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【BtoB SaaS企業向け】5Forces(ファイブフォース)分析とは?業界分析を行う基本フレームワーク

5Forces(ファイブフォース)分析とは、米国の経営学者Michael E. Porter(以下ポーター)氏が提唱した、競争要因の分析フレームワークです。

市場における企業競争の状況を「供給企業の交渉力」「買い手の交渉力」「競争企業間の敵対関係」「新規参入業者の脅威」「代替品の脅威」の5つの要因に分別し、それぞれがどのように絡み合っているかを分析することで、業界全体の成長性や収益構造を把握する際に使用します。

本記事では5Forces(ファイブフォース)分析の基本と、海外の有名SaaSBtoBスタートアップの分析例を紹介します。

5Forces(ファイブフォース)分析の基本とは?

5Forces(ファイブフォース)分析とは、業界を5つの競争要因の力関係から紐解き、構造的に把握するフレームワークのことです。

5Forces(ファイブフォース)分析の目的と背景

5Forces(ファイブフォース)分析の目的は、業界の成長性を予測することや、自社が業界内で売上げを伸ばしていくためにどの領域に力を入れるべきかを把握することにあります。新規参入を検討している業界の分析にも活用します。

5つの力

  • Entry(他業界からの新規参入)
  • Rivalry(競合企業の脅威)
  • Substitutes(代替品の脅威)
  • Suppliers(供給者の脅威)
  • Buyers(購入者・顧客の力)

5Forces(ファイブフォース)をSaaS企業などのITツールベンダーにあてはめると、SaaSの特性からバーティカルなツールであればあるほどEntry(参入障壁)は高くなります。

例えば、ANDPADの施工管理に特化した管理系のSaaSなどは、建築業の業界課題を知り尽くしたエキスパートが営業、カスタマーサクセス、サポートなどに従事しています。故に、汎用的なCRMや管理系のSaaSツールと比較すると相対的にEntryや、Rivalry、Substitutesなどの要素が自社に有利に働きやすくなります。

5Forces(ファイブフォース)分析を行うにあたっての前提

5Forces(ファイブフォース)は、経営戦略の古典的フレームワークとして現代でも高く評価されています。しかし、5Forces(ファイブフォース)が生まれた1990年代以降、インターネットが世界津々浦々に普及しグローバル化が進んだことで社会は大きく変貌しました。

業界が比較的固定されていた時代と異なり、VUCAの時代(複雑・あいまいで変化の幅が大きく将来を予測できない時代の意。Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性の頭文字からくる造語)と言われるように、業種間の垣根はあいまいになっています。

一つの業界で革新的なサービスが出ると、まったく別の業界に影響することも珍しくなく、企業の潜在的な競合企業は増えていながら、それをつかみづらい状況になっていると言えるでしょう。この様な時代の変化もあり「5Forces(ファイブフォース)は古い」と言われることがあります。

しかし、現在でもこの5つの要因が業界内で大きな影響を持っていることはたしかです。5Forces(ファイブフォース)に限らず一つのフレームワークだけで、複雑化した市場を解明できるフレームワークはありません。

5Forces(ファイブフォース)分析も、他のマクロ環境分析フレームワークPEST分析SWOT分析などと組み合わせることで、外的要因による業界構造の変化も踏まえた戦略立案に活用することができます。

5Forces(ファイブフォース)分析を構成する要素

ここでは、5Forces(ファイブフォース)の5つの要因それぞれを解説します。

要素1: 新規参入者の力

業界の構造をひもとくには、まずその業界の参入障壁に眼を向けます。新規参入者の力がどの程度あるか把握する必要がありるでしょう。

業界への参入障壁は、規制の有無などに大きく影響されます。参入障壁が高ければ業界内での競争は発生しにくく、障壁が低い場合は新規参入者が次々と登場し、新規参入者の力は強くなり、業界内は競争が激化していきます。

参入障壁となるもの

  • 必要資本(サンクコスト)
  • 流通チャネル
  • 絶対的コスト優位性
  • 行政の方針(規制)
  • ブランド・エクイティ
  • スイッチングコスト

要素2:競合企業の力

企業にとってもっとも気になる存在が、業界内のライバル企業でしょう。競合企業がより先進的な商品を出したり、コストパフォーマンスに優れた商品を出せば、ほかの企業もさらに高機能な商品を出したり、逆に一点突破型の個性あふれる商品を出したりと対抗策をとります。

企業間競争が激しくなることで価格低下が起きれば顧客にとってはありがたいことですが、過当競争になると業界全体の利益率低下に繋がりかねません。競合企業のパワーは以下の項目でチェックできます。

  • 競争企業の数
  • 業界の成長力
  • 競争企業の多様性
  • ブランド・エクイティ

要素3:代替製品・サービスの力

スマートフォンが登場したことで、業界の隅においやられた商品は少なくありません。ノートパソコン、デジタルカメラなどが、苦戦を強いられるようになったことはご存じの通りです。

人々のライフスタイルが変化したことで書籍や雑誌、レジャー、ガムの消費にも影響を及ぼしました。代替品の脅威を探るときは類似した役割を果たすサービスだけではなく、革新的なサービスが自社のユーザーの行動をどう変えるかまで着目する必要があります。

代替品の脅威となるもの

  • 代替品に対する買い手の好み、志向性
  • 代替品の相対的コストパフォーマンス
  • 買い手の切替コスト
  • 製品の差別化への認知度

要素4:買い手の力

買い手(エンドユーザー)の多くが望むことは、極論すると安くて高い品質の製品です。買い手は、選ぶサービスの選択肢が多く、サービスについての情報量が豊富なときに立場が強くなります。近年、買い手の立場はますます強くなりました。

SNS社会となり、顧客は企業の製品・サービスについて豊富な情報を入手できます。企業のWebサイトや広告、営業マンの説明よりもレビューサイトのランキングを信じる顧客が主流となりつつあります。BtoBでも購買行動の約57%を営業マンにあう前に完了しているというデータ(英語)もあるほどです。

米国でキャンピングカーで生活し始める人が増えてきたように、製品・サービスが事業者の想定外の活用をされ、それがSNSを通じブームになることも起こりえます。現在の顧客は単なる一購入者ではなく、一人ひとりが発信能力を持つメディアに変化しているとも言えるでしょう。

  • 購買チャネルの多様さ
  • 買い手のボリューム
  • 買い手の相対的な切替コスト
  • 買い手の情報力(情報の対称性)
  • 既存代替品の有効性

要素5:売り手の力

売り手とは、自社に原材料などを売ってくれるサプライヤーのことを指します。 売り手の数が買い手に比べて多い場合、供給業者が価格をコントロールできないことを意味しており、売り手の交渉力は弱くなります。

また、売り手が提供する製品が差別化されていないとスイッチングコストが低くなり、バイヤーが製造者を転換することが容易であるため売り手の力は弱いでしょう。

逆に、供給業者が自社製品に必須な独自の技術を持っている場合は買い手の力が弱くなります。価格交渉においても売り手の力が強くなるでしょう。

供給企業の交渉力を決める要因

  • 供給品の差別化の程度
  • 代替供給品の存在
  • 供給企業の数、集中比率
  • 販売価格に対する供給価格
  • 供給企業におけるボリュームの重要性

5Forces(ファイブフォース)分析活用には他の分析方法を組み合わせる必要性がある

前述のとおり5Forces(ファイブフォース)分析は、ほかのフレームワークと組み合わせて活用する必要があります。

SWOT分析とPEST分析との関連性

5Forces(ファイブフォース)分析は業界の競合要因を分析するフレームワークであり、いわゆるミクロ外部環境分析フレームワークに相当します。 実際に活用するときはPEST分析など、マクロ環境分析フレームワークと組み合わせる必要があります。

自業界に大きな影響を与える「政治」「経済」「社会」「テクノロジー」の影響を分析するPEST分析をまず行い、業界の未来を予測し業界内を精緻に分析して構造を把握することが大切です。

SaaS企業であれば、業界変動やテクノロジーなどのマクロ環境が事業方針に大きな影響を与えます。例えば、Salesforceに依存してソフトウェアを開発する企業であれば、PESTのT(テクノロジー)に対してSalesforceの技術を考慮しつつ、PESTのS(社会)に対しては、GDPR法などの法案も考慮する必要があるでしょう。

また、業界の構造を可視化したあとには、自社のリソースを正確に把握する必要があります。SWOT分析は、自社の「強み」「弱み」「機会」「脅威」を洗い出すフレームワークです。いかに素晴らしい戦略であっても自社内にそれを実施できる資金力、人材、組織文化などが存在しなければ、途中で頓挫することにもなりかねません。

必ずPEST分析→5Froces分析→SWOT分析と組み合わせて活用しましょう。

海外SaaS BtoB企業の5Forces(ファイブフォース)分析の例

ここでは例として、海外SaaS BtoB企業のリーディングカンパニー、HubSpot、Salesforce、Zendeskの3社の5Forces(ファイブフォース)分析の例を紹介します。

SaaS業界の世界市場規模は2010年代より急成長を続けており、2022年の予測市場規模は約1082億ドル(約15兆円)にものぼります。通信技術の高速化にともない、今後は多様なプラットフォーマーが出現することでしょう。

 

(参照:総務省令和2年情報通信白書)

 

HubSpotの5Forces(ファイブフォース)分析の例

 

(参照:HubSpot

 

HubSpotは、2006年に創業し年平均41%の成長を続けているSaaSユニコーン企業です。世界100か国以上でサービスを展開し86,000社以上の顧客を持ちます。近年は、マーケティングソフトウェアを軸に営業支援、サービス、CRM領域までサービスを拡張しプラットフォームを形成しています。

新規参入者の力

近年、安価なクラウド基盤IaaS、PaaSの登場によりSaaS業界への新規参入自体は容易になっています。しかし、HubSpotはインバウンドマーケティングの提唱者として市場において独自のポジションとプラットフォームを築き上げています。

HubSpotのマーケティングソフトウェアに対する顧客満足度はかなり高く(英語)、新規参入者の力はそれほど強くはありません。

競合企業の力

企業の採用しているツールをWeb上で解析するDatanyzeの2020年8月時点のデータでは、マーケティングオートメーション領域のHubSpotのシェアは28.82%(英語)でAdobe、オラクルを引き離してトップです。

一方、2014年から提供し始めた無料CRM「HubSpotCRM」のシェアは1%以下であり競合大手企業の力は依然強い状況です。

 

(参照:Datanyze(2020.8))

 

代替製品・サービスの力

営業領域の革新的なソフトウェアサービスが、結果的にマーケティングソフトウェアの代替品となる可能性があります。特に、プラットフォーム企業の場合は、部分機能特化したソフトウェアに機能代替として顧客を奪われることが頻繁に起きます。

例えば、A/Bテストに特化したOptimizely(英語)などは部分的代替製品と言えます。そのようなソフトウェアが多様かつ大量に出現した場合、代替製品の脅威となるでしょう。

買い手の力

買い手の力はやや強い状況です。HubSpotはSMBマーケットにおいてコストパフォーマンスに優れたサービスを提供していますが、景気失速が長く続くことで、顧客がより低価格でシンプルな類似サービスにシフトする可能性はあります。

また、多国籍SaaS企業の場合は為替の影響により価格が変動することも往々にしてあり、買い手の力に大きな影響を与えます。

売り手の力

サプライヤーの交渉力は中程度。主要パブリッククラウドプロバイダーAWSとの関係は、スタートアップ支援で協業するなど互いにメリットがあります。

ストレージ、データベースなどのサービスはコモディティ化しており、交渉力はあまり強くありません。ただ、ソフトウェアに導入するAIなど先端テクノロジー部門の強力なサプライヤーは高い交渉力があります。

Salesforce.comの5Forces(ファイブフォース)分析の例

 

 

Salesforce(セールスフォース)は、1999年に設立した世界最大級のSaaSベンダーであり、営業支援ソフトウェア領域のトップ企業です。2020年度の売上げは171億ドル(約1兆8200億円)にものぼります。

新規参入者の力

エンタープライズマーケットへの新規参入者の力は弱いと言えるでしょう。Salesforceの主要市場である先進国のマーケットにおいては、大手企業はデータ保護、プライバシー、機密性についての法的規制を遵守できる業界トップのベンダーを支持する傾向があるため、新規参入者にとってのハードルは高いと言えます。

Salesforceはガートナー社の2020年度のマジック・クアドラントにおいて「CRM顧客エンゲージメント・センター(CEC)」「フィールドサービス管理(FSM」「営業支援システム(SFA)」の3部門でリーダーと位置づけられています。

Salesforceエコノミーと表現される巨大な経済圏を構築しており基盤は強固です。

グローバル市場の新規参入者は中程度。ローバル市場で同時にSaaS市場が急成長しており、今後はインドを中心とするアジア、中南米諸国のSaaS市場の急成長とスタートアップ企業の増加が予測されています(英語)

Salesforceは新興国市場では、ビジネスパートナーを介してサービスを展開していますが、新興国には先進国とは異なるビジネス慣習、法律や税関係、ワークフローがあります。

そのためプロダクト設計、ユーザーインターフェース、カスタマーサクセスをその国に合わせ、低価格でサービスを提供できる新興国SaaSスタートアップ企業には優位性があります。

競合企業の力

競合他社との競合は中程度。2019年、CRMクラウド市場ではMicrosoft、SAPを押さえて40%のシェア(英語)を獲得しています。Datanyzeの調査でも、34.7%のシェアでトップです。

近年は提携企業であるZendeskが競合する領域に進出し、HubSpotは無料CRMを提供することでやはりプラットフォームを形成していますが、シェアを奪うほどの状況ではありません。

ただし、ソフトウェアのレビューサイトG2(英語)での評価を企業規模別(Enterprise、Medium-Sized Business 、Small Businesses)に見ると、Salesforceの評価がトップになるのは中規模以上の企業であり、中小企業マーケットではHubSpotが1位です。

スモールビジネスマーケットにおける競合他社の顧客満足度は総じてかなり高いため、切替ニーズの減少は考えられます。市場の裾野を広げるハードルはやや高くなりそうです。

 

(参照:Datanyze(2020.8))

 

代替品・サービスの力

IT業界は5G の登場により多様なプラットフォーマーが出現し、エコシステムも多様化すると予測されており、BtoB SaaSプラットフォーマーSalesforceにとっての代替品となる垂直統合型SaaS(バーティカルSaaS)が増えてくる可能性があります。

 

 

買い手の力

世界的にデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速しているため、多くの企業はシステムをクラウドに早急に変える必要に迫られています。

大手企業のほぼすべてが営業領域の顧客分析を必要としており、大手企業のニーズにこたえられる競合システムの少なさ、データが最初のサプライヤーに保存されていることによる高いスイッチングコストの発生により、買い手の力は比較的弱いと言えます。

一方、中小企業マーケットについては買い手の力はやや強くなります。Salesforceは現在でもかなり低コストなCRMを提供してますが、シンプルな機能で無料あるいはより安価なサービスで充分な個人事業主、中小企業は豊富な選択肢を持っています。

売り手の力

サプライヤーの交渉力は中程度でしょう。ストレージ、データベースなどのサービスはコモディティ化しています

AI等先端技術を持つサプライヤーは買い手の数に比べて売り手が少なく強い交渉力を持ちますが、Salesforceは積極的なM&Aによりすでに内製化していると言えます。サプライヤーに相当する電力会社が電力コストを引き上げた場合は影響が大きいでしょう。

Zendeskの5Forces(ファイブフォース)分析の例

 

(参照:Zendesk Q2-20-Shareholder-Letter)

 

Zendeskとは、世界23,000社の企業にカスタマーサビスソフトウェアを導入するSaaS業界のリーディングカンパニーです。近年はSalesforceと競合する営業領域にも進出するなど、プラットフォーマーとしての存在感も示しつつあります。

2020年第2四半期の収益(英語)は前年同期より27%成長し、GAAP(米国会計基準)とNon-GAAP(調整済み利益)はそれぞれ、14%、6%向上しています。

新規参入者の力

Zendeskは強固な基盤を築いています。業界内でのスケールメリットを活かし優れた製品を低価格で展開しているほか、近年はSupport SuiteとSales Suiteをリリースするなど、サービスを拡張し強固なプラットフォーム領域を形成しています。

Zendeskは、ガートナー社の「CRM顧客エンゲージメントセンターのマジック・クアドラント2020」において、カスタマーサービスソフトウェアのグローバル市場における「リーダー」に位置づけ。ブランド力、サービスの品質、コスト面とも優位性があり、新規参入者の力は相対的に弱いと言えます。

競合企業の力

2020年時点でのヘルプデスクソフトウェア領域のシェアは、約77%であり圧倒的です(Datanyze(2020.8)。CEO自ら「市場調査しないで起業した」と語るように市場を創出してきた経緯があり、展開するサービスは常に先見性と独自性があります。

競合企業が模倣しにくい強みがあり、既存の企業間の競合は業界内では弱小勢力となっています。

 

(参照:Datanyze(2020.8))

 

代替製品・サービスの力 

Zendeskほど多機能ではないシンプルなクラウドサービスは、Zendeskをオーバースペックと感じる層の代替製品となりえます。

また、ここ数年でグローバル展開をするSaaSがインドから急激に増え始めており、Zendeskの競合として頭角を現し始めたのがfreshworks。カスタマーサービスやサポートの様々な機能を持ち合わせており、Zendeskの代替製品として台頭する可能性が高そうです。

買い手の力 

多くの顧客情報の入ったソフトウェアの切り替えの難しさが原因で買い手の交渉力は弱いと言えます。

一方、中小マーケットの顧客はやや強い力を持ちます。規模が小さく、電話、メール、Web、SNS、オンラインチャットなどの窓口を一元管理・分析できるサービスがオーバースペックである中小企業は価格に敏感であり、低価格で購入する選択肢を常に探します。

Zendeskは値上げによって前述したfreshworksにシェアを奪われた時期(英語)があります。その後のプライシング戦略は慎重かつ巧みであり無料期間が長いところが特長ですが、フリーミアム戦略をとる企業が増えれば買い手の力はやや増していくでしょう。

売り手の力 

売り手の力は弱いと言えるでしょう。サプライヤーの数がバイヤーに比べて多く価格競争にさらされているほか、提供する製品はかなり標準化されておりスイッチングコストも低くなっています。Zendesk のような力のある買い手はサプライヤーを簡単に切り替えることができます。

上記例を含め、その他にも5 Forcesの事例をこちらで紹介しています。興味があればぜひご覧ください。

考察:

5Forces(ファイブフォース)はミクロ環境の分析でありかつ静的な分析です。近年、世界的に同時にSaaS市場が伸びており市場の状況はすぐ変化します。

2020年以降のDX化の加速は3社の追い風になる可能性が高く、とくに国ごとのビジネス慣行の差があまりないカスタマーサービス領域をメインマーケットとするZendeskに有利に働くでしょう。新興国のマーケットは中小企業の比率が高いため、HubSpotにとってもチャンスが広がると解釈できます。

一方、新型コロナウイルスによる世界的な経済失速により新興国で業界再編が起こり中小企業マーケットが壊滅的に縮小すればHubSpotにとっては打撃に。大企業、中堅企業のシェアが拡大することでSalesforceにとって営業展開しやすい環境が登場することになるでしょう。

AIが指数関数的に進化すれば、営業領域とカスタマーサポート領域が近似していくことも想定されます。各社テクノロジーへの投資は活発ですが、すでに海外160か国以上においてオンラインで多様な顧客コミュニケーションを完結してきたZendeskの運用ノウハウが、営業領域においても強みを発揮していくかもしれません。

5Forces(ファイブフォース)分析のやり方

5Forces(ファイブフォース)分析を行う手順を説明します。

Step1:目的と業界を定義する

まず、5Forces(ファイブフォース)分析を行う目的を明確にします。次に、分析対象となる業界の定義を決めます。目的と業界の範囲を決めておかないと、戦略を立てる際に情報のぬけもれがおきたり、認識の違いから、戦略をたてる際の意見のすれ違いが起こりがちです。

例えば、SaaS業界に新規参入するための分析を行う場合、業界全体を精緻に分析すると各領域別にさまざまなプレイヤーがいるため、リサーチにかなりの時間を擁します。

巨大プラットフォーマーの動きは無視できませんが、マクロな市場をどの程度分析するか、自社が進出する領域の隣接市場をどこまでと定義するかなどについて、担当者間で合意を得るようにしましょう。

Step2:情報収集

各項目についての情報・データを集めます。できるだけ公的な機関や信頼できる企業が出している数字にもとづいた資料を収集します。

Web上に情報はあふれていますが、大元をたどれば官公庁や対象企業の公式サイト、大手メディアがソースであることは少なくありません。リサーチする際はデータを収集するべきサイトと、予測や仮説を提唱しているサイトを、切り分けて考えると効率的です。

代替品についてリサーチする際は、業界内のみに視点をおくと把握しづらいため、事前に行ったPEST分析の結果を踏まえて調査する必要があります。

Step3:5つの要因の解釈・戦略を描く

集めたデータと事実をもとに業界の状況を把握します。5つの要因を相対的に比較し、業界内で自社がどの関係性において優位なのかメリハリをつけます(比較は主観ではなくあくまで数字で行います)。

業界内のライバル企業、もしくは顧客を含めた3者間の関係性に視点が向きやすい面がありますが、利益を高めるためには目前にある競合企業だけでなく新規参入者の数、顧客の選択肢の豊富さ、供給企業の価格上昇などの変化も重要です。

5つの要因を分析し、業界の収益構造および自社のポジションをとらえます。

さらにSWOT分析で導きだされた自社の強み・弱みもふまえて、戦略を立案します。競合企業にシェアで勝つことのみを追求しパイの奪い合いになるような戦略ではなく、自社が収益を上げていきやすいポジションに軸足をおき、自社の強みを特化していく戦略シナリオを描いていくことが理想です。

まとめ

5Forces(ファイブフォース)分析の目的は、端的に言えば「現在自社のいる業界は儲かるか?」「これから参入する企業の市場規模と自社が利益を上げられる確率はどのくらいか?」と推定するフレームワークです。

5Forces(ファイブフォース)分析で業界内での力関係が把握できれば、売上げ・利益を上げていくための価格設定、コスト設定、営業・マーケティング施策をどのような優先順位で行えば良いかが見えてきます。PEST分析SWOT分析と組み合わせることで、現実に実行可能である効果的な施策を立てられるでしょう。