マーケティングの成果を正確に把握するためには、コンバージョンを設定すべきです。実際2017年にアメリカで行われた調査では、50%の人が「コンバージョン率の最適化(CRO)がデジタルマーケティングにおいて特に重要な戦略である」と回答しています。
コンバージョンとは、単に製品が購入されることを意味するのではありません。買い手による幅広い行動を測定し、マーケティングに活用できるものです。
本記事では、コンバージョンの考え方と設定方法について、BtoBマーケティングと営業担当者が知っておくべき以下の内容を解説します。
コンバージョンを使いこなすことで、必要な施策を的確に実行できるようになります。買い手を製品の購入へと導いて、売上げアップにつなげやすくなるでしょう。ぜひ最後までお読みください。
コンバージョンとは「成果に転換すること」を意味します。何をコンバージョンとするかは、自由に設定が可能です。逆に言えば、自ら定義しない限りコンバージョンはあいまいなままなので、計測もできません。
コンバージョンを設定する最大の目的は、成果を可視化することです。製品購入までの各ステップに進んだ買い手の割合を知ることで、どこで離脱されてしまっているかを把握できます。これにより、改善のためのPDCAを回しやすくなるのです。
「コンバージョンが発生した割合」をコンバージョンレートと呼びます。コンバージョンレートを意識することで、どのような施策を行うべきかをデータに基づいて考えられます。
「Conversion」は「転換」を意味する英単語です。ケンブリッジ英英辞典では、「あるものから別のものへと転換するプロセス」と定義されています。マーケティングにおいては「見込み客を購入しやすい状態に転換すること」ととらえると、理解しやすいでしょう。
BtoBビジネスは、BtoCよりも製品の認知から購入決定までのステップが多いのが特徴です。そこで「最終的なコンバージョン」だけでなく「中間地点のコンバージョン」を設定するのがおすすめです。
<最終的なコンバージョンの例>
<中間地点のコンバージョンの例>
中間ゴールを設定すると、見込み客がどの段階まで進んでいるのか、状態を細かく把握できます。そのデータをもとに考えることで、リードジェネレーションの強化や、カスタマージャーニーの精査がしやすくなるのです。
コンバージョンはファネルの各段階ごとに設定すると効果的です。マーケティングにおけるファネルとは、製品の認知から購入に至るまでの段階のことで、以下の4つに分けられます。
買い手は製品の認知から「興味・関心」と「比較・検討」の段階を経て購入に至ります。そして一般的に、段階を進むごとに人数は減っていくものです。
ファネルが買い手の心理に基づいている一方で、コンバージョンは具体的な行動を基準としています。SaaS企業が用いるコンバージョンの例を挙げると、以下の通りです。
買い手の心理状態を正確に知ることは難しいですが、行動は客観的に測定できます。行動をコンバージョンとして設定することで、買い手がファネルのどの段階まで進んでいるかを把握できるのです。
マーケティングにおいては、商談につなげるためのリードを獲得することが重要です。施策を改善してコンバージョン率最適化(CRO)を行うことで、効率良くリード獲得を進められます。
マーケティングにおいて設定すべき、以下の3つのコンバージョンについて解説します。
マイクロコンバージョンは、最終的なゴールに至るまでの中間地点に設定するコンバージョンです。マイクロコンバージョンにはさまざまな種類がありますが、なかでも代表的なものを解説します。
広告コンバージョンでは、広告経由で得たWebサイトへのアクセスを計測します。
(Sansanのリスティング広告)
たとえば、Googleで「名刺管理 SaaS」と検索すると、トップにSansanのリスティング広告が表示されます。
(「Sansan機能のご紹介」ダウンロードページ)
この広告をクリックした買い手を「Sansan機能のご紹介」ダウンロードページに誘導したと仮定します。この場合、広告をクリックした時点で「広告コンバージョンの成立」と見なすのです。
広告コンバージョンの数を測定しておくことで、「そのうちどれだけの割合がリード獲得まで至ったのか」を計算できるようになります。もしリード獲得に至る割合が極端に少ないのであれば、ダウンロードページを改善すべきだと判断できます。
一方、リード獲得に至る割合は十分に高いのに、そもそも広告コンバージョンの数が少ないせいで、獲得数が伸びていないケースもあるでしょう。その場合は、ダウンロードページよりも、広告を優先して改善すべきです。
このように、マイクロコンバージョンとして広告コンバージョンを設定しておくことで、改善の優先順位を決めるために役立てられます。
買い手によるWebサイト上のクリックをコンバージョンとして設定するのが、クリックコンバージョンです。クリックコンバージョンでは、多くの場合ファーストクリックとラストクリックを重要視します。
ファーストクリックとは、リード獲得に至るプロセスの最初のクリックを指し、ラストクリックは、リード獲得を決定づける最後のクリックです。
ファーストクリックとラストクリックの対象の例は、以下の通りです。
<ファーストクリックの対象>
<ラストクリックの対象>
たとえば、ファーストクリックが十分に多いにも関わらず、ラストクリックが少ない場合、その間の過程に問題があると判断できます。このように、クリックコンバージョンを細かく設定することで、改善すべき箇所を絞り込むことが可能です。
ブログ購読コンバージョンでは、ブログ記事の購読をコンバージョンとして設定します。
ブログで有益なコンテンツを買い手に届けることで、自社への信頼感が生まれ、リード獲得につながります。そのためブログ記事を定期的に閲覧してもらうことは、リード獲得の中間目標だといえるのです。
(LEAPTのブログ購読アラート)
LEAPTでは、ブログ記事の画面に「ブログ購読はこちら」のボタンをポップアップで表示させています。ブログの購読を促すことで、リード獲得につなげているのです。このような仕組みを取り入れることで、ブログ記事の充実をリード獲得に直結させられます。
ブログ購読コンバージョンを設定することで、リード獲得のためにブログがどれだけ貢献しているかを可視化できます。ブログを運営している企業であれば、活用するとよいでしょう。
リードの獲得をコンバージョンに設定したのが、リードコンバージョンです。リードを獲得するには、たとえば以下のチャネルが利用できます。
これらのチャネルからの訪問者に、以下のような行動を促すことで、リードの獲得につなげられます。
リードの獲得が製品購入に向けた第一歩となるため、BtoB企業やSaaS企業にとって重要なコンバージョンです。マーケティングにおけるコンバージョンを初めて測定する際は、まずはリードコンバージョンから始めることをおすすめします。
MQL(Marketing Qualified Lead)とは、マーケティング活動で獲得した、製品の購入意欲が高いリードのことです。MQLの獲得をコンバージョンと設定したのが、MQLコンバージョンです。
マーケティングにはWebマーケティングだけでなく、以下のようなオフラインの活動も含まれます。
オフラインの施策についても、目標とする数値を設定し、効果を測定することが大切です。
(SmartHRトップページ)
たとえば、人事・労務向けSaaSサービスを提供している株式会社SmartHRでは、展示会への出展で新規リードの獲得数をKPIにしていた事例があります。展示会を「営業担当との商談につなげるためのリード獲得の場」と位置づけて、出展の目的を明確にしたのです。
展示会においては、MQLコンバージョンは以下のように設定できます。
このように具体的にコンバージョンを設定することで、来場者に適切な対応を取れるようになります。「自社ブースの来場者は多かったのに、リードはほとんど獲得できなかった」という失敗を避けやすくなるでしょう。
オフラインマーケティングの施策としては、ハガキやDMを送付することも有効です。
(ビズリーチのDM事例)
上図はダイレクトリクルーティングを行っている、株式会社ビズリーチのDM事例です。この事例では「DM発送後の電話フォローはしない」と方針を決めたうえで、問い合わせにつなげる工夫を行いました。
ビズリーチのように、ふだんはWeb上でのマーケティングを中心にしている企業であれば、DMによって新たな買い手にアプローチできるでしょう。DMでは以下の行動を促すことで、リードの獲得につなげられます。
MQLコンバージョンを測定し、結果を比較することで、自社と相性が良いマーケティング手法を見分けられます。オンライン・オフラインを問わず、さまざまな手法を試してみるとよいでしょう。
営業におけるコンバージョンには、いくつかの段階があります。代表的な以下の4つのコンバージョンについて解説します。
プロスペクトとは、ファネルで「興味・関心」の段階にあり、購入の見込みが低い状態の買い手を指します。プロスペクトの獲得を目標とするのが、プロスペクトコンバージョンです。
プロスペクトは、営業活動の最初のステップで獲得する見込み客です。例として以下の営業活動をすることで、プロスペクトコンバージョンを得られるでしょう。
プロスペクトに接する際のポイントは、強い売り込みをしないことです。「必ずサービスの契約までつなげよう」といった姿勢でいると、買い手は身構えてしまい、話を聞いてくれなくなってしまうでしょう。まずは自社や製品サービスに興味を持ってもらうことだけに、注力することをおすすめします。
SQL(Sales Qualified Lead)とは、ほしいものや要望が明確になっており、購入意欲が高い買い手のことです。SQLの獲得を目指すのが、リード(SQL)コンバージョンです。
ファネルで「興味・関心」の段階にいる買い手が「比較・検討」の段階に進むと、SQLとなります。具体的には、買い手の以下のような行動を得られたら、SQLコンバージョンとして考えてよいでしょう。
買い手の要望を的確にとらえて、喜ばれる提案をすることで、SQLコンバージョンにつなげやすくなります。一人ひとりの買い手と向き合い、丁寧なコミュニケーションを意識しましょう。
製品の購入やサービスへの申込みが、顧客コンバージョンです。ファネルでは「購入・申込」の段階まで到達した状態を指します。
具体的な顧客コンバージョンの例は、以下の通りです。
顧客コンバージョンを最終ゴールとしている企業もありますが、さらにもう一歩進んだコンバージョンもあります。
アップセル・クロスセルコンバージョンは、既存の顧客に別の製品を購入してもらうことを目標とするコンバージョンです。これにより、買い手あたりの購入単価を向上させることを目指します。
アップセルでは、過去に購入した製品から、より高額な製品への乗り換えを促します。具体例は以下の通りです。
一方クロスセルでは、他の製品を同時に購入することを促します。すでに購入を決めた製品を活用するために役立つ製品サービスを紹介すれば、買い手にとってもありがたく感じてもらえるでしょう。
営業戦略を考える際には、はじめからアップセル・クロスセルコンバージョンまでを見据えておくべきです。そうすることで、無駄な動きのない、効率の良い営業活動が可能になります。
コンバージョンを適切に設定することで、マーケティングと営業を効果的に進められます。施策の効果を正確に評価できるようになり、的確な改善を行えるでしょう。
マーケティングにおいては、商談につながるリードを多く獲得することが重要です。広告のクリックやブログ購読などの買い手の行動を、中間目標として設定することで、改善の優先順位を付ける助けとなります。
営業においては、「プロスペクト、リード、顧客、アップセル・クロスセル」というコンバージョンの段階を意識すべきです。全体の流れを把握したうえで、各段階の施策を考えることで、無駄のない営業活動を行えます。
マーケティングと営業の流れを整理し、自社に合ったコンバージョンを設定していきましょう。