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パーミッションマーケティングとは?インバウンドマーケティングの始まりと事例を解説!

インターネットが普及しはじめた2000年前後、これからは営業が不要になるということが言われました。世界の人は自由にインターネット上の知見にアクセスできるので、仲介する販売人などは不要に思えたのです。

マーケティングの領域でも不特定多数にむけた「マスマーケティング」に対して、これからの主流は、情報を受け取ってもよいと許可した見込み客だけにメッセージを送る「パーミッションマーケティング」だという新たな概念が登場し、当時の界隈の人々から大きな驚きと称賛をもって受けとめられました。

今回は、現在ではごく当たり前に普及したインバウンドマーケティングの根本思想「パーミッションマーケティング」の本質について解説します。

2022年現在、インバウンドマーケティングを実施されているみなさまの現状はどうでしょうか。「同じような手法を使う企業が増えた今、効果が出なくなっている」と思われている方もいるのではないでしょうか?

今一度ユーザーの同意のもと、ユーザーが望むコンテンツを届けるマーケティングとは、具体的にどのような活動なのかを確認していただければ幸いです。

パーミッションマーケティングとは?

パーミッション マーケティングとは「事前に許可を得た見込み客とインタラクティブ(双方向)のやりとりができるマーケティング全般」を指します。

(単語の意味)

  • Permission(パーミッション)=許可、許諾
  • Permission marketing=相手から許可を得てから行うマーケティング

例えば一般的なメールマガジンなどは、メール配信に同意したユーザーに配信しています。これは「オプトイン」と呼ばれるパーミッションマーケティングのひとつです。SNS上でのユーザーやファン、顧客とのやりとりも事前に同意がありインタラクティブなので、パーミションマーケティングに該当します。

事前に許諾を得た相手のみに向けたパーミッションマーケティングは、ユーザーが製品・サービスに関心を持っている可能性が高く、以下の長所があります。

  • 高いコンバージョン率
  • 対象がしぼられるのでコスト低減になる
  • 不要な人へメッセ―ジを送らないので不評が少ない
  • パーソナライズされたマーケティングが可能
  • 顧客との長期的な関係が築ける

発展してきた背景

パーミッションマーケティングは、1999年に当時の米国のYAHOO! 副社長Seth Godin(以下ゴーディン)氏の書籍『Permission Marketing』によって提唱されました。

ゴーディン氏は、その頃に成功したマーケティング施策の多くが、顧客の同意を求めるキャンペーンであることに気付き、パーミッションマーケティング(相手の許可を得て行うマーケティング)を、次世代のマーケティングとして強く提唱します。

なお、ゴーディン氏が提唱するパーミッションマーケティングの概念は、以下の要素が必要だと定義されています。

  • 予想:人々は会社からのサービス/製品情報を予想する
  • 個人:マーケティング情報は明示的に顧客に関連している
  • 関連性:マーケティング情報は、消費者が興味を持っているものである

(出典:Amazon

実は、インターネット登場以前から一部の企業は、事前同意を得た見込み客にDMを送るようなマーケティング活動を実施していました。しかしそれは少数派であり、圧倒的にマスマーケティングが主流でした。

そのためかゴーディン氏は、同書で、昔ながらの不特定多数に向けたCMや広告、勧誘電話、ダイレクトメールなどを「土足マーケティング」「インタラプションマーケティング(邪魔なマーケティング)」と呼んで非効率さを指摘しています。

パーミッションマーケティングとインバウンドマーケティングとの関係

インバウンドマーケティングとは、価値あるコンテンツを作成しメッセージを発信することで、見込み客に「見つけてもらう」マーケティング活動全般です。

見込み客を引き付けて出会いを創出し、関係性を育み、成果につなげていくマーケティング手法です。

これまでの狩猟型のアウトバウンドマーケティング(マス広告、CM等)に対し農耕型と言われるマーケティング手法で、こちらはHubSpotの創業者、Brian Halligan(ブライアン・ハリガン) 氏、Dharmesh-shah(ダーメッシュ・シャア) 氏が2009年に、共著の『INBOUND MARKETING』にて提唱しました。

ざっくり説明すると、インバウンドマーケティングとは、ゴーディン氏のパーミッションマーケティングをより広い視座でとらえて、パーミッションを得るためのさまざまなノウハウから関係性ができてから、常に相手に価値あるコンテンツを送り信頼関係を深め自社のファン、顧客になってもらい、さらには製品・サービスの推奨者になってもらう循環型社のマーケティング思想です。

 

(出典:Amazon

具体的には、インバウンドマーケティング、つまりオンライン上でさまざまなコンテンツ経由でメッセージを発信し見込み客をひきつけて、ある段階で自社からの直接のメッセージを受け取って良いという許諾を得ます。

例えば、魅力的なメールマガジンを配信している企業は、ユーザーのメールアドレスの登録を求めます。オウンドメディアや企業HPにあるホワイトペーパー、導入ガイドをダウンロードするためには、会社名、氏名、メールアドレスなどの提供(パーミッション)を求めます。

インバウンドマーケティングは、本質の部分はパーミッションマーケティングと同じですが、ゴーディン氏の提唱したパーミッションマーケティングは、1999年にある種予測というスタンスで描かれた概念です。

ブライアン・ハリガン 氏らが提唱したインバウンドマーケティングは、それから約15年後の2014年に世界へ提唱されました。その間のインターネットの普及、オンラインマーケティング活動の成功体験などがベースにあります。

パーミッションマーケティングの5つのレベル

パーミッションマーケティングは、相手の許可を得て行うマーケティング活動ですが、その許可のレベルで5種類にわけられます。

Situational permission(状況的な許可):

見込み客がその企業の製品・サービスに興味があるという段階ではなくとも、状況によって個人情報提供を許可されるレベルです。例えば、以下のような状況で多くの人は個人情報を提供したり、メッセージの受信を許可したりします。

  • 企業HPからホワイトペーパーなどコンテンツをDLするためにメールアドレス提供
  • 個人情報を登録してホワイトペーパーなどのコンテンツをダウンロード
  • 無料ウェビナーへの登録
  • メールマガジン、ニュースレターなどを読むために登録

みなさんも、ネットサーチをしていて若干でも関心があるコンテンツのダウンロードに個人情報提供を求められ「また、いらぬメルマガが増えてしまうがしょうがない……」と思ったことが一度くらいあるのではないかと思います。

「Situational permission(状況的許可)」の場合、喜んで個人情報提供に同意するユーザーばかりでなく、いたしかたなく提供しているケースも多く、リードの量を集めるには良い手法ですがオファーのタイミングを間違えるとリードの質は低下します。

Brand trust(ブランドの信頼による許可):

企業のブランドが信頼されていると、見込み客は安心して(良い情報が届くだろう)との予測のもと、メッセージを受け取ることに同意します。これは、その企業がそれまで培ってきたブランドの力です。例えば、Nike、Apple、スターバックス、マクドナルド社などの企業には、世界中で多くのユーザーが喜んで個人情報を提供するでしょう。

実際、優良企業はメールマガジン一つ、企業ブログのコンテンツ一つにも予算と人材を投資しますので、優れたコンテンツが届いたり、特典があったりと期待を裏切らない内容です。

補足すると、スタートアップや中小企業でも、コンテンツのクオリティを上げることで自社ブランド力を高めて、遭遇した見込み客の許諾を得られる可能性があります。

オンライン上のコンテンツは、内容がよければあまり企業規模を意識されません。「良いコンテンツだ、どこの会社だろう。やっぱり大手だ」となるか「良いコンテンツだ。どこの会社だろう。従業員10人のスタートアップ、なかなかすごいな」となる違いだけだからです。

CMをうつなど大きな予算をかけられない中小企業でも、メルマガだけブログだけにしぼって高品質のコンテンツを発信することで、ニッチな領域でブランド力を高められます。

Personal relationship(個人的な関係による許可):

企業の営業マン、販売スタッフ、カスタマーサポート担当などとの個人的な信頼関係がベースにあって、個人情報の提供を許可するケースです。直接依頼されて同意するケースもあれば、自発的にメールマガジン等に申し込むこともあります。

Points permission(ポイントのための許可):

ポイントが付与されるため、許可するケースです。例えば、ポイントがたまると金銭と交換されたり、豪華賞品が手に入ったりするなどの特典があることに、魅力を感じてのパーミッションです。マイレージサービス、楽天、アマゾンのポイントシステムほか、多くの企業がポイントパーミッションマーケティングを実施しています。

Intravenous permission(点滴許可レベル)

最も高度なパーミッションマーケティングレベルです。「点滴許可レベル亅とは、例えば、医療処置中に医師が患者から与えられている高い信頼、処置にかかる費用まですべてを信頼してまかされているレベルの許諾です。

ビジネスの世界においても企業が医師のようにすべてを任せられると判断されれば、見込み客の信頼のもと最高レベルのマーケティング戦略を実行できます。簡単に言うと「予算もプランも、基本的に御社にすべて任せますよ」と言ってもらえるレベルです。

SaaS業界のように専門知識が必要で、かつテクノロジーや業界トレンドの変化が速い業界においては、目指すべきパーミッションマーケティングのひとつでしょう。

パーミッションマーケティングの事例4つを紹介!

ここでは、パーミッションマーケティングの事例を紹介します。

魅力的なBlogでユーザーを惹きつけパーミッションを得るHubSpot

 

HubSpotはマーケティング領域SaaSのトップベンダーであり、インバウンドマーケティングの提唱者としてのブランドも築き上げている企業です。

例えば、マーケティングについて何か学ぼう、知らない用語を調べようと思った人は、かなりの確率でHubSpotのブログに出会います。

そして、深い知見をわかりやすく解説してある多くの記事に驚き、ブログに再訪するようになるでしょう。メールアドレスを登録してマーケティングに役立つメールマガジンの読者となり、HubSpotのコンテンツで学び続け、最終的に多くの人がツールを導入します。

HubSpotのマーケティングの根底には、創業者のマサチューセッツ工科大学の大学院で同期だったブライアン・ハリガン氏とダーメッシュ・シャア氏の「消費者は企業のマーケティング担当者や営業担当者に邪魔されることは望んでおらず、ただ力になってもらいたいと思っている」という考え方があります。

そのため、あくまで記事の品質で対象者を引き付け個人情報のオファー(パーミッション)のタイミングも性急でなく自然であり、一度パーミッションをとった後の継続したアプローチも徹底したユーザーに価値ある情報を届けることに徹している、いわばお手本のようなブログです。

オプトインメールのでファンを増やしていく好例 Zendesk

 

Zendesk社は、カスタマーサポート領域SaaSのトップベンダーであり、近年は営業領域などにもサービスを提供しているSaaSプラットフォーマーです。

Zendeskも企業ブログで価値あるコンテンツを発信し、来訪者にメールマガジンに申し込んでもらうパーミッションの手法をとっています。ここまでは、よくある普通のパターンです。

特筆すべきはZendeskメールマガジンのクオリティです。適度にパーソナライズされた文章、イベントなどへの誘い方、発行回数のタイミングなどが、ハイレベルで(リードのレベルにあった緩急の付け方で)自然に好感をもてるようになる品質です。

今や、オプトインメールを活用したパーミッションマーケティングは、多くの企業が実施していますが、どれほど上手く活用しているかは企業により異なります。

みなさんも、たくさんのメールマガジンを登録していると「興味ない情報が連日送られてくる」「何も購入しないで読み続けるのが悪い」など、発行企業に対しあれこれ感想を持ったこともあるでしょう。メールマーケティングは頻繁でもだめですが疎遠でもいけません。押しつけがましくてもだめ、かといって存在を忘れられるほど印象が薄くては意味がないので、加減がなかなか難しいものです。

この点、Zendesk社は内容の品質はもちろん、絶妙なタイミングで、心の琴線にふれるようなメッセージが届くので、一読をおすすめします。このスタンスは、おそらくユーザーにならない層までもファンにしているでしょう。

SNSによるパーミッションマーケティングの代表例 Facebook

 

SNSは比較的パーミッションが得やすいメディアです。中でもFacebookは、SNS黎明期に登場したこともあって会員数が多く、企業はフェイスブック上でさまざまなユーザーに自社のページからメッセージを発信することで、ユーザーに「いいね」をクリックしてもらいつながる(パーミッションを得る)ことができます。

また、投稿に対しユーザーがコメントを記入しそれにリプライするなどインタラクティブな交流が可能です。

企業アカウントでなく、企業内のマーケティング担当者や営業担当者が個人アカウントで活動する際も、まず潜在的なファン、見込み客層に「友達リクエスト」を送信して同意を得ることから始めます。

ただしFacebookの場合、パーミッションの敷居が低いことやビジネス専用SNSではないため、そこからリードを絞り込む継続した活動が重要となります。

ダイヤモンド・オンラインの年末年始キャンペーンの例

 

ビジネスマンの愛読メディア『ダイヤモンド・オンライン』が2021~2022年の年末年始にかけて実施していたキャッシュバックキャンペーンは、前述の5種類のキャンペーンの中の「Points permission(ポイントによる許可)」に近いのではないかと思います。

このキャンペーンに申し込むと、年間プラン19,800円が14,800円に、3年プラン54,800円が44,800円になるキャンペーンです。

ダイヤモンド社はご存知のとおり、日本の老舗出版社です。「Brand trust(ブランドの信頼による許可)」のみでパーミッションを得ることもできるわけですが、年末年始という時期なので「Points permission(ポイントによる許可)」レベルのマーケティングを、あわせて実施したということでしょう。

上記の例はブログ、メールマガジン、SNSの例ですが、他にも動画、Rssフィードなどさまざまなパーミッションを得る手法があります。

改めて押さえるパーミッションマーケティングの原則

パーミッションマーケティングには注意点もあります。ゴーディン氏は、著書でパーミッションマーケティングで効果を発揮するための5つの原則の一つに以下を掲げています。

つまり、「一度許可を得たからいいだろう」とばかりに、相手の気持ちも想像せず自分本位のマーケティングを行うのはパーミッションマーケティングではありません。氏は著書で「パーミッションマーケティングは恋愛と同じ」といっていますが言いえて妙です。

パーミッションマーケティングの最初のパーミッションとは「連絡してもいいよ」と1回いってもらっただけの話です。その後の対応で、いくらでも相手の心情は変化します。パーミッションマーケティングの効果が出ないのかとゆきづまったときには、「継続してパーミッション(相手からの同意)がとれているのだろうか」とプロセスを見直してみましょう。

通常の人間関係とは異なり、顔の見えないインバウンドマーケティングで「No」の意思表示をしてくれる人はわずかで、大半は何もいわずにオプトアウトするかメッセージそのものをスルーする行為に出ます。

相手が欲しがっている情報が届いてるか? 相手が参加したくなるイベントの案内をしているか? 相手に何かしらのプレゼントを贈っているか? をチェックするのが大事です。相手が受け取りたいのはセールスレターではないことを思い出しましょう。

(参照:Hubspot.comPermission marketing

まとめ

1999年のゴーディン氏の予測から、はや20年以上たちます。氏の予測をはるかに超えてインターネット上のマーケティングの世界は進化し、競争が激化しているのではないかと思います。

インバウンドマーケティングを成功させるには、その本質である相手からのパーミッションをいかに得るか(リード化するか)、そして長期的な関係性を継続させていけるかにかかっています。

基本姿勢は、ゴーディンしが著書で述べたコンセプト通りで正解です。それを実現するには、自社の顧客層がどこにいるか、誰に向けて、どのレベルのコンテンツを作成するかを真剣に考える必要があります。

その上で、パーミッションを得る相手も、その後メールマガジン、ブログ、SNSの投稿を読むのも、生身の人であることを忘れずマーケティング施策を進めていただければと思います。