近年は、コンテンツマーケテイングが企業の認知度向上、リード獲得、収益への貢献のほか、さまざまな効果を生み出すことが知られ、BtoB企業でもコンテンツマーケティングに取り組む企業が増えています。
意外かもしれませんが、米国の最近の調査ではコンテンツマーケティングに取り組む企業はBtoC企業が70%、BtoB企業が79%。なんとBtoBのほうが多くなっています。
コンテンツマーケティングはどんどん進化しています。ブログ、ホワイトペーパー、ソーシャルメディア、動画、イベント、音声、インタラクティブ・コンテンツなど、多種多様なコンテンツを活用できるようになりました。それらを組み合わせることでますます成果を出しやすくなったと言えるでしょう。
ただし、目的をぶらさず、基本を徹底してこそこのような手法も成果に結びつきます。
本記事では改めて、コンテンツマーケティングの定義、BtoB企業が取り組むべき理由と基本の進め方、BtoBが活用しやすいコンテンツタイプなどを紹介していきます。
まず、コンテンツマーケティングの意味から解説します。ここではマーケティング領域の権威のある、米国のコンテンツマーケティング専門組織Content marketing institute(以下、CMJ)の定義を引用します。
コンテンツマーケティングの定義
和訳:『コンテンツマーケティングとは、価値ある、適切な、一貫したコンテンツを作成・配信することで、明確に定義されたオーディエンスを惹きつけ、維持し、最終的には顧客の有益な行動を促進することに焦点を当てた戦略的マーケティング手法です。』
(出典:Content Marketing Institute)
大事なのは「価値ある、適切な、一貫したコンテンツを作成・配信」というところ。
コンテンツマーケティングとは、ユーザーにとって価値あるコンテンツを提供し続けることで、結果として取り組む企業にさまざまなメリットをもたらす手法です。
一例をあげると、米SEMrushの2019年の調査では、コンテンツマーケティングを実施した企業は、434% 多くの検索エンジン結果ページ (SERP) を獲得、コストが 62% 削減され、5 倍のセールスリードを得ています。
(参考:1827marketing.com)
コンテンツマーケティングの起源と歴史について、CMJが公開している「A BRIEF HISTORY OF CONTENT MARKETING」の図があります。
「コンテンツマーケティング」という言葉自体が公に使われ始めたのは2000年ですが、名称のない時代から実施されていた企業のコンテンツマーケティングの取り組みがまとめられています。
(出典:The History of Content Marketing - Content Marketing Institute)
主要トピックは以下のとおり。
1732年 :
Benjamin Franklin(ベンジャミン・フランクリン)氏が、彼の印刷ビジネスを促進するために年刊の貧しいリチャードの年鑑を最初に発行します。
1800年代:
・Samuel Wagner(サミュエル・ワグナー)氏がアメリカン・ビー・ジャーナルを創刊、現在も発行中。
・ Hartford Steam Boiler Inspection and Insurance Company が The Locomotive を発行しました(現在、米国で同じ名前で継続的に発行されている最も古い会社の雑誌)。
・ジョンソン&ジョンソンは、同社が包帯を販売した医師のニーズを対象とした出版物を発行。
1900年代:
・フランスのタイヤメーカーミシュラン社が「ミシュランガイド(今も有名)」を刊行
・米国の百貨店シアーズは、世界最大の店舗を紹介するラジオ番組を開始。
2000年代:
・オハイオ州のPenton Custom Mediaが「コンテンツマーケティング」という言葉を使う。
・P&Gがティーンエイジャー向けのコンテンツサイト「BeingGirl.com」創設。
2010年代:
・Content Marketing Instituteが創立される
・フォーチュン500に入る米Arrow Electronics 社がUBMのエレクトロニクス・メディア・ポートフォリオを買収
あくまで欧米先進国におけるコンテンツマーケティングの歴史ですが、さらっと押さえておくとコンテンツマーケティングへの理解がより深まるでしょう。
近年はさまざまなコンテンツのタイプが登場し、コンテンツマーケティングは多様性を増しています。日本ではコンテンツ=ブログの印象が強いのですが、以下は、HubSpotがかなり前に作ったコンテンツマーケティングの媒体をまとめたインフォグラフィック。
Articles=ブログ記事のことであり、日本ではコンテンツマーケティングの主流であるブログも、当初からコンテンツマーケティングのほんのひとつでしかないとわかります。
ここでは、BtoB企業のコンテンツマーケティングの基本的な考え方、進め方を解説します。
コンテンツマーケティングは、BtoCでもBtoBでも、官公庁でも、個人でもできるマーケティング手法です。toCなら認知度アップ、役所なら正しい情報発信や組織の信頼度アップ、個人なら自己表現というところが、よくある目的でしょう。
以下は米WordPress VIP 「Content Matters 2023 レポート」における企業のコンテンツマーケティングの目的のランキング。1位〜5位まで%の差はわずかであり多様な目的に活用できることがわかります。
(https://www.marketingcharts.com/cross-media-and-traditional/content-marketing-22847)
日本のBtoB企業の場合も、やはり2位の収益創出、デマジェン、リードジェンを目的とする企業がほとんどでしょう。
コンテンツマーケティングに取り組むときここを意識して目標をしぼりこまないと、アクセス数は稼げても収益につながらないといった事態に陥りがちです。特に初めてコンテンツマーケティングに取り組むときは、必ず最重要目的を明確に定義しましょう。
どの目的が重要かによって、使う媒体、コンテンツの形式、コンテンツの内容が変わってくるからです。目的が多すぎると中途半端な施策になり訪問者は多いのにリードが集まらない、となりがちです。
一方、コンテンツマーケティングの知見が豊富な方には、CMJの創設者兼最高戦略責任者Robert Rose(ロバート・ローズ)氏の言葉を引用させていただきます。
ロバ―ト氏は、コンテンツマーケティングは 多くの場合、他のマーケティング手法より速くも安くも効果的でないとしつつ、「コンテンツから得られる長期的な価値は、エンゲージされたオーディエンスの創造にあり、重要な戦略的資産である購読者を構築すること」にあると語っています。
ベテランマーケターであれば、このように視座を高くもちながら目標設定してコンテンツを制作することで、さまざまな領域へ同時にポジティブな効果が波及するようなコンテンツマーケティングが実施できるでしょう。ロバート氏が公開した「The 2017 Content Marketing Framework」の活用もおすすめです。
コンテンツマーケティングは、CMJの定義にもあるように、価値ある、適切な、一貫したコンテンツを明確に定義されたオーディエンスに届けるマーケティング手法です。
コンテンツを届けたい相手は誰でしょうか?
その誰かを明確にして初めて、その人たちにとっての価値、有益なコンテンツがわかります。
多くのBtoB企業がコンテンツマーケティングを実施する目的も「デマンドジェン=収益の創出」であり、読んで欲しい人は見込み客。その場合、ビックワードに対してのコンテンツよりも、ロングテールのような「ピンポイント」に回答するコンテンツを制作したほうが見込み客に見つけてもらい、役立ててもらい、専門性を認めて信頼される確率が高くなります。
そのためには、顧客理解を相当深めてコンテンツを作成する必要があります。 しかし、直に顧客と接する機会が少ないマーケターにとって顧客理解は簡単ではなく、顧客からみたら浅いコンテンツを作ってしまうリスクがあります。
そこで重要なのがペルソナ作成です。ペルソナ作成とは、商品の開発者、マーケターなどが自分のメンタルモデルを投影しないためのツールでもあります。必ず工程を飛ばさないで作成しましょう。
次に、見込み客はどのように情報を収集しているのか? なぜ我が社の商品を選んでくれるのか? 見込み客にタイミングよく最適なコンテンツを届けるためには、どうすればよいか? を可視化するために、カスタマージャーニーを作成します。
カスタマージャーニーとは、見込み客の購買における心理・行動をひとつの点ではなく、流れで見える化することです。カスタマージャーニーマップのデザインは自由です。
米国のAberdeen Groupの研究論文では、適切なカスタマージャーニーを作成する企業は販売サイクルが 18 倍速く、コストを 10 倍抑制し、マーケティング投資収益率 (ROMI) が 54% 高いと報告されています。カスタマージャーニー作成の詳しい方法はこちらの記事をご覧ください。
(出典:https://www.superoffice.com/blog/customer-journey/)
ペルソナとカスタマージャーニーを作成したら、コンテンツマップを作成します。
カスタマージャーニーにそったコンテンツが網羅されていなければ、せっかく関心をもってくれた見込み客が、途中で離脱してしまうリスクがあるからです。
カスタマージャーニーのアーリーステージ、ミドルステージ、レイトステージにどのようなコンセプトのコンテンツを作るかをコンテンツマップにまとめます。
以下はHubSpotのコンテンツマップの例。「気付き」「検討」「決定」のフェーズごとに必要なコンテンツのトピックが箇条書きされています。コンテンツマップについてはこちらの記事をご覧ください。
(出典:HubSpot)
次に、コンテンツをどのプラットフォームで展開するかを決めます。ソーシャルメディアやブログ、Webサイト、プレスリリース、ホワイトペーパー、メール、イベントほか、さまざまな種類がありますが、基準は見込み客が好む形式かどうかです。
あわせてコンバージョンポイントも過不足なく設置しましょう。
コンテンツマーケティングを実施したら、コンバージョン率、トラフィック数、エンゲージメント率、共有数、売上げなどの指標をトラックして、コンテンツマーケティング戦略の改善点を探し改善し続けます。KPIを設定してPDCAを回しましょう。
成功したコンテンツをほかの形式で再利用すると効率よく成果につながります。
無料の役立つ情報を嫌がる人はToCでもToBでもいないので、コンテンツマーケティングはどのような業界でも喜ばれます。
しかし、BtoB企業には以下の理由により、コンテンツマーケティングを特におすすめします。
BtoCとBtoB企業の認知獲得のスタンスは異なります。例えば、Starbucks、MacDonaldをはじめとするフードサービス系企業なら、大げさにいえば世界中の人すべてが見込み客になりえるビジネスモデルです。食に関与しない人はいないからです。
同じように衣食住関連の消費財の企業なら、ほとんどの家族が購買層となるでしょう。もちろん、しぼりこんだ層にマーケティングを実施しますが、元々対象の層が大きいので的が大きく外れても一定の認知獲得効果はのぞめます。
しかし、BtoBは違います。対象は、ある業界の、ある企業、ある部門の購買担当者or経営者というごく僅かな人たち。見込み客ではない人のほうが圧倒的多数なので、ピンポイントでアプローチする必要があります
※上記はイメージです。
BtoB企業が、一般の雑誌広告などに露出してもごく僅かな見込み客にしかメッセージは届きません。人口比で言えば、はるかに少ない見込み客数しかいないからです。
ゆえに、広告出稿など情報の発信先も一部の専門メディアやイベント頼みになります。しかし、広告の出稿先や展示会、エクスポの開催回数にも限りがありますし、ほぼ課題が顕在化している人たちにしか発信できず「ど」新規に到達しづらい環境があります。
BtoB企業が自社でコンテンツをせっせと作り、潜在的なお客さんに見つけてもらうことは、大きな意義があります。
BtoBの場合、BtoCと比較してリードタイム(セールスサイクル)が非常に長く、商材にもよりますが6か月から2年、それ以上の範囲のタイムラインになることもよくあります。
大きな理由は、予算採りのタイミングが決まっていることです。タイミングを逃すとよほどのことがない限り、次の期(1年、半期、四半期)などに先送りになります。
それゆえ、その間のフォローアップが重要になります。昔なら営業マンが「よく通ってくれたから」という理由で発注されましたが、これもただ会っていたわけではなく、仕事にならない期間に役に立つ情報を届けたりアドバイスをしたりと信頼関係を築いていたからです。
発注企業側も、この期間のベンダーの対応を非常に注意深く見る傾向がありました。予算獲得時期だけひょっこりやってくるベンダーよりも信頼され、相見積やコンペの前に実質依頼されてコンペは形式だけだった、というケースも少なくなかったでしょう。
しかし今はデジタル化、コロナ禍をへて購買行動もオンラインの時代。約70%がオンラインにシフトしたため、信頼性を構築する役割は営業マンからコンテンツに変わっています。
出会えていない段階での信頼関係を築くため、コンテンツマーケティングの役割が重要です。
権威性とは、マーケティングにおいては「専門の知識・技術について、信頼され高い水準にあると認められている度合い」を指します。
BtoBの場合、サービスや製品が良いことと同じくらい、導入決定理由に「ベンダーを信頼できるから」などの理由が上位に上がってきます。案件の規模が何百万円、何千万円、何億円単位と大きくなるため、購入についてはできるだけ安心できるベンダーに依頼したいという心理が働くからです。
明らかな独自性、メリットがない場合、業界1位のベンダーに発注するのは、トップベンダーが1番多くの顧客から指示され、コンプライアンスにのっとった取引を行うという社会的コンセンサスがあるからです。
コンテンツマーケティングを実施することによって、中小企業であってもニッチな領域で権威性を持つことが可能です。
オンライン上、Twitterなどのひとつのプラットフォーム上であっても、第1人者として認識されることで権威性がアップし、いわゆるソートリーダーになることができます。
見込み客から信頼を得られやすくなるだけでなく、稟議プロセスにおいてDMUのような複雑な社内利害関係者たちからも支持されやすくなります。一から説明しなくてもよいからです。
コンテンツマーケティングの手法は、大きく2つにわけるとパッシブ・コンテンツ(受動的に見るコンテンツ)とインタラクティブ・コンテンツ(視聴者も参加するコンテンツ)があり、組み合わせるとさらに効果がアップします。
ここでは、おすすめの手法を紹介します。なお、今回はオンライン中心になります。オフラインのコンテンツについてはこちらの記事をご覧ください。
ウェブサイトコンテンツとは、ビジネス領域では企業が自社を紹介する公式サイトのコンテンツを指します。ほとんどの企業がもっており、持つアドバンテージを感じさせないWebサイトですが、コンテンツマーケティングにおいては重要な役割をはたします。
最初にその企業を知ったとき、あるいは検討中、あるいは購入後も、多くの人は公式Webサイトをチェックします。この項では他の手法も紹介しますが、Webサイトこそコンテンツマーケティングの基本であり中心だと言えるでしょう。
米国FocusVision の調査によると、BtoB 顧客の 70% がベンダーのサイトから直接コンテンツを発見しています。2位がインターネットサーチで、3位がソーシャル メディア。Webサイトが情報ソースとして信頼されていることは明らかです。
(引用元:https://backlinko.com/hub/content/b2b)
以下は、会計SaaSを提供するマネーフォワード社の公式サイト。トップページの上には社会的評価とキャンペーン、スクロールしていくとサービスの説明、無料トライアル、電子帳簿保存法、導入事例の一部、価格プラン、お役立ち資料ダウンロード、よくある質問をすべて見ることができます。
見込み客が必要とする一連の情報が綺麗な流れでまとまっています。ブログやSNSから流入した人たちの期待に十分応えられるWebコンテンツの構成だと言えます。
Webサイトの例:マネーフォワード公式サイト
(出典:https://biz.moneyforward.com/)
企業によっては、無理してビジネスブログなどを持たなくても、WebサイトにBtoBの鉄板コンテンツである事例を多く掲載することだけで、見込み客をある程度増やすことができるでしょう。Webサイトの1ページとしてブログを始めることもできます。
事業内容、ボードメンバーの紹介、事例、サポート体制、IR情報、コンプライアンス指針、ESG などの社会的活動などのコンテンツを充実させれば、既存顧客からの信頼も高まるでしょう。
Webサイトは、見込み客創出、既存顧客のエンゲージメント向上、社会からの信頼度向上に大きな役割を果たします。
(出典:Illustration 20391736 © | Dreamstime.com)
ソーシャルメディアコンテンツとは、SNS上に投稿されるコンテンツです。プラットフォームによりテキスト主体のこともあれば、画像、動画、インフォグラフィックなどさまざまなコンテンツを組み合わせられる場合もあります。
近年は、Google検索の信頼度が低下しているので、若い世代ほどソーシャルメディアで情報を探す傾向があり、アーリーステージでの認知度向上にはかなり効果があります。前項の調査でも53%がSNSでBtoBコンテンツを発見しています。
また、見込み客や顧客とのコミュニケーションを深められるため、エンゲージメント向上にも効果的であり、そこからまた拡散につながるため、見込み客創出サイクルが生まれます。
2021年9月のファベル カンパニー社調査によると国内のBtoB企業が活用するSNSの1位はYouTube。2位はTwitterです。もちろん業界により異なりますが、こういったトレンドも参考になります。
SNS活用の例:
以下は、Slackを超える勢いで成長中のグローバル人材プラットフォームdeel社の4周年記念ツイート。美味しそうなケーキの写真が強力なアイキャッチとなっています。
(出典:https://twitter.com/deel/status/1637791201821638657)
ブログはオールマイティなコンテンツです。コンテンツマーケティングのトレンドの移り変わりは早く、ここ数年だけでもいろいろな手法が登場していますが、ブログコンテンツは安定的に活用されています。
2022年時点のContent marketing instituteの調査で、BtoBマーケターが過去1年でもっとも成果につながった手法の3位につけています。
(出典:Contentmarketing institute)
BtoBにおいては、最初に何かを知るきっかけが動画であれ、イベントであれ、検討がすすめば、必ずといっていいほど「文字で詳しく理解したいフェーズ」がでてくるので、今後も記事コンテンツは有用であり続けるでしょう。
ブログコンテンツは、わかりやすく書くことも、テーマを深掘りすることも、テキストだけなので比較的簡単です。コストもそれほど高額ではないので制作費、広告宣伝費をあまりかけられない中小企業におすすめ。ブログ記事が、広告にかわり24時間365日メッセージを発信してくれます。
ブログコンテンツ例:LIG Blog
(出典:https://liginc.co.jp/blog)
上記はLIG株式会社の公式サイトのページにあるブログのトップページ。LIG社は上野の小さいWeb制作会社でしたが、早期にブログコンテンツに取り組み、その内容の奇抜な面白さ、深い知見などから支持され、収益向上、権威性獲得に成功しました。
中小企業でもブログで成功できる見本のような例です。HubSpotの調査でもブログを持つ中小企業が、コンテンツマーケティングに従事していない企業よりも126% 多くのリード数を獲得しているというデータがあります。ブログ記事が蓄積されることにより、信頼され、リード獲得、収益向上につながることは十分期待できます。
『ナニワ金融道』の著者である故青木雄二氏がかなり前、「今の30代、40代はマンガが育てたようなもんや、学校教育ではない」といった趣旨のことを豪語されていましたが、そう言いきれるほど漫画コンテンツが日本人の精神性、知力に影響を与えたことはたしかでしょう。
今でも多くのビジネスコミックが読まれている日本では、BtoBマーケティングでマンガコンテンツを活用して受け入れられる土壌はできています。
例えば、名刺管理ツールのCAMCARDのマンガコンテンツ。いろいろな長編のマンガを惜しみなく完結バージョンで出しています。
名刺管理ソフトは日本ではSansan.が圧倒的知名度。世界的シェアの高いCAMCARDは苦戦している感じですが、後発ポジションとして、まず知ってもらう、理解してもらうためにマンガコンテンツを展開するのは非常によいでしょう。
(出典:CAMCARD-BUSINESS-導入で見えてくる営業戦略の革命!【展示会編】)
マンガはつい読んでしまうコンテンツ、つい主人公に感情移入するコンテンツなので、最後まで読むとベンダーへの好感も増し、「CAMCARDもがんばってね」といった心情になりました。認知度アップ、エンゲージメント向上にかなり効果がありそうです。
動画コンテンツは、コンテンツマーケティングにおいて強力な新興勢力で、活用は急速に進んでいます。2021年のHubSpotの調査では、87% のマーケティング担当者が「マーケティングキャンペーンで動画を使用すると ROI がプラスになる」と報告しています。
同じく、HubSpotが2022年5月に公表した動画トレンドの調査では、最も効果的な動画プロモーション戦略のランキングは以下のとおりで、トップはSNS+動画の組み合わせです。
SNS+動画の例
(出典:HubSpotのTweet )
広告コンテンツは、日本企業のマーケ部門が得意とする領域です。広告コンテンツは、確かに宣伝なのですが、そのクリエイティブさで人々をひきつけ話題を呼び、共有されます。オンライン、オフラインにおいて潜在層の掘り起こしに欠かせないコンテンツだと言えるでしょう。
何より広告コンテンツにはスピード、即効性があります。例えばSEO対策によってGoogle検索上位に入るまでには時間がかかりますが、リスティング広告なら、キーワードにもよりますが最短1日でGoogleのトップページに掲載できます。
また、広告は媒体を選ぶことで訴求する層をしぼりこむことができます。SNSなら、地域や年齢、性別、興味などに基づいてピンポイントで展開できるためマーケティングROIも高い手法です。
広告の種類
インフォグラフィックとは、図や表やイラストなど、情報を視覚的に表現したコンテンツです。ブログ記事やSNSの投稿にインフォグラフィックを加えるだけで、コンテンツは目を引き、わかりやすくなり、何より記憶にのこりやすくなります。
ある調査ではインフォグラフィックは、単純なテキストベースのブログ投稿よりも30 倍読まれる可能性が高くなる、ということです。米Customer Magnetism社の調査では、インフォグラフィックを使用しているブログは、使用していないブログよりも 12% 多くのトラフィックを獲得しています。(参考:kinsta.com)
内容の理解率に関しては、医薬品のラベルがイラスト付きの場合、テキストだけのラベルよりも理解率が25%アップするというデータが出ています。さらに、文字とイラストによる説明・指示に従う人は、テキストだけの指示に従う人よりも323%良い結果を出すそうです。(neomam.com)
音声コンテンツは、最近注目されるようになったコンテンツ型式です。BtoBにおいてその効果は未知数ですが、徐々に活用が進んでいます。例えば、音声配信サービスはVoicyでは「声のオウンドメディア VoicyBiz」を展開し、今のところBtoCがメインですが大手企業においてマーケティングでの活用が進みつつあります。
例:Voicy
(出典:Voicy)
音声コンテンツについて留意すべきは、そのユーザー属性です。例えば、オトナルと朝日新聞社が共同で実施した「ポッドキャスト国内利用実態調査2021」によると、ポッドキャストユーザーの職業では「経営者や管理職など企業の意思決定層が14.3%を占め、非ユーザー内の比率より高い」ことが報告されています。
必ずしもビジネスに利用しているかは不明ですが、BtoBの見込み客層と重なっている可能性があるので、リード獲得に適している可能性があります。VoicyBizを活用する企業も、グロービス経営大学院、株式会社フライヤーなど比較的知識層をユーザーに持つ企業。マネジメント層は多忙なので、ながら聞きで情報収集するのを好むと考えれば、今後に期待できます。
音声コンテンツの素材である「声」は感情、自信、知性を伝えることに優れるので、発信者の人柄、魅力を伝えるのに有効です。リスナーのエンゲージメントを高めることが期待できます。
あるいは「ゆっくり」などに代表される音声合成ソフトも、かなり人間的な声の印象を与えます。
主要なプラットフォーム
スライドコンテンツとは、ブラウザ上でビジュアル画像が次のページの画像に次々に切り替えられるコンテンツのことです。情報がコンパクトにすっきりまとめられ、直感的に内容がわかるスライドコンテンツは、理解しやすく読む側にとってとても助かります。
スライドコンテンツは、図表やインフォグラフィック、動画、音声などさまざまな組み合わせにより美しく仕上げられます。ブログ記事やソーシャルメディアで展開すると、アイキャッチにもなりますし、ユーザーの「見よう」というアクションを引き起こす効果があります。ユーザーが能動的に関与するインタラクティブ・コンテンツのひとつです。
スライドシェアサイトに投稿すると拡散されたり、バックリンクをもらったりするので、SEO効果にもつながります。
【メジャーなツール】
先ほどのスライドコンテンツ、HubSpotのSNS+動画コンテンツなどは、パッシブ・コンテンツにインタラクティブ・コンテンツを組み合わせた例です。その他、インタラクティブにはクイズ、ARほか、いろいろなタイプがあります。
このようなインタラクティブ・コンテンツの効果には目を見張るものがあります。CMJの調査では、81%がインタラクティブ・コンテンツは注目を集めると回答し、79%が、インタラクティブコンテンツは従来のマーケティング戦術と組み合わせるとブランドメッセージの保持を強化すると回答しています。
その他にインタラクティブ・コンテンツの効果を証明するさまざまなデータが出ています。
例:シミュレーションコンテンツ - freee
(出典:freee)
freee株式会社は、さまざま税金についてのシミュレーションができる無料のコンテンツを公開しています。青色申告の税額診断、副業の税額診断、インボイス施行後の消費税納税額のシミュレーション、仕入れ税額控除シミュレーション、など種類が豊富であり、いずれも会員登録不要でブラウザ上で簡単に質問に答え、数値を計算できます。
このようなブラウザ上で簡単に計算ができるコンテンツもインタラクティブ・コンテンツです。freeeの見込み客層である個人事業主、スモールビジネスオーナーは会員にならない時点で自分の困りごとを解決できるので、このようなコンテンツはfreeeの認知度アップ、エンゲージメント向上につながるでしょう。
例:インタラクティブ動画 - MIL-
(出典:MIL株式会社)
インタラクティブ動画プラットフォームを提供するMIL株式会社の事例をいくつか紹介します。MIL社は累計1100社以上、インタラクティブ動画制作数1万本以上の実績をもつインタラクティブ動画編集プラットフォームです。
MIL社のトップページには豊富な事例が、動画ギャラリー、インタビューコンテンツの形式で掲載されています。以下に一部を紹介します。
(参考:MIL株式会社)
このように公式サイト、ブログ、SNSにピンポイントでインタラクティブ・コンテンツを配置することはマーケティング効果を高めます。インタラクティブ・コンテンツについての詳細はこちらの記事をご覧ください。
コンテンツマーケティングという言葉が生まれてやく20年。コンテンツマーケティングはその定義も拡張し、アプローチ手法も進化し続けていると言えるでしょう。
新しいコンテンツを作り出すのはなかなか大変ですが、最近はChatGPTやBingなどのAIの登場で、コンテンツ制作に伴う作業が大幅に軽減されるようになりました。
もちろん、そのままではGoogleが評価しないので、リサーチやたたき台作りに使ったりと工夫は必要ですが、マーケターがこれまでより顧客に向き合う時間を増やすことができるようになったことはたしかです。
新しく登場したツールほど使いやすく、リーズナブルな傾向もあるので、どんどん取り入れることをおすすめします。
なお、コンテンツの種類をいくつか紹介しましたが、コンテンツタイプも届け方も手段でしかありません。ぜひ、今一度コンテンツマーケティングの目的と、誰のためにコンテンツを作るのか再確認してみましょう。
そして、顧客理解のために営業同行、ロイヤル顧客インタビュー、ユーザーコミュニティでの交流などを実施することをおすすめします。見込み客の困りごとに回答できる、望んでいることを達成するための知見やノウハウを得られるようなコンテンツ作成を目指してください。