レプトのBtoBマーケティングのブログ|株式会社LEAPT(レプト)

ロングテールとは?BtoBマーケティングのコンテンツ作りにロングテールを組み込むべき理由

圧倒的な種類の商品をホームページに掲載する、EC最大手の米Amazon.com。ニッチな製品を幅広く取り扱うことで、1つ1つの利益は小さくとも、全体として大きな売上を獲得しています。

Amazonはロングテールの成功事例とも呼ばれ、日本だと「ダイソー」などの100円ショップも該当します。今回はそんなロングテールについて、BtoBマーケティングにも組み込むべき理由やコンテンツの作成方法などを紹介していきます。

ロングテールとは

そもそもロングテールとはあまり購入されることのないニッチな商品でも、アイテム数を幅広く取り揃えることで購入する顧客の総量を増やし、結果的に売上が大きくなる現象のことです。

アメリカのWired誌編集長のChris Anderson(クリス・アンダーソン)氏が提唱したと言われています。「売れ筋商品(Best Sales)」と「それ以外の商品(Worse Sales)」を並べたとき、売上の少ないほうの商品郡が、低くて長い生き物のしっぽに見えることから、ロングテール(長いしっぽ)という名称が付けられました。

 

(参考元:ロングテールとは?正しく理解して売上をあげよう

 

このロングテールの概念は、マーケティング施策のひとつであるSEOでも取り入れられています。例えばSEOには「ロングテールキーワード」がありますが、これは「BtoBマーケティング 手法 SNS」など複数の単語の組み合わせから成る検索キーワードのこと。

ロングテールキーワードで検索をかけるユーザーは、ある程度ニーズが具体化しています。そのため、流入してくるユーザーはコンバージョン率(アクセスしたユーザーが商品の問い合わせや成約などに至る確率)が良い傾向にあるといえます。ただ、上位表示は比較的容易ですが、アクセス数が稼ぎにくいといったデメリットもあります。

しかしながら、筆者の経験上、ロングテールでコンテンツを制作する方針は買い手と売り手の意識の違い(期待値の差)を埋めてくれる役割を果たし、値引き交渉や、顧客維持の低下などを未然に防止してくれる役割も果たします。BtoB SaaS企業であれば、この役割を果たしてくれることがいかに事業インパクトとして大きいか理解できると思います。

ロングテールの対義語:ファットヘッド

ロングテールキーワードの反対に「ファットヘッド(ビッグキーワード)」も存在します。ご想像の通り、ファットヘッドは主にキーワードが1つ、もしくは2つの組み合わせを指します。つまり前述した「BtoBマーケティング 手法 SNS」がロングテールキーワードであれば、ファットヘッドは「BtoBマーケティング」という言葉のみで検索するわけです。

ファットヘッドは、競合コンテンツが多いために検索順位での上位表示に時間がかかるものの、自社への流入を大きく増やすことができます。ただ、まだニーズが具体化していないユーザーのアクセスがほとんどとなるため、コンバージョン率はあまり高くない傾向にあるでしょう。

基本的にファットヘッドで検索を行う人は、まだ情報収集の段階であり「商品購入」といった具体的な行動を検討していないケースが多いです。莫大なウェブトラフィックを生み出す反面、買い手と売り手の間に大きな意識のズレが存在し、このようなファットヘッド型のコンテンツで獲得した見込み客を営業担当者は上記理由から非常に嫌がります。

ロングテールの対義語:パレートの法則

ロングテールとは反対の考え方に「パレートの法則」があります。

実店舗などの販売では主に全体の2割とも言われる、優良顧客(リピート客)のニーズに応えるという手法が主流でした。なぜかというと「売上の8割は2割の優良顧客が生み出している」というパレートの法則があったためです。

 

(参考元:【マーケティング用語】パレートの法則とロングテールの法則とは?

 

この法則を応用すれば、最も成果の上がる2割の対象ユーザーを見つけ出し、そこにリソースを集中させれば8割の効果を得られます。つまり、時間や労力の効率化につながるわけです。

ただし、ロングテールとパレートの法則の原理原則を理解した上で、各々のBtoB企業でもこれらの考えを使い分けるべきです。

たとえば、中小企業が顧客像の製品サービスを展開するBtoB企業であれば、売上規模を伸ばすためにロングテールの戦略が非常に有効。中小企業から顧客単価をあげることは大企業と比較的難しいため、顧客数を増加させないと売上規模をあげることは難しくなります。

そのため、様々な角度から見込み客との接点を作り出すことができるロングテール戦略は、SEO対策だけではなく、セミナー/ウェビナー開催、オウンドメディア運営、事例etc 様々なコンテンツ制作の基本方針として相性が良くなります。

一方で、パレートの法則のような考え方は、高価かつ特殊な商材を販売している際はBtoB企業にも適応しやすくなります。極端な例ですが原子力発電所を建設するような企業であれば、当然顧客候補は限定され、競合も少ないことから、一度発注を受ければ中長期的なおつきあいになることはほぼ確実です。そのため、ロングテール戦略のようなばらまき戦略とは真逆のピンポイントでのコンテンツ制作が基本方針となります。このような違いが存在することを理解しておくことも大切です。

また、ロングテールとファットヘッドもバランスや相互関係性が非常に大切であり、事業アクセルを踏むタイミングがいつなのかなどを理解して、戦術として使い分けすることが大切でしょう。

大半のBtoBのマーケティングは(基本)ロングテールであることが欠かせない理由

とはいえ、特にBtoBマーケティングにおいては前述したようなパレートの法則ではなく、ロングテールにもとづく手法が有効といえます。その理由を以降でまとめてみました。

購買行動がロングテール化

SNSを通じて一般の人のさまざまな欲求が顕在化し、ニーズが多様化していると言われる現在。例えばBtoCにおいては、従来のようなマスメディアを使った広告だけでなく、TwitterやFacebookといったソーシャルメディアを活用し、対象ユーザーを絞ったマーケティングも一般的になっています。

言い換えると、多様なニーズから成るロングテールに、アプローチを行うというわけです。そしてBtoBマーケティングにおいても、こうしたロングテールへのアプローチが必要な時代だと言われています。

現在はBtoBにおいても顧客は検索エンジンなどを通じ、これまで接点のなかった企業への問い合わせが容易になりました。そのほかSNSや口コミなどを通じ、顧客の情報取得機会も増えたと言えるでしょう

インターネットの発達にともなって、顧客が情報を取得する入口が複数存在するなか、顧客の購買行動も多様化しています。例えば実際に話を聞いてから購入を決める顧客もいれば、すでにWeb上で各製品を比較検討しており、問い合わせの段階で意思決定が終わっているケースもあるわけです。

こうしたバックグラウンドの異なるユーザー、それぞれにアプローチを行っていくためにも、BtoBマーケティングの施策にロングテールの視点を盛り込む必要があるといえます。

確かにパレートの法則にもとずいて20%の優良顧客に注力することは、一見、合理的な方法に感じるかもしれません。しかし見方を変えれば、それは数社の優良顧客に依存している状態。数社の取引先のご機嫌しだい、つまりは、外部環境に大きく左右されるとも取れるわけです。

そのためロングテールの視点を盛り込むことは、こうした外部環境への依存を軽減する役割もあるといえます。

ジェネリックなコンテンツは価値がない

ジェネリックとは「一般的な」という意味。そしてジェネリックなコンテンツとは「一般的で、独自性の無いコンテンツ」といえます。

例えばWeb上で言うと、以下のようなコンテンツが特に当てはまるでしょう。

  • プライバシーポリシー
  • 商品の発送情報
  • 用語集、基礎知識
  • メーカーサイトに書かれている商品の案内文や仕様
  • 企業、お店の所在地、連絡先、営業時間、取り扱い品目などのデータ
  • 取引に関するよく頂くご質問(FAQ)

そして何より、検索クエリや検索ボリュームだけに焦点を置いたような独自性のないコンテンツです。検索結果の上位を占めるブログ記事の内容が似たり寄ったりで、運営会社の独自性が全くないような記事を見かけたことはありませんでしょうか。

特にマーケティングを提唱しながらそのような記事を書いている企業は結構怪しく、バリュープロポジションなどを明確に意識していないなどのことが考えられます。

そのような記事やコンテンツから価値を感じることがあるかと言われると、ただの情報として捉えることはできるものの、自社に対して強い関連性や先見性を感じることはないかと思います。

前述したようにニーズが多様化しつつも、情報量が爆発的に増え続けている現在では、こうしたジェネリックなコンテンツではユーザーに刺さりません。そのため、ニッチであっても特定の読者が知りたいと強く望むコンテンツが理想であり、結果的に(ジェネリックではない)ロングテールコンテンツ戦略に落ち着くのが自然な流れだといえるでしょう。

ロングテールのメリットとデメリット

では、ロングテールの理論をマーケティングに盛り込むメリットは何か。以降で、改めて整理してみました。

ロングテールのメリット

メリットは主に以下の2点挙げられます。

ロングテールの視点を盛り込んだマーケティングでは、さまざまな属性を持つユーザーにアプローチすることになるため、見込み客獲得数の安定につながるでしょう。

特定の顧客のニーズが変化したからといって、マーケティング施策がまったく成果に結びつかなくなるといった状態も軽減できます。顧客や社会のニーズの変化に、大きく左右されにくいといえるわけです。

また、前述したSEOの話で言うと、ロングテールキーワードで検索するようなある程度ニーズが具体化している層へのアプローチが主になります。

そのため、例えば上位表示をしたブログコンテンツへのアクセス者は増加しているものの、製品の問い合わせや成約にまったくつながらないといった事態には起こりにくいといえるでしょう。つまりある程度、確度の高い見込み客への効率的なアプローチが可能となるわけです。

何よりメリットとしては営業が喜んでくれる見込み客を獲得できるということ忘れてはいけません。売り手と買い手の期待値の差が生まれにくいため、営業担当者が見込み客にアプローチした際に、見込み客は課題の理解が明確になっていることが多く、売り手の製品サービスの価値を理解しやすい状態にあります。

筆者も様々なタイプのコンテンツを長らく作ってきましたが、営業担当が喜んでくれるのはいつもロングテールでした。

ロングテールのデメリット

一方でデメリットは、以下の通り。

  • 爆発的な成果につながりにくい
  • 多数の顧客へのアプローチが必要
  • 大量のコンテンツが必要

ロングテールにもとずくマーケティングでは、ある程度ニッチなコンテンツを提供しましす。対象ユーザーが限定される可能性もあるため、一気に大量の見込み客を獲得するといったことにはつながりにくいという弱みがあります。

また、見込み客の獲得件数を増やして最終的な売上の拡大につなげるためにも、それだけ多種多様なユーザーへのアプローチが必要です。そのため、一つのマーケティング施策のみに注力すれば良いということがなく、作業的な負担は大きくなるでしょう。

ある程度の数が必要になってくるロングテール戦略は、プロセス作りが非常に大きな鍵となり、大半の企業はこのプロセスで挫折をしてしまいます。

筆者の体験でも、この流れを自社で作れない場合は、ロングテール戦略は確実に失敗します。そのため、経験のないメンバーが自社で作り上げるよりは、慣れているプロや支援会社に連絡する方が良いと考えています。

ロングテール視点で効果的なコンテンツを作る方法

BtoBマーケティングの一つには、展示会、セミナー、ウェビナー、ビジネスブログ記事やeBookといったWebコンテンツの作成に注力する方法があります。こうしたコンテンツを作成する際にも、ロングテールの視点が有効。

では、ロングテールの視点をどうやってコンテンツの制作に活用していけば良いのでしょうか。

ブレスト

ロングテールの視点を盛り込んだコンテンツ制作が、多様なニーズを把握することから始まるとすると、ブレストは自由にさまざまな視点を考える場として有効かもしれません。

まず最初に行って欲しいのが、ペルソナカスタマージャーニーに沿って営業担当者と行うブレストです。営業担当者は顧客の態度変容を促すトリガーとなる情報を最も知っています。

特に、凄腕の営業担当者はトリガーとなる言葉や切り口を詳しく知っているため、彼らの知識をペルソナカスタマージャーニーに落とし込むためのブレストが最も有効です。時間があれば、マーケティング担当者も積極的に商談参加、商談録画の試聴などをしましょう。

その後に、ブレストで出てきた情報を深掘りするために、例えば「Googleトレンド」で実際にニーズの大小全体像を理解。「Googleキーワードプランナー」に候補となるキーワードを入力し、提示される関連キーワードの詳細情報をもとにユーザーのニーズを話し合うなどの方法があるでしょう。

 

(参考:Googleキーワードプランナー

 

またさらに細かいニーズを拾っていくために、関連キーワードを再びキーワードプランナーに入力。そして、表示結果をもとにブレストを実施できると、より潜在的なニーズの把握に役立つでしょう。

そしてブレストで出たキーワードなどをテーマとして置くと、ブログ記事などのコンテンツが作成できるかどうかも考えてみましょう。

ただし、ブログ記事などを書く必要があるのは、ペルソナがブログなどの情報を参照にする場合かつ検索クエリが存在している場合ですので、ブログやコンテンツありきの考えを持つことは間違えですので気をつけましょう。

もちろん、キーワードプランナーの関連キーワードをもとにしたブログ記事の作成は「やってるよ」という方も多いかもしれません。しかし、あくまでもそれはすでに顕在化しているニーズでしかありません。その先の潜在的でよりニッチなニーズを考えるためにも、ブレストを挟んで、顧客が抱きそうな疑問や不安を想像するのが大切です。

また、業界によってはITリテラシーの関係でそもそも検索活動が盛んではない業界も存在したり、BtoB SaaSでいうところのVerticalの業界のような検索クエリが存在し辛いタイプのビジネスモデルも存在します。

そのため、オンラインでのリサーチだけに注力しすぎて、オフラインのことを忘れないことも大切です。

マインドマップ

ロングテールの視点でブログ記事やセミナー(ウェビナー)開催、またオンライン広告や事例など様々なコンテンツを作成する際には、一つの施策に注力するというよりも、より多様なニーズに答えられるようにコンテンツの量を増やしていく必要があります。

特に「ニッチではあるもののニーズがきちんとある」コンテンツの量をどれだけ増やせるかが大切。例えばブログ記事を例に挙げると、「BtoBマーケティング」という1つのキーワードを狙った記事の各見出しに該当する要素を、より深く掘り下げたコンテンツを複数制作するようなイメージです。

「BtoBマーケティング SaaS」「BtoBマーケティング 組織作り方」このような体系的な考え方が重要であり、この考え方はセミナー企画、ウェビナー企画、ダウンロードコンテンツ、メールマーケティングの全ての根幹となる部分です。

そのため、メインとなるコンテンツを閲覧している途中に気になるキーワードがあれば、そこを詳しく補足するような形でロングテールのコンテンツ作りをすることをおすすめします。

ブログ記事であれば、ロングテールコンテンツを作ったら、内部リンクを。サイト内で、ユーザーが求める知識を網羅的に学べる仕組みをつくる必要があるでしょう。

そのためにも、特定のキーワードに関連する周辺情報が可視化しやすい「マインドマップ」を最初につくるのは有効な方法です。マインドマップとは、頭の中で考えていることを脳内に近いかたちに描き出すことで、記憶の整理や発想をサポートしてくれるツール。以下のように、中央の言葉から関連するキーワードをつなげていき、作成するコンテンツの全体像を把握する際に役立ちます。

 

(参考:マインドマップの書き方と4つの活用事例

 

なお、マインドマップは手書きでも良いですが、「XMind」や「MindMeister」などWeb上で作成できるツールもあります。

 

(参考元:XMind

 

(参考元:MindMeister

 

前述したブレストで出たキーワードなどをマインドマップに落とし込みながら、関連性を可視化していきましょう。

ユーザーインタビュー

顕在化しているニーズを把握する際は、キーワードプランナーなどを使って「ユーザーはどういった情報を知りたいと感じているのか」を確認すれば良いかもしれません。

しかしこうした方法は、ユーザーのなかですでに言語化できているニーズを把握する際には役立つでしょうが、潜在的なニーズの確認にはあまり活用できないかもしれません。

そのため、より潜在的でニッチなニーズを見つけ出し、セミナー(ウェビナー)やオンライン広告なども含めて各種コンテンツの制作に活用したいのであれば「ユーザーインタビュー」も有効でしょう。ユーザーが話す、断片的な情報から潜在的なニーズを予想する際に役立ちます。

また、自社の顧客に製品導入前と導入後で、どういった変化があったのかインタビューを行うことで、それを事例コンテンツに落とし込む方法もあります。

 

(参考元:ferret One導入事例

 

事例コンテンツ作成のためにユーザーインタビューを実施することで、思わぬ潜在的なニーズを発見できる可能性もあります。キーワードプランナーなど顕在化しているニーズをもとに作成したコンテンツだけではカバーしきれないニーズを、満たすことにもつながるかもしれません。

なお事例コンテンツは、多種多様な見込み客が自分ごと化できるように業種や規模、さらには導入前の課題などが異なる記事を幅広く用意しておくことが大切。どういったテーマで作成するかは、最初にブレストやマインドマップを使って考えるのも良いですし、ユーザーが話した内容をもとに決定しても良いでしょう。

まとめ

インターネットの発達による購買行動の変化などにより、ニーズが多様化する現在。BtoBマーケティングにもロングテールの視点を盛り込み、多種多様なニーズを満たすような、ニッチでも独自性のあるコンテンツづくりが求められます。

今回紹介したようなブレストやマインドマップ、さらにはユーザーインタビューなどを活用し、そんなロングテールの視点を盛り込んだコンテンツを制作してみましょう。