レプトのBtoBマーケティングのブログ|株式会社LEAPT(レプト)

なぜ新規開拓が必要なのか?その意味とメリット、具体的な営業方法をわかりやすく解説

企業の戦略として、既存のお客様からの売上げで事業継続ができればよいのであれば新規で開拓していく必要性は高くありません。しかし、新規で事業を立ち上げる、あるいは企業を成長していくためには、多くの場合新規の事業機会を開拓していく必要があります。

とりわけ市場の変化が激しく、未来予測が難しいVUCAといわれる時代においては、事業存続を図るため、新規開拓の重要性も高まっているでしょう。

『箱根駅伝2022』で、2年ぶり6度目の総合優勝を果たした青山学院大学の原晋監督は、中国電力では蓄熱式空調システムを売っており、「伝説の営業マン」だったとのこと。

監督たるもの『営業マン』たれ」とメディアに積極的に露出し、Twitterで自ら発信を続けています。選手の管理には目標管理シートを提出させ、自立した選手を育成し、成果を出し続ける見事なマーケティング・マネジメント力であり、ある意味では「常に新しい領域を開拓し続けている」といえるでしょう。

50代半ばの方ですが、もしそのまま企業に残っていても、営業部門を率いて時代に合わせてSNSをはじめ、巧みな新規開拓手法を戦略的に行っていたでしょう。

しかし、ビジネスシーンでは、営業手法もマーケティング手法も時代とともに変化します。昔ながらの手法にも良いところはありますが、時代の変化に合わせて新しい手法も取り入れていかなければ、本来上がるはずの売上げを逃してしまいかねません。

そこで本記事では、基本に立ち返り、BtoB企業の新規開拓について解説します。「そもそもなぜ新規開拓は必要か」「現代の新規開拓手法」についても紹介しますので、ぜひお役立てください。

新規開拓とは?

新規開拓(New Business Development)とは、企業が新たな顧客、市場、ビジネスチャンスを探し、それらを開発・活用して成長を図る営業活動や経営戦略を指します。具体的には、以下のようなものです。

  • 新たな製品やサービスの開発
  • 新しい市場への参入
  • 新規のパートナーシップの締結
  • 新たな販売チャネルの設立

など

つまり、既存のビジネスの枠を超えて、新たな事業機会を追求する活動を含むといえるでしょう。

新規開拓の目的は「自社の成長と収益性の向上を図ること」です。これは、新規顧客の獲得、新製品やサービスの販売、新たな収益源の創出によって達成されます。新規開拓は一般的にリスクが伴いますが、成功すれば企業の競争力を大きく高め、長期的な成長を支える重要なドライバーとなります。

対義語「既存営業」とその違い

新規開拓は新たな顧客を見つけることに焦点を当てるのに対し、「既存営業」はすでに関係を築いている顧客との関係を維持し、深めることに重点を置く点で異なります。それぞれの違いについてまとめると以下のとおりです。

 

新規開拓

既存営業

目的

新たな顧客を見つけてビジネスの機会を増やすこと。

既存の顧客との関係を深め、リピート率アップやアップセル、クロスセルを推進すること。

アプローチ方法

新たな見込み客を特定し、認知獲得、興味関心の誘因すること。

既存の顧客のニーズを理解し、「製品やサービスの価値を最大化」「顧客満足度アップ」を図ること。

スキルセット

  • 交渉力
  • 説得力
  • リードの獲得能力
  • コールドコールスキル
  • マーケティングスキル

など

  • カスタマーサクセススキル
  • 長期的な顧客管理能力

など


ただし、上記の定義はビジネスモデルや業界特性によって変動します。具体的な手法や求められるスキルセットについても同様でしょう。

新規開拓の営業がもたらすメリット

BtoB企業にとって新規開拓はどのようなメリットをもたらすのでしょうか。具体的には、以下のようなものが考えられます。

  • 売上基盤を拡大できる
  • リスク分散につながる
  • 新たな「市場」を開拓できる

それぞれについて、個別にみていきましょう。

メリット1:売上基盤を拡大できる

企業の売上げは、以下の公式で成り立ちます。シンプルですが売上げ拡大は「一社あたりの売上げをあげること」と「顧客数を増やすこと」につきます。

そもそも「売上げ」とは、企業が製品やサービスを販売することによって得た収入の総額であり、一般的には定期間(通常は1四半期または1年)における総収入のこと。売上げは、自社の業績を評価する基本的な指標であり、その後の成長につなげるためには安定的に伸ばしていかなければならないといえます。

  • 総売上げ = 顧客数 × 顧客ごとの売上げ

顧客数は新規開拓をしなければ、減少していくリスクが常につきまといます。日本のBtoB企業、特に伝統的な大企業は古くから付き合いのあった顧客との取引がメインであるケースも少なくないでしょう。

しかし、現代においては、既存顧客に依存するだけで安定的な売上げを維持できるとは限りません。

MATRIX MANAGEMENTのDavid Skok(デビッド・スコック)氏が運営する「for Enterpreneurs」では、2017年にSaaS系企業150社以上を対象とした調査で、SaaS企業における年間の平均解約率(売上げベース)は13%であったと発表されています。

(出典:for Enterpreneurs「2018 Private SAAS Company Survey- Part 2」)

実際には事業規模や業種によって変動しますが、指標の1つとして参考になります。同データをいい換えると「毎年売上げの13%以上は新規顧客からの売上げである」と捉えることが可能。

新規顧客が売上げ全体で占める割合は少ないように思われるかもしれません。しかし、これが1年、2年と続いていくと仮定すると、自社事業全体に与えるインパクトはさらに大きくなっていきます。

つまり、多くのBtoB企業にとって、新規顧客の開拓は新たな売上基盤の確立に貢献し得ると定義できるのです。

ただし、その重要度は「自社のビジネスモデル」によって異なります。SaaS型ビジネスモデルの場合、チャーンを防げば新規量が少なくとも、ある程度利益を維持できるでしょう。しかし、買い切り型のプロダクトを提供している企業は、常に新規顧客を獲得し続ける必要があります。

メリット2:リスク分散につながる

ビジネスにおいては、収益源の分散によるリスクヘッジは基本の1つです。実際に、顧客1社への依存率は30%を超えると要注意といわれているように、少数の企業に頼っていると、その大型クライアントがなくなったときにダメージが大きくなります。

変化が激しく、予測困難な「VUCA時代」といわれる現代においては、既存顧客のみに依存するのは危険が伴います。例えば、新型コロナウイルスの感染拡大による情勢不安を予期できた方は、どこにも存在しないでしょう。

株式会社ネオマーケティングが行ったコロナ禍前後のBtoB企業のビジネス事情に関する調査では、「既存顧客の取引額が減少した」が67.3%、「既存顧客の取引数が減少した」と答えた企業は52.3%だったと判明しています。

(出典:PR Times「BtoB企業のマーケティング施策に関与する1000人に聞いた『コロナ前後のBtoB企業のマーケティング活動に関する調査』」)

2023年6月現在は、ウクライナ危機による世界的な情勢不安も続いています。このような時代に、自社の存続性を図る上では、新規開拓によるリスクの分散が不可欠なのです。

メリット3:新たな“市場”を開拓可能

新規開拓への挑戦は、顧客レベルではなく、市場レベルでも検討しましょう。ビジネスにはメガトレンドがあります。新しい市場が生まれ、その中で大きく伸びる企業が登場するのが通例です。2000年代であればインターネット関連企業、2010年代でいえばSaaSもメガトレンドにのった業界のひとつでしょう。

大きく伸びる市場が熟しきる前に新規開拓を行えば、市場の成長、顧客の成長とともに自社も成長できるでしょう。

何も凄い技術を持った企業だけが、新規市場で成功するとは限りません。アメリカのゴールドラッシュで最も富を得たのは、金を掘っていた人ではなく、「ジーンズ」「ツルハシ」を売っていた人。つまり、周辺産業にとっても、新市場への参入は大きなチャンスなのです。

では、BtoB企業はどのように新規市場への開拓を進めればよいのでしょうか。これについては「知の探索」「知の深化」を組み合わせた「両利きの経営」という考え方があります。

両利きの経営とは、既存事業・顧客について「探索」するだけでなく、「遠くの知」を幅広く拾いつつ、組み合わせていく「探索」を、「両利きのように」行っていく経営スタイルです。

世界標準の経営理論』の著者でも知られる早稲田大学大学院経営管理研究科教授の入山 章栄氏は、両利きスタイルの経営はイノベーションを起こしやすい傾向があると述べています。

(出典:マーケットワン・ジャパン合同会社「【セミナー記事】後編:日本企業はどうイノベーションに向き合っていくべきか?」)

ただし、日本のBtoB企業で、このレベルの新規開拓を行っていくためには、個人やチーム単位でなく、組織戦略や文化レベルでの変革が求められるでしょう。

BtoB企業が新規開拓を組織的に行う方法

新規開拓営業には、さまざまな手法があります。デジタル社会となった現代、デジタルとリアル、マーケティング・インサイドセールス・営業で新規開拓を行い、収益を上げていくことが重要です。

近年、日本のBtoB企業では、福田 康隆氏の著作『THE MODEL(MarkeZine BOOKS) マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセスにもあるような分業制が採用されているケースも存在します。

(出典:Amazon

新規開拓でも「マーケティング」「インサイドセールス」「営業」の各部門が新規リードにアプローチを行うことで、案件化の確率をあげられるでしょう。

ただし、分業による新規開拓は「各部門が異なる顧客情報」を抱えかねないという点には留意が必要です。さまざまなチャネル、あらゆる担当者から収集される新規見込み客に関する情報を有効活用する上では、データを自社内で統合・管理する体制作りも必要。

つまり、BtoBにおける新規開拓は、部門単位で行うものではなく、各部門が連携をとって行うことが重要なのです。

以上を踏まえて、各部門での新規開拓の方法について個別にみていきましょう。

マーケティングによる新規開拓 

ここからは、マーケティングによる新規開拓の手法を紹介します。よくある施策としては、次のようなものが考えられるでしょう。

  • 展示会・イベント出展
  • Webコンテンツの制作
  • 広告出稿
  • 共催セミナー・ウェビナー
  • メディア露出

次項より、それぞれについて解説します。

展示会・イベント出展

見本市、展示会、カンファレンス、セミナー、ウェビナー開催は、多くの見込み客と直接出会える新規開拓の場です。自社単独ではなかなか出会えない見込み客に、ブース内や会場でそのまま商談できるケースもあり、合理的な新規開拓手法だといえるでしょう。

もっとも、イベントで集めた名刺、顧客情報を放置していると、成果は今ひとつです。名刺をマーケティング部門と営業部門の担当に振り分けて、継続して営業活動をしていくことが求められます。

展示会やイベントへの参加のニーズは、新型コロナウイルスが5類に移行した現在ではさらに高まっています。

株式会社展示会営業マーケティング が、全国の23歳から60歳のビジネスパーソン300名を対象に、「コロナ5類移行における展示会への来場」に関する調査を実施したところ、2022年3月時点と比べて「展示会に行きたい」との回答が、20ポイントの増加となったとのこと。

(出典:PR Times「『コロナ5類移行』展示会への来場意識調査49%が『行きたい』。1年前より20ポイント増加。」)

今後は、展示会やイベントにおける新規顧客との接点が、さらに増えると予想できます。

Webコンテンツの制作

筆者は常々コンテンツマーケティングの重要性を説いていますが、コンテンツマーケティングとは、いわばマーケティング部門が行っている「新規開拓業務」なのです。

時間がかかりやすく、集めたリードから商談して受注になる率も、アウトバウンドより低いです。しかし大量のリードが集められるため、成功すれば売上げが大きく伸びます。

Webコンテンツによる新規開拓は、企業ブログやオウンドメディアを中心に行われます。見込み客層にとって価値ある役立つコンテンツを作成し発信し続け、興味関心を持ってもらい、継続して情報を提供していくことで信頼され、問い合わせにつなげるステップです。

ウェブコンテンツの長所は、一度制作してアップすると、あとは半永久的に情報を発信し続けてくれるところです。長期的に見れば広告よりも費用対効果がよくなり、企業の資産となります。

注意点としては、必ず最初に見込み客の解像度を高くしておくこと。関係ない人に訴求しても成果が上がらないので、必ずペルソナを設定し、見込み客が検索して読みたがりそうなウェブコンテンツを作成することが肝心です。

広告出稿

広告出稿も、見込み客の対象を絞り込んでリーチできる新規開拓の手法です。業界誌や業界新聞であれば、読者はほぼ見込み客かライバル企業などの業界関係者と想定できるため、アプローチしたい層に訴求できる確率も高いことでしょう。

近年は、紙媒体ではなくデジタル広告による新規開拓もスタンダードな手法になっています。アナログ広告は効果測定が難しい反面、デジタルの場合、クリックされたかどうかがわかるため、各メディアの費用対効果が出しやすいという長所があります。

選択肢となるデジタル広告の例としては、以下のとおりです。

  • 検索エンジン型広告:GoogleやYahoo!などの検索エンジンで検索したキーワードに対応して出稿できる検索エンジン型広告。
  • SNS広告:フェイスブックやTwitter、フェイスブック、Twitter、LinkedIn、YouTube等の投稿をもとに自動的に生成される広告。
  • ディスプレイ広告:Webサイトに常に表示されるバナー広告。検索キーワードに応じて表示可能。

マーケティングはさまざまな新規開拓アプローチを行いますが、直接顧客に会って営業するわけではありません。以下の図のように最終的には問い合わせにつなげてもらい、インサイドセールス・営業部門にリード情報をパスすることで、最終的な成約獲得を目指します。

問い合わせ自体はあらゆるチャネルから寄せられます。前述のWebコンテンツも含め、デジタルを介した新規開拓では、最終的に問い合わせフォームを経由するケースが多いため、フォームの入力率を上昇させる施策も忘れないようにしましょう。

共催セミナー・ウェビナー

他の企業や業界の専門家と共催でセミナーやウェビナーを開催することは、自社の専門性を示すとともに、より広範な新規リード獲得につながります。共催企業のネットワークも通じて新たな顧客を開拓できるでしょう。

ウェビナーやオンラインセミナーの主催は、一般的にはマーケティング部門の役割。ただし、BtoBにおいてはインサイドセールス・営業もこれらの活動に積極的に関与し、集客や顧客情報の活用の面で連携するケースも多々あります。

例えば、以下のような領域で部門間が連携を取れば、より新規開拓の確度を高められるでしょう。

  • ウェビナーの企画・実施
  • 参加者のフォローアップ
  • リードジェネレーション

BtoBにおける新規開拓は「全社的な目線合わせ」が往々にして求められるのです。

メディア露出

業界の出版物、ニュースサイト、ブログ、ポッドキャストなどに対する自社の露出を高めることも新規開拓に有効です。プレスリリースの発行、記事の寄稿、インタビューやポッドキャストへのゲスト出演などを通じて、自社の専門知識を共有し、ブランドの認知度を高めることができます。

BtoBマーケティングの定石 なぜ営業とマーケは衝突するのか?』で知られる株式会社WACUL代表の垣内 勇威氏は同著内で「『BtoBマーケティング』といえば『WACULの垣内』と想起してもらいたいがために、私はこの本を執筆しています」と述べています。

(出典:Amazon

このような出版につなげるためには「業界内での権威性」「出版物がある程度売れる保証」などが必要ですが、一度露出に成功すれば、新規獲得の効果は大きいでしょう。

インサイドセールスによる新規開拓

インサイドセールスが新規顧客の開拓を行う手段として、次のようなものがあげられます。

  • コールドコール
  • Eメールマーケティング
  • ソーシャルセリング

以下より、個別にみていきましょう。

コールドコール

コールドコールとは既存顧客や見込み顧客以外の、現時点では「まったく何のつながりを持ってない相手に」対して架電する手法です。

直訳すると「冷えた架電」となります。つまり、資料請求者やメルマガ登録者など、すでにある程度ニーズが顕在化した「ホットな層」ではなく、自社に関する興味関心度合いの薄い層にアプローチすることで、新規開拓につなげることが狙い。

コールドコールは、あらかじめリスト化された「これから狙って行きたい企業群」に対して実施するのが基本。特定の業界の、特定の役職に焦点を当ててコールすると効果的です。

一例として、テレマーケティングの支援サービスを展開する株式会社アイアンドディーの場合、代表電話では詳細情報獲得率が55%とのこと。

(出典:株式会社アイアンドディー

コールドコールの成功には、見込み客のビジネス、業界、役職などを事前に調査して理解し、それに基づいて自社の製品やサービスの特長と価値を具体的に伝える能力が求められます。加えてアプローチ相手の時間も尊重した上で、明確で短いコミュニケーションも心掛けるようにしましょう。

Eメールマーケティング

インサイドセールスが行うのは、「テレ(遠隔)」からのアプローチ全般ですので、メールマーケティングも含まれます。

インサイドセールスは主にマーケティングが獲得したリード情報を選別、案件化することが役割。そのため、新規リードへのメール営業によるフォローを行い、よりホットになったタイミングで営業に手渡すことで、自社における新規開拓に貢献します。

「1対1のパーソナライズされたメール」「一斉送信型のメール」のどちらも選択肢として存在します。ただし、どちらの場合も、件名や内容、CTA(行動喚起)の工夫が求められる点は同様です。

株式会社WACULが公開している調査報告によると、クリックしてもらえるメールのベストプラクティスは「①:メール本文のサマリーを具体的に表現した件名」「②:メール本文のファーストビューへの件名に関する詳細情報の記載」「③:クリッカブルなCTA」とのこと。

(出典:株式会社WACUL「クリックしてもらえる可能性が高いメールの件名と本文とは?メールのベストプラクティス研究(Vol.1)」)

このように、配信メールの効果向上を図る上では、新規アプローチ先のペルソナを明確に設定しましょう。

ソーシャルセリング

ソーシャルセリングは、SNSを活用して潜在的な顧客との関係を築き、自社商材・サービスの訴求を行なっていく手法を指します。ソーシャルセリングは、情報を共有し、質問に答え、ソーシャルネットワークを通じてリード(見込み客)と直接対話する形で行われます。

ソーシャルセリングは伝統的な「コールドコール」のような営業手法とは異なり、個々の顧客との直接的な関係性を築く点が特徴。

LinkedInやTwitterなどのプラットフォームで直接コミュニケーションをとり、有益なコンテンツを共有することでリレーションを深められれば、新規開拓につなげる余地は十分にあるでしょう。

実際に、米LinkedInの公表しているデータによると、ソーシャルセリングを利用している企業はそうでない企業よりも45%も営業機会が多くなり、販売ノルマを達成する確率が51%向上するとのこと。

(出典:LinkedIn

このように、多くの接点構築を果たせるソーシャルセリングは、有効な新規開拓の手段といえます。

営業による新規開拓

日本企業の営業部門の新規開拓では、プッシュ型・プル型の両方を活用するシーンが多々あります。具体的には、以下のようなもの。

  • 架電営業
  • 問い合わせ営業(インバウンド営業)
  • 訪問営業(フィールドセールス)
  • フォーム営業
  • リファラル営業

ここからは、個別にみていきましょう。

架電営業

架電による新規開拓は、インサイドセールスだけでなく、営業にとってもスタンダードなアプローチ手法です。アポイントをとるためのテレアポ営業もあれば、電話だけで完結する営業もあるなど、商材によってスタイルは異なります。

「架電営業」のメリットは、最初から営業リストを絞り込める上、機動力がある点。今日、素晴らしく伸びそうな業界を発見したら、すぐリストを100件ほど作成して、電話でアポイントを取れば短期で商談につなげられるスピード感は魅力といえます。

株式会社Scene Liveが、コロナ禍で年間売上げ目標の100%以上を達成し、新規開拓のテレアポを実施している営業マン109名に行った調査では、コロナ禍におけるテレアポについて40.3%が「非常に重要」、46.8%が「やや重要」と回答しています。

(出典:PR Times「【コロナ禍でも結果を出し続ける営業パーソンへ調査】87.1%が、コロナ禍での営業で『テレアポ』を重要視 更に、9割以上が『営業リスト分析』の重要性を実感かつ、分析による売り上げアップも実感」)

現在、新型コロナウイルスは5類に移行していますが、新規開拓を行う際のテレによるアプローチは未だ重要と考えられるでしょう。

デメリットはアポ獲得の確率が低いことです。業界によりますが、BtoBでは100件かけて2〜5件程度というケースが多いのではないでしょうか。近年は会社から固定電話をなくす動きや、在宅ワークで担当者とつながりにくいなど、さまざまなハードルがあります。

問い合わせ営業(インバウンド営業)

Webや、広告、DM、チラシなどをきっかけに問い合わせてくる見込み客に対する営業です。メールフォームからの問い合わせ、直接電話がかかってくる問い合わせがあります。すでに、自社に対する興味・関心を持っている見込み客ですので、テレアポ営業、飛び込み営業よりは自社に好意的と想定可能です。

HubSpotによる調査では、BtoBソフトウェアの購入検討段階でバイヤーが参考にするのは「SNS上の口コミやネット記事」であり、サプライヤーの営業担当者からの提案を大きく上回ると判明しています。

(出典:HubSpot「Happy Customers Are the Biggest Marketing Opportunity of 2022」)

この結果も踏まえると、インバウンドの営業に注力することは、新規開拓を加速させる上では重要な取り組みといえます。

訪問営業(フィールドセールス)

対面営業は、アポイントをとった上で、顧客先を訪問して行う営業スタイルです。BtoBの場合、名刺交換から始まり1商談1時間くらい時間をかけるのが一般的でしょう。

コロナ禍以降は、対面営業にZoomなどを使ったオンライン面談が加わり、リモートによる対面営業は、手軽に活用できることもあり、瞬く間に普及しました。

HubSpot日本法人の2019年12月時点の調査では、すでに「訪問型営業とリモート営業のどちらが好ましいか」という問いに、買い手側は「リモート営業が好ましい」と考える人(38.5%)がトップの回答。顧客の意識は変化しているとわかるでしょう。

(出典:HubSpot「日本の営業に関する意識・実態調査2021の結果をHubSpotが発表」)

新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行後となる2023年現在においては、徐々にリアルでの対面営業のニーズも戻って来つつあるように感じられます。

とはいえ、リモートでの営業も利便性が高いため、今後はケースバイケースで、リアルとリモートの営業の使い分けによる新規開拓がスタンダードになっていくと考えられるでしょう。 

リファラル営業

「リファラル営業」は、既存の顧客やパートナーから新規の顧客を紹介してもらう形の営業手法で、B2B環境における新規開拓にも有効に活用できます。

リファラルによって紹介された見込み客は、自社にすでに関心を持っているという前提があるため、契約率(見込み客が実際の顧客になる割合)が一般的に高いとされています。

自社の既存顧客から新規顧客の紹介を期待できない場合は、リファラル営業プラットフォームを活用するという選択肢もあるでしょう。例えば、株式会社顧問バンクが運営するマッチングプラットフォーム「顧問バンク」などです。

(出典:顧問バンク

企業と顧問のマッチングプラットフォームで、2023年6月時点で9000人超となる登録顧問の人脈をリファラル営業に活用することができます。

外部パートナーによる新規開拓

リアルであれデジタルであれ、営業・マーケティングで結果を出すまでには時間がかかります。「営

業担当を育てる人がいない」「資金的に余裕がない、売上げを上げてくれるまで長期間待てない」ような企業は、外部チャネルパートナーによる新規開拓を視野に入れましょう。

外部チャネルパートナーの協力があれば、自社の製品・サービスを市場に投入する際に、有力なチャネルに働きかけて効果的な施策を行えます。BtoB企業は元来、直販だけでなく、代理店などの外部パートナーと協力した上でビジネスを拡大してきた背景があります。

では、新規開拓を依頼できる外部パートナーは、どのような企業が挙げられるのでしょうか。大きく分類すると、以下のとおりです。

  • リセラー(代理店)
  • アフィリエイト
  • 営業・インサイドセールス代行
  • コンサルタント
  • OEM契約

次項から、個別に解説します。

リセラー(代理店)

リセラー(代理店)とは、再販業者 や販売代理店のことを指します。つまり自社では製品・サービスを作らず、仕入れて販売する企業です。

BtoBの場合、専門性が高く、見込み客の検討サイクルも長いため「ソフトウェアの代理店」「建設機械の代理店」「広告代理店」といった形で、業界ごとに特化している傾向があります。

自社で営業スタッフを雇わずとも、代理店に依頼できれば、1プロダクトにつき10〜40%の販売マージンで新規顧客を開拓していけるでしょう。

どのようなリセラー(代理店)が適しているかは、自社製品・サービスの専門性や価格、見込み客が抱えるニーズが影響します。

代理店を探す方法としては、直接企業に打診する。あるいは求人サイトや代理店募集サイト、ビジネスマッチングサイト掲載などの方法があります。

マッチングサイトの例を挙げれば、AI翻訳つきグローバル対応ビジネスマッチングサイト「FranDo」などです。

(出典:FranDo

FranDoはビジネスマッチング、セールスアクティビティを支援する総合プラットフォームサービス。電話番号やメールアドレスを公開することなく、マッチングしたユーザーやビジネスとコミュニケーションが可能。費用をかけずに、新規開拓を支援してくれる代理店を見つけられます。

アフィリエイト

アフィリエイトは、企業や個人がWebサイトで製品・サービスの広告を掲載、紹介し、リンクのクリックに応じて手数料が発生する仕組みです。

サイト、ブログ運営者を「アフィリエイター」とよびます。アフィリエイターを自社でいちから探す必要はなく、アフィリエイト広告プラットフォームの「A8.net」「afb」などで掲載し、募集可能です。

アフィリエイターは、リンクがクリックされると課金され、報酬を得られます。2010年代には、アフィリエイトで稼ぐために中身の薄いブログが乱立したこともあり「なんとなく怪しい」という印象もありますが、実際は大手企業も活用している施策です。

例えば、HubSpotは、ブロガー・レビューサイトといったコンテンツ作成者向けの取り組みとしてアフィリエイトパートナーのプログラムを実施しています。

(出典:HubSpot「Become a HubSpot Affiliate」)

このプログラムでは、アフィリエイターは自分のWebサイトやブログ、SNSなどのチャネルでHubSpotの製品やサービスを推奨します。これにより、アフィリエイトパートナーのリンクを経由してHubSpotの製品を購入するなどの特定のアクションが発生すれば、報酬を得られるようになってます。

アフィリエイトプログラムは、企業が新規顧客を獲得するための一つの方法です。HubSpotのようなSaaS系企業とは特に相性がいいと考えられますので、積極的に検討しましょう。

営業・インサイドセールス代行

営業代行会社、アポイント取得会社を活用することもできます。営業代行会社は代理店とは違い、ベンダーの社名で営業して成果を上げてくれます。ただし、月何十万円という固定費用がかかるケースが一般的です。企業によっては自社の営業部門立ち上げ支援まで守備領域なので、割り切って自社営業部門の立ち上げに活用してもよいでしょう。

アポ獲得代行は派遣会社やコールセンター、専門業者などに依頼でき、コール数×単価、成果報酬型の費用(アポ1件につき1〜2万円)、固定+コミッションなどの価格体系があります。

例えば、日本のBtoB企業が営業代行を依頼する企業として、米ボストンのMARKETONE INTERNATIONALの日本拠点であるマーケットワン・ジャパン合同会社のサービスなど。

(出典:マーケットワン・ジャパン合同会社

同社の提供するテレサービスは、ターゲットとする企業のキーマンとの直接接点をつくり、潜在ニーズ情報を取得した上で新規開拓につなげられるというものです。具体的には、以下のような業務を依頼可能。

  • CXO・経営層へのアプローチ
  • キーマンリスト作成
  • 潜在ニーズヒアリング
  • 戦略アカウント攻略支援
  • 多言語キャンペーンの実施
  • インサイドセールス構築支援

など

このように、自社事業と親和性の高い新規リードを獲得するためには、市場特性や市場内企業への理解も必須ですので、専門的な知見を持った専門家に依頼するのが効果的です。

さらに、外部専門家に依頼する場合、アプローチする「アカウント」の解像度(企業の業界・規模、担当者の役職、見込み度)などをしっかり設定しましょう。

ビジネス環境の変化が速い時代は新規開拓もスピードが命。自社で営業部門を立ち上げるのには時間もコストもかかるので、外部パートナーを柔軟に活用していく姿勢が大切です。

コンサルタント

コンサルタントの活用も新規開拓を図る上では有用な選択肢でしょう。コンサルティング企業は、多くの業界を横断して支援を展開しており、営業戦略や顧客エンゲージメント、製品開発、マーケティングなど、新規開拓に必要な多くの領域についての専門的な知識と経験を有していることが理由です。

外部コンサルタントは戦略策定だけでなく、実行段階でもサポートを受けられます。新規ビジネスに関するトレーニングやマーケティングプロセスの整理、新規パイプラインの管理などもアドバイスを受けることで、市場レベルでの新規開拓も可能。

例えば、大手コンサルファームのアクセンチュアは新規価値創出を中心とした戦略策定案件のコンサルティングも提供しています。

同社のサービスではコア事業の徹底した効率化による「原資獲得」と、Disruptionを機会としてとらえた「新規価値創出」のバランスをとりながら、経営リソースや投資の配分を行っていく手法を採用しているとのこと。

(出典:アクセンチュア「プロジェクト事例:大手メーカー新規ビジネスの創出支援」)

これは奇しくも、前述した両利きの経営に沿った手法でもあります。

OEM契約

OEM(Original Equipment Manufacturer)契約とは、ある企業(OEM供給企業)が製品や部品を製造し、それを他の企業(OEM購入企業)が自社のブランド名で販売することを定めた契約のことです。

OEMも企業が新たな市場に進出するための1つの手法であり、新たな販売チャネルや顧客基盤を開拓する際に有効な手段となり得ます。

例えば、MicrosoftはWindowsオペレーティングシステムをOEMとしてデル・テクノロジーズに供給することで、デルのPCを購入する全ての顧客に対して、自社製品を提供する新規チャネルを開拓したといえます。

(出典:デル・テクノロジーズ

ただし、OEM契約の成果は具体的な契約内容、自社製品の性質、市場環境などによって大きく左右されます。そのため、具体的なビジネスゴールとの整合性を確認しながら、慎重に取り組む必要があります。

まとめ

BtoB企業が新規開拓を行う目的とは、「自社の成長と収益性の向上を図ること」に他なりません。

ウイルスによるパンデミックや国家間の紛争、AIツールの台頭など、予測不可能な変化が起こり続ける現代においては、常に長期的な視野に立った事業展開が求められるといえます。

ただし、BtoB企業における新規開拓は、決してマーケティングのみが行なうものではありません。「自社がアプローチするべき新規顧客」と適切に接点構築を図るためには、インサイドセールス・営業といった各部門の連携も不可欠です。

もちろん企業には予算の限界があります。スタートアップ・ベンチャーは、人件費や宣伝費、営業マンを育てる時間も不足しています。その場合は外部チャネルパートナーとの提携も検討しましょう。マーケティング担当者が一人しかいなくても、営業部門が現在なくても、自社でできる新規開拓手法はあるはずですので、広い視野に立った判断が大切です。