、視覚的なインパクトや記憶に残りやすいメッセージによって、人々の意識や行動に影響を与えられます。

まずは、オフライン広告とオンライン広告の違いを見ていきましょう。

オフライン広告とオンライン広告の違い

オフライン広告とオンライン広告の違い

上記画像を見ていただけるとわかる通り、オフライン広告とオンライン広告の違いは多々ありますが、ここで注目したいのはターゲティング方法と広告の柔軟性です。オフライン広告は、視聴者や読者、地理的な要素をベースにターゲティングを行います。たとえば、特定の業界に属する読者が多く読む専門誌への広告出稿、特定地域に焦点を当てたラジオ番組への広告出稿といった具合です。

これに対してオンライン広告は、検索履歴や訪問サイトなどのウェブ上の行動データを用いてターゲティングを行います。これにより、特定の層に対してより精密にアプローチすることが可能です。しかしオフライン広告においても、DMなどを用いて個人や企業を直接ターゲットにすることができます。

柔軟性の面では、オフライン広告は一度配信されると、その後のクリエイティブの変更が難しく、高いコストが伴うため、出稿前に綿密な計画と準備が必要です。

一方でオンライン広告では、リスティング広告やディスプレイ広告、SNS広告などが柔軟にクリエイティブやターゲティング設定の変更が可能であり、効果測定と改善を連続的に行うことが重要となります。これにより、マーケティングの効果を最大化し、目標達成に向けた戦略をより効率的に調整することが可能です。

オフライン広告のメリット・デメリット

ここでは、オフライン広告のメリット・デメリットを見ていきましょう。

オフライン広告のメリット

オフライン広告の主なメリットは以下の通りです。

  • 多くの人にリーチできる
  • 広告に地域性を考慮できる
  • モノとして接することができる
  • ブランド認知の向上

各メリットの詳細を見ていきましょう。

多くの人にリーチできる

オンライン広告がより的を絞ったユーザー層にアプローチするのに対し、オフライン広告は異なる年齢層や背景を持つ幅広い人に同時にアプローチできるため、広告リーチを最大化することが可能です。特に、地域密着型のコミュニティやインターネットへのアクセスが限られている高齢者層など、デジタルデバイスの利用が低い人々にも情報を届けられます。

新聞、雑誌、看板などの従来の広告メディアは、日常生活のさまざまな場面で人々の目に触れる機会が多く、それによりブランドや製品の知名度向上に大きく貢献します。たとえば、通勤途中の電車内広告や街中のビルボード、地域イベントでのブース展示など。これらのオフライン広告は、インターネットに頻繁にアクセスしない層やオンライン広告が届きにくい地域の人々にも、効果的にメッセージを伝えることができるでしょう。

広告に地域性を考慮できる

オフライン広告は、特定の地域やコミュニティに根ざした強い関係性を築く上で有効な手段です。地域ごとの文化的背景やニーズに合わせてカスタマイズされたメッセージを通じて、ターゲット地域の人々に直接響くキャンペーンを展開できます。

たとえば、建設業者が地域ごとの建築様式や気候条件、地理的特性を考慮した広告を出稿することで、その地域の住民のニーズに合ったサービスを提供できます。さらに、地域特有の方言や慣習をクリエイティブに取り入れることにより、広告はより地元住民に親しみやすく、信頼されるものとなるでしょう。このような地域に根差したアプローチは、特定のコミュニティの具体的なニーズに応える製品やサービスを提供する際に特に効果的です。

モノとして接することができる

オフライン広告、特に新聞広告やチラシなどの物理的に存在する広告は、オンライン広告とは一線を画する独特のメリットを持っています。そのメリットは、直接手に取ることができることです。オンライン広告が一時的な影響力を持つ一方で、物理的な広告はより持続的な印象を与える可能性が高くあります。実際に手にとって目にすることで、広告は人々の記憶に深く刻まれ、ブランドの認知度や親近感を高める効果が期待できるのです。

Yahoo! Japanの調査によると、第一想起を高めるためには、消費者がブランドを検討する前の段階での認知が重要であることが指摘されています。物理的な広告媒体を通じた繰り返しの露出は、人々の記憶に深く残り、購買検討段階において自社ブランドを選択肢に加える可能性を高めるのです。

しかしながら、物理的な広告の効果はデジタル広告に比べてその効果を具体的に計測することが難しいという課題があります。このため、デジタル広告との組み合わせや、ターゲット層やキャンペーンの目的に応じた適切な利用が効果的な戦略となります。

ブランド認知の向上

テレビ広告や新聞広告のような従来型のオフライン広告は、多くの消費者に到達し、製品やブランドの立ち上げ、ブランドのリポジショニング、売上げの増加など、多くのブランド構築キャンペーンを支えています。

テレビ広告や新聞広告のようなオフライン広告は、人々に長期間にわたって覚えられる可能性が高く、ブランドの認知度を高め、人々の記憶に深く刻むことができます。たとえば、2007年に創業し、今では名刺管理市場で確立したポジションを築いたSansanは、2013年よりテレビCMを配信しています。「それ、早く言ってよ〜」というユーモアあふれるCMは大きな認知を獲得したことでしょう。

このように多くの人々にリーチできるオフライン広告は、新しい製品やブランドの市場導入、あるいは既存のブランドイメージの変更において重要な役割を果たします。

オフライン広告のデメリット

オフライン広告のデメリットは以下の通りです。

  • ターゲットを絞り込みづらい
  • 費用が高い
  • 効果の測定が難しい
  • コンバージョン率が低くなりがち

ここからは、各デメリットの詳細を見ていきましょう。

ターゲットを絞り込みづらい

一般的にオフライン広告は、広範囲のオーディエンスにリーチすることは可能な一方、特定のターゲット市場に絞り込むのが困難です。オンライン広告のようにデータにもとづく精密なターゲティング機能がないため、自社に適したオーディエンスに広告が届く保証はありません。

そのため、オフライン広告の公開範囲内に存在するターゲット層の割合やその特性に関する事前のリサーチが不可欠です。そうすることで、どれだけのターゲットが存在し、またターゲットが自社の広告にどれだけ反応する可能性があるかを把握できるようになります。

費用が高い

オフライン広告は制作から配信までのコストが高い傾向にあります。特にテレビや新聞、ラジオなどのマスメディアは広告出稿費用が高額です。

たとえば、日本経済新聞の朝刊全国版に広告を掲載するとしたら、最低でも50万円以上はかかります。コストが高額な分、信頼性の高い媒体に出向できる、多くのオーディエンスにリーチできるなどのメリットを得られますが、予算の限られた企業が利用するのは困難でしょう。

効果の測定が難しい

オフライン広告は効果の測定が難しいです。たとえばテレビ広告の効果は、多くの消費者にリーチできるものの、そのキャンペーンがどのように行動に影響を与えるのかに関する詳細なデータを得ることが難しいとされています。

多くのBtoB企業が利用するDMも同様です。DMが受け取られたとき、受取人が即座に行動に移すことは少なく、製品の購入や問い合わせに至るまでのプロセスが長期にわたることが一般的です。加えて、多くのBtoB企業では意思決定プロセスが複数の関係者によって行われるため、DMの影響を個別に測定することが困難になります。

DMを受け取った担当者がその情報を他のチームメンバーや上司に共有する場合、その共有の結果としてどのような影響が生じたかを把握することは難しいでしょう。

このようにオフライン広告はリアルタイムでの追跡や分析ができないため、ROI(投資収益率)を正確に測定することが難しいです。

コンバージョン率が低くなりがち

オフライン広告の特性上、コンバージョン率の測定は一般に難しく、特にテレビ広告のような従来型のメディアでは、人々が広告を見てから実際に購入や他の具体的な行動に移るまでのプロセスを一人ひとり正確に追跡することは困難です。これにより、オフライン広告は傾向的にコンバージョン率が低くなる可能性が高くなります。

また、オフライン広告はさまざまな消費者層にアプローチするため、自社製品やサービスに興味が少ない層や潜在層に対しては、コンバージョン行動を引き出すことが難しくなります。なぜなら、オフライン広告の一つのメッセージやコンセプトを広範な層に伝える性質上、特定の消費者層に最適化されたアプローチを実施するのが困難なためです。結果、特定の層には訴求力があっても、他の多くの層には響かない可能性があります。

さらに、広告がオーディエンスに到達してから実際の行動に移るまでの時間が長いことも、短期間でのコンバージョン率の向上が難しい一因となっています。

オフライン広告の種類一覧

オフライン広告の種類は多岐にわたります。ここからは、主なオフライン広告の種類ごとの特徴と事例をご紹介します。

看板広告

看板広告は、都市部や交通機関など、日常的に多くの人が訪れる場所に設置される広告です。これらの看板は、巨大なビルボードから駅構内やバス停に設置される電子表示板まで多岐にわたります。看板広告のメリットは、特定の地域や通行する人々に対して、継続的に露出できる点にあります。都市部や交通の要所に設置された看板は、日々多くの人々の目に触れるため、ブランド認知度の向上や新製品・サービスの宣伝に効果的です。

きぬた歯科の広告

(出典:MarkeZine

きぬた歯科は、院長の顔をデザインした派手な看板で知られ、その成功の要因にはいくつかのポイントがあります。まず、大量に設置された看板がマス広告としての機能を果たし、突出したデザインによって目立ち、地域におけるブランドの存在感を高めました。また、競合他社の参入を防ぐドミナントな立地により、市場における独自のポジションを確立しています。結果、年間売上げ15億円という大きな成功を収めているのです。

テレビ広告

テレビ広告は映像と音声を組み合わせ、魅力的なストーリーテリングで幅広い層にアプローチする手段です。特にブランドイメージ構築や製品紹介において、詳細な情報伝達と感情的なつながりを生み出す効果があります。スタンフォード大学院ビジネススクール教授Jennifer Aaker(ジェニファー・アーカー)氏によれば、ストーリーは事実の列挙よりも22倍記憶に残るとのことです。

ミスミ社のオンライン部品調達サービス「meviy」のケースは注目に値します。同社はテレビCMに重点を置き、ブランド認知の向上からイベントへの誘導、ウェブサイトへのトラフィック増加までの流れを効果的に構築しました。この戦略により、meviyの利用者数はわずか3年半で10倍に増加し、テレビ広告の有効性を示したのです。

新聞広告

新聞広告は、特定のターゲット層にリーチするための効果的な手段として長らく用いられてきました。新聞は特定の読者層に定期的に届けられるため、広告は特定の地域や特定の読者層に効果的にアプローチできます。また、新聞広告は、記事と同じくテキストと画像による情報提供が主な形態であり、詳細な情報を伝えやすいという特徴があります。新聞広告は、特に地域密着型のビジネスや、特定の年齢層や興味関心を持つ層をターゲットにする際に有効です。ただし、デジタルメディアの台頭に伴い、新聞の読者層は減少傾向にあるため、広告戦略を検討する際は、その点を考慮する必要があります。

西松建設の新聞広告

(出典:日経マーケティングポータル

西松建設は、ラオス・パクセー地区の日系企業専用工業団地をPRするため、日本経済新聞朝刊に広告を掲載しました。海外生産拠点を持つ企業やASEAN地域で事業展開を計画する企業がターゲットです。広告では、日本とラオスがすでにつながっていることを強調し、互いの成長を目指していることを伝えています。広告掲載後、SDGsへの貢献や工業団地への問い合わせが増加したとされています

折り込みチラシ

折り込みチラシは、新聞や雑誌に挟んで配布される広告方法で、特定の地域やコミュニティにターゲットを絞った直接的なアプローチが可能です。特に、地域密着型のビジネスや特定のニーズに対応する企業にとって効果的です。低コストでの制作と配布が可能なため、小規模なビジネスやスタートアップにも手が届きやすい広告手法といえるでしょう。

メルカリのチラシ広告

(出典:MarkeZine

メルカリは、新聞社の存在感が強い愛知県と北海道で、スマートフォンを頻繁に使用しない層をターゲットに、ユニークなキャッチコピー「24時間営業中」「徒歩0分!」を掲載したチラシ広告を配布しました。また、チラシにはQRコードを記載し、アプリのダウンロードを促進しました。この戦略は、紙媒体経由の流入を大幅に増加させるなど、顕著な成功を収めました。このようなケースは、折り込みチラシがデジタルと融合し、新しい顧客層を獲得するための有力な手段となることを示しています。

雑誌広告

雑誌広告は、雑誌の特定の読者層に直接アプローチできるため、ターゲットマーケティングに効果的です。たとえば、農業関連の製品を販売する企業が農業専門雑誌に広告を掲載することで、自社と関連性の高い読者にアクセスできます。雑誌広告は、読者が既に関心を持つコンテンツに組み込まれるため、広告を受け入れやすく、態度や意識に前向きな影響を与えやすい特性があります。

Dynabookの雑誌広告

(出典:President Business Portal

Dynabook株式会社はビジネスリーダーをターゲットにした雑誌「President」に広告を掲載しました。この広告では、同社の代表取締役が新製品「dynabook X83 CHANGER」の開発背景や特長について語るインタビュー形式の記事を掲載し、オーディエンスに深く訴求しました。このような内容は、読者の関心を引きつけ、製品の理解を深めるのに効果的です。

フリーペーパー

フリーペーパーは、コストを抑えながら地域コミュニティに密着した情報を伝える無料の広告媒体です。多様なフォーマットで、地域イベントやビジネスサービスに関する情報を提供します。

無料配布されるため、広告主は幅広いリーチを実現できますが、配布エリアの限定や受け手による価値の認識の違いなどの課題もあります。フリーペーパーは地域社会への情報提供という点で重要な役割を担っており、地域に根差した広告戦略の一環として有効に活用できるでしょう。

ラジオ広告

ラジオ広告とは、ラジオ番組の前後または番組中に流す広告のことです。リスナーの習慣や好みに合わせた時間帯や番組を選定することにより、効果的にターゲットオーディエンスにリーチできます。視覚的要素が欠けているため、具体的なイメージを伝えるのに限界がありますが、認知度や好感度を効果的に上げることができます。

Voicyの調査

(出典:Voicy

音声メディアVoicyによれば、パーソナリティがブランド名やサービスを繰り返し紹介することで、リスナーに深く印象づける効果があるとされています。このように、ラジオ広告は繰り返しの露出によってブランドやサービスを強く意識させることが可能です。

太陽光発電のアーク株式会社は、ラジオとテレビの両方を活用した長期的なブランディング戦略で成功を収めています。北海道限定のラジオ放送で、15年以上にわたり「北海道の太陽光発電はアーク」というキャッチフレーズを繰り返し使い、企業の認知度を高めてきました。さらに、テレビCMの利用により、視覚的要素を加えて製品やサービスの詳細を伝えることができました。このような長期的なアプローチにより、売上高が約40倍に増加し、企業の地位も向上しています。

リアルセミナー

リアルセミナーは専門知識を共有し、質の高いリードとの関係を構築するための有効な手段です。EventHubによるBtoBマーケティング担当者への調査では、約90%の企業がセミナーを実施し、40%が新規リード獲得を目的としています。

EventHubの調査

(出典:PR TIMES

参加者が会場まで足を運ぶこと自体が、製品やサービスへの高い興味を示しているため、質の高いリード獲得を見込めます。セミナー後のフォローアップやアンケート、インサイドセールスとの連携により、リード獲得の機会を最大化し、参加者との長期的な関係構築をすることが重要です。

展示会

展示会は、特定の業界やテーマに関連した企業が一同に介するイベントであり、新製品の展示やデモンストレーション、ビジネスネットワーキングの機会を提供します。このイベントは、参加するBtoB企業にとって、新規リードの獲得や商談の成立、業界内での製品認知度の向上、業界関係者や潜在的な顧客と直接コミュニケーションを取る絶好の機会を提供します。

株式会社ハンモックの調査

(出典:PR TIMES

展示会の成功は、ただ出展するだけではなく、戦略的な準備とフォローアップが不可欠です。株式会社ハンモックによる調査によると、展示会に出展する企業の8割以上が「顧客に直接提案できる」と回答しているものの、実際には展示会で獲得した名刺の活用や顧客アプローチまでの時間が平均3週間以上かかっているとのことです。

展示会での成果を最大化するには、事前の集客計画や当日の接客戦略に加え、展示会で収集した名刺をもとにした迅速なフォローアップが重要です。具体的には、来場者へのお礼メールや商談の設定を可能な限り早いタイミングで行うとよいでしょう。

展示会出展によって得られるもう一つの大きなメリットは、ブランドの認知度の向上です。特に新製品のローンチや新サービスの紹介において、展示会は強力なチャネルとなります。展示会の規模や参加者の質、業界の影響力によっては、一度のイベントで多くの潜在顧客にリーチすることができ、企業のブランドや製品の認知度を大幅に高めることが可能です。

DM・チラシ

DM(ダイレクトメール)とチラシは、企業が直接顧客に製品やサービス情報を提供する伝統的なオフライン広告手法です。デジタルマーケティングが主流の現在でも、Salesforceやfreeeなどのクラウド企業がDMの利用を積極的に行っています。

日本ダイレクトメール協会の調査

(出典:日本ダイレクトメール協会

日本ダイレクトメール協会の「DMメディア実態調査2022」によると、DMの閲覧率は75%に達し、それに基づくサイトや店舗への訪問率は19.3%と高いことが分かっています。これらの高い閲覧率とコンバージョン率が、現代においてもDMが有効なマーケティングツールとして利用されている理由です。

CRMシステムやマーケティングオートメーションツールを利用し、顧客行動を分析して購買意欲が高まった顧客にターゲットを絞ってDMを送る戦略が効果的です。制作コストがかかるDMは、データに基づいて効果的に配信することが重要です。

ディーエムエス社のDM

(出典:郵便局

ディーエムエス社は、BtoB市場向けのシステム新商品の紹介において、DMを採用しました。彼らは「じむきょくん」というキャラクターを作り出し、物語仕立てで製品のベネフィットを訴求することで、通常の堅苦しい内容を分かりやすく伝えることに成功しました。

このキャンペーンでは、絵本風のDMを使用し、デスク周りで使えるノベルティを同封するなど、独創的な方法で顧客の注意を引きました。また、DMの目立つ場所に二次元コードを配置し、見込み客をランディングページへ誘導しました。この戦略は、発送から1カ月でランディングページへの誘導率が5.89%に達し、問い合わせの獲得に成功したと報告されています。

freeeのDM

(出典:日経XTREND

クラウド会計ソフトfreeeの場合、インボイス制度の導入に伴い顧客数の増加を見込み、中小企業の経営層から大企業の部署まで幅広くターゲットを絞って、鮮やかな青色のボックス型のDMを送付しました。

このボックスには、インボイス制度への対応に必要な情報が網羅された辞書風のガイドブックと、カレンダー形式でまとめられたリーフレットが含まれています。さらに、興味を持った受取人がスマートフォンでQRコードをスキャンすると、freeeの無料セミナーの紹介ページにダイレクトにアクセスできるような仕組みが設けられています。

ノベルティの配布

ノベルティアイテムの配布は、企業が自社のブランドやロゴを施した小物を消費者に提供することで、ブランドの認知度を高め、親しみやすい印象を与えるマーケティング戦略です。

一般的なノベルティアイテムには、ペン、キーホルダー、ティッシュパックなどがあります。これらのアイテムは、展示会、イベント、さらには公共の場などで配布され、企業の存在を受け取った人々の記憶に長期間留める効果があります。特に、企業のロゴやブランドメッセージが目立つデザインのアイテムは、長期的な広告ツールとしての役割を果たします。

株式会社tetoteの調査

(出典:PR TIMES

株式会社tetoteが行った「ノベルティに関する意識調査」によると、受け取ったノベルティが迷惑だと感じる主な理由は「実用性が低いこと」であり、その割合は44.2%に上ります。この結果は、ノベルティアイテムを選定する際の重要な指標となります。

たとえば、実用的で日常生活に役立つペンやクリアファイル、ノートなどを配布することで、受け取った人々にポジティブな印象を与えることが可能です。これらのアイテムは、受け取った人々に対して企業の存在を定期的に思い出させるとともに、実際に役立つことから感謝の気持ちや好意を引き出すことができるかもしれません。

ノベルティの配布は、企業にとって有効なブランド認知度向上の手段であり、適切なアイテム選びとデザインが、その成功のカギを握っています。ユーザーにとって価値あるアイテムを提供することで、企業のイメージ向上に貢献し、長期的な関係構築の基盤を築くことができるのです。

スポンサー

スポンサーシップは、企業がイベント、スポーツチーム、カンファレンスなどに資金提供することで、ブランドの露出を増やす手法です。スポンサーとしての関与は、企業のイメージを強化し、特定のターゲットグループやコミュニティにリーチするのに効果的です。

2004年の研究によれば、企業がイベントや社会的な課題の解決を目的にスポンサーをすれば、人々は企業が社会的利益のためにスポンサーシップをしているととらえ、信頼性の向上につながるとのことです。

サーモス株式会社のスポンサーシップ

(出典:MarkeZine

サーモス株式会社は、バスケットボールチームアルバルク東京と共同で、持続可能な環境保護と資源の有効活用を目指す「マイボトル推進プロジェクト」を展開しました。このプロジェクトの目的は、スポーツイベントにおけるプラスチックごみの削減と、環境意識の高まりを促進することでした。

プロジェクトでは、試合会場にマイボトル持参を促すブースを設置し、観客がマイボトルと一緒に写真を撮りSNSに投稿することで、抽選でオリジナルグッズがもらえるキャンペーンを実施しました。この取り組みは、観客に対してエコフレンドリーな行動を促し、アルバルク東京のファンとのエンゲージメントを高めることにも貢献します。

さらに、サーモスは特製のステンレスジョッキを試合会場に貸し出し、観客がドリンクを飲む際に使うことができました。このジョッキは、何杯飲んでも廃棄物が出ない「ゼロウェイスト」を実現し、観客は飲み放題のサービスを楽しむことができたのです。この斬新なアイデアは、観客のドリンク体験を向上させると同時に、ペットボトルごみの削減にも大きく貢献しました。

このプロジェクトにより、1試合当たりのペットボトル廃棄量が平均33kgから約27kgにまで減少。アルバルク東京のファンクラブ内での認知度も80%を超える高いレベルに達しました。この成功は、スポーツ観戦中における顧客体験の重要性を示し、温かいまたは冷たい飲み物が長時間の観戦体験に与える影響を考慮した結果です。サーモスは、今後もこのような環境に優しいプロジェクトを継続し、持続可能な社会への貢献を目指しています。

オフライン広告の効果測定の指標とは

オフライン広告の効果を測定するための指標として、主に「LP(ランディングページ)への流入数」「キャンペーンコードの利用率」、そして「指名検索数」が重要です。ここからは、各指標の詳細を見ていきましょう。

LP(ランディングページ)への流入数

オフライン広告からのLPへの流入を追跡することで、広告を見たオーディエンスの数やその広告に対する関心の深さを把握できます。たとえば、新聞広告、雑誌広告、またはポスターに記載された特定のURLやQRコードを通じて、オーディエンスをLPに誘導します。

また、LPへの流入数を増やすためには、広告の設計に工夫が必要です。魅力的なビジュアルやキャッチフレーズ、明確なCTAを用いて、オーディエンスの注意を引き、LPに誘導しましょう。

オーディエンスがLPに到達した後、どのようにして関心を持続させ、望ましいアクションを促進するかは、LPの内容やユーザー体験の質に大きく影響されます。一般的には、明確なキャッチコピー、使いやすいインターフェース、魅力的なビジュアル、そして関連性の高いコンテンツを提供することで、訪問者の関心を高め、コンバージョン率を向上させることができます。

キャンペーンコードの利用率

オフライン広告で使用されるキャンペーンコードや割引クーポンの利用率は、オフライン広告の効果を測定する上で重要な指標です。これは、オーディエンスが広告を目にして実際にアクションを起こした証となるため、その利用状況を分析することにより、広告の実際の影響力やROIを客観的に評価できます。

指名検索数

オフライン広告の効果は、特定のブランドや製品に関する指名検索数の増加を通じても測定することが可能です。オーディエンスがオフライン広告に接触し、興味を持つと、ブランド名や製品名を直接検索エンジンに入力することがあります。つまり指名検索数の増加は、広告がオーディエンスに与えた印象の深さやブランドへの関心度を反映しているのです。

オフライン広告は効果があるのか

デジタル広告が主流となっている現代においても、オフライン広告は引き続き重要なマーケティング手段としてその価値を持ち続けています。デジタル広告が手が届かない領域をオフライン広告が補う形で、両者は相補的な関係にあるのです。特に業界によっては、オフライン広告の方が効果的な場合があります。

たとえば筆者の経験上ですが、不動産や建設業、士業などの業界はリアルでの対人関係が重要視される傾向にあるため、親しみやすさや温もりを感じやすいオフライン広告が顧客との信頼関係を築く上で効果的だと考えられます。看板広告や新聞、雑誌広告などは、地域密着型のアプローチにおいて特に力を発揮します。一方で、オンライン広告はデジタルリテラシーが高い層や若年層に効果的で、即時性や測定可能性が高いことが特徴です。

オフラインとオンラインの広告を組み合わせることで、より広範囲の顧客層にアプローチし、多角的なマーケティング戦略を構築できます。たとえば、オフライン広告でブランド認知度を高めてからオンライン広告で具体的な製品情報を提供する、メルマガの開封率が高い顧客にDMを配送するなどです。

このように、オフライン広告はデジタル化が進む現代においてもなお重要な役割を果たし、企業のマーケティング戦略において欠かせない要素のひとつです。デジタルとオフラインの広告を適切に組み合わせることにより、より効果的なマーケティング活動を展開することができるでしょう。

まとめ

企業の広告戦略において、オンライン広告の役割は依然として中心的ですが、オフライン広告の可能性に着目することで、戦略の多様性と効果性を高められます。オンライン広告が直面する課題、たとえばクリック率の低下や顧客獲得コストの増加に対して、オフライン広告が有効な解決策となる可能性があるでしょう。特に、ターゲット顧客がオンライン媒体での情報収集を行わない場合、オフライン広告の重要性が増します。

オフライン広告の活用においては、その単独利用に留まらず、デジタルツールとの統合を図ることでさらなる効果が期待できます。たとえば、QRコードや特定のハッシュタグをオフライン広告に組み込むことで、オーディエンスをオンラインのランディングページやソーシャルメディアキャンペーンへと誘導することが可能です。もしくはオンライン上の顧客データをもとに、最適なタイミングでオフライン広告を配信するという手も考えられます。

このように、オフラインとオンラインの広告戦略を組み合わせることで、企業は顧客の注意を引きつけ、ブランド認知の向上やリード獲得に効果的に対応することができるのです。

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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