2020年に行われた調査では、ビジネスパーソンがBtoB営業で感じる課題として「新規開拓力(55.5%)」「スキル向上(44.8%)」などが挙げられていました。
実際、BtoBの商談サイクルは長期に及ぶことも多く、ターゲットとするべき顧客が狭い範囲になることから、営業人材には専門性の高いスキル(例:業界・製品知識、顧客ニーズの理解、交渉力など)が求められます。
特に、ABMのような特定ターゲットに対してアプローチを図る企業の場合、営業活動の属人化が課題となるケースもあるでしょう。
そのような場合に有効なのが「営業プロセス」の定義化です。営業プロセスは、自社の「接点構築→クロージング」に至るまでの流れを、わかりやすくまとめる考え方です。
今回は、BtoBにおいて営業活動を効率化させる上で効果的な営業プロセスについて、全体の流れやフレームワークの例を解説します。
営業プロセスとは、営業チームが成約獲得までに必要な一連流れを、再現性を高めるためにまとめたものを指します。つまり、リードの発掘から始まり、最終的なクロージング、その後のアフターフォローに至るまでの流れを定義したものです。
BtoBのビジネスモデルでは、一度購買へと至ったとしても、一度限りで終わることは少なく、その後も継続的な取引へと繋がるケースが一般的です。
BtoBでは扱う商材の専門性が高く、購買価格が高額になる傾向があります。商談の過程で相手から要望や予算、納期などを引き出し、「組織として購買することにどのようなメリットがあるのか」について合理的な提案を行わなければなりません。
それゆえに、営業担当者には専門性が求められ、何も対策をしなければ属人化してしまうでしょう。
そこで営業プロセスにより、営業担当者の業務内容をフレームワーク化することで、営業活動の質を一定以上に保つことができます。
営業プロセスの流れについては諸説ありますが、HubSpotの提唱している理論もベースにすると、基本的な手順としては以下のようになるでしょう。
次項より、それぞれ個別に解説します。
営業プロセスで売上げを作り出していくために、リードジェネレーションによる見込み客の獲得が必要です。リードジェネレーションでは、潜在的な顧客や取引先を探し出す活動が中心となります。
例えば、オンラインマーケティング、セミナーや展示会、推薦などを通じて新たな接点を作って、将来的な顧客を獲得していきましょう。
ただし、リードはそのまま潜在顧客ですので、プロスペクト(見込み客)化させるためのプロスペクティングの取り組みが求められます。
(出典:HIPB2B「WHAT IS A LEAD? WHAT IS A PROSPECT? WHAT’S THE DIFFERENCE?」)
潜在顧客に対し、成約確率の評価・選別を行い、自社製品の購入に至る可能性のある見込み客へと絞り込んでいくことが必要です。
見込み客を一定数獲得できたとしても、全員に購入可能性があるわけではありません。そのため、クオリフィケーションを行い、アプローチするべき対象を絞り込みましょう。
クオリフィケーションでは、成約の可能性が高い顧客を絞り込む作業を行います。BANT(予算、権限、ニーズ、タイミング)のようなフレームワークを用いて、リードの資質や購入意欲を評価するプロセスです。
リードの絞り込みを行っただけでは、「その見込み客がどのようなニーズや課題を持っているのか」が曖昧です。営業アプローチや商談を行うためには、その見込み客に合わせた提案を行わなくては魅力を感じてもらえないだけではなく、見向きもされません。
より個別化していくためには、見込み客の企業のウェブサイトやブログ、求人・採用情報、IR情報などの公開情報を調査して、「自社のサービスがどのように活用できるのか」という、イメージを持っておくことが大事です。
その仮説を基にして、営業アプローチや商談内で自身のイメージとのすり合わせができます。営業担当者自身の顧客理解にもつながりますし、見込み客にとっても、詳細に調べてきて考えてくれているという点で好感を持っていただき、信頼関係を深めることもできます。
また、事前に見込み客と類似した案件の過去の提案や類似顧客の活用状況を確認することも有効です。別の営業担当者が、「どのような課題提起をしたのか、その課題に対してどのような価値提起をしたのか」ヒアリングをすることでアイディアを得ることができます。
もし、類似顧客で積極的に自社商品を活用している顧客がいるのであれば、カスタマーサポート・サクセスに活用状況を確認することで、「どのように活用しているのか」を事例ストーリーとして見込み客に伝えることができます。
顧客ニーズの調査を基にして、営業担当者が顧客と商談を実施します。この段階では、顧客との関係を築き、信頼を得ることが重要です。
顧客の要望や課題を踏まえて、最適なソリューションやサービスを具体的に提案することが大切です。この時点での提案内容やアプローチが、顧客側の意思決定に大きく影響します。
このステップは時間がかかるため、より成約確度の高い見込み客のためにリソースを確保しましょう。
商談を重ねたとしても、見込み客側に不安や懸念が発生することは珍しくありません。価格、納期、サービス内容などの詳細条件について、顧客との間で調整や議論を行います。お互いの期待を満たす形での合意を目指しましょう。
交渉を経て、最終的に取引を成立させる段階です。正式な契約の締結や取引条件の確定などが行われます。
クロージングの定義は企業によって異なり、見積書や提案書の提出、交渉、意思決定者の同意の獲得などが含まれるケースもあります。
前述のように、BtoBビジネスでは「成約後」も顧客との関係が継続し続けます。
特に、月額・年額のサブスクリプションモデルを採用しているSaaS企業の場合、安定収益に繋げるためには顧客の継続率が重要な指標になります。そのため、商品の納品やサービスの提供後も、顧客のサポートやフォローアップを継続的に行いましょう。
たとえ顧客が一度離脱したとしても、ここでの対応が顧客満足度や再購入の可能性に直結するため、非常に重要な段階といえます。
営業プロセスには、4つの代表的なフレームワークが存在します。
次項より、個別にみていきましょう。
営業プロセスマップは、現在の営業活動の全体像を視覚的に表現するためにマッピングしたものです。ステージを垂直の列に配置することで、営業プロセスを整理して視覚化するのに役立ちます。
営業プロセスマップでは、各列の上部にステージのラベルが付けられ、グループごとに「やるべきタスク」がリストアップされます。各列にリストされているステップは、「営業チームが完了する必要がある業務(例:商談フェーズなら「デモの提供」「価値の訴求」など)」を反映するのが一般的です。
各列にリストアップするタスクは、営業プロセスの各フェーズで営業チームが完了する必要のある活動を反映しましょう。BtoBビジネスでは、多くのステークホルダーが関与することが一般的で、複雑な決裁プロセスや長い営業サイクルが存在します。
このマップを用いることで、営業チームは「どのフェーズで、どのように見込み客にアプローチすべきか」「次のアクションは何であるか」を一目で確認できるようになります。
営業プロセスチェックリストは、営業担当者がプロセスの各段階で必要なアクションや情報を整理・確認するためのものです。
チェックリスト上では、営業プロセスは昇順で時系列に沿って配置されており、1つのフェーズが完了する毎にチェックを入れれば「各顧客への営業活動がどこまで進んでいるのか」を可視化できます。
この形式は、比較的シンプルな営業プロセスに最適です。例えば、メーカーや大手サプライヤからの製品を再販し、個別のカスタマイズや追加サービスの提供をあまり行わない「リセラー」のビジネスモデルなどです。
営業プロセスフローチャートとは、営業プロセスの流れを順序立てて示すためのグラフィカルな図表を指します。
BtoB営業では、営業プロセスの各フェーズで条件に応じたフローが存在(例:商談フェーズでは「①:すぐさまクロージング」「②:反応が乏しくないので交渉を継続」など)します。フローチャートを用いると、商談の進め方や意思決定のポイントを明確にできます。問題点やボトルネックを特定し、改善策を立案する際にも役立つでしょう。
ただし、チェックリストや列の配置には工夫が必要。シンプルな営業プロセスの場合、フローチャートも単純なもので上手く機能します。より複雑な行動追跡や顧客のニーズに応じた段階的な管理を行いたいと思ったときは、以下のように場合分けがなされたチャートを作成しましょう。
例えば、獲得リードがいつまで経っても商談フェーズに進まないケースを考えてみましょう。その場合、営業担当者は「リードを『見込みなし』と判断する」「継続的にアプローチを図り、ニーズが顕在化するのを待つ」という選択が発生します。フローチャートを使用すると、このような顧客の反応に応じて最適なアクションを選びやすくなるのです。
BtoBの顧客は、成約に至るまでの一連の購買プロセスのなかで、複数のフェーズ(例:情報収集、比較、検討など)を経るのが一般的です。
顧客の購買フェーズに合わせて営業プロセスを構築することで、営業チームは「顧客が現在どのフェーズにいるのか」を正確に把握し、それに応じた最適なアプローチや提案を行えます。
例えば、顧客が情報収集フェーズにいる場合、具体的な商品やサービスの提案よりも、価値提案や業界のトレンドに関する情報を提供した方が効果的です。
自社の営業プロセスを定義し、上の段に記入したら、次は下の段に顧客側にとってもらう必要があるアクションを記入します。自社・顧客双方の対応が一致している場合、その営業プロセスは問題なく進行するでしょう。
営業プロセスでフレームワークを活用することは、以下の点から重要であるといえます。
それぞれ、詳しく解説します。
成約に至るまでの両社内の関係者が多いBtoBビジネスでは、異なる営業担当者間でのアプローチやコミュニケーションに一貫性がないと、クライアント側に混乱や不信感を生じさせるリスクが高まります。
フレームワークを採用することで、全ての営業担当者が共通のガイドラインや手順に従い、結果として一貫したアプローチを実現できます。標準化された営業活動をベースに「何が上手くいっているのか」「何が改善の余地があるのか」を定期的に評価することで、プロセスの最適化を進める土台となります。
新入社員や新しい営業担当者の研修時に、標準化されたフレームワークを提供することで、スキルや知識の習得を迅速かつ効率的に行えるでしょう。
事実、米Orcleの発表によると、営業チームがよりスマートに、より多く販売できるようにするため、営業活動の標準化や人材教育に役立つ一連のツールやコンテンツを整える「セールス・イネーブルメント」に取り組む企業は、成約率アップに繋げられると判明しています。
(出典:Orcle「セールス・イネーブルメントとは」)
営業プロセスのフレームワークを採用することで、営業活動の各段階における成果や課題を数値として把握できるようになります。
例えば「リード数に対して営業リソースは足りているのか」「商談化率・クロージング率はどのくらいか」といった形で、「営業プロセス上のどの部分にボトルネックや問題点が存在するのか」の明確化が可能です。
定量的な数値に基づいて、営業上の課題を詳細に把握することで、自社の営業効率を改善していけます。
その上では、CRMツールなどを使って、自社の営業プロセスの健全性を「データとして」把握しましょう。
Salesforce、HubSpotなどのCRMは、顧客情報、取引履歴、商談のステージなどの営業関連データを収集、分析する機能がありますので、より効率的に改善可能です。
(出典:HubSpot)
ここで、SaaS・BtoB企業を例にとって、営業プロセスのフレームワーク例を紹介します。
このように、フェーズごとに「採るべきアクション」をマッピングすることで、営業目標の達成に向けたプロセスを漏れなく実行できます。さらに、営業チームのどこがボトルネックになっているのか、売上目標を達成するためにどこを改善する必要があるかを特定しやすくなります。
例えば、「商談時に顧客ニーズを明確化し切れていないため、交渉がうまくいかない」という問題点が浮かび上がったとしましょう。その場合、「商談」の前工程にあたる「顧客ニーズの調査」の精度を改善する余地があるかもしれないとの仮説を立てられます。
ただし、これはあくまで一例ですので、自社の営業スタイルに合ったものを作成しましょう。
前述した営業プロセスのフレームワーク例は、大きく分けて以下の手順で作成されたものです。
各手順について、具体的に説明します。
まず始めに、現行の営業活動の全体像を掴むことが重要です。営業チームからのインタビューで情報を収集する、あるいはCRMやSFAのデータや過去の営業記録を検討することで、「現状の営業活動がどうなっているのか」を詳しく理解可能です。
自社のリソース次第では、優秀な営業担当者の営業活動の流れと、パフォーマンスが低い営業担当者の営業活動の流れを分けて調査しておくと、より効果的になります。これにより、後工程である手順2〜3で「なぜ優秀な営業担当者は成果が出ているのか? 」を分析しやすくなるためです。
次に、顧客の購買プロセスを明確に理解しましょう。BtoBビジネスでは、顧客の購買プロセスは複雑で時間がかかることが多いので、この部分の理解は営業活動の成否を大きく左右します。
そもそも、案件が進展する・受注するためには、お客様のニーズや悩みを起点として、営業担当者がどのようにアプローチ・提案をしていくのかを考えることが大事です。各ステージでの顧客のニーズや疑問、懸念事項を特定し、それに対応する営業活動やコンテンツを提供することで、顧客の購買意欲を高められます。
例えば、まだ課題感を強く感じていない情報収集のフェーズのお客様であれば、現状をよくできるようなノウハウ情報の提供や、類似のお客様でよくあるお悩みを共有するなど、いまはまだ感じていない課題感を醸成していくアプローチが重要です。この段階で、商品の説明の機会やデモの打診をしてしまうと、いまはまだ早いと思われ先に進まないでしょう。
最後に、上記の情報を基に営業プロセスのフレームワークを作成します。顧客の購買プロセスと現状の営業活動をマッピングし、「理想の営業活動とのギャップ」を特定しましょう。
その上で、最適な営業活動の流れやタイミングを設計し、実際の営業活動に反映させるためのアクションプランを立てます。
具体的には、売上げ、獲得顧客数、リードの質などの具体的な目標を定義。自社の製品・顧客特性を加味したフェーズ分けで営業プロセスを作成した上で、各プロセスの具体的なタスクや活動、それに伴うスケジュールを明確にします。
以上の手順を通じて、効率的かつ効果的な営業プロセスが確立され、チーム全体の営業活動がより一貫性を持ち、成果を上げやすくなるでしょう。
営業プロセスのフレームワークを活用する際には、以下のポイントも意識しましょう。
それぞれについて、詳しく解説します。
BtoB営業では「ただフレームワークを作成する」だけでなく、その実行と結果に基づいて定期的に見直しと改善を行う必要があります。
市場や顧客のニーズ、社内環境は常に変動するため、フレームワークを固定的なものとして捉えず、柔軟に変化に適応させるスタンスが求められるのです。
営業プロセスを適切に評価し、改善していくためには適切なKPIの設定が不可欠。KPIは「主要業績評価指標」とも訳され、組織やプロジェクトの成功を評価するための主要な指標を指します。
KPIは、営業プロセス上の目標に対する進捗や実績を定量的に把握し、評価するために非常に重要な要素です。
BtoBの営業プロセスにおいて重要となるKPI(Key Performance Indicator)は、ビジネスの性質や目的、目標に応じて多岐にわたりますが、代表的なものとしては以下が挙げられるでしょう。
上記のようなKPIを設定して、達成率を評価することで営業プロセスの改善点を明確化し、より成果が上がる形にブラッシュアップしていきましょう。
BtoB営業は、企業や業界、さらには取扱い製品やサービスによってその特性が大きく異なることが一般的です。従って、ひとつの汎用的なフレームワークがすべてのチームに適しているわけではありません。
自社の文化、営業チームの特性や強み、そして対象となる顧客セグメントの特性を考慮した上で、実際の営業現場でスムーズに運用できるフレームワークの設計や選択が必要です。
「自社に合った使いやすさ」を追及していくと、本稿で紹介したフレームワークから形を変えるケースもあるでしょう。
例えばHubSpotは、「フライホイール」という独自のフレームワークを採用しています。フライホイールは、伝統的な「ファネル」モデルとは異なる考え方をベースとしているのが特徴です。
フライホイールは顧客を中心に据え、マーケティング、営業、カスタマーサービスの各部門が「どのように連携して顧客を支えるか」を考えるモデルです。
(出典:HubSpot「フライホイール」)
HubSpotでは「Attract(惹きつける)」「Engage(信頼関係を築く)」「Delight(満足させる)」という3段階で顧客にアプローチすることにより、営業において大きな成功を収めています。
これはあくまで1例ですが、営業プロセスフレームワークは、作成しても上手く機能しなければ本末転倒ですので、「自社にとっての使い勝手」を追及する意識を持ちましょう。
本稿で紹介した営業プロセスのフレームワーク以外にも、営業プロセスを構築する上で役立つフレームワークが存在します。具体的には、以下のとおりです。
各フレームワークの内容について、詳細に解説します。
BANTとは、営業を効率的に行う上で「各顧客の成約見込みがどの程度あるのか」を測定するためのフレームワークです。「Budget(予算)」「Authority(決裁権)」「Needs(需要)」「Time frame(導入時期)」の4要素から成り立っています。
BtoBマーケティングでは、「BANT条件が揃ったリード・案件」が望ましいといわれています。BANTを適切に活用することで、質の高い見込み客を特定し、営業リソースを効果的に活用できるようになるでしょう。
一方で、ビジネス特性によってはBANT条件を揃えるのが難しいケースもあります。
商談サイクルが長くなりやすいBtoBビジネスでは、接点構築の段階からBANTが揃った見込み客を獲得できる可能性は低く、条件が揃うのを重視するとマーケティングから営業にパスするリード(MQL)の母数が乏しく減りかねません。
とはいえ条件をゆるくし過ぎると、今度はリードの質が低くなりすぎるというジレンマもあります。
そのため、BANTのフレームワークを活用する際には4要素を並列に扱うのではなく、「自社はどの条件を重視するのか」という優先順位づけを行い、各要素のバランスをとっていきましょう。
DMU(購買意思決定ユニット:Decision Making Unit)マップとは、企業の購買行動に対して、影響を与えるステークホルダーを整理するためのフレームワークです。
多くの利害関係者が関わるBtoBの営業プロセスでは、DMUマップを使うことで、これらの関与者の関係性や影響力を把握し、効果的なアプローチを計画できます。
DMUの構成要素は企業規模によって異なりますが、一般的には以下の6つの役割を担うメンバーが当てはまるでしょう。
このように、商談を進める際には意思決定者だけでなく、影響を持つ他の関与者(例:ユーザー、技術担当者、購買部門など)も考慮する必要があります。DMUマップを作成することで、これらの関与者を明確にし、彼らの役割や立場を理解できます。
DMUを整理し、各関与者の商談における影響力や関与度を把握することで、商談の成功確率を高めましょう。
FABE分析は、製品やサービスの特徴(Features)を顧客に対してどのようにアピールするかを整理するための手法です。具体的には、以下の4つの要素で構成されています。
いわゆる「購買を促すためのベネフィット」を整理するフレームワーク。FABE分析を用いることで、単に製品の特徴を列挙するのではなく、それが顧客にどのようなメリットや価値をもたらすのかを具体的に提示可能です。
結果的に、顧客からの疑問や懸念に対して、製品の特徴だけでなく、具体的なベネフィットやその証拠をもとに説得的に答えられるようになります。BtoBの営業プロセスでは、とりわけ先述した「4.商談」「5.交渉」のフェーズで役立つでしょう。
ただしFABE分析を行う際に、自社の製品やサービスの特徴・利点のみに焦点を当て過ぎると、顧客の実際のニーズや課題が疎かになる恐れがあります。
あくまで、ベネフィットは顧客視点に立って、価値を明確にする意識が大切です。
SPINは、英営業コンサルタントNeil Rackham(ニール・ラッカム)氏によって自著『SPIN Selling(1988)』で紹介された営業手法です。この方法論は12年間の研究と3万5000件以上の営業訪問を基に開発され、発表から35年を迎えた2023年現在でも、BtoB営業の重要な基盤として広く採用されています。
SPINは以下の4つの質問タイプの頭文字をとったものであり、これらを活用することで顧客のニーズを引き出し、解決策を提案する上で非常に役立ちます。
SPIN営業は、4つの段階を通じて顧客の隠れたニーズを明らかにするためのコミュニケーション手法です。潜在ニーズを引き出すための「ヒアリング力」を、体系的に身につけられるのがSPINの特徴ともいえます。
BtoBの営業プロセスでは、自社の顕在化したニーズに対する解決策の提示ではなく、あくまでも潜在ニーズへの解決策の提示が重要。以下の順序で顧客の潜在ニーズを上手く引き出しましょう。
チャレンジャーセールスモデルとは、Matthew Dixon(マシュー・ディクソン)氏、Brent Adamson(ブレント・アダムソン)氏共著の『チャレンジャー・セールス・モデル』のなかで紹介された5つの異なる営業スタイルの1つです。
その中でも特に高成果を上げている「チャレンジャー」と呼ばれるタイプの営業手法が注目されました。
上記のうち、「チャレンジャー(論客)」タイプが最もハイパフォーマーだといわれています。チャレンジャータイプは、顧客に新しい視点や知識を提供することで価値を生み出し、顧客の考えや状況に挑戦することでその価値をさらに高めようとするのが特徴です。
例えば、チャレンジャー気質を持つ営業担当者が顧客に「業界のトレンドや新しい情報」「顧客が気づいていない機会やリスク」を積極的に提示することで、顧客は新しい視点や知識を得られ、営業からの提案にもさらに価値を感じるようになるでしょう。
チャレンジャーセールスモデルは行動パターンやメンタリティを分析した考え方であるため、別のタイプに当てはまる担当者が、チャレンジャー的な気質を身につけるのは難しいのが実情です。
しかし、「チャレンジャータイプならどのように行動するだろう」という思考スイッチを持っておくだけでも、よりハイパフォーマンスな営業が行えるようになるはずです。
営業プロセスは長くなりがちなBtoBの商談サイクルを体系的にまとめたものであり、「どのフェーズで、どのようなアクションを採るべきか」を定義することで、営業スキルを平準化し、効率的に売上げアップを図っていけます。
ただし、営業プロセスを確立したからといって、見込み客に対して何も用意せずにアプローチしていては、いっこうにクロージング率は高まらない可能性があります。
ランチェスター戦略では「営業とは仮説検証である」との格言があるように、常に各フェーズにおいて「顧客の課題、論点は何か? 」と問い続けることが大切です。
売上げとはあくまで価値提供の先にあるものだと踏まえ、顧客視点を忘れないようにしましょう。