規模が小さく無名のBtoB企業が、ビジネスで勝ち抜いていくのは容易なことではありません。大手有名企業と比べるとブランド力、企業体力、信頼性などは、ないに等しいといってもよいくらいの差があるでしょう。
インターネットが中小企業、無名企業の強い味方になるはずでした。ただし、これも情報発信力があればという条件つきであり、簡単そうで難しい課題があります。
とはいえ、最近Google検索してあまりに似たようなコンテンツばかり出てきてがっかりした経験のある方なら共感してくれると思うのですが、まだまだ国内BtoB市場のオンラインマーケティング施策は、改善の余地が数多くあります。真剣に取り組めば頭一つ抜きん出られるでしょう。
そこで本記事では、BtoB企業がオーガニック検索(サーチ)を増やすために必要な考え方や方法、その過程で役立つツールを解説します。
オーガニック検索(サーチ)とは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンでユーザーが何らかのキーワードで検索すると、検索エンジン独自のアルゴリズムによって、自動的に表示順位が決まる検索の仕組みを指します。別名「自然検索」とも呼ばれます。
通常、検索エンジンの検索結果ページには、一番上の位置に小さく「広告」と明示されているサイトが掲載され、次にキーワードによっては強調スニペット(枠に囲まれて強調されているサイト)が表示。その下にサイト一覧(オーガニック検索の結果)が一覧になっています。
指名検索とは、文字通り名前(固有名詞)を指定して検索することです。例えば、パソコンを購入しようと思ったときに「マック(Mac)」「アップル(Apple)」「レノボ(Lenovo)」といったブランド名、社名で検索する行為を指します。
BtoBであれば「〇〇株式会社 (サービス名)」のような検索のされ方や、「〇〇株式会社 導入事例」「〇〇株式会社 価格」のような検索も頻繁にされ、これらも一種の指名検索といえるでしょう。
一方、オーガニック検索は普通名詞や口語体で検索します。パソコンを買いたいものの予算やスペックの詳細が決まっていない人は「パソコン おすすめ」「パソコン 価格」などのキーワードで検索し情報のアウトラインを掴もうとします。
指名検索をする人は、すでにどのブランドのパソコンにするか、どの会社のパソコンを買うかのめどをつけています。当然、社名、製品・サービス名が知られていないと指名検索は起こらないので、企業から見れば指名検索されることは、広告宣伝、マーケティング施策の結実だといえます。
リスティング広告とは、検索エンジンの検索結果ページに表示される、有料の広告のことです。広告主は、特定のキーワードに対して入札を行い、そのキーワードで検索された際に広告を表示させられます。主にオーガニック検索の検索結果の上部と下部に表示されます。
下記画像のように検索結果ページに「スポンサー」という表示とともに、リスティング広告が表示されています。これらの広告は、検索キーワードに関連性が高いと判断された広告主のWebサイトへのリンクです。
広告宣伝費をかけて検索結果ページに自社サイトを上位表示させ、トラフィックを増やすことができます。なお、広告の掲載順位は、入札価格と広告の品質スコア(関連性や品質の指標)によって決定されます。企業によっては、競合企業の社名の指名検索を行った検索結果に自社サイトを表示させる戦術をとる場合もあるでしょう。
リスティング広告は即効性が高く、適切に運用することで効果的な集客が期待できる、短期目線での施策です。
「スポンサー」というマークつきではあり、オーガニック検索結果よりクリック率は低いとしても、1ページに表示されますので一定のトラフィックの流入が見込めます。見込み客が入力しそうなキーワードの検索結果に広告を掲載することで、時間をあまりかけずに見込み客に自社を認知してもらいつつ、自社サイトへの訪問を促せるのは大きな魅力でしょう。
一方、オーガニック検索は、効果が出るまでに時間がかかるものの「一度作ってしまえばコンテンツが残り続ける」というメリットがあります。
オーガニック検索経由で自社サイトに流入するユーザーは、数あるトラフィックソースのひとつに過ぎません。トラフィックソースは、いわゆる「流入経路」のことであり、オーガニック検索以外にも広告やダイレクトリンクなど、多くの経路があります。
具体的には、以下のとおりです。
トラフィックソース |
特徴 |
Organic Search (オーガニック検索) |
検索エンジン結果からの無料トラフィック。SEO施策の成果指標となる。 |
Direct (ダイレクト) |
URLを直接ブラウザに入力するか、ブックマークからアクセスすることで発生するトラフィック。 |
Referral (リファラル) |
ほかのウェブサイトからのリンクを経由して訪れるトラフィック |
(メール) |
配信したメルマガからのトラフィック。メール内のリンクをクリックすることでウェブサイトを訪問する。 |
Organic Social (オーガニックソーシャル) |
ソーシャルメディア(例:Facebook、LinkedIn、Xなど)からの無料トラフィック。SNS広告は介していない。 |
Paid Search (有料検索) |
検索エンジンの広告プラットフォーム(例:Google Ads)を通じて流入したトラフィック。特定のキーワードに対する広告出稿により訪問者を獲得する。 |
Display (ディスプレイ広告) |
ウェブサイトやSNS上でのバナー広告や動画広告からのトラフィック。 |
Paid Other (その他の有料広告) |
有料検索やディスプレイ広告以外の有料チャネルからのトラフィック。例えば、スポンサードコンテンツやアフィリエイトリンクなど。 |
Unassigned (未割り当て) |
分析ツールがトラフィックソースを特定できなかった訪問者。 |
(参考:SmartBug「The Difference Between Organic Traffic and Direct Traffic Website Sources」の情報を基に、当社にて作成)
上記の内、オーガニック検索と特に関わりのあるトラフィックソースは、コンテンツマーケティングの成果指標となる「Direct」「Referral」「Email」「Organic Social」でしょう。
BtoBのコンテンツマーケティングでは、読者ファーストで質の高い記事を作成していれば、「オーガニック検索経由のトラフィックは思ったように伸びないが、メルマガやSNS経由での流入が増えた」というケースも珍しくありません。
オーガニック検索での上位獲得だけをみるのではなく、トラフィックソースを包括的に分析するのが大切です。
BtoB SaaS企業でもSEOを実施し、オーガニック検索上位を獲得することには、以下のような意義があります。
次項より個別にみていきましょう。
オーガニック検索での上位表示は、企業のウェブサイトへのトラフィックを増加させるだけでなく、それによってクリックからコンバージョンへの転換率を高める機会を提供します。
検索エンジンの結果ページ(SERP)で上位にランクされることは、潜在顧客が実際にクリックしてサイトを訪問する可能性が高まることを意味します。これは、特に購入意欲の高いユーザーが特定の製品やサービスを検索している場合に顕著です。クリック率(CTR)の増加は、結果的に高品質なリードの獲得とコンバージョン率の向上に直結します。
独SISTRIXが80万以上のキーワードと数十億の検索結果を分析した調査結果によると、Googleの第1位のオーガニック検索結果をクリックするユーザーの割合は平均で28.55%だったと判明しました。
(出典:SISTRIX「Why (almost) everything you knew about Google CTR is no longer valid」)
同社の調査によると、第1位の位置から離れるにつれて、クリック率は急激に低下。第2位では15.7%、第3位では11%となり、第10位ではわずか2.5%になったとのことです。
加えて、検索結果のレイアウト(SERPレイアウト)によって、第1位のクリック率は大きく変動すると示唆されています。例えば、サイトリンクが表示される検索では、第1位のクリック率が46.9%に達していました。
この研究結果はSEO戦略において、キーワードの選定やコンテンツの最適化だけでなく、検索結果のレイアウトを理解し、それに適応することの重要性を示しています。
クリック率(CTR)とコンバージョン率を向上させるためには、検索意図とSERPレイアウトの両方を考慮に入れた戦略が必要です。
オーガニック検索で上位に表示されることは、検索エンジンが提供するコンテンツが、検索者のニーズと密接に関連していると評価されているかどうかの指標にもなります。
Google検索セントラルに「有用で信頼性の高い、ユーザー第一のコンテンツの作成」とあるように、Googleはユーザーが求める情報と最もマッチする質の高いコンテンツを選定しようとします。
したがって、企業ウェブサイトがこれらの基準を満たすことは、潜在顧客の問題解決に寄与しているという強力な証明になります。
検索エンジンのアルゴリズムの基準は定期的にアップデートされるものの、志向していることは同じです。検索上位には「検索ユーザーが求めていることに対して最も適切な情報がある」と判断されたサイトが並びます。
BtoB SaaS企業にとっては、次の観点から重要度が高いといえます。
以下より、個別にみていきましょう。
有料広告を使えば、自社サイトを検索結果1ページ目の一番上に表示することは可能です。しかし、説明するまでもなく人は広告は広告、記事は記事と区別して捉えます。
米MarketingSherpaが行った調査では、ユーザーがクリックするリンクの70%がオーガニックであり、多くのユーザーは広告よりもオーガニック検索を介してサイトを訪問する傾向が強いことが示唆されています。
(出典:Search Engine Watch「Five reasons why SEO should be prioritized over paid media campaigns」)
加えて、広告のようなペイドメディアでは「費用を支払い続ける」必要があります。一方で、ブログ記事をはじめとするオーガニック検索対策用のコンテンツは「一度作ったらストックされる資産」になりますので、長期的な費用対効果の面からも優れているといえます。
検索エンジンを上位表示させる基準や精度には、かねてより疑問の声が多々出ています。それでも上位サイトは検索エンジンのお墨付きを得ているわけであり、信頼性は高く、1ページ目に表示されると、オーガニック検索経由のトラフィックが著しく増加します。
以下は米Optinmonsterが引用したGoogleのデータですが、検索結果1位はいうまでもなく突出しています。10位以内と10位以下のトラフィックの差は、たった1クリックするかしないかの差にもかかわらず相当な差があるとわかるでしょう。
(出典:Optinmonster「Cracking the Code: Unveiling 10 Powerful SEO Ranking Factors」)
自社にとって重要なキーワードで検索結果の1ページ目に上位表示されるか否かが、「サイト訪問者の数」「コンバージョン」「最終的な成果(売上げ)」に大きく影響することがわかります。
冒頭でお伝えしたとおり、多くのBtoB企業の名前や製品サービス名は、世の中には知られていない状態からスタートします。そのような自社名を知らない潜在見込み客をより多く惹きつけるためには、企業名や製品サービス名を調べられる状態になる前段階の人たちに見つけてもらうる仕組みが必要です。
例えば「〇〇株式会社 〇〇ソフトウェア」と調べる人より「業務効率 改善方法」と調べる人の方が多いことは想像が容易です。このようにオーガニック検索する人たちのほとんどは、自分でもわからない課題解決をしようとしてあれやこれやと検索窓に検索ワードを入力します。
「業務効率 改善方法」「業務効率 改善メリット」「業務効率 ツール」「業務効率化 サービス」といった形です。
このような潜在見込み客にいち早くオーガニック検索を通じて見つけてもらい、お客様にとって役に立つ情報(自社よがりのアピール記事は不必要)を提供することが大切。これによりソートリーダーシップ(先見性)を発揮し、信頼を勝ち取れるでしょう。
BtoB市場においてオーガニック検索(サーチ)を増やすためには「見込み客が検索しそうなキーワードを正しく予測する→サイトにたどりついた見込み客の疑問や期待に応えるコンテンツを用意しておく」という基本が大切です。
とてもシンプルな理屈ですが、実際に見込み客が求めているキーワードを理解して過不足ないコンテンツを提供できている企業は少ないのが今の状況かもしれません。検索すると、似たり寄ったりのジェネリックな検索結果が出てきます。
「検索エンジンでオーガニック検索上位を取るためだけのコンテンツ作り」になっており、自社の業界、製品機能、ペルソナ(架空の理想の顧客像)を完全に無視した情報が掲載されています。これでは見込み客を惹きつけることは難しいでしょう。
そのため、今一度ペルソナの設定とキーワードの選定を見直す必要があるのです。具体的には、以下のような考え方が大切です。
①:業界や経済政治情勢などのマクロ環境の変化を理解する
②:ファンクションアウトではなくマーケットインを前提とする
③:ペルソナとカスタマージャーニーを絞り込む
④:トピッククラスター構造を意識する
次項より、個別に解説します。
まず、BtoBにおいて「見込み客は何を思い、どのようなキーワードで検索するのか」は、マクロ環境や顧客企業の業界動向はもちろん経済政治情勢の動きもかなり影響します。
例えば、2019年までは「在宅勤務」というニーズは少なかったところに、オリンピックの開催を前にした政治主導やコロナ禍のパンデミックで、2020年のたった何カ月かであっという間に一般化しました。
ZoomなどのWeb会議システム、テレワークなども同様です。印鑑と電子契約システムの例が顕著ですが、官公庁が導入を進めるとこれまで遅々として進まなかったのが嘘のように普及していくことがあります。
一方、航空や旅行、飲食業界は国が支援しても厳しい状況に晒されました。政治でもカバーできないほど経済の落ち込みの影響が大きかったのが、コロナ禍におけるマクロ環境の変化です。
2024年現在は、続くウクライナ危機や中国不動産バブルの崩壊など、市場経済にとって大きな影響を与える環境変化が多く続いています。
マクロ環境が大きく変わるときには、PEST分析をやり直し、自社の位置づけはもちろん、経済政治情勢によって「どのような新たなニーズが出てきたのか」「見込み客はどう動くのか」について予測しなおす必要があるでしょう。その上で新たなキーワードも新しく設定していくことが大切です。
PEST分析とは、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の影響を分析するマクロ環境分析フレームワーク。オーガニックトラフィックを獲得するためのSEO戦略の策定でも「調査・情報収集」「見込み客の課題の明確化」で役立つでしょう。
BtoB企業に関連する事業で、「ファンクションアウト(機能から始まる)」思考でオーガニック検索をしてもらうことは、ほぼ不可能でしょう。つまりは、自社製品の特定の機能や解決できる課題に着目して、それに関連するキーワードやクエリで検索してもらえるようにコンテンツを最適化することです。
とはいえ、そういったキーワードを使って機能検索をする人はよほどのテッキーもしくは、競合企業だと考えられます。
なぜなら、多くの人の検索アクションは「課題ベース」だからです。検索エンジンは「何かについて知りたい」「情報をサーチしたい方」が利用します。オーガニックを増やすためには、自社サイトに訪れて欲しい見込み客の課題をイメージして、キーワードを想定する必要があります。
例えば、以下のとおりです。
トラフィックの流入目的とはいえ、あまりに対象を幅広くしてしまうと潜在見込み客以外の流入が多くなってしまい、最終的に顧客となる数が期待どおりに伸びないリスクが高まります。ここで重要になるのがペルソナとカスタマージャーニーの設定です。
ペルソナは、製品やサービスの理想的な顧客像を具体的に表した架空の人物プロファイルです。年齢、性別、職業、趣味、興味、ニーズ、課題など、詳細な属性や背景情報を含めて作成します。
対するカスタマージャーニーは、顧客が製品やサービスに最初に気づいてから購入し、使用し、最終的にはロイヤルカスタマーやアドボケート(推薦者)になるまでのプロセスをマッピングしたモデルです。
ペルソナとカスタマージャーニーを理解することによって、指名検索ができない状態の層に対しても適切なコンテンツを提供し、トラフィックを増やすことができます。もちろん、見込み客といってもいろいろな検討段階の人がいますので、一貫性をもったコンテンツをマーケティングファネルにそって各層に対して提供していくことがポイントです。
BtoB SaaS企業は、特定のニッチな業界や専門的なサービスを提供していることが多く、潜在顧客が抱える具体的な問題やニーズに対して深く掘り下げたコンテンツを提供する必要があります。
そのため、どうしてもロングテールキーワードを中心としたSEO戦略が求められるのが特徴。ロングテールを中心としたSEO戦略で、トラフィックの獲得効率を上げるためには、トピッククラスター戦略を実施するのが有効です。
トピッククラスターは、「中心となるテーマ(ピラーページ)」と、「そのテーマに関連する複数のサブトピック(クラスターコンテンツ)」から構成されるコンテンツ同士の繋がりを指します。
これにより、コンテンツ間の関連性を強化し、ユーザーにとっても検索エンジンにとっても情報収集しやすいコンテンツ構造を作り出せるのです。
詳しくは後述しますが、BtoBウェブサイトのコンテンツは、多くが購入決定段階を対象としています。オウンドメディアの記事ではPV数を主要な指標として設定し、ビッグキーワードを中心に記事を作成するケースも珍しくありません。
そこで認知段階から検討、決定段階に至るまで、カスタマージャーニーの各段階に適したキーワードを選定。トピッククラスターモデルを展開することで、オーガニックリードの獲得効率を向上させられます。
オーガニックを増やすためには検索エンジンの上位に自社サイトを表示させる必要があります。そのための施策はさまざまですが、優先的に注力するべき施策は以下のものになるでしょう。
それぞれ個別に解説します。
ブログメディアは、オーガニックトラフィックを増やすための最も手早い方法のひとつです。ブログ記事のクオリティが高く、検索ニーズとマッチした記事を多く作成して、それぞれの記事でオーガニック検索上位を獲得すれば、サイト全体のオーガニックトラフィックを短いスパンで増やせます。見込み客のニーズに答えるようなブログ記事を書いていくことで、一度訪れたユーザーはリピート読者となり、トラフィックを安定的に増やし続けられるでしょう。
ブログのキーワードの選定も大切です。前述のようにマクロな環境が変われば新しい関連キーワードが出現します。ペルソナが検索するキーワードを、時代とともに更新して高品質のコンテンツを時間かけて作成する必要があります。
なお、「コンテンツ」とはブログ記事だけを指すのではなく、「各種広告」「ホワイトペーパー」「パンフレット」「eBook」「音声」「動画」「セミナー/ウェビナー」「カンファレンス」など、見込み客にとって役に立つ情報すべてを含みます。そのなかでも、ブログは比較的手軽にはじめられ、コンテンツの蓄積によって多大な効果を生み出せるため、積極的に検討しましょう。
企業のウェブサイトは俗にコーポレートサイトと呼ばれ、プロダクト、会社の経歴など自社情報メインで掲載されています。
企業中心のウェブサイト情報に偏っており、指名検索しないとなかなか到達できないことも多いでしょう。つまり、BtoBのウェブサイトは「決定段階の見込み客向けコンテンツが大半」なのです。
一方、ブログなどのオウンドメディアのほとんどの記事は間口を広くしますので、訪れる層は「トップオブファネル(興味関心段階)」の層が多数。そこからいきなり公式サイトに移動しても、「あまり理解できない情報、必要でない情報が多い」と感じさせてしまいかねません。
そのため、自社サイトにも多少の非指名検索のトラフィックを呼び込むためのコンテンツを拡充していく必要があります。
BtoB SaaSの場合、「導入事例」のコンテンツ作成が一般的でしょう。アイブリッジ株式会社の調査では、「SaaS導入時に役立った情報1位は導入事例」と判明していることからも、見込み客の不安材料を解消する手段としても有用だとわかります。
(出典:PR Times「SaaS導入時に役立った情報1位は『導入事例』!【SaaSツール利用実態調査】」)
このように、見込み客の心理状態の変化に即したSEO戦略を充実させて、オウンドメディア(非指名検索≒オーガニック)と指名検索の関連性を強めることによって、相乗効果的により多くのオーガニックトラフィックを獲得できます。
オーガニック検索トラフィックを増加させるためには、効果的なSEO戦略とコンテンツの質の向上が不可欠です。まず、キーワードリサーチを行い、見込み客が実際に使用している検索クエリに基づいて最適なキーワードを選択。それらを基にコンテンツ作成を行います。
内部リンク戦略も組み合わせてサイト構造を最適化し、外部リンク戦略によって他の信頼できるサイトからの被リンク獲得を目指すことで、サイトの権威を高められます。
そういった「見込み客に届けるための戦略」を定義したら、「届けるコンテンツの質の高さ」にも拘って作成することが大切です。
実際に、米First page sageの「The 2024 Google Algorithm Ranking Factors」では、Google検索でのランキングに影響する要因として「魅力的なコンテンツを出し続けること(Consistent Publication of Engaging Content)」が26%とトップになっていました。
(出典:First page sage「The 2024 Google Algorithm Ranking Factors」)
特に、BtoB SaaSのような専門分野での「コト売り」では、圧倒的なコンテンツの質の高さによる自社の専門性・サービス優位性の確立が大切です。その上では、読者にとって価値のある情報を提供し、独自性を持ったコンテンツ作成が求められます。
2024年現在はChatGPTをはじめとする生成AIの影響で、コンテンツの濫造が可能になりました。
だからこそ、目先のトラフィックに捉われるのではなく、読みやすさを意識し、オリジナル図表などのビジュアル要素も取り入れるなど、「読者のエンゲージメントを高める質の高いコンテンツ」の作成を目指しましょう。
SNS広告を除くソーシャルメディアからの流入もオーガニックと近しい性質を持っています。昨今のFacebook、X(旧:Twitter)、YouTubeなどの利用者数の増加状況をみれば、ソーシャルメディアからオーガニック的に発生する流入を生み出すコンテンツを作る重要性は一目瞭然です。
ソーシャルメディアのユーザーは、すでに個々人の属性情報がわかっていることも多いので、検索エンジンと比べると絞り込んだ層にリーチが可能です。ただし、自身のネットの活用を振り返ればわかるように、ソーシャルメディア内で完結できるリサーチは僅かでもあります。
2019年の米Ascend2の調査によると、オーガニック検索だけで結果が出たのは5%、ソーシャルメディアだけでは1%でしかなかったのに対し、オーガニック検索とソーシャルメディアを同じ比率で組み合わせた場合はが45%と、最も効果が出ています。
(出典:Ascend2「Which Mix of Organic Search & Social Media Tactics That Drives The Most Beneficial Results, 2019」)
発想のヒント、発見、情報の拡散などさまざまな用途に活用できるソーシャルメディアですが、検索エンジンとは異なる角度からアプローチするプラットフォームと位置付けて、両者を組み合わせて活用することで、よりよい結果に繋がるでしょう。
オーガニック検索を分析する際にはデジタルツールを活用する必要があります。代表的なツールは、以下のとおりです。
各ツールの特徴や機能について個別に解説します。
(出典:Googleアナリティクス)
Googleアナリティクスは、ウェブサイトのトラフィック分析に不可欠なツールであり、どのページが最も訪問されているか、ユーザーがどのような経路でウェブサイトにたどり着いたかなど、詳細なデータを取得できます。
2024年3月以降は「Googleアナリティクス4 (GA4) 」と呼ばれるバージョンに移行しており、「ウェブサイトとアプリをまたいだ分析」「機械学習による高度な分析」「取得できるデータの種類の増加」などの機能が増加しました。
GA4は、オーガニック検索で上位を獲得するために必要なデータ・インサイトを得られる機能が備わっており、基本無料で各種機能を利用できます。高度なデータ・ニーズ分析の必要がある場合は、有料のGoogleアナリティクス360の利用を検討しましょう。
オーガニックトラフィックの分析・増加に関わる機能 |
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無料トライアル |
有り |
料金 |
有料のGoogleアナリティクス360あり(※要問い合わせ) |
(参考:Googleアナリティクスの情報を基に、当社にて作成)
(出典:Search Console)
GoogleのSearch Consoleは、オーガニック検索を分析し、その結果を基に自社サイトを改善していく上で非常に有効なツールです。ターゲットとなる見込み客が検索するキーワードやフレーズに基づいてコンテンツを最適化していくことで、リード獲得やコンバージョン率の向上に直結します。
例えば、Search Consoleでは「特定のキーワードでのサイトの掲載順位」「どのページがどのキーワードでトラフィックを獲得しているか」を教えてくれます。これにより、既に成果を上げているキーワードや改善が必要なキーワードを特定可能です。
「クローリングが上手くいっていない」「モバイル表示が見づらい」など、サイトの技術的な問題も指摘してくれます。これらの問題を修正することで、サイトの内部構造上のSEOパフォーマンスを向上させられるでしょう。
オーガニックトラフィックの分析・増加に関わる機能 |
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料金 |
無料で利用可能 |
(参考:Search Consoleの情報を基に、当社にて作成)
(出典:SERPWatcher)
SERPWatcherはスロバキアのMangools社が提供するSEOツールで、企業が各キーワードのオーガニック検索におけるランキングを追跡するプロセスを効率化し、強化するために設計されています。
SERPWatcherは、何種類かのSEO用の機能が実装されているのが特徴です。
例えばKWFinderは、キーワードリサーチに特化したツールで、SEO難易度が低く検索ボリュームが高い、競争の少ないロングテールキーワードを発見するのに役立ちます。直感的なインターフェースと正確な検索ボリュームデータを提供し、SEO初心者から上級者まで幅広く利用可能です。
ほかに代表的な機能を挙げると、SERPCheckerは「SERP(検索エンジン結果ページ)分析ツール」であり、特定のキーワードでの競合他社の強みと弱みを詳細に把握できます。
オーガニックトラフィックの分析・増加に関わる機能 |
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無料トライアル |
有り |
料金 |
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(参考:SERPWatcherの情報を基に、当社にて作成)
(出典:Semrush)
株式会社オロの提供するSemrushは、全世界で1000万以上のユーザーが利用するオールインワン競合分析ツールです。デジタルマーケティング戦略の策定と実行に役立つ機能を利用できます。
同ツールでは、競合サイトの「トラフィックソース」「使用しているキーワード」「広告戦略」「被リンク戦略」などを把握可能。これらの情報を基に、自社のマーケティング戦略を最適化し、競合に対する優位性を確立できるでしょう。
広告やSNSアカウントとの連携機能もあり、「各種広告のパフォーマンス測定」「自社の複数のSNSアカウントへの投稿」などを行えます。オーガニック検索への対策とも合わせて、コンテンツマーケティング施策の費用対効果を最大化できます。
オーガニックトラフィックの分析・増加に関わる機能 |
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無料トライアル |
14日間の無料体験あり |
料金 |
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(参考:Semrushの情報を基に、当社にて作成)
(出典:Ahrefs)
AhrefsはサイトのSEOパフォーマンスを総合的に分析し、改善する上で有用なツールです。
例えば、キーワードエクスプローラーは、70億以上のキーワードデータベースと、171カ国にわたるデータを利用しているため、「高精度な検索ボリューム推定」「キーワード難易度スコアの算出」「クリック指標」といった高度な分析が可能。これらのデータにより、マーケティング担当者はより戦略的なキーワード選択が可能となり、SEOの成果を最大化できるでしょう。
ほかにオーガニック検索での上位表示に役立つ機能を挙げると、SEOダッシュボードはプロジェクトのSEOパフォーマンスをハイレベルで追跡・監視するための機能です。このダッシュボードを利用することで、以下のような重要なSEO指標の変化を瞬時に把握できます。
オーガニックトラフィックの分析・増加に関わる機能 |
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無料トライアル |
有り |
料金 |
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(参考:Ahrefsの情報を基に、当社にて作成)
(出典:キーワード プランナー)
Googleの提供するキーワード プランナーは、キーワードの検索ボリュームや関連キーワードの情報、さらにはGoogle広告でのクリック単価の推定などを行えます。
特定のキーワードやフレーズの月間検索ボリュームを調べられますので「どのキーワードが多くのユーザーによって検索されているか」「どのトレンドが上昇しているかどうか」を把握することが可能です。
同ツールでは各キーワードの競合性が「高」「中」「低」で表され、調査したいキーワードに関連するキーワードも提示してくれます。
基本無料で利用できますので、低コストで自社が注力するべき検索キーワードをみつけられるでしょう。
オーガニックトラフィックの分析・増加に関わる機能 |
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料金 |
無料で利用可能 |
(参考:キーワード プランナーの情報を基に、当社にて作成)
BtoB企業がオーガニック検索を増やすためのテクニックは、検索エンジンの基準がアップデートされるに伴いどんどん変化します。しかし、Googleなどの検索エンジンが目指していることと企業が志向していることの本質は同じです。
何かを知りたいと思ってキーワードを入力して探している人に、最適な情報を届けることにほかなりません。最適な情報を届けるためには、自社の見込み客が誰かを知っていなくてはなりません。
ペルソナの解像度を高くする、ペルソナの課題を理解してキーワードを設定する、マーケティングファネルに沿って最適で高品質なコンテンツを提供するなど。飛び道具はありませんが、このような地道なタスクを手を抜かず積み重ねていくことが、オーガニック検索を増やすことにつながります。