レプトのBtoBマーケティングのブログ|株式会社LEAPT(レプト)

市場拡大やシェア拡大を行うために考えるべきこと

企業が成長していくためには市場拡大、シェア拡大が必須です。2022年、資金に余裕のある企業なら「メタバースだ!」「インド・アフリカ市場を狙え」「ブロックチェーンを使ってなにか始めよう」と新しい市場に果敢にチャレンジしているかもしれません。

少し目ざといSaaS企業なら「まだ大手がいない〇〇のバーティカルSaaSに打って出る……」と虎視眈々と動いているかもしれません。地方の会社でも「この地のシェアNo.1はゆずらない!」とNo.1戦略を進めているところは多いでしょう。

ちなみにSaaS業界はまだ絶賛成長中。競合他社と市場のシェアを奪い合うというよりは、互いが成長しながらSaaS市場を拡大している、大変恵まれた業界です。

とはいえ、年々参入者が増えているのも事実。着実に市場拡大、シェアを拡大していくためには、自社の強みや顧客、業界の動向、メガトレンドの流れを知って、たしかな戦略を進めなければいけません。

本記事では、市場拡大、シェア拡大に役立つ考え方やフレームワークを紹介します。

市場拡大とは

市場とはマーケットのことです。市場拡大とは、自社のビジネスを行う市場を拡張していくことです。企業は、まったく新たな市場に参入する、隣接する市場に参入する、あるいは市場自体を創造することもあります。

市場の定義は多様です。例えば、金融業界、建設業界、IT業界といったおおざっぱな分類もあれば、より細かく定義もできます。SaaS業界もエンタープライズ市場、スモールビジネス市場、ホリゾンタル市場、バーティカル市場あるいはCRM、MAとサービスで定義していくことができます。

地理で分ければ国内と海外。さらに細かく米国市場、中国市場、東南アジア市場など各国、地方と細かく分類できます。このようにさまざまな分類で定義できるのが市場です。

伸びている市場か?

市場には伸びている市場と縮小している市場があります。市場拡大は、基本的には伸びている市場を目指すべきです。

例えば今ならAI関連、メタバース関連などは、できたばかりの小さい市場ですが、大きな成長が予測されています。

  • 例:AR/VRディスプレイ市場規模

(出典:総務省

エリアを切り口にすると、新興国が急成長中です。2021年に公表された国連の2020〜2100年までの人口推移予想を見ると、アフリカの爆発的成長が予測できます。

一方、日本は人口減により国内市場が縮小中です。少子高齢化も踏まえて国内市場はシビアに見ていかなければいけません。子供が減りつつあり老人が急増している国のどの市場に力を入れるか、新たなマーケティングが必要になるでしょう。

(出典:国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

(出典:内閣府

どのように市場を定義するか?

市場の分類には、以下のようにいろいろな手法があります。市場を拡大する際には、まず自社の製品・サービスが拡販できる市場を見つけることが非常に重要です。市場を縦横斜めから分析し、新たな市場を発見するくらいの気持ちを持ちましょう。

市場セグメンテーションの例

  • デモグラフィック・セグメンテーション(人口統計学的に定義)
  • サイコグラフィック・セグメンテーション(個性、心理)
  • ジオグラフィック・セグメンテーション(地理)
  • ビヘイビア・セグメンテーション(購買行動)
  • ファーモグラフィック・セグメンテーション(業界・企業規模等)

シェア拡大とは

シェア=市場占有率という意味です。シェア拡大とは、ある市場の中で自社の占有率を上げることです。例えば、セールスフォース社は数年で急速にシェアを拡大し、ついには2019年にCRM市場内でシェアNo.1になりました。一方、Oracle社、SAP社はシェアを低下させていきました。

シェアはあくまで占有率なので、市場規模が大きくなっていて売上げが各社伸びていても、それが業界の何%を占めるか相対的に比較します。シェアを拡大するためには、業界内でライバル企業よりも顧客に支持される必要があります。

(出典:.salesforce.com/

業界内でシェアを拡大するためには、商品力、マーケティング力、営業力、サポート体制など総合力が問われます。

市場拡大とシェア拡大に活用できるフレームワーク

市場拡大とシェア拡大に活用できるフレームワークを紹介します。

アンゾフマトリクス

アンゾフマトリクスは、「戦略的経営の父」と呼ばれる米国のH. Igor Ansoff(以下アンゾフ)氏が開発したマトリクスです。

経営幹部やマーケターが成長戦略を考案する際に役立つフレームワークであり、以下のように市場を4象限に分類します。縦軸は「既存市場」「新規市場」、横軸が「既存製品」「新規製品」。アンゾフは事業拡大にはこの4種類があるとし、それぞれのリスクと可能性を説明しています。

(出典:経済産業省

1.新規市場×新規製品投入:

新しい市場に新しい製品・サービスを投入する戦略で、多角化戦略と呼ばれます。以下の4種類の戦略があり、それぞれ難易度は異なりますが、一般にもっともリスクの高い戦略といわれます。

・水平型多角化:既存市場と隣接した市場に既存技術を活かした新製品を投入

・垂直型多角化:既存市場の川上・川下の市場に、既存技術を活かした新製品投入

・集中型多角化:これまでとまったく違う新規市場に既存技術を活かした新製品を投入投入

・集成型多角化:これまでとまったく違う新市場に既存技術と関連のない新製品を投入

2:既存市場×新規製品:

既存市場に新しい製品・サービスを投入する戦略です。すでに顧客理解ができているため顧客のニーズにそった新サービスを提供できる確率が高く、比較的リスクが小さい戦略です。例えば、驚異的な高収益で知られるキーエンス社は、営業マンの徹底したヒアリングにより顧客ニーズに沿った独自性の高い新製品を開発し成功しています。

3:既存市場×既存製品:

既存市場に既存の製品を浸透させていく戦略。つまり、企業が日々行っている既存事業を極める戦略です。定期的なキャンペーン、他社よりも熱心な新規開拓活動、予算の投入、営業員の増強、アフターサービスの徹底などで業界内のシェアを拡大していきます。

4:既存製品×新規市場

既存製品をこれまでと異なる市場に売り出す戦略です。たとえば、人向けに出していたプロダクトをペット向けに出したり、女性向けの製品・サービスを男性向けに出す、国内向けだったプロダクトを海外に展開する戦略などがあてはまります。製品・サービスが同じなので、比較的リスクが低い戦略です。

GEビジネススクリーン

GEビジネススクリーンとは、ゼネラルエレクトリックス(GE)社と、米国系戦略コンサルティングファームのマッキンゼーアンドカンパニー社によって開発された成長戦略を考案する際に役立つフレームワークです。(GEマトリクス)とも呼ばれます。

簡単に言うと、縦軸が「業界の魅力」で高、中、低と3分類、同じく横軸「事業の競争力」も高、中、低に分類し掛け合わせることで、9象限の分類ができます。「9ボックスマトリックス」とも呼ばれます。

頭の中で、この事業は魅力があって競争力もあると何となくイメージしていた事業の強さが、この9種類のマトリックスにマッピングすることで、実際は自社にとってどの程度の優先順位なのか、力を入れるべきかいなかが明確になります。

以下の図のように9象限のどこに位置するかで、自社のリソースをどう配分するか決めていきます。

GEビジネススクリーンは特に、大企業が事業投資に優先順位を付ける際に非常に有用です。

プロダクトポートフォリオマネージメント

「プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)」とは、企業が複数の製品・サービスを展開する際に、各プロダクトの成長可能性を踏まえて資源を最適に分配・投下するためのポートフォリオを決めるマネジメント手法です。

コンセプトを開発したのが、米国系戦略系コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ (Boston Consulting Group) だったこともあり「BCGマトリクス(ボストンコンサルティングファームマトリクス)=プロダクトポートフォリオマネジメント」という解釈が一般化しています。

ここでは、プロダクトポートフォリオマネジメント=BCGマトリクスという定義で解説します。

プロダクトポートフォリオマネジメントでは、市場成長率(伸びている市場か)と相対的市場シェア(NO.1シェアの企業に対するシェア)の2軸で、事業を以下の図のように「問題児」「スター」「金の生る木」「負け犬」の4象限に分類します。

1:問題児(クエスチョンマーク)(市場成長率:高、相対的市場シェア:低)

「問題児」に該当する事業は、市場自体は伸びているのに、競合トップ企業に対するシェアが低い状態です。現在のSaaS市場のように市場自体が拡張している場合、事業の可能性は本来あるのですが、プロダクトに課題があったりトップ企業があまりに強力すぎたりなど、何らかの原因があるはずです。シェアが低い現認を把握して対策を立てる必要があります。

2:花形(スター)  (市場成長率:高、相対的市場シェア:高)

「花形(スター)に」位置づけられる事業は、市場も順調に成長しており、市場内での自社のシェアも高いため、ますますの成長が期待できると解釈されます。ここに該当する事業は優先的に投資すべきです。

3:金のなる木 (市場成長率:低、相対的市場シェア:高)「金の生る木」に該当するのは、すでにシェアが高くなっている収益性の高い事業です。ただし、市場成長率は低く成熟期に相当しますので、ここから大きく飛躍する事業ではありません。

会社にとっては安定した収益を得られる柱的な事業のため、成熟期をできるだけ引き延ばす施策に力を入れ、ここで得た収益、ナレッジを新規事業に投資することが大切です。

4:負け犬 (市場成長率:低、相対的市場シェア:低)

「負け犬」に分類される事業は、市場も成長せず、さらに市場内でのシェアも低い事業が分類される象限です。一般に赤字事業ですが、単体では赤字でも他のプロダクトの補完的な役割を持っている場合は撤退すべきではありません。全体的な製品戦略の中での位置を踏まえて、撤退か継続かを判断すべきです。

イノベーター理論

イノベーター理論(Diffusion of Innovation)とは、米国の社会学者Everett M. Rogers(エヴェリット・ロジャース氏。以下、ロジャース)教授が提唱した、新しいアイデアや製品が普及していくプロセスを説いた理論です。「普及学」ともよばれます。

ロジャースは、アイデアや製品は「イノベーター」「アーリーアダプター」「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」「ラガード」といった異なるチャネルを介して、時間をかけて社会に伝わっていくと提唱しました。

ロジャースは、採用者(製品・サービスを購入する人)を初期~後期の時間軸で5種類に分析しています。さらに新しい製品・サービスが広く普及するかは、イノベーター2とアーリーダブターの合計16%が鍵になるとし「普及率16%の論理」を提唱しています。

  • イノベーター:革新的採用者
  • アーリーアダプター:初期採用層
  • アーリーマジョリティ:初期多数派
  • レイトマジョリティ:後期多数派
  • ラガード:遅滞層

(画像出典:NEDO

イノベーター

イノベーターとは、マーケティング領域では、新しい斬新な製品・サービスが現れたときに最も早くとびつく人たちでしょう。今なら量子コンピュータに興味をもっている人かもしれません。

イノベーターは事例などがなくてもまったく気にせず、自分自身の関心にもとづいて製品・サービスを購入します。完璧なプロダクトは求めておらず、とにかく革新的なプロダクトをいちはやく試したいと考える層で、全体の2.5%存在します。いわゆるオタクと言われる人たちです。

アーリーアダプター

アーリーアダプターは、イノベーターの後に新しい製品・サービス、テクノロジーなどを認めて購入する層です。単なるオタクではなく、革新的なプロダクトが世に普及するだろうということを知性、情報収集、イノベーターの動きをもとに判断し導入します。

さらに、それを世間に広く伝える人たちです。今でいえば人気インフルエンサーのような人たちであり、その発信力は一般の人に強い影響を与えます。新しい概念をかみくだいて伝えることに、非常にたけています。

アーリーマジョリティ

アーリーマジョリティは、イノベーター、アーリーアダプターに続き、新しい製品・サービスにとびつく人たちです。平均よりやや新しい物好きという層で、全体の34%をしめます。マジョリティとついているように多数派です。

レイトマジョリティ

レイトマジョリティとは保守的で、社会でその製品・サービスを使う人が過半数を超えた段階で使い始める人たちです。それほど新しいものに興味がなく保守的でもあり、失敗することを好みません。全体の34%をしめます。

ラガード

ラガードは、ほとんど新しい概念、新しいプロダクトに関心を持たない層です。また、周囲の多数が使っていても影響されない人たちです。変化を嫌い、それまでの自分のスタイルを変えることを好みません。そのため、ラガードはマーケティングの対象から外されることがよくあります。

なおイノベーター理論では、前述のとおりイノベーターとアーリーアダプターの16%までが普及の鍵になるとしています。これに対し、イノベーター、アーリーアダプターとアーリーマジョリティ以降の層は人々の特徴、ニーズがまったく異なるため、「アーリーマジョリティ」に対してのマーケティングが重要だとする>キャズム理論もあります。あわせて理解しておきましょう。

まとめ

ビジネスは伸びる市場で、シェアを拡大していくことが重要です。グローバルなトレンドを押さえ、伸びる市場を理解しましょう。また、アンゾフマトリクスを活用すれば、今まで気づいていなかった川上や川下や隣接した新市場を発見できるかもしれません。

GEビジネススクリーン、プロダクトポートフォリオマネジメントを活用すれば、より力を入れるべき市場なのか、引いた方がよい市場なのかが見えてきます。

イノベーター理論を知っていれば、プロダクトのライフサイクルにあわせた適切なマーケティング施策を行えるでしょう。先人の知恵であるフレームワークを羅針盤として活用しながら、市場、シェアを広げていきましょう。