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マーケットセグメンテーションとは?具体例を用いてターゲティングの方法もご紹介

日本の企業数は300万社以上であり、各社が多種多様なニーズを抱えています。ニーズに合わせて効果的なマーケティングを行うためには、「どんな買い手を対象にするのか」を明確にすることが欠かせません。

マーケティングプランを作る際に、自社と相性が良い買い手を見つけ出すための手法のひとつに「マーケットセグメンテーション」があります。本記事では、以下の内容を解説します。

  • マーケットセグメンテーションの考え方
  • よく利用される分類
  • セグメンテーションを作る方法

マーケットセグメンテーションを活用することで、自社製品を購入する可能性が高い買い手に対して、集中的にマーケティングを行えるようになります。製品サービスの販売数を増やし、売上げを伸ばすための力になるでしょう。ぜひ最後までお読みください。

マーケットセグメンテーションとは

マーケットセグメンテーションとは、市場細分化のことを指します。具体的には、顧客の属性や趣味・嗜好で分類し、企業が市場を絞り込むことがそれにあたる。(マーケティング用語集より引用)マーケティング戦略を立案する際に、対象とする買い手を明確にするために使われます。

マーケットセグメンテーションで分類された買い手の集団は、「セグメント」と呼ばれます。自社や製品サービスの特徴を考慮して、どのセグメントに集中してマーケティングを行うかを考えることが、企業にとって大切です。そうすることで、限られたマーケティングの予算や人員を有効に使えるようになります。

また、人口学的な側面などで顧客を分類する「顧客セグメンテーション」もあります。マーケットセグメンテーションとは分類手法が異なるため、混同しないようにしましょう。

考えの背景

マーケットセグメンテーションが必要とされる背景には、買い手のニーズが多様化している現状があります。すべての買い手のニーズに応えられる製品サービスを提供することは、難しくなっているのです。

マーケットセグメンテーションとは対極となる考え方が「マスマーケティング」です。マスマーケティング(Mass marketing)とは、可能な限り広い顧客層に広告を出そうとするビジネスマーケティングのアプローチです(MasterClassより引用)。

多くのBtoB企業やSaaS企業が販売している製品サービスは、マスマーケティングには向いていません。万人向けの製品サービスでは解決できない、ニッチな悩みを解決するものを販売している場合がほとんどだからです。

ニッチな領域だからこそ、大手企業との競争に巻き込まれずに済みます。その一方で、自社と相性が良い買い手を見分ける必要性が生じます。BtoB企業やSaaS企業は、自社の製品サービスが対象とする買い手を明確にし、ピンポイントで訴求することが大切なのです。

マーケットセグメンテーションでよく利用される分類

BtoBのマーケットセグメンテーションでよく利用される分類として、以下の4つを紹介します。漏れや重複なくさまざまな視点からセグメントを考えられ、マーケティング施策にも生かしやすい分類です。

  • 業界セグメンテーション
  • 売上規模セグメンテーション
  • 従業員数セグメンテーション
  • 肩書き(役職)セグメンテーション

なおBtoCを含む、より一般的な分類については、セグメンテーションの記事で解説しています。そちらもあわせてお読みください。

業界セグメンテーション

業界セグメンテーションは、自社と相性が良い業界を絞り込む際に使われます。

自社製品の買い手が多い業界があれば、そこに潜在的な見込み客が多く存在すると予想できます。業界内で影響力が大きい雑誌に広告を出したり、その業界の展示会に出展したりすることで、見込み客に効率よくアプローチできるでしょう。

(ANDPAD)

たとえば、建築業界向けSaaSの「ANDPAD」であれば、見込み客は「建築業界」と明確です。この場合、建築業界に集中してマーケティングを行うことで、売上げを伸ばしやすいと考えられます。

SaaSプラットフォームを探している建築業界の企業であれば、ANDPADのことを知ったときに、「自社にぴったりだ」と感じるはずです。もし漠然と「どんな業界にも対応できるプラットフォーム」と打ち出したら、どの企業にとっても印象に残りにくいでしょう。思い切って対象者を絞るからこそ、効果的な訴求を行えます。

売上規模セグメンテーション

売上規模セグメンテーションでは、自社と相性が良い企業はどの程度の売上規模なのかを明確にします。

企業の年間の売上規模には大きな幅があり、たとえば以下の通りです。

  • 5,000万円
  • 10億円
  • 1,000億円

これらの売上規模の企業が、どのような製品サービスを好むかには、違いがあるでしょう。たとえば、中小企業では購入先の選定の条件として「価格」を挙げる企業が最も多いという調査結果があります。

この結果から、売上規模が小さい企業に対しては、高価格帯の製品サービスは比較的販売しにくいといえます。一方で同調査では、「納入のスピードが速い」ことを重視する中小企業が多いことも明らかになっています。そのため営業担当者には、意思決定のスピード感に合わせて、素早い対応が求められるといえるでしょう。

買い手企業の売上規模によって、適した営業スタイルには違いがあります。そのため、自社がアプローチしやすい企業を見分けることが大切です。

従業員数セグメンテーション

従業員数セグメンテーションは、企業を従業員数で分類する手法です。自社の製品サービスと相性が良いかは、従業員数によって大きく左右される場合があります。

たとえば、大人数で利用することを前提としているSaaSのサービスであれば、想定する買い手は従業員数が多い大企業です。小規模の企業に営業をしても、購入にはつながりにくいと予想できます。

(shouin+)

たとえば、SaaSプラットフォームの「shouin+」の例を考えてみましょう。このサービスでは、あらかじめ動画マニュアルをクラウド上にアップロードしておけます。そして、従業員は空き時間に動画を見て、自分ひとりで研修を進められるため、指導する工数を削減する効果が見込めるのです。

こうした特徴のあるshouin+は、従業員数が多い企業と相性が良いでしょう。チェーン展開するなどして従業員数が多い企業ほど、新人研修の機会が多くなり、指導にかかる工数が膨大になります。shouin+を使って自主的に研修を進める従業員が増えると、研修を受ける人数との掛け算で、指導の工数を削減する効果が大きくなるからです。

このように、製品サービスが購入者に与えるメリットを考えると、自社と相性が良い買い手の傾向を把握しやすくなります。従業員数によってメリットの大きさが変わるのであれば、従業員数セグメンテーションが有効です。

肩書き(役職)セグメンテーション

肩書き(役職)セグメンテーションでは、マーケティング活動の対象者によって買い手を分類します。こうした分類が必要なのは、役職によって注目する情報が異なるため、広告や営業で伝えるメッセージを変えるべきだからです。

(経営課題)

たとえば、飲食店経営者に対して会計ツールをアピールしたいのであれば、そのツールがいかに売上げや利益の向上につながるかを伝えるとよいでしょう。実際、上図のように飲食店経営者は「売上UP」と「利益(率)UP」に特に関心があるという調査結果があります。

一方、会計部門の担当者にアピールする場合には、その会計ツールがいかに使いやすく、日々の業務を効率化するのに役立つかを伝えるとよいでしょう。個人の業務に焦点を当てて、活用シーンをイメージしてもらうことで、ツールの販売につながりやすくなります。

製品サービスによっては、特定の役職の人に魅力を感じてもらいやすい場合があります。その場合は、肩書き(役職)セグメンテーションで魅力が伝わりやすい役職を明確にし、集中的にマーケティングを行うことが有効です。

セグメンテーションを作る方法

マーケットセグメンテーションを作るための具体的な方法として、以下の3つを紹介します。

  • 自社のデータベースを掘り起こす
  • ネット上からリサーチを行う
  • データベースを購入する

自社のデータベースを掘り起こす

自社のデータベースを掘り起こすことで、セグメンテーションを作ることが可能です。

過去にどのような買い手にマーケティングを行い、その結果どの買い手が購入につながったのかという情報は、とても貴重です。詳しく分析すれば、自社と相性が良い買い手の特徴が見えてくるでしょう。

効果的な分析を行うためには、マーケティングや営業の過程で得たデータを漏れなく記録し、活用できる状態で保管しておく必要があります。無理なく情報を管理するためには、カスタマーリレーションシップマネジメント(CRM)用のツールを導入するのがおすすめです。

(HubSpot)

たとえば、SaaSのCRMプラットフォーム「HubSpot」が代表的なツールです。以下のソフトウェアを組み合わせることで、マーケティングの流れのすべてをHubSpotで管理できます。

  • Marketing Hub
  • Sales Hub
  • Service Hub
  • CMS Hub
  • Operations Hub

ひとつのツールで情報を一括して管理すると、分析時に必要なデータを取り出しやすくなります。マーケットセグメンテーションを行うためには、まずは自社のデータベースを整えることから始めるとよいでしょう。

ネット上からリサーチを行う

ネット上からリサーチを行うことでも、マーケットセグメンテーションを進められます。ネット上には、以下のようにさまざまな情報源があります。

  • 公式サイト
  • ブログ
  • SNS
  • YouTube

自社製品の買い手となりうる企業が発信している情報を集めることで、市場にどのようなニーズがあるのかを確認できます。リサーチの結果判明したニーズで買い手を分類すれば、自社と相性が良いセグメントを見つけ出せるでしょう。

Googleでの検索やSNSのチェックなど、ネットでのリサーチは費用をかけなくても行えます。時間をかけて買い手のニーズを調べることで、有望なセグメントを見つけられるかもしれません。

データベースを購入する

データベースを購入することで、マーケットセグメンテーションを行う方法もあります。費用はかかりますが、リサーチに時間をかけれらない場合におすすめです。

データベースは、たとえば以下の販売元から購入できます。

どのようなデータベースを購入すべきか迷う場合は、無理に自社で選ぼうとせず、販売元の担当者に相談することをおすすめします。マーケットセグメンテーションに利用したい旨を伝えれば、最適なデータベースを提案してもらえるでしょう。

購入したデータベースを検索することで、どのような買い手がどれだけ存在するのかを、具体的な数字で確認できます。業界・業種や市場規模など、さまざまな視点から分析を行い、自社にとって最適なセグメントを探しましょう。

マーケットセグメンテーションの活用の仕方

マーケットセグメンテーションを活用するには、STP分析と組み合わせるのがおすすめです。STP分析は新しい分野に参入したり、新製品を開発したりする意思決定の際に、特に重要視されます。

STP分析は、以下の3つの頭文字を取った名称です。

  • Segmentaion(セグメンテーション):市場を細分化する
  • Targeting(ターゲティング):狙う市場を決める
  • Positioning(ポジショニング):自社の立ち位置を明確にする

つまり、STP分析においてマーケットセグメンテーションは、3つの要素のうちのひとつとして扱われています。残りの2つである「ターゲティング」と「ポジショニング」をあわせて考えることで、マーケットセグメンテーションはより効果を発揮するのです。

ターゲティングでは、自社が狙う市場を決めます。自社だけでなく競合他社や市場の状況を分析して、最も自社に適した市場を探しましょう。

ポジショニングでは、市場での自社の立ち位置を明確にします。市場全体のうち、どの程度の割合を現実的に自社が獲得可能なのかを考えて、マーケティングの方針を定めることが大切です。

(オフィスおかん)

たとえば、置き型社食サービス「オフィスおかん」について、どのようなSTP分析ができるかを考えてみました。以下がその結果です。

  • セグメンテーション:社員食堂の開設は難しいほど従業員数が多く、拠点が複数ある企業のセグメント
  • ターゲティング:食環境が好ましくなく健康的ではない従業員を”ホッ”とする食事で改善したい企業
  • ポジショニング:「健康経営を支援する」という立ち位置

このようにSTP分析をすることで、「オフィスおかん」がどのような買い手に向けたサービスなのかが明確になり、マーケティング戦略の軸を作れます。マーケティング戦略に悩む事業やサービスがあるのであれば、マーケットセグメンテーションを行ったうえで、STP分析に進むのがおすすめです。

BtoBビジネスの中でも、SaaSの分野では新しい技術が次々に登場するため、市場の状況がどんどん変わっていきます。そのため、STP分析は一度行っただけで満足してはいけません。定期的に最初からやり直し、最新の状況を踏まえた戦略を考えることが大切です。

まとめ

マーケットセグメンテーションは、市場を細分化するための分類手法です。活用することで、自社と相性が良い買い手を見つけ、効果的なマーケティングを行いやすくなります。よく利用される分類として、以下の4つを紹介しました。

  • 業界セグメンテーション
  • 売上規模セグメンテーション
  • 従業員数セグメンテーション
  • 肩書き(役職)セグメンテーション

製品サービスの特徴を理解したうえで、自社に適したマーケットセグメンテーションを行いましょう。STP分析も組み合わせて使うと、マーケティング戦略を立案する際に、より大きな効果を発揮します。

まずは自社が保有するデータベースを整理し、マーケットセグメンテーションに役立ちそうな情報を集めることから始めるとよいでしょう。