ガートナー・ジャパンの調査によれば、データ活用で「全社的に十分な成果を得ている」と回答した企業の割合はたったの2.2%。データ活用が上手くいかない理由は、ダークデータにあるかもしれません。ダークデータとは、企業が蓄積したデータのうち有効活用されていないデータの総称です。
営業やマーケティング活動で集めた顧客データも、有効活用できなければ意味がありません。そこで重要となるのが、データの整理整頓をする「名寄せ」。エクセルやスプレッドシートでも名寄せはできますが、「関数に強い人材がいない」や「エクセルだと時間がかかりすぎる...…」とお悩みの方もいるでしょう。
そこで本記事では、名寄せの重要性やエクセルでの限界、おすすめの名寄せツール5選をご紹介します。
名寄せとは
名寄せとは、企業内にある複数のデータベースを統合し、同一の顧客や企業を特定する手法。名前やメールアドレス、住所、電話番号などの属性が一致した場合、同一の顧客と判断します。
(出典:名寄せとは|Sansanサポートセンター)
企業には多くの経路でデータが集まります。例えば、顧客が展示会で名刺を渡し、オウンドメディアから資料の問い合わせもすると、SFAとMAツールに同じ顧客情報が入力されるでしょう。また、ツールによって入力フォーマットが異なったり、単純に担当者が入力ミスをしたりすることさえあるのです。名寄せとは、自社で蓄積したデータを有効活用できるように、適切な整備を進めることとも言えます。
なぜ名寄せをすることが大切なのか
名寄せをしなければ、顧客のニーズや状況を無視した施策展開をすることになり、競争力の低下や顧客の不信感を招いてしまいます。
株式会社ハンモックの調査が示すように、多くの企業がSFAやエクセル、メール配信システム、名刺管理システムなど複数の顧客情報管理ツールを導入しています。しかし、各ツールで収集した顧客情報を適切に整理・統合しなければ、下記のようなデメリットが生じるのです。
- 特定の顧客に同じ内容のメール配信
- 複数の営業担当が同じ顧客にアプローチ
- 角度の高い顧客へのリーチを見落とす
- 業務効率の悪化
- コストの悪化
これらは、品質の低いデータがもたらす一例にすぎません。Gartner(ガートナー)社のバイスプレジデントであり著名なデータアナリストのTed Friedman(テッド)氏は「組織がデジタルビジネスの取り組みを加速させる中、品質の低いデータは情報の信頼とビジネス価値に危機をもたらし、財務パフォーマンスにマイナスの影響を与える」と述べています。
実際に、低品質のデータは年間平均1500万ドルの損失をもたらすとGartner社の調査で判明。このような損失を回避し、適切なデータマネジメントと正確なデータ分析をして、顧客にとって最適なタイミングで、最適な価値を届けるためにも、名寄せでデータを整える必要があるのです。
一般的な名寄せ対策の王道はエクセル
名寄せ対策の王道ツールといえばエクセル。エクセルを使えば、入力ミスや記述揺れの整理、重複の削除、フリーメールアドレスと企業メールアドレスの判別、メールアドレスから企業名の抽出など、名寄せで重要なデータクレンジングを効率的に行えます。
また、キーマンズネットの調査で回答者の98.6%が「エクセルを利用している」と回答しているほど、圧倒的に普及しているため、多くの方がすぐに使いこなせるでしょう。「名寄せをしたいけど、専用ツールを導入するべきなのか」と悩んでいる方は、まずは下記記事を参考にエクセルでの名寄せに取り組んでみてください。
「よくある名寄せ状況をエクセルやスプレッドシートで打破!役に立つ関数を実例を用いてご紹介」の記事を内部設置
名寄せができるツール(システム)を5つご紹介
エクセルで名寄せを実施するためには、さまざまな関数を使いこなす必要があります。また、手動での作業になるため、データクレンジングに膨大な時間がかかってしまうでしょう。
The New York TimesのSteve Lohr(スティーブ)氏によれば、データアナリストはデータの収集と準備に全体の50~80%の時間を費やしているとのこと。データアナリストにこれだけの時間がかかるならば、非専門家が行えばさらなる時間がかかるだけではなく、正確に名寄せができないリスクもあることは言うまでもありません。
社内にデータ専門家がいなかったり、名寄せにかかる時間を短縮して分析に注力したかったりする場合、名寄せができる専門ツールの導入を検討するとよいでしょう。ここからは、おすすめの名寄せツール5選の特徴をご紹介します。
ツール1:FORCAS
(出典:FORCAS)
FORCASは確度の高い顧客を可視化し、効率的に売り上げを最大化する営業支援ツール。
名寄せ機能の大きな特徴は、手持ちの顧客データをアップロードするだけで、FORCASが保有する370万の企業データの中から正しい企業名を特定し、正確な企業名や法人番号などの付与、表記ゆれの修正を自動で行うこと。万が一、企業名が特定できなくとも、候補が表示されるため、直観的な操作で名寄せを行えるでしょう。
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社は、数十万件の顧客データを保有していながらもデータが整備されていない、かつマーケティングに生かせる企業属性情報が不足しているという課題を抱えていました。
FORCASを導入することで、50万件以上の顧客データの名寄せと企業属性情報の付与を迅速に行え、自社に関心のある企業と類似性の高い企業を特定し、メール配信をするなどのマーケティング施策につなげられるようになりました。結果、メールやウェビナーのリード率が高まり、インサイドセールスに引き渡す顧客リストの増加に成功したのです。
ツール2:Precisely Trillium
(出典:Precisely Trillium関連ソリューション)
Precisely Trilliumは、アメリカのPrecisely(プレサイスリー)社が販売するパッケージプロダクトであり、国内約250ユーザーの実績があります。
特徴は、各種辞書機能を搭載しているため、高精度の名寄せを実現できることです。具体的には、名前や住所、法人情報などの正規化と統一化を自動で行えます。さらに、名寄せルールの見直しが定期的に行われるので、継続的な名寄せ精度の向上に期待可能。名寄せ条件の設定や精度の調節も柔軟にできるため、自社にあった結果をすぐに得られるでしょう。
ツール3:uSonar
(出典:uSonar)
uSonarは、日本最大の法人企業データベース「LBC」を搭載した顧客データ統合システムです。既存のSFAやMA、CRMツールとシームレスに連携し、自動で名寄せを行います。
例えば、既存ツール内に古い企業データがあれば、LBCを照合して最新の情報に置き換えるのです。また、倒産や移転などのデータの精査も可能。さらに、社内に横断する複数データベースの統合とLBCとの照会をし、見込み度合いの高い企業の抽出もできます。
株式会社日立ソリューションズは、企業マスタの情報量が少なく、データの整備もされていないため、戦略的な営業活動ができていないという課題を抱えていました。そこで個人情報と企業情報を紐づけられ、中小企業の情報も網羅しているuSonarの導入を決定。結果、正確な企業情報をもとにした分析が可能となり、データドリブンの営業戦略の策定や業務効率化を達成しています。
ツール4:OpenRefine
(出典:OpenRefine)
OpenRefineは、Googleが開発した無料の名寄せ・データクレンジングツールです。エクセルやスプレッドシートなどさまざまなデータを統合し、簡単にクレンジングやマッチングなどを行えます。
具体的には、データの揺れや半角全角揺れなどの自動抽出が可能。また、APIサービスを使えば、郵便番号から住所の取得もできます。英語のみの対応ですが、無料で使えるツールのため、顧客データ管理に費用をかけられない企業におすすめです。
ツール5:Sansan
(出典:Sansan)
Sansanは、企業データベースや顧客とのつながり情報を可視化するシステム。名刺管理ツールとして知られていますが、名寄せ機能も備えています。
例えば、取り込んだ名刺の氏名とメールアドレスなどが一致した場合、システムが自動で名寄せをします。また、名刺やメール署名、ウェブフォームなどさまざまな経路で顧客情報を簡単に取得管理することも可能。名寄せ機能を搭載した顧客管理システムと考えるとよいでしょう。
デジタル機器関連製品開発を手がけるエレコム株式会社は、名刺のデータ化からアプローチまでにタイムラグがあり、SFA内に登録された企業情報が整備されていない課題を抱えていました。
Sansanの導入により、SFAやMAに登録されていた電話番号や住所などの限られた情報に加え、職種や業種、従業員規模などのさまざまな情報がデータとして登録され、営業やマーケティング活動に活かせるようになったのです。結果、リード発掘件数の増加やインサイドセールスからの受注率は20%から35%まで向上、一カ月当たりの業務効率が約1000時間分も改善されました。
まとめ
営業やマーケティング活動で蓄積した顧客情報も、データのフォーマットが統一されていなかったり、入力ミスがあったりすれば、さまざまな施策には使えません。
データドリブンな施策を推進するためにも、定期的に名寄せをして、データの整理整頓をする必要があります。名寄せはエクセルやスプレッドシートでも行えますが、データクレンジングの正確性や効率性を高めたいのなら、専用ツールの導入を検討するとよいでしょう。