広報とPRの違いとは?勘違いされがちな広告との関係性も解説

2022/03/28
PR 広報 広報とPRの違いとは?勘違いされがちな広告との関係性も解説

広報、PRという言葉は、広報=プレスリリースで、PR=宣伝がもはや一般的な捉え方かもしれません。実はこの用語は、戦後アメリカから入ってきた外来語が日本で定着していく過程で、日本独自の解釈がされていったため、元々の意味とはだいぶことなります。

もちろん言葉は変化するものですし、部署名にいたっては企業の自由なので、狭い世界で対話する分には自社の定義でまったく問題ありません。ただ、外部の人と話すときのために、広報、PRの歴史、元々の意味などを知っていると、ミスコミュニケーションが避けられるでしょう。

また、PRの本来の意味を知ると、凄みのある施策を立てることができるようになるかもしれません。本記事では広報とPRの本来の意味と、勘違いされがちな広告との関係性を解説します。

広報とPRの違いとは?

広報とPRの違いはなんでしょうか? 広報の英語はPublic Realtions(パブリックリレーションズ)です。略してPR。「では、広報とPRは同じこと? 」と思われた方もいると思いますが、結論からいうと概ねあたっています。

ざっくりと説明すると、海外で発祥したPR(パブリックリレーションズ)という概念が戦後日本に導入されてから、日本では広報=外部にプレスリリースなどを出すような活動、PR=広告宣伝といった解釈がされてきました。
しかし本来、パブリック・リレーションズ(PR)とは実に幅広い意味を持ちます。広告宣伝という意味合いではなく、個人や組織が一般大衆をはじめとするステークホルダーに向けて情報を管理・発信し、その社会的認知に影響を与える活動を指します。

PRの定義・解釈自体が、各国やPR関連組織において多少異なります。時代とともに変化してきていますが、共通して言えるのは、海外においては、PRが日本でいう広報も含んだ概念として非常に戦略的に行われてきた活動であることです。

そもそも、欧米でのPR(パブリックリレーションズ)の歴史は、そうなまやさしいものではありません

発展の背景

PR(パブリック・リレーションズ)の歴史は20世紀初頭、1900年にボストンで「パブリシティ・ビューロー」が設立されたことが始まりと言われます。

PRは第一次世界大戦において、米国、英国、ドイツでは敵国を悪者にして国内の支持を集めるプロパガンダとして発展し、現在のパブリックリレーションズのベースになったと言われます。

第一次世界大戦以降、パブリックリレーションズは米国やヨーロッパの民間企業に普及していきます。ビジネス領域において、より洗練された活動に発展していきました。

実は、近年でもPRは戦争に活用されています。

例えば、数々の賞を受賞した『ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争』は、ボスニア・ヘルツェゴビナが米国PR会社の力を借りて国際社会を味方につけ、セルビアを悪と仕立て上げ紛争を有利に導いた内容です。

背後にいたのはアメリカの凄腕PRマン。PR活動とは、恐ろしいほどの影響力がある情報戦、戦略的な活動でもあるのです。

書籍『ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争』

(出典:Amazon

【日本には戦後GHQが導入】

一方、日本にPRの概念が導入されたのは戦後です。GHQにより対日民主化政策の一環として、行政の民主的運営のためにまず導入が推進されました。

その後、欧米に比べれば限定的な戦略ではありますが、一般企業にPR・広報は浸透していきます。21世紀に入ってからは、企業経営においてさまざまな情報公開が求められるようになり、企業が好むと好まざると力を入れざるを得なくなっている面もあります。

日本は、欧米と比較すると戦略的なPRを行う企業は少ないといえるでしょう。これは歴史の違い、自己主張の強くない民族性なども影響していると考えられます。

冷静に考えてみれば、そもそもGHQが直近まで敵国だった日本に導入したわけですから、情報戦でもあるPRの部分は伝えていない、と考えたほうが自然かもしれません。

ともかく、政治においてもビジネスにおいても、欧米各国のPR戦略に投じる予算は日本より大きく、最近は中国企業もPRに力を入れています。

世界的なPRメディアPRovoke Mediaの「Global Top 10 PR Agency ranking 2020」を見ると、トップ10ランキングにはUSAが7社、フランスが1社、UK(英国)が1社、そして中国のPR会社が1社がランクインしています。

グローバルな舞台で、情報戦が繰り広げられていることを知っておきましょう。

Global Top 10 PR Agency ranking 2020

(出典:Global Top 10 PR Agency ranking 2020 | Provoke Media

広報とは?

ここからは、広報とPRの違いを日本国内の定義で解説していきます。

広報(public information、public relations)とは、企業、自治体、NGOなど組織が自社の活動、製品・サービスについての情報発信を行うことです。

主な対象は自社のステークホルダー(顧客、株主、取引先、従業員等)です。広報は広告とは異なり、企業が費用を払うことはありません。あくまで、価値のある興味を引くような情報を発信して、自社を知ってもらう活動です。

一般に無名の企業、中小企業の広報活動は「知名度を上げる」ことを目的に行われます。昔からメディアを上手に活用して、社名を売って成功したベンチャ―企業は少なくありません。

一方、大企業になると広報は危機管理の比重が強くなっていきます。例えば、高杉良氏の『広報室沈黙す』という実話をもとにした本では、不祥事が発覚しそうなときの広報マンと知人の記者との心理戦、各々が職務に忠実であろうという思いと相手への情で葛藤する様子が、巧みに描かれています。

『広報室沈黙す』

(出典:Amazon

内部リーク、派閥争いの話もあり、広報という業務が見かけの華やかさとは違い、企業のどろどろした部分にも関わっていることがわかります。

刊行から30年以上「危機管理のバイブル」として、読み継がれているおすすめの本です。何が言いたいかというと、メディアでの扱われ方にも少なからず人間の感情が影響するため、メディアリレーションズは重要な仕事ということです。

その種類とは?

広報は、大きく社外広報と社内広報に分けられます。いずれも重要な活動です。

社外広報

社外広報とは、社外のステークホルダーに情報を発信する活動です。企業によって総務部門や経営企画部門が発信することもあれば、販売促進部門が発信することもあります。

社外広報は、一昔前は新聞、雑誌などのオールドメディアを経由する活動がメインでしたが、現在はデジタル上の社外広報の手段も増えております。

  • IR(投資家向け)
  • メディアリレーションズ(メディア関係者との信頼関係づくり)
  • 株主総会
  • 記者会見の運営
  • 経営者の書籍
  • CSR・SDG・ESG
  • グローバル広報、他

社内広報

社内広報は組織が大きくなればなるほど重要な広報活動です。なぜなら企業組織が大きくなると、いわゆるサイロ化がおき、セクショナリズムが蔓延しがちだからです。

経験のあるビジネスマンは多いと思いますが、サイロ化が激しくなると社員は競合他社よりも身近な社内のメンバーをライバル視することが多々あります。世界を目指すどころか、社内政治に終始してしまうことが少なくありません。

社内広報は、従業員に自社が置かれている状況を的確に伝えたり、社内でどのようなことが起きているかを伝えたりすることで企業ビジョンを浸透させ、クロスコミュニケーションを促進させ求心力を強める働きがあります。

  • 社内報などを使った社内コミュニケーション
  • 社内ポスター
  • 経営者の書籍
  • SNSマーケティング

PRとは?

PR(パブリック・リレーションズ)とは、組織体とその存続を左右するパブリックとの間に、相互に利益をもたらす関係性を構築し、自社の評判を維持をするマネジメントです。

公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会の定義は以下のとおりです。

『広報・パブリックリレーションズは、“関係性の構築・維持のマネジメント”である。企業・行政機関など、さまざまな社会的組織がステークホルダー(利害関係者)と双方向のコミュニケーションを行い、組織内に情報をフィードバックして自己修正を図りつつ、良い関係を構築し、継続していくマネジメント』

企業にとってのパブリックとは、以下の図のように一般大衆、顧客、取引業者、株主、債権者、銀行などの金融関係、政府諸機関など多様です。

PRのイメージ

(出典:公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会

この図を見ると、単純に顧客や従業員だけを見ていればよいものではないことがわかると思います。例えば、良い製品・サービスを市場に出していても、公害を垂れ流している企業は地域住民の評価が低くなります。

近年は、CSR・SDG・ESGの観点からも企業は厳しくみられるようになっているため、PR活動を細やかに行っていかなければ社会から支持されません。

前述の広報の業務に加え、以下の業務も入ってきます。

  • Webサイト(公式サイト、ブログ、オウンドメディア等)
  • プレスキット
  • SNSからの発信

一般的に浸透しているPRとは?

自己PRという言葉は、よく就職の面接で「自己PRしてください」と言われるように、自分の長所をアピールすることと捉えられます。PR=アピールと語呂も似ていることから定着してしまった感があります。一方通行のイメージですね。

しかし、本来のPRは単純なアピールではないうえに、直接コミュニケーションには限定されません。さまざまなチャネルを通して、関係者と良好なコミュニケーションをとる手法です。

とはいえ、言葉は時代とともに変化します。外来語が本来の意味とは異なる解釈をされて定着することも珍しくありません。実務上日本独自の広報とPRの解釈でもおそらく問題ないでしょう。

ただ、マーケティング担当者なら、PRの本来の意味を知っていると、より仕事を極められるのではないかと思います。

PRや広報と広告の違いとは?

PRや広報と広告の違いは、簡単に言えば、お金を払って行う活動かどうかの違いです。

広告はご存知のとおりお金がかかります。先払いであれ、成果報酬型であれ、〇〇の場合は〇〇円という条件があり、要するに広告出稿や制作、プロモーションに伴う費用が発生します。

予算を増やせば増やすほど大きな広告が出せたり、より大きな代理店との契約を結んだりすることが可能で、結果的により露出の期待できる広告が出せます。広告のコンテンツについても、発注者としていろいろな要望ができるでしょう。

一方、PR・広報は、あくまで良好なコミュニケーションをとりながら情報を発信する活動であり、メディアが「面白い、価値がある」と思ったときに初めて取り上げてもらえます。決める権利は、企業にはなくメディアにあります。

そのため、取材を受けても記事を掲載してもらえるとは限らず、内容の事前確認ができないケースも珍しくありません。

こんな感じで紙面に載せて欲しい、自社の良さが伝わるといいなと思っても、予想に反し真逆な書き方をされることもあるでしょう。「編集権」があるため、自社ではコントロールができないのです。

また、だからこそメディアは読者に支持されます。メディアへの掲載がひとつの信用にもつながるのです。

広告と広報の違い

効果的な広報を行うためのXつのステップ

ここでは、ALL STAR SAAS FUNDの『SaaS PR集中講座』の記事を参考に、効果的な広報を行うための基本ステップを解説します。これから、PR・広報を始めてみたい企業向けです。

ステップ1:広報の目的を決める

まず、広報の目的を設定することが最初のステップです。広報の目的は企業のステージによって異なるでしょう。Publicリレーションズの「Public」はどの層か? そこに何を伝えたいのか? 経営ビジョンにもとづき、自社の広報戦略を策定しましょう。

また、ある程度組織の規模が大きくなると、セクションごとに目的が出てきます。

何のために広報するのか?

(出典:ALL STAR SAAS FUND

ステップ2:リサーチ

どのようなチャネルに露出するかを決めるためにリサーチを行います。テックメディア、スタートアップメディア、業界メディア、SNSなどをリサーチし、自社が知ってもらいたいユーザーを抱えるメディアを選定します。

  • メディアの読者層
  • ユーザー数
  • メディアの記事の傾向
  • SNSのユーザー数
  • SNSのユーザーの傾向

ステップ3:戦略をたてる

メディア、外部にとって自社のどのような情報に価値があるかをまとめます。取材したくなる企業は、情報が公開されていて信用できること、応援したくなるようなストーリーを持っていることがポイントです。以下のような内容のネタを探しましょう。

ポイント1:信用、信頼できる企業(安心して報道できる)企業

  • 企業としての歴史
  • 事業の透明性
  • 経営陣のキャリア
  • 出資者
  • 受賞歴
  • 顧客事例、他

ポイント2:応援したくなる企業

  • 創業にかける熱い思い
  • サービスの社会的意義
  • 価値
  • 社員の熱気
  • 苦労話、他

ステップ4:アクションプラン

実際に行うアクションを決めます。Webサイトにメディア問い合わせフォームを設置するなど、基本的なことは必ず行いましょう。その他の方法は、自社が実施できることを選択するのが大切です。

  • PRリリースサイトに登録
  • プレスキット(ロゴ、オフィスや事業紹介、写素素材等のセット)
  • Webサイトには「プレス向けお問い合わせフォーム」を設定
  • SNS、Noteなどの運用スタート
  • 「業界カオスマップ」を公開することで、その業界の中心プレイヤーとして印象
  • 「業界白書」のようなレポートを作り、その業界の第一人者であることを示す技もあります。いわゆる「ソートリーダ—シップ戦略」です。
  • 「カンファレンス」を主催することも、オンライン開催できるようになってきたことで増加傾向にあります。特定の領域において、自社がきちんと真ん中にいることを示せる方法ともいえます。
  • メディアの方々を集めて、専門的なテーマに対する勉強会開催

ステップ:メディアアプローチ~評価のPDCA

メディアにアプローチしてもらったり、見つけたりしてもらえるように発信します。近年はメディア関係者もSNSをチェックしているので、SNSで活動するだけでも取材のチャンスは広がるでしょう。

継続してリリースしたり、SNS発信をつづけたりすることで「〇〇のことならこの企業が詳しい」という評価が積み重なり、取材が増えるかもしれません。

  • プレスリリース配信サービスに登録
  • ブログやnoteの準備をす

(参考:SaaS PR集中講座

まとめ

ソフトバンクの孫正義氏は、日本を代表する経営者です。しかし、その孫さんも、40代くらいまでは、自らベンチャー企業のイメージを向上させると、パソナ会長、HIS会長などとともに「ベンチャー三銃士」と自称し、自らが広告塔となってメディアに露出していたものです。もちろん本業があってこその成功ですが、PR、広報戦略も実に巧みでした。

マーケティング予算が乏しい企業にとって、広報・PR活動は非常に重要です。現在はSNSもあれば無料のプレスリリースプラットフォームもあります。しっかりした戦略のもと取り組めば、お金をかけずとも社会のさまざまな人に自社を覚えてもらえるでしょう。

基本的に広報とマーケティングは別な職種ですが、少人数のスタートアップや、間接部門に人員をさかない日本企業では、「来月から広告宣伝部門で広報もやってください、よろしく」となり、マーケティング担当者が広報兼任となることも十分ありえます。
その際は、ぜひPRの本質を理解し、戦略的なPR・広報を推進してください。

戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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