SNSやSMS、チャットツールなどが普及している現在でも、BtoB領域においてはメールマーケティングが依然として重要な施策です。メールを通じてお客様に有益な情報を提供し続けることで、資料請求や購買などの行動を促せます。
比較的取り組みやすいメールマーケティングではありますが、成果を上げるためには適切なKPI設定が不可欠です。WACUL株式会社の調査によれば、約8割の企業担当者が開封率とクリック率を測定している一方で、半数以上がコンバージョン率や配信停止率を測定していないという実態が明らかになっています。
メールマーケティングで測定すべきKPIは多岐にわたり、各KPIの意味や計測方法を正しく理解しなければ、期待した成果は得られません。そこで本記事では、メールマーケティングにおける主要KPIとその測定方法、計算・分析の仕方をわかりやすく解説していきます。適切なKPI管理によって、より効果的なメールマーケティングを実現していただければと思います。
メールマーケティングとは、メールを通して自社製品やサービスに関する情報をお客様に届けるマーケティング手法のことです。「マーケティング」という言葉が使われている通り、単にメールを通して情報を伝えるのではなく、読者の態度変容を促すことを目的とします。
具体的には、アップセル/クロスセルの機会の創出、顧客との信頼関係構築、購買意欲の醸成などです。メールマーケティングは数ある施策の中でも、低コストで行え、パーソナライズしたコミュニケーションが可能なため、効果的なマーケティングツールとして活用されています。
SNSやSMSが普及した現代においても、メールは顧客との重要な接点として機能し続けています。Benchmark Japanの調査では、全体の71.3%がメールマガジンを受信していると回答しており、情報収集チャネルが多様化する中でも、メールは重要なチャネルのひとつであることがわかります。
(出典:McKinsey & Company)
また、メールは容易にパーソナライズできるのも魅力的です。マッキンゼーの調査によれば、以下の点が判明しています。
メール配信システムやMAツールを活用すれば、メールリスト件数が膨大であっても、各セグメントに適したパーソナライズメールを配信できるようになります。
さらに、メールマーケティングは投資1ドルあたり最大40ドルのリターンが期待できる高い費用対効果も魅力的です。このように、メールは現代においても重要なマーケティングチャネルであり、適切に活用することでROIの高い施策が期待できます。
メールマーケティングで重要なのは、開封率とクリック率だけではありません。ちゃんとメールが届いたか、配信停止はされていないか、そして売上げにつながる成果が出たのかなども測定する必要があります。ここからは、メールマーケティングで見るべきKPIと改善方法をご紹介します。
メール到達数は、配信したメールが受信者の受信トレイに到達した割合を表します。メールを配信したからといって、必ずしも受信者に届く保証はありません。そのため、高い到達率を実現することが、メールマーケティングの第一歩となるのです。
到達率の計算方法は、(配信したメール数 - バウンスしたメール数)÷ 配信したメール数 × 100 となります。
バウンスとは、メールが配信に失敗したことを指します。ソフトバウンスは一時的な問題で後に再送可能ですが、ハードバウンスは無効なメールアドレスなどにより配信不能な状態です。
到達率を改善するには、メーリングリストの整理が欠かせません。メーリングリストを定期的に整理し、無効アドレスは排除しましょう。また、ダブルオプトイン方式を採用し、有効なアドレスのみを収集することをおすすめします。メールサーバーの設定を適切に行うことで、配信ミスの防止にもつながります。
開封率は、配信したメールのうち実際に開封されたメールの割合を示す指標です。計算方法は、開封数 ÷ 配信数 × 100 となります。開封率が高いということは、読者が配信したメールに興味を持ったことを意味します。
開封率に影響を及ぼす要因は、送信者名や送信時間などさまざまですが、特に重要なのが件名です。受信者は件名を見てメールを開封するかどうか決めます。実際にBenchmark Emailの調査によれば、回答者の51.5%が「件名を見て開封するかどうかを決める」と回答しています。短く明確な件名にしたり、「○○様へ」や「○○(担当者名)よりご案内です」のようにパーソナライズしたりと件名の工夫をしましょう。
クリック率とは、配信したメールのうち、メール内のリンクがクリックされた割合を表す指標です。計算方法は、リンククリック数 ÷ 配信数 × 100となります。クリック率が高いほど、メールでの訴求が効果的であると言えます。
クリック率を上げるためには、メール本文のデザインとコンテンツの最適化が欠かせません。Wacul株式会社と株式会社ラクスの共同調査によれば、開封/クリック率が高いメールは配信リストがしっかりと絞られていると判明しており、メーリングリストをセグメンテーションし、各セグメントに合ったコンテンツを作成する必要があるとわかります。
(マッキンゼー社のメールに記載されたCTAボタン)
また、CTAにも工夫が必要です。テキストリンクでもよいですが、Campaign Monitorの調査によれば、ボタンベースのCTAはリンクベースのCTAと比べてクリック率が28%以上高まるとのこと。メールは流し読みされる傾向にある点も踏まえると、ファーストビューにCTAボタンを設置するとよいでしょう。さらに、A/Bテストを実施し、より高いクリック率が得られるバリエーションを選ぶことをおすすめします。
開封者のうちクリック割合は、メールを開封した受信者のうち、実際にリンクをクリックした割合を示す指標です。クリック率がトータルのメール配信数を考慮するのに対し、開封者のうちクリック割合はメールを開封した人の数をベースに計算します。計算方法は、リンククリック数 ÷ 開封数× 100 となります。
たとえば、10万通のメールを送信し、5万人がメールを開封して、1000人がリンクをクリックした場合、クリック率と開封者のうちクリック割合は以下のようになります。
開封者のうちクリック割合は、開封率とコンテンツ・CTAの最適化により高められます。配信者の興味関心に合ったコンテンツ、そして訴求内容が適切で魅力的なデザインのCTAが重要です。開封者のうちクリック割合が低ければ、お客様に寄り添った内容のコンテンツになっているか認識しやすい・行動を起こさせやすいCTAになっているのかを見直しましょう。
コンバージョン率は、メールからの訪問者が実際に目的のアクション(商品購入、資料請求、問い合わせなど)を実行した割合を表します。計算方法は、コンバージョン数 ÷ メールからの訪問数 × 100 となります。
どれだけメールが開封・クリックされても、コンバージョンにつながらなければ、成功とはいえません。メールマーケティングに取り組む際は、コンバージョン率まで丁寧に測定しましょう。
(出典:楽々精算(画面右に問い合わせフォームを設置))
コンバージョン率の改善には、LP(ランディングページ)の最適化が重要です。メールとLPの内容を一致させ、ファーストビューにわかりやすいCTAを設置しましょう。また、コンバージョンプロセス全体のシンプル化が重要です。入力フォーム項目や申し込みステップ数の削減など、行動コストを下げることで、より高いコンバージョン率が期待できるでしょう。
バウンス率は、配信に失敗したメールの割合です。バウンスには「ソフトバウンス」と「ハードバウンス」の2種類があります。ソフトバウンスは、受信者の受信トレイが一時的に満杯などの理由で配信に失敗した状態であり、今後メールが配信できる可能性があります。一方でハードバウンスは、メールアドレスが無効などの理由で配信に完全に失敗した状態を示します。
バウンス率を計算する方法は、バウンス数 ÷ 配信試行数 × 100となります。この数値が高ければ、メーリングリストの品質が悪く、到達率の低下を招いてしまいます。そのため、バウンス率を下げることが、メールマーケティングの課題となるのです。
バウンス率を改善するには、まずメーリングリストの定期的な更新と無効アドレスの排除が欠かせません。アドレス変更などで届かなくなった購読者を洗い出し、リストから除外する必要があります。加えて、ダブルオプトイン方式の採用により、確実に有効なメールアドレスのみを収集することも有効な対策のひとつです。
さらに、メールサーバーの適切な設定やメンテナンスを行うことで、ハードバウンスを減らすことができます。迷惑メールフォルダへの誤判定を避けるなど、配信の失敗を防ぐ対策を徹底しましょう。
配信停止率とは、一定期間に購読を停止したユーザーの割合を表すKPIです。具体的な計算方法は、購読停止数 ÷ メール配信数 × 100となります。配信停止率もまた重要指標のひとつで、メーリングリストを適切にセグメントできているか、正しいユーザー層に配信できているか、そしてセグメントに適したコンテンツを配信できているかを測定できます。
多くの担当者の方が「メール配信頻度が増えれば、配信停止率が悪化する」と考えられているのではないでしょうか。しかし、顧客にとって有益な情報を配信できていれば、1日1通以上配信しても配信停止率が0.05%以下になるとのデータがあります。
むしろ配信停止率の悪化を恐れて、配信頻度が少なくなるのは本末転倒です。メールマーケティングの目標はコンバージョン率の増加であり、配信頻度を落とすということは顧客にリーチできる機会を失っていることを意味します。
配信停止率を下げるためには、メールリストもしくはコンテンツを改善しましょう。開封率が低ければ自社に対する興味が低い顧客にアプローチしている可能性があり、クリック率が低ければコンテンツが最適化できていない可能性があります。配信頻度を落とすのではなく、リストもしくはコンテンツを変えるようにしましょう。
ただし、むやみやたらに配信することで、ハウスリストの配信停止を増やしてしまっては、機会損失につながり、広告などにかけたコストが無駄になってしまいます。そのため、各ターゲットに適したコンテンツを配信するのを前提として、お客様に寄り添った情報提供をしていく心構えを忘れてはいけません。
リスト成長率は、一定期間に新たに獲得できた購読者数の割合を示す指標です。計算式は、新規購読者数 ÷ 既存の購読者数 × 100となります。この数値が高いほど、マーケティングリストが拡大していることを意味します。
リスト成長率を上げるためには、まずメールアドレス収集の施策が欠かせません。ウェブサイトやウェビナーなどから有益なコンテンツやサービスを提供することで、受信者の興味をひきつけ、メール登録に誘導することが重要です。
一方、リスト成長を目的にメーリングリストを購入するのは避けましょう。リストを成長させるうえで重要なのは、自社と関連性の高いお客様の連絡先を取得することです。関連性の低いリストの購入は、あらゆる指標に悪影響を及ぼしかねません。
スパム報告数は、配信したメールが受信者からスパムと判断され、報告された割合を表すKPIです。計算方法は、スパム報告数 ÷ 配信数 × 100となります。この指標が高ければ、メールの品質が低いと判断され、プロバイダーからの評価が下がり、最悪の場合はブラックリストに登録され、配信メールが一切届かなくなるのです。
スパム報告を減らすには、無関係な受信者へのメール配信を避ける必要があります。リスト購入などで手に入れたメールアドレスへ配信すると、スパム報告される可能性があります。
また、特定電子メール法により、受信者に配信停止の選択ができるようにすることも重要です。購読者が簡単にメールを解除できるよう、購読解除手順を明確に示すなどの対策も欠かせません。受信者に配信停止の選択肢を与えることで、不要な苦情を未然に防ぐことができます。
リストの質を高め、受信者に適切な配信を行うことで、スパム報告数を抑えられるでしょう。配信リストの管理と、受信者の意向を尊重することが、健全なメールマーケティングにつながります。
メール共有/転送率とは、配信したメールが受信者から他者へ転送または共有された割合を示す指標です。この指標が高ければ、メールの内容が受信者の興味関心をとらえ、拡散していることを意味します。つまり、より多くの人にメッセージが届いていると言えるでしょう。計算式は、共有/転送数 ÷ 配信数 × 100となります。
この数値を高めるためには、まずメールの本文内でSNSシェアボタンの設置が有効です。そうすれば、受信者が簡単に投稿できるようになります。
何より重要なのが有益なコンテンツの提供です。受信者に役立つ情報や共有したくなるような情報を配信することで、共有や転送してもらえる確率が高まります。
費用対効果は、投資に対する収益の割合を示す指標です。メールマーケティングにおいては、メール配信にかけた費用に対する売上げなどの収益の割合を示します。具体的な計算式は、(メールマーケティングによる収益 - メールマーケティングコスト) ÷ メールマーケティングコスト × 100です。この数値が高ければ、投資に見合った十分な収益が上がっていることを示しています。
ROIを高めるには、コストを削減する、または収益を高めるの2つのアプローチが考えられます。比較的容易なのがコストの削減です。人件費や外注費などの経費を最小限に抑えつつ、配信システムの有効活用などで無駄をなくすことでコストの最適化を実現できます。
一方で収益面においては、メールコンテンツの改善により、開封率やクリック率、コンバージョン率の向上を図ることが不可欠です。上記のKPIを高めることで、受注数や売上げの増加が期待できます。
さらにROIを最大化するには、継続的なPDCAサイクルの実践が何より重要です。KPIの定期的な検証と、そこから得られる分析に基づいて、施策の見直しと改善を重ねていくことで、徐々に成果を高められ、結果的に高いROIの実現へとつながります。
メールマーケティングに取り組む際は、開封率・クリック率の平均値と目安を理解しておくことが重要です。自社で一定の数値が出せていたとしても、業界全体の平均を下回っていれば、それは決して良い数値とは言えません。業界平均値は自社のKPIの良し悪しを判断する基準となるのです。
(出典:Benchmark Email)
Benchmark Emailが約3万5400のユーザーデータを分析した結果、全業界の平均開封率は23.44%、平均クリック率は1.43%とされています。一方、WACUL株式会社と株式会社ラクスの共同調査では、平均開封率が20.86%、平均クリック率が1.86%という数値が出ています。
これらの調査結果を踏まえると、メールマーケティングにおいて開封率20%以上、クリック率1%以上を目安値として設定するのが妥当だと言えるでしょう。自社のKPIがこの平均値を下回る場合は、何らかの施策を講じる必要があります。
ただし、業界によって平均値は大きく異なります。たとえば、Benchmark Emailの調査では建設業界の平均開封率が16.86%なのに対し、広告業界は26.41%です。そのため、自社が属する業界の平均値を把握し、それを上回るべく日々努力を重ねていく必要があります。
単に開封率やクリック率を見るだけでは貴重なインサイトは得られません。過去のデータやコンテンツなどと比較することで、改善につながる分析結果を得られます。効果測定と分析を行う際は、対照実験の考え方を取り入れると効果的です。
メールマーケティングでは、送信時間、件名、CTA、リストなど多くの変数が存在します。これらを一つずつ変えて比較することで、それぞれがどのように影響しているかを把握できます。たとえば、件名を変更して開封率に差があるかを検証するなど。過去のデータと比較するだけでなく、こういった条件を意識したA/Bテストを行うことで、最適なコンテンツやタイミングを見出していくことが重要です。
ここからは、効果測定と分析で見るべきポイントをご紹介します。
メールマーケティングの効果を正しく測定するためには、過去に配信したメールとの比較が重要です。過去のデータと現在の数値に差があれば、その原因を特定することが不可欠になります。
たとえば、前回のメール配信と比べて開封率が低ければ、件名や本文の導入部分に課題がある可能性があります。一方で、開封率は前回と同等であるものの、クリック率が低い場合は、メール本文のコンテンツに問題があったと推測できます。メッセージの訴求力が弱かったり、CTAが適切でなかったりしたのではという仮説を立てられるでしょう。
このように、過去のデータと比較することで、課題がどの部分にあるのかを特定できます。さらに、過去に高い数値が出た際のメールと内容を比較すれば、成功の要因も分かります。同様の施策を今後に活かせるはずです。
また、過去のデータから自社の平均的な数値を算出しておくようにしましょう。業界や企業規模によっても目安は変わってくるため、自社の基準値を定めておくことで適切な分析と評価が可能になります。その上で、今回の結果が自社の平均を上回っているかどうかを確認し、順位付けすることが大切です。
メールマーケティングの効果を高めるためには、メールの配信時間帯や曜日が大きな影響を及ぼすことを理解しておく必要があります。受信者がメールを確認する可能性は、時間帯や曜日によって大きく異なるからです。
そこで効果測定と分析においては、配信時間と曜日の違いによる数値の変化を確認することが重要になります。たとえば、午前中に配信したメールと夕方に配信したメールでは、開封率やクリック率が変わってくる可能性があります。同様に、平日と週末で反応に差が出る場合もあるでしょう。
さまざまな時間帯や曜日にメール配信をして、パフォーマンスが高まる日時を見極めましょう。
コンテンツの違いがメールマーケティングの効果に与える影響は無視できません。開封率やクリック率は、メールに用いられているコンテンツ次第で大きく変わってくるからです。そのため、コンテンツの内容や構成、デザインなどの要素を分析し、よりよいパフォーマンスにつながる形式を見極める必要があります。
まずコンテンツのタイプによる違いに着目しましょう。テキストのみのメールと画像や動画を含むメールでは、どちらの方が反応がよくなるでしょうか。ECサイトのようにビジュアルで製品を訴求する業種の場合、画像や動画を使った方が反応率がよくなるかもしれません。一方、テキストのみのシンプルなメールの方がパフォーマンスが高まる事例もあります。
(出典:Benchmark Email)
また、コンテンツのテーマでも差が生じるでしょう。Benchmark Emailの調査では、受信者がメールマガジンに最も期待しているコンテンツは「最新情報・ニュース」で60.2%を占める一方、ブログ記事やコラムなどの読み物コンテンツを期待している層は全体の26.7%にとどまっていました。
このように、コンテンツの内容や形式の違いは、メールマーケティングの成果に大きな影響を及ぼします。効果測定においては、さまざまなコンテンツパターンを用意し、それぞれについて数値を比較することが重要になります。そこから、ターゲット層に最も適したコンテンツスタイルを見出せるはずです。
メール配信先によって、開封率やクリック率、コンバージョン率などのKPIが変動するのは当然のことです。そのため、配信先の属性に基づいた分析が欠かせません。
たとえば、業種別や職種別、役職別で細かくターゲットを設定し、それぞれについてデータを分析することが有効でしょう。サンプル数が増えれば、より高い精度での分析が可能になります。単に属性だけでなく、ユーザーの関心・ニーズ別、購買履歴別などのセグメントでも同様の分析ができます。
このように、さまざまな角度から細かいセグメントを設定し、それぞれに対するパフォーマンスを比較検討することが重要なのです。もしどこかのセグメントで特に良い数値が出ていれば、その要因を分析して今後に活かせます。一方で低い結果のセグメントに対しては、改善策を検討することになります。
メールマーケティングで成果を上げるためには、ただメールを配信するのではなく、適切な目標設定やリスト選定などが欠かせません。ここからは、メールマーケティングを成功に導く4つのステップをご紹介します。
メールマーケティングを効果的に進めるための第一歩は、目的と成果目標の設定にあります。まずは、リードの育成、新製品の紹介、顧客の追加購入や関連商品の購入促進など、具体的な目的を定めましょう。そして、その目的を達成するための最終目標を設定し、その達成に向けた成果指標(KPI)を策定します。
たとえば「期間内にセールスチームに渡すリード数を20%向上させる」という目的を掲げた場合、その達成にはリード獲得に直結する資料ダウンロード数やウェビナー登録数の増加が不可欠です。そのため、1回の配信で○件のコンバージョンを獲得する、そのためには開封率○%、クリック率○%の達成が必要など具体的な数値を設定しましょう。
このように目的と目標を設定することで、計画的かつ戦略的なアプローチを実行できるようになります。
メールマーケティングの目的と目標を定めたら、次はターゲットとなるリストの選定とコンテンツ作成に取り掛かります。
まず、リストをきめ細かくセグメンテーションすることが必要です。適切なセグメント分けを怠ると、無関係な読者にもメールが行き渡り、配信停止につながるリスクがあります。たとえば、リードにアップセル/クロスセルのメールを送っても成果は望めません。かえって開封率やクリック率、配信停止率が悪化する恐れさえあります。
さらに同じリードであっても、認知段階と比較検討段階では、求める情報は異なります。業界、購買ステージ、役職など、ターゲットの属性に応じて細かくセグメントを分けることで、最適なコンテンツを届けられるようになります。
配信先リストの選定が済めば、次はコンテンツ作成に取りかかりましょう。リスト内の読者がどのような課題を抱え、何を求めているのかを考え、それに即したコンテンツを制作しましょう。ラクス株式会社の調査では、メール閲覧時間は7秒以下とわかっています。つまり、長文のコンテンツよりも、メッセージを端的に伝え、シンプルでわかりやすいデザインのメールが適しているということです。
リストとコンテンツの準備が整ったら、いよいよメールの配信に入ります。メールマーケティングの初期段階においては、さまざまな配信日時や曜日、配信頻度を試し、パフォーマンスが高まる特徴を導き出すことが重要です。
WACUL株式会社の調査では、週に2〜3回程度の配信ならば、配信停止率に影響を与えないと判明しています。コンバージョン率を高めるためにも、各セグメントに対して2〜3回のペースでメール配信をするようにしましょう。
また、メール作成業務を効率化するためにも、初めにいくつかのテンプレートを作成しておくことを推奨します。BtoBに関しては、画像や長文がパフォーマンスに与える影響は少ないとわかっているため、あらかじめテンプレートを作成し、件名や内容に注力できるようにしましょう。
メール配信を終えたら、設定したKPIとの差異を分析し、効果的だった点と改善点を検証します。先にご紹介した開封率やクリック率、コンバージョン率など、メールマーケティングの主要KPIのデータを確認し、目標値から大きく離れている数値には着目し、その原因を分析しましょう。コンテンツやリスト、配信タイミングなど、さまざまな側面からの検証が求められます。
分析により改善点が見つかれば、次のメール配信に向けた施策の立案に移ります。コンテンツのブラッシュアップや、リストの最適化、配信方法の見直しなど、さまざまな観点から改善を重ねていく必要があります。ツールの活用や人的リソースの再配分なども選択肢となり得るでしょう。
こうしたPDCAサイクルの継続的な実践こそが、メールマーケティングを成功に導く鍵となります。都度数値を検証し、課題に気づき、そして改善を重ねることで徐々に施策の精度が高まっていくはずです。一過性のキャンペーンで終わらせるのではなく、長期的な視点に立ち、絶え間ないブラッシュアップを意識することが何より大切なのです。
メールマーケティングを効果的に実施するためには、適切なツールの活用が必須です。手作業でメールの作成から配信、効果測定、分析までを行おうとすれば、多大な労力がかかります。特にメーリングリストが1000件以上の場合は、各セグメントに適したコンテンツを配信するためにもツールを活用するようにしましょう。
メール配信システムやMA(マーケティングオートメーション)ツールなどを導入すれば、メールの送信管理、開封率や転送率などの計測、レポート出力まで一括して行えます。人的ミスのリスクを最小限に抑えられるだけでなく、さまざまな指標を自動で収集できるため、分析の精度が格段に上がります。
また、ツールによってはリードスコアリングやリストセグメント分けなどの高度な機能も備わっているのです。ユーザーの行動に基づいてスコア付けし、適切なタイミングでアプローチすることで、リードの質と量を高められます。さらに、パーソナライズされたメール配信が可能になり、1対1のコミュニケーションを実現可能です。
このようにツールの力を借りることで、マーケターは本来の戦略構築やクリエイティブな業務に専念できるようになります。スピーディーかつ正確なデータ収集と分析を通じて、恒常的な改善サイクルを回すことができるのです。結果として、メールマーケティング施策の精度が高まり、より大きな成果を上げられるはずです。
メールマーケティングで有効なツールは多々ありますが、ここでは入門者の方にもおすすめのメール配信システムとMAツールをご紹介します。
(出典:配配メール)
本記事でもご紹介したラクス株式会社が提供するのが配配メール。「メールマーケティングをもっと効果的に。もっとラクに。」というコンセプトの通り、基本的なメールマーケティング機能が備わっており、マニュアルがなくとも容易に使いこなせるでしょう。たとえば、誰でも同じクオリティのメールが作成できるテンプレート機能があり、ドラッグ&ドロップ操作でカスタマイズも行えます。
また、一目で理解できるメール配信レポートが魅力的です。開封率やクリック率などの各種指標が直観的に理解できるのは当然ながら、開封されやすい曜日・時間帯を特定できるヒートマップ機能、ベンチマークと自社パフォーマンスの比較機能なども重宝するでしょう。
アドレス課金制のため、配信頻度を気にすることなく、効果的にメールマーケティングを行えます。
(出典:HubSpot)
MAツールの入門者におすすめなのがHubSpotです。HubSpotはCRM(顧客関係管理)プラットフォームです。直観的なインターフェースであり、さまざまな料金プランが用意されているため、初めてMAツールを利用する方におすすめできます。
HubSpotには無料のメールマーケティング機能があります。無料プランでも、メールテンプレートの活用やパーソナライズメールの作成、レポートの確認などが可能です。ただし、HubSpot経由で送信するメールにはHubSpotのロゴが表示される、かつ月に2000件までの送信となるため、本格的にメールマーケティングをする場合は有料プランへ加入しましょう。
まずは無料プランで、メールマーケティング機能や他の機能を操作してみてから、有料プランの加入を検討するのもおすすめです。有料プランでは、メール配信の自動化やより細かなレポートの確認などが可能になります。
また、HubSpotはCRMと連動しているのが強みとなります。営業やマーケティング、カスタマサポートなどの各部門で収集した顧客情報が一元管理されるため、カスタマージャーニーの全ステージにおいて一貫した顧客体験の提供が可能です。
メールマーケティングだけではなく、SEOや広告、LPなどのデジタルマーケティング全般の効率化をしたい方はHubSpotのMAツールを検討してみてはどうでしょうか。
メールマーケティングは手軽に実行できる反面、奥が深い施策でもあります。開封率やクリック率が高くても、それがコンバージョンにつながっていなければ、結果的に売上げへの貢献は望めません。
定期的な分析と施策の見直しを怠らず、PDCAサイクルを確実に回していくことで、メールマーケティングの本来の目的を達成し、より大きな成果を上げられるようになるでしょう。目先の指標だけでなく、メールマーケティング全体の流れを常に意識し、改善を重ねていくことが何より重要です。
ぜひ本記事を参考に、メールマーケティングの各KPIを測定し、効率よくPDCAを回していただければ幸いです。