デジタルマーケティングに関わる人なら「コンバージョンレート(CVR)を改善しよう」「CV率が高いor低い」などの言葉をよく耳にするのではないでしょうか。コンバージョンレートは、事業活動において特にマーケティングの進捗を表す重要な指標として利用されます。
2017年に、米国のインターネットマーケティング担当者を対象に行われた調査研究では、回答者の50%が「CRO(コンバージョン率最適化)がデジタルマーケティング戦略全体にとって重要である」と回答しています。CV率の向上はマーケティング先進国でも重要視されているのです。
しかしコンバージョンレートは、サイトによって「顧客転換率」「目標達成率」と定義されていたり、「資料をダウンロードした数」「セミナー申込者数」と書かれていたりします。広義で解釈すると営業活動にも利用される用語なので、わかったようなわからないような、もやもやした感覚になる人もいるでしょう。
そこで本記事では、そもそもコンバージョンレートとは何かについて紹介し、計算方法や使い方をわかりやすく解説します。
※本動画はAIによる音声になります。
また、内容は本ブログ記事の要約になります。詳細の情報は以下のブログ記事内をご覧ください。
「コンバージョンレート(Conversion rate)」とは、英語の「Conversion」と「Rate」を組み合わせた用語であり、単語の意味は以下のとおりです。
つまりコンバージョンレートとは、何かを転換した率を指します。マーケティング領域では「ユーザーに起こして欲しいアクションが行われた率」ですが、何を成果(コンバージョンした)と定義するかによって、さまざまなコンバージョンレートがあります。
BtoBで顧客の購買行動に関わる部門毎にコンバージョンレートの例を挙げると、以下のように分類できます。
部門 |
コンバージョンレートの定義の例 |
マーケティング |
リード獲得率 |
資料請求率 |
|
ウェビナー登録率 |
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インサイドセールス |
商談化率 |
営業担当へのリード引き継ぎ率 |
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営業 |
受注率(クロージング率) |
契約更新率 |
コンバージョンレートを測定・分析することで、各マーケティング施策の効果や改善点を検討することができます。
例えば、リスティング広告のコンバージョンレートが低い場合、広告文やランディングページの改善が必要だと判断可能です。ほかには、複数のマーケティングチャネルを比較し、コンバージョンレートが高いチャネルにより多くの予算を配分するなど、データに基づいた意思決定が行えるようになります。
コンバージョンレートと混同されるのがCTAとCPAです。
CTR(Click Through Rate)とは「クリック率」のことです。広告やリンク、CTAなどをクリックしたユーザーの割合を測定します。CTRの計算式は、(広告またはリンクのクリック数 ÷ 広告を見た人の総数) × 100% です。
CPA(Cost Per Acquisiton)とは「顧客獲得単価」であり、1人の顧客やユーザーが購入・資料請求のようなコンバージョン行動を起こすのに、どれだけの費用を費やしたかを理解するのに役立ちます。CPAは、総コスト ÷ コンバージョン数で算出できます。
コンバージョンレートを測定するべき理由は、施策の貢献度合いや改善点の把握をするためです。例えば、Webページのコンバージョンレートが低ければ、WebページにおけるCTAの設置位置や文言などに改善の余地があることを示します。
複数のマーケティング施策を展開している場合、コンバージョンレートを基に予算配分を最適化できます。仮にGoogleリスティング広告のコンバージョンレートが高く、Facebook広告のコンバージョンレートが低いとしましょう。この場合、Facebook広告の予算を減らし、Googleリスティング広告にさらなる予算を投下するとよいかもしれません。
このようにコンバージョンレートをみることで、各マーケティング活動のパフォーマンスを測定し、パフォーマンスの評価やデータに基づいた意思決定、戦略の最適化などが可能になります。
SaaS事業では、CAC(顧客獲得コスト)とLTV(顧客生涯価値)のバランスが重要です。CACがLTVを上回ってしまうと、事業の採算性が悪化してしまいます。コンバージョンレートは、CACを算出する際の重要な構成要素であり、コンバージョンレートを改善することでCACを削減し、ROI(投資対効果)を向上させられます。
単純に「コンバージョンしたユーザー数 ÷ 訪問者数 × 100」で算出できます。式自体はシンプルですが、実際にはいくつかの注意点があります。
コンバージョンレートを計算する際は、計測の期間を設定することが重要です。一般的には、3カ月、6カ月、1年などの期間が用いられますが、事業の特性やマーケティング施策の実施状況に応じて、柔軟に設定する必要があります。
例えば、「新商品のリリース」「キャンペーンの実施」といった短期的な施策の効果を測定する場合は、1カ月や1週間などの短い期間を設定することもあります。一方、長期的な成長トレンドを把握するためには、1年以上の期間を設定するのが適切でしょう。
コンバージョンレートを計算する際には、コンバージョンをどのチャネルやキャンペーンに帰属させるかというアトリビューションの問題も考慮しましょう。アトリビューションとは、見込み客がCVに至るまでに辿った各タッチポイントの「貢献度」を指します。
ユーザーがGoogle広告をクリックして資料請求を行った場合、そのコンバージョンはGoogle広告に帰属させるべきです。一方、ユーザーがメールマーケティングを経由して資料請求を行った場合は、メールマーケティングに帰属させる必要があります。アトリビューションの設定によって、コンバージョンレートの計算結果が変わってくるため、適切なアトリビューションモデルを選択することが大切です。
ただ、コンバージョンレートをみるだけでは効果的な分析はできません。過去のコンバージョンレートもしくはベンチマークのコンバージョンレートと比較することで、現状の把握ができるのです。ここからは、Web広告やEメールなどの業界別コンバージョンレート平均値をご紹介します。
Web広告と一口にいっても、リスティング広告やディスプレイ広告、SNS広告などさまざまです。米WordStreamの調査では、Googleリスティング広告とディスプレイ広告の業種別コンバージョンレートは以下のように区分されています。
全業種におけるコンバージョンレートの平均は、リスティング広告で3.75%、ディスプレイ広告で0.77%です。リスティング広告は、悩みや課題の解決策を探す「顕在層」にリーチできるため、コンバージョンレートは高い傾向にあります。
リスティング広告の平均コンバージョンレートが5%を超える業界に属している場合、ランディングページへの動画の活用や積極的なオファーなどで、購買意欲を高める工夫をするとよいでしょう。
WordStreamによれば、BtoBのWebサイトの平均コンバージョンレートは2.23%とのこと。株式会社WACULが21社のBtoBサービスサイトを分析した結果によれば、新規ユーザーの直帰率は38.2%、平均セッション時間は208.3秒(約3分50秒)、直行CV率(全CVのうち入口ページ → フォーム → CVと直行したCV数の割合)は58.0%と判明しています。
(出典:株式会社WACUL「Webサイトは流し読みされる。B2Bサービスサイト・ECにおけるユーザー行動調査」)
つまり、新規ユーザーの約4割は入口ページを少し見て離脱するのです。直行CV率が58.0%と高い理由としては、コンバージョンユーザーの半数以上が初めから自社への興味関心を持っているからでしょう。だからこそ、入口ページのわかりやすいところにCTAを設置して、質の高いユーザーを逃さないようにしなければいけません。
なお、米Capterraによると、Webサイト訪問者からリードへのコンバージョンレートのベンチマークは7%とされています。コンバージョンレート改善を図る場合、理想的にはこの数値を目指しましょう。
米Benchmarkが約1万人のユーザーを対象にした調査によれば、メルマガの平均開封率は23.13%、平均クリック率は3.39%と述べられています。業種別の平均クリック率は以下のとおりです。
例えば、テクノロジー業界に属する企業の場合、1000通のメールを配信すれば253名が開封し、そのうち約8名がメールに記載されているURLをクリックします。米MailChimpが1000名以上の購読者を持つメールキャンペーンを対象にした調査では、平均クリック率が2.62%と判明していることからも、平均は2〜4%程度と認識しておくとよいでしょう。
施策によって、コンバージョンレートの定義は異なります。ここからは、メール・ウェビナー・Webサイト・営業でのコンバージョンレートの使い方を紹介します。
Eメールは営業情報だけでなく、ブログ、ウェビナー、オウンドメディアの最新情報を送信するなど、デジタルマーケティングになくてはならないツールです。Eメールにおけるコンバージョンレートには以下のものがあります。
メール開封率のコンバージョンレートをみることで、メールのタイトルや内容、配信日時の良し悪しを分析できます。URLクリックのコンバージョンレートを見れば、メールで案内しているブログやウェビナーに対するユーザーの興味関心を把握できます。
メール施策は比較的コストが低く、見込み客とのコミュニケーションを定期的に行える手段です。直接の商談化を図らない場合でも、メール内のURLクリック率を高めることで、自社のブログやウェビナーへの誘導が円滑になり、見込み客のナーチャリングやエンゲージメント向上につながります。
BtoB企業において、ウェビナー施策の重要性が増しています。米ON24の調査によれば、マーケティングパフォーマンスの高い企業は月に3〜5回ウェビナーを開催しているとのこと。ウェビナー施策における主なコンバージョンレートは以下のとおりです。
例えば、SaaSソフトウェア企業が無料デモの問い合わせを目的にウェビナーを開催するとした場合、各コンバージョンレートの計算は次のようになります。
ウェビナー後は、申し込み率・参加率・コンバージョンレートを分析することで、集客施策やコンテンツ内容などの改善へとつなげられます。
ウェビナーは、製品やサービスの価値を直接伝えられる場です。コンバージョンレートを高めることで、見込み客の獲得や育成、商談化などBtoB SaaSのファネル全体の効率化につながるでしょう。
Webサイト訪問ユーザーの中には、自社への興味関心が高いユーザーが多くいます。そのため、コンバージョンレートを適切に測定して最適化し、質の高いユーザーを取りこぼさないようにしなければいけません。BtoB企業のWebサイトにおける主なコンバージョンレートは下記のとおりです。
このようにWebサイトには、多くのコンバージョンポイントが存在します。入口ページを起点にユーザーを回遊させるのではなく、多くの入口ページを作り、そのページ内でユーザーが求める情報をすべて提供する作りが効果的でしょう。
広告施策でのコンバージョンレートは、広告キャンペーンの効果を評価し、広告から訪れたユーザーが購入や問い合わせなどのコンバージョン行動をする割合を示す指標です。
コンバージョンレートを分析することで、広告施策の改善点を特定できます。例えば、リスティング広告のコンバージョンレートに影響を与えるのは、広告文もしくはランディングページです。
広告の表示・クリック回数が十分なのにも関わらず、コンバージョンレートが低い場合、ランディングページに何かしらの問題があると推測できます。
チャネルごとのコンバージョンレートを把握することで、予算配分の最適化が可能になり、マーケティングROIの改善につながります。複数チャネルで広告を出稿しているなら、コンバージョンレートを基に予算戦略の最適化をするとよいでしょう。
リードにはライフサイクルがあります。BtoB企業の購買担当者が、広告やオウンドメディアで製品・サービスを認知してすぐに購入するケースは稀です。
一般には、まず情報を収集し、他社の製品・サービスと比べたり、メールマガジンやブログなど企業が送ってくるコンテンツで企業哲学を理解したりしながら、徐々に企業への信頼感・親密感を持ち(エンゲージメントを向上させます)、購入を決定します。
HubSpotでは、リードライフスタイルを6段階のステージで設定していますが、要所要所でコンバージョンレートを計測すると、マーケティング施策がスムーズに進んでいるかどうかを可視化しやすくなるでしょう。
<コンバージョンレート設定の例>
(出典:The kingdom「Episode 17 - Discovering Misunderstood Features In HubSpot: Part 1 Lifecycle Stages」)
もし自社のコンバージョンレートが低下していると感じられる場合、以下の要因を疑いましょう。
次項より、個別に解説します。
カスタマージャーニーとは、潜在顧客が初めて製品・サービスを認知してから、実際の契約・購入に至るまでの一連の流れを指します。SaaS製品の場合、「気づき→認知→検討→導入→利用」のプロセスです。
意思決定に関わるステークホルダーが多岐にわたるBtoB SaaSの場合、この購買プロセスが長期化・複雑化する傾向があります。例えば、「サービスに興味を持った担当者が上司の承認を得る」「他部署の意見を収集する」といった社内調整に時間を要します。
そのため、各タッチポイントにおけるユーザー体験を適切にデザインし、スムーズに次のアクションへ誘導するカスタマージャーニーの設計が非常に重要です。もし、このカスタマージャーニーが適切に設計されていないと、見込み客が購入プロセスの途中で脱落してしまう可能性が高くなるのです。
例を挙げると、BtoBのSaaS製品を利用するには、まずトライアル申し込みが必要になることが一般的です。しかし、トライアル開始後の営業やオンボーディングサポートが不十分だと、ユーザーは製品の価値を実感できずに離脱してしまうかもしれません。
このようにカスタマージャーニー上の各接点で顧客に価値を提供し、次のステップへスムーズに誘導することができていない状況が、コンバージョンレート低下の要因のひとつと考えられます。したがって、SaaSのマーケターにはカスタマージャーニー全体を俯瞰しながら、見込み客の心理や行動を理解したうえで、ファネルの各段階に適した施策を講じることが求められます。
企業を取り巻くマクロ環境は常に変化しており、それに伴って市場のニーズや顧客の課題認識も変わっていきます。
例えば、2010年代までは、経費精算システムを提供するSaaS企業の場合、従来は申請・承認のフローを電子化できる点を強調していればよかったかもしれません。しかし2024年現在では、電子帳簿保存法の改正やインボイス制度の施行など、経費生産業務を取り巻く環境は大きく変わっています。このように企業を取り巻くマクロ環境が変化するなかで、BtoBソリューションに求められる価値も大きく変わりつつあります。
そこで、マクロ環境の変化に対して分析をするに当たって有効なフレームワークがPEST分析です。PEST分析を活用することで、自社のビジネスに影響を及ぼす外部要因を体系的に整理できます。
PEST分析は、年に1〜2回程度、定期的に実施するのが望ましいでしょう。ただし、自社のビジネスに大きな影響を及ぼすような環境変化が起きた場合は、臨機応変に分析を行うことが重要です。
BtoB SaaSの場合、特にTechnologyの観点から見たマクロ環境の変化に注目する必要があります。クラウドやAI、IoTといった技術の普及は、SaaS企業にとって大きなビジネスチャンスをもたらす一方で、競合他社の参入や代替サービスの登場など、脅威となる可能性もはらんでいます。
このように、PEST分析で捉えたマクロ環境の変化を、製品戦略やマーケティング施策に反映させ、タイムリーな価値提案を行うことが、コンバージョンレートの改善につながるでしょう。
カスタマージャーニーの項目でもお話ししましたが、BtoBの購買プロセスには経営層、部門長、現場担当者など、さまざまな立場の関係者が関与します。各ステークホルダーはそれぞれ異なる関心事や目標を持っており、製品に求める価値も一様ではありません。
経営層は主に事業への貢献度や投資対効果に関心を持つ一方、現場の担当者は業務の生産性や使いやすさを重視するでしょう。部門長は予算内で成果を出すことや、メンバーのスキルアップなどに目を向けるかもしれません。
これら関係者のペインポイントやゴールは千差万別であり、すべての人に刺さる「普遍的な訴求」を用意することは困難です。もし広告やランディングページのメッセージがターゲットペルソナにフィットしていなければ、コンバージョンレートの低下は免れないでしょう。
したがって、BtoB SaaSのマーケターには各ステークホルダーを具体的にイメージしたペルソナ設定が求められます。ペルソナとは、ターゲットとなる利用者像を仮想的に人格化したものを指します。
各ペルソナについて、以下のような情報を整理していきます。
このようなペルソナ像を明確にしておくことで、購買プロセスの各段階で、個々のニーズや課題を捉えたメッセージを打ち出すことができるようになります。
メール配信において、ペルソナに合わせて配信内容を変えることで、コンバージョンレートの向上が期待できます。ナーチャリングの段階に合わせて、ペルソナごとに異なる情報を提供したり、CTAを変更したりすることが重要です。ファネルの各接点において、ペルソナに応じた最適なコミュニケーションを実践することが、コンバージョンレートの最大化につながります。
コンバージョンレートを計測し、改善する目的は、良質のリードを顧客に転換して売上げ拡大につなげることです。
デジタルマーケティングでは、リードの母集団を集めるだけであればそれほど苦労しません。しかし、Webサイトや無料ウェビナーに多数の来場者があっても、そのなかに見込み客候補が少なければコンバージョンレートは低下します。マーケティング担当者、セールス担当者も労多く報われずになってしまうでしょう。
コンバージョンレートを改善するポイント自体はシンプルで「自社に最適なターゲットに、最適なタイミングで、最適なコンテンツ/情報を届けること」です。言うは易しですが、これを行うのは複雑です。だからこそ、事前にペルソナとカスタマージャーニーの設定が欠かせません。
最初の母集団が大きくペルソナからずれないこと、自社が貢献したい相手を間違えないことがポイントだと留意しましょう。その上で、これからご紹介する各施策の改善ポイントを実施してみてください。
広告のコンバージョンレート改善の際には、以下3つのポイントを確認しましょう。
ここからは、各ポイントの詳細を解説します。
Web広告に取り組むうえで、最初に行うべきことはターゲットの明確化です。Web広告では膨大な数のユーザーにアプローチできますが、マスを狙うことで、誰にも刺さらない広告となってしまいます。ターゲットのデモグラフィックだけではなく、悩みや欲求などの心理状況まで明確化することで、コンバージョンレートを高めるWeb広告運営が可能です。
すでにWeb広告を運用していてコンバージョンレートが悪い場合は、ターゲット設定を見直しましょう。多くのWeb広告では、デモグラフィックや興味関心、Web行動などを基に広告を配信する相手を絞り込む、高精度のターゲティング機能が提供されています。まずは、作成したペルソナに適したターゲティング設定ができているか確認することが求められます。
リスティング広告は「検索連動型広告」とも呼ばれ、ユーザーの検索語句に適した広告が配信されます。つまり、広告を配信するキーワードによって、アプローチするユーザーが変わるのです。コンバージョンレートが悪い場合は、キーワードを見直しましょう。
例えば、建設業向けのプロジェクト管理ツールを提供するSaaS企業が、「プロジェクト管理」で広告を出稿したとします。この場合、建設業以外の業界に属するターゲットにリーチしてコンバージョンレートが低下するだけではなく、競争率の高い(=クリック単価の高い)キーワードへの出稿により、費用対効果悪化も招いてしまいます。
BtoB企業の場合は、業界固有のキーワードや問題解決に関連するキーワードなど具体性の高いキーワードを選定するとよいでしょう。
定期的に実際に広告が配信された検索語句を確認し、コンバージョンにつながっていないキーワードは除外設定するのも有効です。ターゲット層のニーズや興味関心にマッチしたキーワードを選定しましょう。
Web広告で多くのユーザーを集客できたとしても、製品サービスの詳細を訴求するWebサイト・ランディングページが最適化できていなければ、ユーザーはコンバージョンしません。
コピーやCTAの位置、ページ速度など確認すべきポイントは多々ありますが、まずは広告とランディングページの内容が一致しているかどうかをみましょう。ページのコンテンツ内容と広告の約束が一致していなければ、ユーザーは離脱してしまいます。
Webサイト・ランディングページのコンバージョンレートを改善する際は、下記ポイントを確認しましょう。
各ポイントの詳細を解説します。
Webサイト・ランディングページは第一印象が重要です。米Nielsen Norman Groupの調査によれば、Webサイト訪問ユーザーは有益な情報をみつけられなければ10〜20秒で離脱すると判明しています。
そのため、ファーストビュー(ユーザーがWebページを表示したときに最初に目に入るエリア)でユーザーが求める情報を提供する必要があります。
(出典:MONiPLAT)
上記は製造業向けの設備点検プラットフォーム「MONiPLAT」公式サイトのファーストビューです。製品の特長をわかりやすく表したキャッチコピー、製品画像、さらに3つのCTAボタンが設置されており、ユーザーは求める情報をすぐに得られるように設計されています。
ユーザーがコンバージョンに至らない理由のひとつに、フォーム項目があります。記入事項が多すぎると、ユーザーは負担を感じ、離脱してしまうのです。米Zukoの調査によれば、ソフトウェア業界におけるフォームの完了率は60.85%であり、約40%が途中でフォーム入力をやめているとわかっています。
(出典:HubSpot)
そもそもフォームの目的は、リードナーチャリングやクオリフィケーションに必要な情報を得ることのため、eBookダウンロードやウェビナー申し込みなどがコンバージョンの場合は、下記項目を設置すれば十分ではないでしょうか。
フォーム入力の完了率を高めるためにも、設置項目を絞り込み、ユーザーの入力負担を減らしましょう。
先にご紹介した株式会社WACULやNielsen Norman Groupの調査が示すように、Webサイト訪問ユーザーは約3分でコンバージョンするかどうかを決めます。この短時間で必要な情報を提供するためには、ユーザーが摩擦なくページを移動できるように、導線を最適化しなければいけません。
ウェブ制作会社ベイジの代表 枌谷(そぎたに)氏は「現代のWebサイトの基本はLPの集合体であり、入口を大量に作りそのページ内で決着させる前提で設計するべき」と述べています。
Webサイトでの製品説明の時間が短い点を踏まえると、枌谷氏の考えは非常に効果的だと思われます。実際にベイジは、各サービスページでユーザーが求める情報をすべて提供する形式を採用しているのです。
(出典:株式会社ベイジ)
ユーザーが摩擦を感じずに情報を得られるように導線を整える、もしくはLP集合体のWebサイト制作をするとよいでしょう。
CTAは、わかりやすく作成しなければいけません。CTAはコンバージョンレートに大きな影響を与える要素です。CTAのわかりやすさは、位置・デザインで決まります。まず大前提として、ファーストビューにCTAを設置しましょう。
Webサイトをじっくりと読み込まないユーザーがいれば、「とりあえず資料請求をして製品サービスを検討したい」と考えるユーザーもいるためです。
(出典:VWO「The Vineyard Tested Its CTA To Increase Conversions」)
ロンドンのヴィンヤードホテルは、テキストベースのCTAから一目クリックできるとわかるCTAボタンへと変更することで、コンバージョンレート32.12%向上させています。
米Campaign Monitorの調査では、ボタンベースのCTAはテキストベースのCTAよりもクリック率が28%向上すると述べられているため、目立つ色のCTAボタンを設置するとよいでしょう。
メールのコンバージョンレートを改善する際は、下記のポイントを確認しましょう。
開封率が低い場合、まずは件名の改善から取り組み、多くの顧客にメールを読んでもらえるようにしましょう。Finances Onlineの公開情報によれば、回答者の64%が「件名で開封するかどうかを決める」と回答。米HubSpotの調査では最も効果的な件名のひとつに「パーソナライズ化されたもの」が挙げられています。
例えば、件名で受信者の名前を呼びかける、「製造業向け」のように業界に特化したメールであることを伝えるなどのパーソナライズ化が考えられます。A/Bテストを実行して、件名の最適化に取り組みましょう。
コンバージョンレートが悪い原因のひとつに、メールの内容が受信者に合っていないことが挙げられます。デモグラフィックや閲覧履歴、購買履歴などに基づいて顧客をセグメント化し、各セグメントに適したメールを配信しましょう。
(出典:optimove「The Power of Segmentation for Marketing Campaigns: The Ultimate Customer LTV Booster」)
イスラエルの企業Optimoveの調査では、セグメント化したマーケティングキャンペーンの展開によりLTVが33%向上するとのこと。セグメント配信をすることで、受信者とメール内容の関連性が高まるため、コンバージョンレートの向上を見込めます。
独Statiscaの調査では、メールの46%がスマートフォンで開封されていると判明しています。BtoB企業においても、スマートフォンでメールを閲覧するユーザーが増加しているため、レスポンシブデザイン(ユーザーの使用デバイスに応じて最適化するデザイン)に対応したメール作成が欠かせません。
そうでなければ、ユーザーによっては崩れたメールデザインが表示されてしまい、コンバージョンレートの悪化やメールリストからの退会を招いてしまいます。デザインのほかにも、件名を15~20文字にする、画像ファイルサイズを最適化して読み込み速度を早くするなどの工夫が必要です。
BtoBの場合、商材にもよりますがリードから顧客となるまで半年~1年くらいかかる場合もあれば、2~3年かかることもあります。そのような場合、「なかなかコンバージョンレートが改善しない」と、あせりが生まれるかもしれません。
しかし前述のように、顧客セグメンテーションとペルソナ設定ができているうえで、集まった訪問者に価値あるコンテンツを段階的に提供し続けていれば、コンバージョンレートは改善しやすくなっていきます。
逆にそこが適当で「コンテンツを段階的に設計しない」「セグメントを区切らない」「ペルソナを作成しない」という状況でコンバージョンレートを改善することは不可能に近いでしょう。マーケティング担当者もセールス担当者も、雑務に追われるわりに成果があまり出ない可能性が、筆者の経験上極めて高くなります。
リードライフサイクルや営業プロセス全体でコンバージョンレートを改善していくポイントをまとめると、以下のとおりです。
地味で緻密な作業ですが、データと検証し改善し続けていきましょう。
ABテストとは、Webサイトやアプリ、広告などにおいて2つのバージョンを用意し、一定数のユーザーをランダムに振り分けて、よりよい結果をもたらすバージョンを判定する手法です。コンバージョンレートの改善を図るうえでは欠かせないアプローチといえます。
ABテストの対象は多岐にわたります。Webサイトならデザインやコピー、CTAボタンの色や文言。メールでは件名や本文、広告の画像やキャッチコピーなどが代表的です。それぞれ2つのバージョンを作成し、ユーザー反応を比較することでコンバージョンレート改善のヒントが得られます。
ここからは、コンバージョンレート改善に繋がるABテストの例を2パターンみていきましょう。
広告のコンバージョンレートを高めるためには、ターゲットユーザーの興味関心を引き付け、クリック後のアクションにつなげる工夫が不可欠です。その最適解を導き出すためにABテストは有効です。
なお、広告の種類によって「何をテストすべきか」は異なってきます。例えば、ディスプレイ広告のバナー画像のABテストでは、以下のような要素を変更して効果を比較します。
(出典:DLPO「ABテストで広告の改善をする方法、クリックされるパターンはどちら?」)
ディスプレイ広告では、これらの要素を組み合わせ、複数のパターンのバナーを作成してABテストを行うことで、ターゲットユーザーに最も訴求力のある組み合わせを見つけ出すことができます。
そのほかにも、リスティング広告なら「タイトル」「本文」など、動画広告なら「サムネイル画像」「動画の尺」といった形で、媒体毎に有効なテスト対象は異なります。
ただし、ABテストから得られる知見は「AとBのどちらがよいか」だけです。「なぜAが良かったのか」といった深掘りは別途行う必要があります。CTA以外の要素が結果に影響を及ぼしている可能性も排除できません。
そこで、さまざま要素でABテストを繰り返し行うことで、少しずつコンバージョンレートの最大化を図っていきます。広告運用においては、絶え間ない検証と改善の積み重ねが成功の鍵を握るといえるでしょう。
メールマーケティングは見込み客とのリレーションを構築し、購買行動を促進するのに欠かせないアプローチです。しかし、メール受信者に開封してもらわなければ、そもそもコンバージョンは望めません。
メールの開封率を高めるためには、受信者の興味関心を惹く件名設定が重要です。そこで、件名のABテストを行うことで最適なバージョンを割り出すことができます。
例えば、セミナーへの参加を呼びかけるメールを配信する際、2つの件名を用意し、リスト登録者を無作為にA・Bの2グループに分け、異なる件名のメールを配信してテストを行います。
テスト後に開封率とCTRを確認し、より高いパフォーマンスを記録した方の件名を採用することで、コンバージョンレートの向上が期待できます。
さらに、メール本文のABテストも有効です。同じ内容でも表現を変えることでユーザー反応は大きく異なります。本文のボリュームや内容の順番、ビジュアルの使い方、CTAの配置など、さまざまな要素についてABテストを行いましょう。
加えて、配信日時のABテストも検討すべきです。平日・休日、早朝・日中・夜間などのパターンを比較し、ユーザーが最も反応しやすいタイミングを割り出すことが可能です。メールマーケティングにおいては受信者に最適化されたアプローチが求められます。ABテストの知見とユーザーの行動データを掛け合わせながら、継続的な最適化を図りましょう。
コンバージョンレートは、マーケティングの成果を表す重要な指標です。コンバージョンレートを計測することで、Webサイトやメールマーケティング、Web広告などの各施策の効果を測定し、改善点を特定できます。
しかし、コンバージョンレートをみるだけでは、効果のある改善点の特定は困難です。重要なのは、各施策におけるコンバージョンレートに影響を与える要素を把握すること。Web広告なら、広告の表示回数やクリック率など。メールマーケティングなら、開封率やクリック率などが影響を与えます。
(出典:adflex「KPIツリーとは?Webマーケティングで重要な理由や作り方を5ステップで解説」)
ロジックツリー(課題を分解して具体的な原因や解決策をツリー上に書き出すフレームワーク)などを活用すれば、効率よくコンバージョンレートのボトルネックを発見できます。
コンバージョンレートを出す計算式は単純です。Google オプティマイズなどの無償のツールもあります。ただし、そこからコンバージョンレートを向上させていくことが大変なのです。
コンバージョンレートの数値をもとに改善すべき箇所をピックアップし(仮説を立てて)、実際に改善やテストをして、再びコンバージョンレートを検証するといった繰り返しです。まさしく数字と格闘するような感じだといえます。しかし、数字は嘘をつきません。コンバージョンレートを指標に地道な努力を続けていけば、成果につながっていくでしょう。