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アウトバウンドコールとは?インバウンドコールとの違いとコツをご紹介

インターネットによりEメールやSNSが普及した現在でも、電話は営業活動において必須のツールです。

BtoBビジネスにおけるバイヤーの購買行動も完全にオンラインに移行した訳ではなく、2022年現在でも76%のBtoBバイヤーが、新製品購入の検討時には電話での詳細なコミュニケーションを望んでいるというデータも発表されています。

とはいえ、やはりインターネットが顧客の購買行動に与えた影響度合いは、見過ごせるものとは言えません。現代の顧客購買行動により合致する「インバウンド型」のマーケティング手法や営業手法に世間の注目が集まっているのも事実です。

そこで本記事では、そのような「インバウンド型」のマーケティング・営業手法の対比として置かれることが多い「アウトバウンドコール」について、その意味やタイプ別の目的、最新の統計的データなどをまとめて解説します。

アウトバウンドコールとは

アウトバウンドコール(Outbound call)とは、企業から顧客に向けて電話などを用いて発信を行う業務のことを言います。

「アウトバウンド(Outbound)」には英語で「外に向けた〜」といった意味があります。英語圏ではよく使う表現で、例えば電車などで中心街から郊外に向けて走る路線を「Outbound line(下り線)」、反対に郊外から中心街へ向かう「内向きの」路線は「Inbound line(上り線)」といいます。

具体的には、企業側から顧客に向けて製品やサービスの提案などを目的として、能動的に電話をかけることを「アウトバウンドコール」と呼び、反対に顧客から企業にかかってくる電話の対応を行うコール業務が「インバウンドコール」と呼ばれます。

発展の背景

パッと言葉の定義だけを聞くと、「アウトバウンドコールは営業的?」「インバウンドコールはコールセンター的?」という印象を受けるかもしれません。

実際にはそのように単純に分けられるものではなく、掘り下げていくと少々複雑なのですが、両者の背景や歴史を辿っていくと、もともとは両方とも同じくコールセンター業務から派生したものであることがわかります。

日本でコールセンターが一般的になったのは1980年代からと言われていますが、国土が広大であるアメリカではかなり古くからビジネスに電話が取り入れられてきました。

(出典:River B2B)

  • 1950年代
    • アメリカで世界初のコールセンターが設立される。
  • 1960年代
    • 多くのコールセンターが設立され、テレマーケティング戦略が発展
  • 1970年代
    • 世界的にテレマーケティングがBtoC/BtoBを問わずに普及
  • 1980年代
    • テクノロジーやデータベースの発展により、テレマーケティングの体系が変化
  • 1990年代
    • テレマーケティングを用いた悪徳商法が横行。それらから消費者を守るため条例が強化

世界初のコールセンターは、1957年にDialAmerica社によって設立されました。企業の顧客問い合わせの窓口を一本化して請け負ったところ、これが大ヒットします。

1960年代にはアメリカ中の企業にコールセンターが受け入れられるようになり、同様のコールセンター企業が多く設立されました。またこの頃から顧客の問い合わせを受けるだけでなく、顧客のリストに従って企業からアプローチをかける「テレマーケティング」によるセールスの効果が認められるようになりました。

1970年代には、企業がテレマーケティングを営業活動に用いるのはもはや常識となり、BtoC・BtoBを問わず広い分野のビジネスで活用されるようになりますが、この頃はデータの整理などが困難で、マーケティングの戦略はあってないようなものだったようです。

1980年代になるとコンピューターによるデータ管理が可能となり、テレマーケティングのコストパフォーマンスは飛躍的に向上します。企業のテレマーケティングへの平均投資額が、ダイレクトメールの平均投資額を上回り出したのもこの頃です。

ところが1990年代になると、このテレマーケティングの手法を用いた詐欺や悪徳商法が横行するようになってしまいます。これに対して政府が「Do Not Call Registry」などに代表される条例を厳しく制定するようになりました。またこのような悪徳商法への警戒心から「電話営業を嫌う」顧客が多くなったのもこの頃と言われています。

インターネットの普及により、顧客がより能動的に欲しい製品やサービスの情報を取得できるようになった2000年以降は、顧客に自社を見つけてもらうというインバウンドのスタイルを主体としたデジタルマーケティングがより注目されるようになってきています。ただ、アウトバウンドコールを用いた営業活動は依然として一定の効果があるとされており、まだまだ広く使われています。

インバウンドマーケティングについてはこちらの記事でも紹介しておりますので、ぜひ併せてご一読ください。

アウトバウンドコールとインバウンドコールの目的の違い

同じくコールセンターから派生し、営業的な側面も持つようになったアウトバウンドコールとインバウンドコールですが、それぞれどのようなものがあり、それぞれの目的はどのように異なるのでしょうか?

ここではアウトバウンドコールとインバウンドコールのそれぞれのタイプと、目的の違いについて解説します。

アウトバウンドコールのタイプと目的

テレアポ

企業から顧客へ電話をかける、と聞くと、まず「テレアポ」を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか?

日本では営業的なコール業務をまとめてテレアポと呼ぶことも多いですが、狭義でのテレアポの目的はその名の通り「アポイントメントの設定(Appointment setting)」です。一般的なテレアポ業務は顧客へ電話をかけ、自社の営業担当との商談の機会を創出することが主な目的となります。

電話でできる限りのアポイントを設定するのはもちろん、設定したアポイントで営業担当がうまく商談を進められるよう、顧客の心をうまく掴み購入意欲を高めておくというのも重要になります。

テレマーケティング

テレマーケティング(Telemarketing)とは、電話を通して直接的にアプローチを行うマーケティング手法で、その大きな目的はリードジェネレーションです。

リードジェネレーション(Lead generation)とは、自社の製品やサービスを購入してくれそうな潜在顧客(リード)を新規に創出することです。当ブログのこちらの記事でも紹介していますので併せてご一読ください。

テレマーケティングでは、電話を通して自社製品やサービスに対する興味や購入意欲を喚起し、電話相手を潜在顧客(リード)に昇格させることが主な業務となります。

新規リードの創出、という側面から全く新しい相手(こちらの電話を予期しておらず購入意欲もほぼない相手)へ電話をかける、いわゆる「コールドコール(Cold calls)」となりやすいのも特徴です。

テレセールス

テレマーケティングとよく似ているので混同されがちですが、テレセールス(Telesales)はテレマーケティングよりも商談のクローズ、つまり実際に製品やサービスを購入してもらうことを大きな目的としています。そのため、テレマーケティングの先にテレセールスを設置している企業も多いです。

テレセールスでは実際の成約率、コンバージョンレート(CVR)がパフォーマンスの判定にシビアに影響します。そのため「コールドコール」をかける際には個人の営業スキルの影響度合いが非常に高くなる側面を持つほか、すでにリード育成がなされている、いわゆる「ウォームコール(Warm calls)」をかける際にも、精度の高いリスト構築が肝心となります。

市場調査

アウトバウンドコールは既存の製品やサービスを提案・販売するためだけに使われるわけではありません。市場を調査し新製品やブランドの方向性を見定めるためにも活用されます。

市場調査を目的としたアウトバウンドコールでは、ランダムもしくは特定層のターゲットに対して電話でいくつかの質問を行い、ターゲットの素性や置かれている環境、課題や自社もしくは自社製品に対する印象などを調査します。

調査された内容は市場(顧客)のセグメンテーションの分析に活用され、新製品の開発やブランディングの方向性決定などのマーケティング戦略を組み立てることに使われます。

市場のセグメンテーションについては、こちらの記事でも紹介していますのでぜひご一読ください。

インバウンドコールのタイプと目的

カスタマーサービス

カスタマーサービス(Customer service)では、多くの場合既存の顧客からの電話に対しての対応を行います。形態は扱う製品や企業によりさまざまですが、一般的に電話の内容には自社や自社製品に対するフィードバックやリクエスト、質問や見積りの依頼のほか、支払いの確認なども含まれます。

カスタマーサービスにおける最大の目的は、顧客満足度を高めることと、それによる顧客維持率(リテンションレート)の向上です。

顧客の質問やリクエスト、あるいはネガティブなフィードバックに対して適切な対応を行い、顧客の心が自社から離れないようにすることが重要となります。

テクニカルサポート

カスタマーサービスに含まれることも多いですが、自社製品の使用中に起きたトラブルなどに関する問い合わせへの対応を行うテクニカルサポートも、インバウンドコールのひとつです。

テクニカルサポートの目的も、カスタマーサービスと同様に顧客満足度とリテンションレートの向上です。

技術的な対応が必要となるため、より専門性の高い人員の配置が必要となるほか、製品がうまく機能しない、壊れているなど、基本的に顧客のフィードバックがネガティブなところから対応がスタートすることが多いため、対応者には安定した精神力が要求されることもあります。

アップグレードや更新サポート

既存顧客からの電話の中には、現在使用している製品のアップグレードや更新を依頼するもの、もしくはそれらの提案の余地があるものがあります。そのような電話に対して適切な対応を行うのも、インバウンドコール業務のひとつです。

寿命が近づいている製品やサービスを適宜更新してもらうことで、リテンションレートの向上が図れるほか、顧客の状況に応じたアップセルやクロスセルの提案を行うことで全体的な売上げの向上も見込めるため、このようなコールに対する対応も非常に重要です。

企業によってはカスタマーサポート・テクニカルサポートとまとめて製品購入後の既存顧客のアフターケアとして「カスタマーサクセス(Customer success)」という部署を設けているケースもあります。

インバウンドセールス

インバウンドコールの中には、既存顧客だけでなくまだ取引のない潜在顧客(リード)からの問い合わせも含まれ、このようなコールは「インバウンドセールスコール(Inbound sales call)」と呼ばれます。

先に紹介した、企業からの能動的なアウトバウンドコールでのリードジェネレーションと違い、このような問い合わせを行う相手は既に自社や自社製品に対して一定の興味を持っているため、企業はこのようなコールを受けた時点で受動的に新規のリードを創出したことになります。

インバウンドセールス業務では、リードの自社への興味や関心を高めるリード育成(リードナーチャリング)、それからリードの購入意欲がどれほどかを正確に判別するリード選別(リードクオリフィケーション)が大きな目的です。

インバウンドセールスは企業の事業形態や規模などによって、コールセンターが兼務で担っているケースや、インサイドセールスなど専門の部署をおいているケースがあります。

データで見るアウトバウンドコールとインバウンドコールの違い

ここまでアウトバウンドコールとインバウンドコールについて、それぞれのタイプや目的の違いについて触れてきましたが、実際のビジネスシーンでは両者はどのように受け入れられているのでしょうか?

ここでは統計的データに基づく両者の違いについて比べてみましょう。

アウトバウンドコールの統計的特徴

アウトバウンドコールはいまだに効果的なミーティング創出の手段

(出典:RAIN Group

セールスコンサル・リサーチ会社であるRAIN Groupによるリサーチによると、営業員の70%は現在でもアウトバウンドコールを通じて潜在顧客とのミーティングを創出しているそうです。

また同社のリサーチでは、82%のBtoBバイヤーが積極的にアプローチをかけてきてくれた営業員とのミーティングを快く受けると回答しています。

(出典:Novocall

インターネットやSNSを活用したインバウンド型の営業が普及しており、従来のアウトバウンドコールの効果が薄れてきているのでは?という疑問を払拭する結果となっています。

ただ、このリサーチではアウトバウンドコールの結果は1位のEメールに次ぐ2位です。同じアウトバウンドでも電話からEメールへと営業手段が移行している、というようにも読み取れます。

受注まで辿り着くアウトバウンドコールはわずか

アメリカのセールスコンサルティング会社であるBrevet社によるリサーチによると、受注までたどり着く電話営業のうち、約80%が5回以上のコールを必要としたという結果が出ています。

しかし同じくアメリカのセールスオートメーションツール開発会社であるSpotio社によるリサーチでは、44%の営業員はわずか1回のアウトバウンドコールでリードへのアプローチを諦めてしまうそうです。

また、The Bridge Grou社によるとアウトバウンドコールを主とする営業員が1日にかけるコールドコールは平均45件で、そのうち営業活動に有用となるコールは平均5.1件だそうです。

このデータからは、アウトバウンドコールを成功させるためには1日・1リードあたりに多くのアプローチ(リソース)が必要になるということのほか、アウトバウンドコールを行う営業員への精神的ストレスは大きく、実際に必要な量のアプローチを行うことは非常に難しい、ということが読み取れます。

前述した通りアウトバウンドコールの効果は依然として大きいものですが、その分気をつけないと営業リソースやコストを大きく消費してしまうかもしれません。

インバウンドコールの統計的特徴

インバウンドセールス組織による売上げ効果の期待値は高い

アメリカの大手テクノロジー企業IBM社は、自社のインバウンドソーシャルセリングプログラムにより、売上げを400%も向上させたと発表しています。

またアメリカの経営誌であるHarvard Business Reviewによると、インサイドセールス部隊の設置は従来のフィールドセールスのみの営業活動に比べ、営業にかかるコストを40-90%削減できるとされています。

どちらのデータも、インバウンドコールを含むインバウンド型のマーケティング・営業戦略の企業の売上げ向上に対する期待値の高さを実証するエビデンスとして、充分なものと言えるでしょう。

顧客が自ら製品やサービスのリサーチを行うようになっている

アメリカのリサーチアナリストファームForrester社の記事によると、インターネットやSNSが発達した昨今では顧客は企業の営業員による製品提案よりも自ら率先して行う製品やサービスのリサーチに重きを置くようになっていると言います。

それを実証するようにGartner社のリサーチでは、BtoBにおける購買行動のうち、バイヤーがサプライヤーと接触する時間は全体のたった17%に過ぎないと発表しています。

(出典:Gartner

これは、顧客の情報取得能力が以前と比べ高くなっており、サプライヤーの営業員からの提案ではなく、自らの手で得た情報をより信頼して購買行動を起こしていることを顕著に表しています。

さらにHubSpot社によるリサーチでは、BtoBソフトウェアの購入検討時にバイヤーが参照する情報のソース元として、ソーシャルメディア上の口コミやネット記事が、サプライヤーの営業員からの提案を大きく上回るという結果も出ています。

(出典:HubSpot

つまり、昨今では顧客は企業のアウトバウンドコールによる提案でサプライヤーを決めているというよりも、自ら必要な情報をリサーチしてサプライヤーを絞り込み、購入の最終的な検討をするために選択した企業に問い合わせをかける、というのが主流となってきているということです。

そのため、自社に問い合わせをかけてきた顧客は必然的に購入意思の高い「ホットリード」となる可能性が高くなります。そのようなホットリードを逃さず効果的に受注に繋げるインバウンド型の活動が、今の時代に合っていると言えるかもしれません。

まとめ

アウトバウンドコールは古くからある営業の手法のひとつですが、売上げへの期待値はまだまだ高いとされており、依然として多くの企業で活用されています。

とはいえ、飛び込み営業と同じくアウトバウンドコールが一般的に好まれない傾向にあるのも事実。また、インターネットの普及により顧客の購買行動モデルには大きな変化が起きています。長く成功をおさめてきた営業手法も、変化する顧客行動によっては今後通用しなくなるかもしれません。

インバウンドの活動、特にインバウンドコールやコンテンツマーケティングを積極的に取り入れ組み合わせることでコール活動はしやすくなるかもしれません。