「営業力」という言葉から連想する姿はどのようなものでしょうか。ともすれば、緩急のついた明快なトークを駆使し商品・サービスの成約に取り付ける姿を想像する方もいるかもしれません。
一方で、「営業は喋る力よりも聞く力の方が大切だ」という意見も聞かれます。私たちは、こちらの方が頷ける部分も多いと感じています。
なぜなら、あらゆるセールス活動は「顧客ニーズ」に先立つものでなければ、「単なる押し売り」となってしまうからです。それを踏まえると、まずは「聞く力」の方が営業力の土台として求められるのではないでしょうか。
そこで役立つのが、伝統的な営業手法として継承されてきた「SPIN話法」です。SPIN話法は約50年の歴史を持つ「聞く力」の集大成ともいえるテクニック。その体系立った質問のフレームワークは、営業はもちろん、インバウンド型の波が大きくなりつつあるマーケティング領域でも非常に役立つ知見です。
今回は、そんなSPIN話法の4つの質問タイプの詳細や、実際の運用方法について詳しく解説します。
SPIN話法は、顧客との対話を通じて信頼関係を築きながら、自然な流れで商談を進める体系的な営業手法です。1988年にイギリスのセールスコンサルタント、Neil Rackham(以下、ラッカム氏)が著書『SPIN Selling』で提唱し、以降30年以上にわたって世界中の営業現場で活用されています。
(出典:Amazon)
この手法の特徴は、4つの段階的な質問を通じて、顧客自身に課題の本質と解決策の必要性に気づいてもらうことです。SPIN話法では、以下の4つのカテゴリーに分類された質問を戦略的に活用します。
このアプローチは、従来の「製品の特徴を説明して売り込む」という手法とは一線を画し、顧客との対話を重視する現代的な営業スタイルの先駆けとなりました。
(出典:Lucidchart「The 4 steps to SPIN selling」)
1970年代、ラッカム氏は「優秀な営業マンが他と違う点は何か?」という疑問を解消するべく、業界としては最大規模である3万5000件ものセールスコールをサンプルとした研究を行いました。
その研究のなかでラッカム氏は、成功した商談に共通するパターンがあることを発見し、成績の良い営業マンは見込み客に対し、同じようなパターンの質問を、同じようなタイミングで投げかけていたことがわかったのです。
この共通パターンをブラッシュアップし、セールスコールにおける営業員のガイドラインとして作られたフレームワークがSPIN話法です。1988年に書籍が出版されて以来、SPIN話法はBtoBセールスガイドの金字塔として世界中の営業チームに取り入れられています。
またSPIN話法は一連の質問を通じて、相手が抱える「課題」と自社が提供できる「解決策」を「自発的に」連想させることが重要なポイントのひとつです。これは「プル型」や「インバウンド型」と呼ばれるマーケティング手法にも共通するものがあり、営業だけでなくマーケティング担当者としても知っておいて損はない技術です。
SPIN話法が約50年の歴史を経て現在も支持され続けている理由は、「顧客中心」のアプローチにあります。2024年現在のマーケティング・営業環境においても、この手法が特に重要視される理由は以下の3つです。
それぞれ個別に解説します。
デジタル化が進んだ現代では、顧客は商談の前にすでに製品について豊富な情報を持っています。
たとえば、株式会社wibの調査によれば、BtoBの購買担当者の84%が営業担当との接触前に購買を決定づける情報にリーチしているとされます。そのため、単なる製品説明や機能の紹介では、もはや顧客に価値を提供できないのです。
(出典:PR Times「【独自調査レポート】BtoBの購買プロセスにおいて、84%の決裁者が営業担当との接触前に購買を決定づける情報にリーチ」)
SPIN話法は、製品説明に終始するのではなく、体系的な質問を通じて顧客の真の課題を理解し、その解決策を共に考えていくアプローチを重視します。この対話を通じた信頼関係の構築は、情報過多時代における差別化要因としてますます重要になっていることでしょう。
現代のマーケティング、特にSaaS業界で主流となっているインバウンドマーケティングは、「顧客の課題解決」を重視します。SPIN話法の「質問を通じて顧客自身に気づきを与える」というアプローチは、このインバウンドマーケティングの考え方と完全に一致します。
たとえば、コンテンツマーケティングで顧客の課題を掘り起こし、そこからセールスの質問設計につなげる。あるいは、ウェビナーやセミナーでSPIN話法の質問構造を活用し、参加者の課題意識を高めていくといったように、マーケティングから営業まで一貫したアプローチを実現できます。
SPIN話法の大きな特徴は、その科学的なアプローチにあります。この手法は、前述のとおり3万5000件以上の商談データを分析して確立されました。「優秀な営業担当者は何が違うのか」という問いに、データで答えを出したのです。
この実証的なアプローチは、特にデータドリブンな意思決定が重視される現代のSaaS業界において、大きな説得力を持ちます。「なんとなく効果がありそう」ではなく「データで効果が実証されている」という確かな根拠に基づいて、アプローチ方法を組み立てられるでしょう。
ここではSPIN話法の4つのステップの説明と、それらを用いてどのように見込み客との信頼関係を築けるかを紹介します。
商談開始とともに、すぐに自社プロダクトの魅力について話し始めてはいけません。ラッカム氏も、いきなり売り込みを指定してしまうのは間違いであると指摘しています。
SPIN話法の最初のステップ「状況質問」はその名のとおり、見込み客の状況にフォーカスした質問です。見込み客を取り巻く情報をできるだけ広くキャッチし、相手に「この人は自分のことをよくわかってくれている」と思ってもらい信頼を得ることがゴールとなります。
状況質問では相手の回答の中から、需要・予算など営業プロセスにおいて重要となり得る文脈を取得することが大切です。
適切な状況質問を行うことで、見込み客の現在地を把握できる上、今後の質問をどのように構成していくか予測を立てるのにも役立ちます。
質問の目的 |
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意識すべきポイント |
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質問例 |
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SPIN話法における2つ目のステップは「問題質問」です。ここでは、見込み客に「課題」を認識していただくことが目的です。また、その課題は自社が提供できる「価値」と紐づいている必要があります。
多くの場合、最初から売りたいプロダクトを明示するよりも、あえてプロダクトを特定せずに問題質問を投げかける方が商談の成功率が高いとされています。
最終的に自社プロダクトへ目を向けてもらうことが商談のゴールとなりますので、問題質問では回答範囲をある程度絞らせる質問形式がよいでしょう。
「どんな課題をお持ちですか?」というような範囲が大きすぎる質問をするのではなく、自社プロダクトで解決策を提供することを見越し「〇〇は問題となり得ますか?」というニュアンスを含ませた方が効果が高いとされます。
質問の目的 |
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意識すべきポイント |
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質問例 |
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SPIN話法の3つ目のステップは「示唆質問」です。示唆質問では、露呈した課題についてさらに深掘りをすることで、相手のその課題に対する「緊急度」を高める効果があります。
同じ問題でも企業によって捉え方は千差万別です。ある企業が「課題」と捉えたものが、別の企業にとっては単なる「不便(解決するまでもない問題)」であることも珍しくありません。
HubSpotによるリサーチでは、営業員が商談において直面する問題として「見込み客が課題解決に緊急性を見出せない」が第1位で、全体の42%を占めています。
(出典:HubSpot「Sales has trouble establishing urgency and connecting」)
問題質問で挙がった課題についても、見込み客が早急に解決したいと感じなければ、話を先に進めるのは難しいでしょう。なぜその問題が解決されるべきなのか? を暗に相手に「示唆」することが必要となります。
質問の目的 |
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意識すべきポイント |
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質問例 |
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SPIN話法における最後のステップは「解決質問」です。解決質問では、課題の根本的な原因の解決案として、見込み客に自社プロダクトを連想してもらうことをゴールとします。
ここで重要なのは、「自社のプロダクトがいかに解決策として魅力的か」を伝えるのではなく、あくまで「見込み客が自発的に自社プロダクトに辿り着く」ことです。
示唆質問を通じて、すでに見込み客には課題を解決するための方法が、いくつか思い浮かんでいるでしょう。直接的に自社プロダクトがよいぞと伝えるのではなく、自社プロダクトの効果や価値に、先方が自分で回答することで気づくような質問を投げかけるのが有効です。
非常に難解なステップではありますが、その分商談の成否を大きく左右しかねない重要なステップといえます。
質問の目的 |
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意識すべきポイント |
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質問例 |
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SPIN話法の具体的な進め方として、以下の4つのステージを経ることになります。
それぞれ「SPIN話法をどのように実行すればよいのか」について言及しながら解説します。
予備段階では、見込み客の信頼を積み上げることが第一目標となります。この段階ではこちらの主張を抑え、状況質問を通じて見込み客に対するこちらの興味を示すのがよいでしょう。
会社や事業に関することはもちろん、窓口となる人物の役割や責任、不満点などできるだけ多くの情報を聞き出し、相手と足並みをそろえることがポイントです。
この予備段階で重要なのは、本格的な質問を行うための準備です。具体的には以下のような準備が効果的です。
事前リサーチの徹底 |
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最初の対話の設計 |
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質問シナリオの準備 |
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一方で、BtoBビジネスは特定業界/領域に特化した商品サービスを扱うため、ABM(アカウントベースドマーケティング)も行われることがあります。
ABMとは、特定のターゲット企業に焦点を当て、その企業固有のニーズや課題に合わせてパーソナライズされたアプローチを行う手法ですが、その場合はSPIN話法の内容も画一的な質問では十分な効果が得られません。
企業規模、業界特性、組織構造などに応じて、質問内容を綿密にカスタマイズする必要があります。具体的には以下の点に注意を払いましょう。
BtoBビジネスは意思決定の構造も複雑で、実際に商談を行う相手が決済権を持っているとは限りません。そういった各社ごとの背景事情を取り入れることで、より効果的なSPIN話法の実践が可能になります。
SPIN話法における2つ目の商談のステージは「調査段階」です。調査段階では、SPIN話法の4つの質問(状況質問、問題質問、示唆質問、解決質問)を活用して、見込み客の課題を体系的に理解していきます。
ラッカム氏はこの調査段階が4つのステージの中で一番重要であり、この段階で適切な質問を行うことで商談成功率は20%向上すると述べています。
この段階で必要なのは、見込み客の課題を引き出す、あるいは高いレベルで仮説を立てるための材料をみつけ出すことです。
なお、闇雲に「ただ見込み客の課題を引き出せればよい」と考えるのではなく、事前に「どういった情報が必要か」という調査のゴールを定めておきましょう。
たとえば、BtoBビジネスでは見込み客の導入確度を図る重要指標としてBANTが挙げられます。BANTとは以下の4つの要素を指します。
(出典:Sales Odyssey「Qualifying B to B leads using the BANT Sales Framework」)
こういった成約の可否を決める情報を質問を通じて効果的に収集することで、より確度の高い商談へとつなげられますので、SPIN話法を行う際にも念頭におきましょう。
3つめの商談ステージは「解決能力を示す段階」です。この段階では前の調査段階で明らかになった課題について深掘りをし原因追求を行なった上で、解決策を示します。
ただし単なる製品説明ではなく、Stage2で収集した情報を踏まえた、顧客にとって価値のある解決策の提示が重要です。たとえば、予算規模や決裁プロセス、具体的なニーズ、導入時期といった情報に基づき、最適な提案を行います。
ラッカム氏は、この段階における提案は以下3つの要素で構成すべきだと述べています。
このように、製品・サービスの特徴から、具体的な利点、そして本質的な価値へと段階的に説明することで、より説得力のある提案が可能になります。
4つ目の商談ステージは「約束を取り付ける段階」です。この段階では見込み客の意思はすでに固まっており、前の段階までが上手くいっていれば無事に商談が成立していることでしょう。
しかし、全ての商談が上手くいくわけではありません。当然、さまざまな要因で商談が成立しないこともあります。この段階におけるゴールは「何が上手くいって何が上手くいかなかったのかをしっかりと確認する」ことです。
ラッカム氏は商談が不成立に終わる原因には、大きく分けて見込み客が感じる「価値(Value)」「能力(Capability)」の2要素があり、能力は「Can’t」と「Can」に分類できるとしています。
商談が成立しなかった場合「上記のうちどの要因に当てはまるのか」「また今後どのように調整をしていくのか」を検討する必要があります。
もしかしたら、「調査段階 (Investigating)」「解決能力を示す段階 (Demonstrating Capability)」ではなく、前提となる「Stage1:予備段階 (Opening)」での準備や仮説から間違っていた可能性があります。失注した場合でもその原因を分析し、営業プロセス全体の改善を図りましょう。
商談や組織の規模によっては、一度のコールでSPIN話法の全てのステップを踏んでしまうこともあれば、何カ月もかけて進めていくケースもあります。SPIN話法を用いた商談の進捗はどのように行えばよいのでしょうか。
ラッカム氏はSPIN話法における商談の結果には「進展(Advance)」「継続(Continuation)」「受注(Order)」「不成立(No-Sale)」の4種類があると定義しています。
進展 |
商談の最中もしくはその後に、見込み客が受注につながる何かしらの「アクション」を起こしてくれた。 |
◯ |
継続 |
今後も商談は続くものの、今回商談を前進させるような約束事はなかった。 |
△ |
受注 |
商談中に見込み客がプロダクトの購入に合意しクロージングがあった。 |
◎ |
不成立 |
商談中に見込み客がプロダクトの購入を拒否し、今後商談の継続ができない。 |
× |
「受注」と「不成立」はもともと結果がはっきりしているため進捗の評価を行いやすいですが、「進展」と「継続」については曖昧で、上手くいったのかどうか評価をしづらいところです。しかし、SPIN話法では商談後に受注につながる「アクション」があったかどうかでこれらを判別します。これによりSPIN話法では、商談の成否を4段階で評価することが可能です。
このような基準で毎回の商談の成否を評価しておけば、営業員のモチベーション維持にもつながり、効率的な営業管理を行えるでしょう。
営業員にとっては毎回見込み客に何かしらの「アクション」を起こさせることが目標となりますので、チーム全体を通してメリハリのある営業活動を実現できます。
SPIN話法は確かに効果的な営業手法ですが、これはあくまでも顧客との関係構築のための「手段」であって、「目的」ではありません。この本質的な視点を見失うと、せっかくの対話も形式的なものになってしまう危険性があります。
営業におけるもっとも重要な要素は、いかに顧客に寄り添い、信頼関係(エンゲージメント)を築けるかにあります。たとえば、同じ「現状の課題は何ですか?」という質問でも、単なる情報収集として行うのか、それとも顧客の抱える問題を真摯に理解しようとする姿勢で行うのかでは、大きな違いが生まれます。顧客は、営業担当者の本気度や誠実さを敏感に感じるものです。
SPIN話法の各質問は、最終的に顧客にとっての価値を明確にするためのものと捉えましょう。ただし、その価値は事前に用意された提案の中にあるのではなく、顧客との対話を通じて共に見出していく必要があります。
自社の製品やサービスが、本当に顧客の役に立つのかを真摯に考え、時には「ノー」と判断する心構えも求められます。
SPIN話法の成果を最大化する上では、以下の取り組みも行いましょう。
次項より、詳しく解説します。
SPIN話法を個人の営業スキルとしてだけでなく、組織の資産として活用するためには、CRMの戦略的な活用が不可欠です。
たとえば、HubSpotのCRMを使用することで、個々の営業担当者のSPIN話法の実践を組織的な知見へと発展させられます。
(出典:HubSpot)
商談の各ステージにおける質問内容や顧客の反応、さらにはBANT情報などを体系的に記録することで、「どのような質問が効果的だったのか」「どの段階でブレイクスルーが起きたのか」といった重要な知見を蓄積できます。
これにより、チーム全体でベストプラクティスを共有し、効果的な質問パターンを発見できるでしょう。
また、顧客との対話履歴を詳細に記録することで、次回の商談でより深い議論が可能になります。特にBtoB SaaS企業では、長期的な顧客関係の構築が重要であり、この積み重ねが大きな価値の創出につながります。
SPIN話法を効果的に実践するためには、対話の前提となるペルソナとカスタマージャーニーを理解し、活用することが重要です。
ペルソナとは、製品やサービスの理想的な顧客像を具体的に描いたものです。BtoB SaaS企業の場合、役職や意思決定権限、抱える課題、重視する価値などの要素で定義します。たとえば、IT企業のマーケティング部長であれば、下記のように作成します。
一方、カスタマージャーニーは、顧客が商品・サービスを認知してから購入に至るまでの一連のプロセスを指します。BtoB SaaSの場合、まず現状の問題に気づく課題認識段階があり、その後解決策を探り始める情報収集段階、具体的な製品・サービスを比較する検討段階、そして最終的な導入を決める決定段階へと進んでいきます。
これらの理解に基づいて質問を設計することで、より効果的なSPIN話法の実践が可能になります。
たとえば、情報収集段階にある顧客には「現在どのような解決策を検討されていますか?」といった質問が効果的かもしれません。一方、検討段階の顧客には「他社製品と比較する上で、特に重視されている点は何でしょうか?」といった、より具体的な質問が有効でしょう。
現代のビジネス環境では、単一のコミュニケーション手段だけでは効果的な関係構築が難しくなっています。特にBtoBビジネスの営業活動では、LinkedInなどのビジネスSNSでの関係構築を起点に、電話、メール、オンラインミーティングを組み合わせた戦略的なチャネルマーケティング的なアプローチが有効です。
チャネルマーケティングとは、自社の製品・サービスを市場に投入する際に、チャネルに働きかけて効果的なマーケティング施策を行うことです。
BtoBビジネスでは、コンサルティングファームやシステムインテグレーターなどの販売パートナーとの協力が重要な戦略となります。
一例を挙げると、最初のアプローチを電話で試み、不在だった場合はすぐにメールでフォローし、その後LinkedInでのコネクション申請を送る、といった具合です。各チャネルの特性を活かしながら、段階的に関係性を深めていくことで、より充実したSPIN話法の実践が可能になります。
商談における反論は、適切に対応できれば信頼関係を深めるよい機会となります。過去の商談で実際にあった反論とその対応事例をチーム内で共有し、価格や導入時期に関する一般的な懸念への対応方針を整理しておくことが大切です。
特に重要なのは、反論を単なる否定的な反応としてではなく、顧客の不安や懸念を理解するための機会として捉えましょう。SPIN話法の質問を通じて、その背景にある本質的なニーズを理解し、より適切な解決策を提示していけます。
質問には必ず「なぜこの質問をするのか」という明確な意図が必要です。単に情報を集めるためだけの質問や、マニュアル的な質問では、顧客との真の対話は生まれません。効果的な質問は、顧客の潜在的なニーズを明らかにし、問題の重要性を認識してもらい、解決の必要性を自然に導き出すという目的を持っています。
たとえば「現在のプロセスにどのような課題がありますか?」という質問は、単なる情報収集ではなく、顧客自身に課題を整理してもらい、解決の必要性を認識してもらうための戦略的な一歩なのです。
このように、各質問の目的を明確にし、戦略的に組み立てることで、SPIN話法はより効果的なツールとなります。それは単なる営業テクニックではなく、顧客との深い対話を実現するための重要な手法となるのです。
SPIN話法の歴史は古いですが、インターネットやITが発展した現代においても十分に通用できる体系だったテクニックです。
見込み客との信頼関係を確立し商談の成約率向上が期待できるだけでなく、最新のデジタルCRMやMAツールとの相性もよく、顧客情報や商談プロセスを効率よく管理するのに適しています。
大切なのは「自社の商品・サービスを売り込もう」とするのではなく、「顧客のニーズ・課題を明確にする」という顧客視点でのアプローチです。
SPIN話法を行った結果「自社製品が直ちに必要というわけではなかった」などと、残念な結果になることも多々あるはず。そういった際に無理に売り込みを行うのではなく、顧客と一度距離は置きつつも、接点は維持し続けるのが大切です。
そもそも、BtoBの商材は単価が高く、顧客の検討期間も長期にわたります。「今すぐ売れる顧客を見つける」のではなく、将来的に購買の可能性がありそうな層も含めて「“現在のニーズや課題”を掘り起こす」ためのツールとして、SPIN話法を有効活用しましょう。