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パイプラインとは?ビジネスでのパイプラインの作り方やマーケティング活動に繋げる方法をわかりやすく解説

最近は、日本でもマーケティング部門がリードを生み出して企業収益に貢献する企業が、SaaSやICT企業の一部で増えてきました。筆者の肌感覚としてそのように感じるものの、一般的なSaaSやICT企業、非ICT系企業ではまだまだこれからというのが実態だと思います。

実際、マーケティング施策でリードを生み出して案件化し、さらに営業担当者が契約するまではかなり長く複雑なプロセスで、1日で改革をするには非常に難しい事象です。

いわゆるこの間の「パイプライン管理」は、部門間での調整が発生するためなかなか大変であり、途中に漏れがあったり寸断によってリードが激減したり、かと思えば営業案件が詰まってしまったりします。

これはマーケティング先進国の米国でも課題のようであり、マーケティング担当者やセールスリーダー1700名を対象に調査した「The State of B2B lead management 2022」において、2022年の市場開拓組織の優先順位のトップに「パイプラインの成長」があげられています。

本記事では、そもそもパイプラインとはどのような意味か? BtoB企業におけるパイプライン管理の重要性やメリットとは何か? パイプラインの作り方などを解説します。

パイプラインとは

パイプラインとは、ビジネス領域で「プロセス、進捗」の比喩で用いられる用語です。「製造パイプライン」「プロジェクトのパイプライン」「セールスパイプライン」など、他の単語と組み合わせて多様な表現がされています。

マーケティング領域でのパイプラインとは、広義では「見込み客とプロモーションなどで初めて接触したステージから、最終的に契約にいたるまでの一連のプロセス」を指します。狭義では、「営業パーソンの初回のコンタクト~契約までのプロセス、いわゆるセールスパイプライン」を意味します。

考え方と元々の意味

パイプラインの元々の意味は、石油やガスなどを運ぶ長い管路です。たとえば、最近ニュースによく出るように、ドイツとロシアの間には天然ガスを運ぶ海底パイプラインが敷設されています。

(出典:PIXABAY

パイプをたくさん接続して、遠隔地まで何かを届けるインフラ機能から派生して、ビジネス領域でも比較的長期の進捗管理をパイプライン管理と呼ぶようになりました。

リードのパイプラインなら見込み客情報を、セールスパイプラインなら案件を、次の工程にどんどん送り出していくようなイメージです。

パイプラインとファネルとの違い

ファネルとパイプラインの違いは、視点の位置にあります。ファネルは、プロセスを見込み客の購買プロセスに沿ってフレーム化したものであり、視点がユーザー側。パイプラインは逆に自社の活動の工程を可視化するためのフレームワークなので、視点が自社に向いています。

パイプラインはリードをいかに案件化し、営業担当者がいつ提案、クロージングして成約するかを目的に、各段階を視覚的に表現する生産性向上のためのツールです。

最適なパイプラインの長さやステージの区分は、ビジネスモデルによって異なります。

たとえば以下の動画では、3種類のパイプラインのパターンを紹介しています。BtoB SaaSのかなり長めのパイプラインの例(トラフィック~契約~アップセルまで)も解説されています。

SaaSのパイプラインを説明している動画

(出典:YoTube

パイプラインがなぜビジネスで使われるようになったのか

BtoB企業でパイプライン管理が普及した理由のひとつには、SFA(営業管理システム)やCRM(顧客情報システム)の登場があります。

特にSFAは営業領域に科学的なマネジメントを持ち込んだという意味で、かなり影響が大きかったと言えるでしょう。

実はそれ以前は、多くの企業で営業プロセスを管理する考え方が根づいておらず、営業活動はブラックボックス化しがち、成果も営業パーソン個人の能力に依存、などマネジメント上の課題は山積みでした。

営業活動を分解して、ステージごとに分けて管理することのさまざまなメリットが、結果的に収益向上に結びつくことが知られ、パイプライン管理を行う企業が増えたのです。

前述のとおり、米国のBtoBマーケティング担当者や営業リーダーは、デマンドジェネレーションにおいて「パイプラインの成長」を重視しています。また、同調査では、82%のマーケティング担当者が「自分が開拓したセールスパイプラインによって評価される」と答えていることが紹介されています。

パイプランをどう設計し運用するかは、マーケティング担当者にとって重要なミッションなのです。

(出典:「The State of B2B Lead Management 2022」-Marketingcharts.com)

パイプラインの作り方

ここでは、パイプラインの作り方を説明します。

ステップ①:見込み客の情報を収集・管理する

パイプラインの構築は、まず見込み客の情報を集めることから始まります。見込み客の情報を収集する方法は多岐にわたりますが、手法例の一部には次のようなものがあります。

  • ウェブサイトの問い合わせフォーム:訪問者が興味を持った際に情報を入力してもらう。
  • セミナーや展示会での名刺交換:対面での交流を通じて直接情報を収集する。
  • SNSの活用:ソーシャルメディアを通じて興味を持っている見込み客を特定し、情報を得る。

これらのチャネルを活用して、見込み客に関する質の高い情報を収集することで、自社に適したパイプラインのステージやサイズを明確にできます。具体的には、以下のような情報がパイプラインを作る上で役立ちます。

  • 連絡先情報:電話番号、メールアドレス、会社名など
  • 過去のコミュニケーション履歴:いつ、どのような方法で接触したか
  • 進行中の商談状況:現在のステージや次のアクション項目

これらの情報を整理し、チーム全体で共有するために、CRMやSFAツールの導入が有効です。

ステップ②:パイプラインのステージを設定する

商材や顧客の規模によって、パイプラインのステージ設定は異なります。たとえば、中小企業がターゲットなら比較的シンプルなパイプラインになる一方、複数のステークホルダーが関与する大企業がターゲットなら、複雑なパイプラインになるでしょう。以下に、パイプラインの主要なステージとその詳細を説明します。

リードの創出(リードジェネレーション)

リードジェネレーションとは、潜在顧客の集客から見込み客化を目指すプロセスを示します。リードの創出は、パイプラインの最初のステージであり、見込み客を発掘するための活動が中心です。

主な担当はマーケティング部門です。デジタルマーケティングでは、SEO、Web広告、コンテンツマーケティングなどを活用してウェブサイトへの訪問者を増やし、見込み客の情報を収集します。また、ウェビナーや展示会などのイベントマーケティングを通じて直接的な接触を図り、新たなリードを獲得します。

リードクオリフィケーション(見込み客の絞り込み)

リードクオリフィケーションは、集めたリードの中から、自社にとって最も価値が高く、購買意欲が高いリードを選別するプロセスです。ここでは、リードのニーズや予算、購買意思、決定権などを評価基準にして選別します。

具体的には、マーケティング部門がMQL(Marketing Qualified Leads)として評価したリードを、営業部門がSQL(Sales Qualified Leads)としてさらに絞り込みます。MQLとは、マーケティング部門が創出した一定の興味や関心を示している見込み客であり、SQLは営業部門が評価した結果、実際に購買の意思決定に進む可能性が高いと判断されたリードです。

この段階では、リードが実際にどれだけ真剣に購入を検討しているかを見極めるために、ヒアリングやアンケートの実施が効果的です。また、リードスコアリングを用いて、リードの重要度や優先順位を数値化し、最も有望なリードにフォーカスすることが重要です。

案件化

案件化は、見込み客が具体的なニーズを示し、購入の可能性が高まった時点でのステージです。詳細なニーズのヒアリングを行い、見込み客の課題や要望を深く理解します。その上で、各見込み客に合わせた提案をし、リードの問題解決に向けた具体的なアクションプランを策定します。

また、案件化のステージでは、営業チームが見込み客の内部での意思決定プロセスを把握し、どのようにアプローチすべきかを戦略的に考えます。これにより、見込み客が購買決定を下すためのサポートを最適に行うことが可能です。

コンタクト

コンタクトステージでは、営業担当者が見込み客と初めて直接接触する重要な場面です。初回の電話やメールで、ミーティングや訪問のアポイントメントを設定し、見込み客との信頼関係を構築します。この段階では、見込み客の具体的なニーズや懸念点を詳しく聞き出すことが求められます。

初回コンタクトは、企業や製品・サービスの信頼性を示し、次のステップに進むための基盤を築く重要な機会です。営業担当者は迅速かつ丁寧な対応を心がけることで、良好な関係を築くことができます。

デモ(初回アポ)

デモステージでは、見込み客に対して製品やサービスのデモンストレーションを実施します。リードが具体的に製品を理解し、その価値を体験する重要な機会です。

デモの実施にあたっては、見込み客のニーズに合わせてカスタマイズしたプレゼンテーションを準備し、具体的な利用シーンやメリットを強調するとよいでしょう。また、見込み客からの質問に対しても迅速かつ的確に回答し、信頼感を高めることが重要です。

デモを成功させるためには、営業担当者が製品の知識を深く理解し、リードの課題に対して具体的な解決策を提示できるように準備する必要があります。

提案

提案ステージは、見込み客が製品やサービスに興味を持った後、具体的な商談に移行する段階です。見込み客のニーズや予算に基づいて詳細な提案書を作成し、価格や条件、導入スケジュールなどを提示します。

提案書には、製品やサービスのメリットを具体的に記述し、見込み客にとっての価値を明確に示すことが重要です。また、提案の過程では見込み客との交渉が行われることが多いため、営業担当者は柔軟な姿勢で見込み客の要求に応じ、双方が納得できる合意点を見つける努力が求められます。

クロージング

クロージングステージでは、提案内容に納得した見込み客が購入を決定し、最終的な契約手続きが行われます。この段階での主な活動は、契約書の締結、支払い条件の確認、および導入スケジュールの調整です。

営業担当者は、見込み客が安心して契約を締結できるように、すべての詳細について明確かつ丁寧に説明することが求められます。また、見込み客が購入を決定する最後の一押しとして、特別なインセンティブや割引を提供することも有効です。クロージングの成功は、見込み客との信頼関係と提案の質に大きく依存します。

サポート

契約後のサポートは、顧客満足度を高め、長期的な関係を築くために不可欠です。このステージでは、カスタマーサクセスやマーケティング部門が主導して製品やサービスの導入支援、使用方法のトレーニング、そして導入後のフォローアップを行います。

また、顧客からの問い合わせや問題に迅速に対応し、信頼関係を維持します。さらに、顧客が追加のニーズを示した場合には、新たな提案を行い、追加販売の機会を探ります。顧客の成功を徹底的に支援することで、顧客は企業に対して高い満足感を抱き、リピート購入や紹介を通じて新たな見込み客をもたらす可能性が高まるのです。

ステップ③:パイプラインのサイズを決定する

売上目標を達成するために、どのくらいの量のリードを集めるかを、逆算して出していきます。適切なパイプラインのサイズを設定することで、営業チームはリソースを最適に配分し、各案件に対して十分なフォローアップを行えるようになります。

たとえば、平均取引単価が100万円の企業が年間1億円の売上げを目標にすると、必要な受注件数は100件になります。成約率が50%であれば、200件の提案件数が必要です。案件化率を20%と仮定すると、1000件のリードが必要です。営業パーソンが5人いる場合、1人あたり200件のリードを獲得し、それぞれ200件の提案を行い、そのうち50%を成約させることが求められます。

この例のように、自社の目標とリソースなどを考慮することで、パイプラインのサイズを決定できます。以下に、パイプラインのサイズを決定する際に考慮すべきポイントを詳しく説明します。

現在のリソースとキャパシティの評価

パイプラインのサイズを決定する際には、まず営業チームの現在のリソースとキャパシティを評価することが重要です。営業担当者一人あたりがどの程度の案件を同時に処理できるかを見極め、これをもとにチーム全体で対応可能な案件数を算出します。評価には、以下の要素を考慮します。

  • 営業担当者の人数:営業チームの規模がパイプラインの最大サイズに直接影響します。
  • 各担当者の処理能力:一人の担当者が効果的に管理できる案件数を見積もります。たとえば、過去のデータを分析して、1カ月に平均して何件の案件を処理できるかを確認します。
  • 営業サイクルの長さ:営業プロセスがどの程度の期間を要するかにより、同時に扱える案件数が変わります。営業サイクルが3カ月の場合、1年に最大で4回のサイクルを回すことができます。

パイプラインの段階ごとの負荷分散

パイプラインの各ステージでの負荷を分散させることも考慮に入れます。たとえば、初期のリードジェネレーション段階では多くのリードが必要ですが、クオリフィケーションやクロージング段階に進むにつれて、その数は減少します。この自然な減少を見越して、各ステージで必要なリソースを計算し、全体のバランスを取りましょう。

基本的には、以下の通りに進めます。

過去のデータに基づく見積もり

過去の営業データを活用して、どの程度のリードがどのステージに進み、最終的に成約に至るかを分析します。過去の成約率やステージごとのコンバージョン率、平均営業サイクルをもとに、各ステージでのリード数や案件数を予測し、適切なパイプラインのサイズを見積もりましょう。

目標と現実のバランス

パイプラインの設定においては、会社の売上目標と現実的なキャパシティのバランスが重要です。売上目標を達成するためには、必要な成約数から逆算してリード数や案件数を算出する必要があります。

しかし、過度な目標設定は営業チームに無理な負担をかけ、逆効果となるリスクがあります。過去のデータをもとに合理的な目標を設定し、無理のない範囲での営業活動を促進することが大切です。

ステップ④:パイプラインの指標を決める

パイプラインのサイズを決めたら、追跡すべき指標を決めます。リードの数、営業の取引状況はリアルタイムに変わるものです。重要な指標をチェックすることで、自分たちの動きが目標に対してどの程度進捗しているかわかります。

また、パイプラインのどこかで起きた異変(リードが多く去る、停滞案件が多い等)を素早く察知でき、速やかに対策を立てられます。

以下に、主要な指標とその具体的な設定方法について詳しく説明します。

リード数

リード数は、パイプラインに入る見込み客の総数を示し、マーケティング活動やリードジェネレーションの効果を評価する重要な指標です。リード数を増やすためには、SEO、広告、ウェビナー、展示会などのマーケティング活動を強化する必要があります。

しかし、単にリード数を増やすだけでは、顧客になる見込みの低いリードまでが営業チームに渡され、負担が増えてしまいます。たとえばガートナー社の調査では、回答者の62%が「営業とマーケティングで適格リードの定義が異なる」と回答しています。

まずはリードの定義を統一し、質の高いリードを多く集められるようにしましょう。

コンバージョン率

コンバージョン率は、リードがパイプラインの各ステージを進む割合を示す重要な指標です。コンバージョン率を把握することで、どのステージでリードが滞っているのか、またどのプロセスが効果的であるかを詳細に分析できます。

たとえば、リードが初期接触ステージで多く滞っている場合、その原因として、初回のアプローチ方法や情報提供が不十分で興味関心を高められていないことが考えられます。逆に、商談ステージで高いコンバージョン率が見られるならば、そのステージでの営業活動やプレゼンテーションが効果的であると言えます。

各ステージのコンバージョン率を分析し、戦略の見直しやトレーニングの実施などをして、ボトルネックの改善をしましょう。

案件の取引規模

案件の取引規模は、各案件の商談金額を示します。この指標は、営業チームがどの程度の規模の案件を扱っているかを評価するために使用されます。取引規模が大きいほど、パイプラインの価値が高まり、最終的な売上げにも大きな影響を与えるでしょう。取引規模を増やすためには、ターゲットとする顧客層や市場を見直し、大規模な商談を獲得するための戦略を立てることが求められます。

案件化率

案件化率は、リードが実際に案件として進む割合を示します。リードの質や営業活動の効率を評価するために重要です。案件化率を高めるためには、リードクオリフィケーションのプロセスを改善し、質の高いリードを選別しなければなりません。

また、営業チームのフォローアップ活動を強化し、リードが案件に進むように支援することもポイントです。ある調査によれば、見込み客の60%が営業の提案を4回断ってから5回目で受け入れることがわかっています。したがって、適切なフォローアップ体制を構築することが必要です。

成約率

成約率は、提案から成約に至る割合を示します。この指標は、営業活動の最終的な成果を評価するために不可欠です。成約率を高めるためには、提案内容の質を向上させ、見込み客のニーズに合ったカスタマイズされた提案を行うことが重要です。また、提案後のフォローアップを丁寧に行い、見込み客の疑問や懸念に迅速に対応しましょう。

パイプライン管理をマーケティング活動とつなげるには

近年は、オンライン上にタッチポイント(顧客接点)が増え続けており、人はみなオンラインとオフラインを行ったり来たりしています。このような時代、マーケティング部門がデマジェン(需要の発掘)で貢献できる企業とできない企業の売上げの差は、どんどん開いていきます。

パイプライン管理の指標をもとに、常にマーケティング活動もアップデートして収益に貢献していきましょう。

パイプラインを大きくする(リードを増やす)

リードは不足しがちです。マーケティング部門は常にアンテナをはりめぐらし、新たなリードと出会えるチャネルに向けてキャンペーンを行う必要があります。ここでは、BtoBの主要なマーケティングキャンペーンを紹介します。

ソーシャルメディア(SNS)

ここ2~3年、検索エンジンよりも先にSNS検索をする人が増えています。SNSには一般の人のリアルな意見が溢れているためです。

企業としても自社アカウントから投稿したり広告を展開したりなど、SNSで見込み客に知ってもらうことを考える必要があるでしょう。BtoB企業はSNS利用に慎重な傾向があるため、ソートリーダーになりやすいメリットもあります。

コンテンツマーケティング

オウンドメディアに代表される自社コンテンツは、広告とは違いインターネット上に蓄積されていきます。24時間365日何年間も情報を発信しつづけるため、非常に費用対効果のよいマーケティングです。

テキストベースのメディアを読むペルソナは、答えを探しているケースが多い傾向にあります。そのため、どのキーワードで検索して何が知りたいのかを踏まえて、購買心理の変容にあわせたコンテンツを増やしていけば、質の高いリードを惹きつけることができるでしょう。

  • 少し興味がある人向け:入門ガイド、業界の動向セミナー、短時間の動画等
  • 比較検討ステージの人向け:事例、ホワイトペーパーなどの専門コンテンツ等

広告(オンライン、オフライン)

広告はオウンドメディアやSNS投稿などよりも費用がかかります。しかし、前者が興味を持って自分で調べるユーザーを対象とする、待ちのスタンスであるのに対し、広告は、商品・サービスにまったく関心のない段階のペルソナにも、ストレートにメッセージを発信できるメリットがあります。

見込み客の多いチャネルを選定してキャンペーンを行えば、徐々に需要を喚起する効果があるでしょう。ただし費用もそれなりにかかるため、オウンドメディアと組み合わせて活用することが望ましいと言えます。

パイプラインのリードの質を高める

リードナーチャリング

リードには定期的に役立つ情報を送ったり、イベントやコミュニティに招待したりして、商品・サービスに興味・関心を持ってもらうよう働きかけます。階段を一段一段登るようなイメージで、購買心理にそってアシストし、質の高いリードを増やしていくのが大切です。

SaaS企業であれば、ウェビナー参加者に無料トライアルを促すメールを案内するなどのステップで、次のパイプラインのステージに移動を促すアプローチを行います。

2015年の、米国マーケティングメディアDemand Genの調査によると、51%が「ナーチャリングで5回以上のタッチが必要」と回答していますが、適切なナーチャリング戦略を実行できた企業は「販売機会が20%」増加しています。継続したアプローチを行いましょう。

リードルーティング(案件の割り当て)の精度

リードルーティングとは、リードの営業担当者へのリードの割り当てです。ここはボトルネックになりやすい工程であり、前述「The State of B2B lead management 2022」でも、10人に6人が、リードを間違って割り当ててしまうと答えています。

そして、なんとリードのルーティングは「手作業が1位」です。最近は、Oracle Fusion MarketingMicrosoftのDynamics 365 Sales など、マーケティングのデータを自動的に営業のツールに移動できるツールもあります。ただ、あまり浸透していないのか、マッチング精度がまだそれほどよくないのかもしれません。

将来的には就活SaaSのように、営業マンの個性まで踏まえたAI搭載ツールが普及すると思います。ただ、現時点ではこの領域の新ツールの動向もウォッチしつつ、定期的なレビューミーティングを行うことで、マッチング精度を上げていくことが必要です。

SLAの活用

リードの質と量の最適化、成約率の向上、売上げの向上、いずれもマーケティング部門とセールス部門の情報の共有、動きの連携が大きく影響します。

しかし、どのような企業でも組織のタコ壺化はすぐ発生します。これは多くの場合、言葉の定義が違ったり、ゴールが共有されていなかったり、インプット情報が異なるためです。両部門のコンセンサスを測るためには、社内でもSLA(サービス レベル アグリーメント)を結ぶと、コミュニケーション上の誤解が減り効果的です。

HubSpotの無料DLできるSLAテンプレート

(画像引用:Free Tempate - SLA Tempate for Sales & Marketing - HubSpot

パイプラインを運用する上で注意するべきこと

パイプラインの効果的な運用は、営業活動の成功に直結します。しかし、適切な管理を行わないと、パイプラインの機能が低下し、営業効率や成約率に悪影響を及ぼすことがあります。以下に、パイプラインを運用する上で特に注意すべきポイントについて詳しく説明します。

パイプラインの指標に頼りすぎない

パイプライン管理において、指標は重要な役割を果たしますが、数字だけに頼ることは避けるべきです。指標が示すデータは確かに有用ですが、それだけでは捉えきれない要因が多く存在します。

たとえば、リードの質や顧客満足度、信頼関係の構築度、営業チームのモチベーションなど、これらは定量化が難しい要素です。指標に固執することで、こうした重要な側面を見落としてしまう危険性があります。

そのため、パイプライン管理には定性の面と定量の面とのバランスの取れたアプローチが求められます。定量データに基づく分析と、現場の実情や人間関係といった定性的な要素を組み合わせることで、より包括的な理解が得られるでしょう。

案件を追うのが難しい

パイプラインのステージが多岐にわたると、案件の進捗を追跡するのが難しくなることがあります。特に大量のリードを扱う場合、どの案件がどのステージにあるか、次に何をすべきかを把握するのは困難です。その結果、重要な案件を見落とすリスクが高まります。

この課題を解決するためには、CRMやSFAツールを導入し、案件の進捗を一元管理することが有効です。これにより、重要なタスクやフォローアップのリマインダーを自動化し、効率的に案件を追跡できます。おすすめのツールは、次の項でご紹介します。

パイプラインを定期的に更新する

パイプラインは一度設定して終わりではなく、定期的な見直しと更新が不可欠です。市場環境や顧客ニーズの変化、営業チームのキャパシティの変動など、さまざまな要因がパイプラインに影響を与えます。これらの変化に対応するために、パイプラインを月に一度見直し、必要に応じて調整することが重要です。

たとえば、新たな競合が市場に参入した場合や、顧客の購買傾向が変わった場合には、パイプラインのステージやリードの評価基準を見直す必要があります。これを怠ると、パイプラインが現実に即さなくなり、営業活動の効率が低下するリスクがあります。

また、パイプラインを更新することで、正確な売上げ予測ができるようになります。たとえば、20万円の提案書を見込み客に送信したが、その後連絡がないとしましょう。この場合、商談段階にある案件の成約率が90%であるため、売上予測には18万円が計上されます。

しかし、実際には売上げが立たない可能性が高いため、予測と現実の間にギャップが生じることになります。案件が進展しないまま放置されると、このギャップはさらに広がり、売上げ予測の信頼性が低下します。

定期的な更新を通じて、常に最新の情報と状況に基づいたパイプラインを維持することで、営業チームのパフォーマンスや売上げ予測精度の向上を目指しましょう。

マーケティングとセールスでレビューミーティング

営業活動の成果を最大化するためには、マーケティングとセールスの連携が不可欠です。両部門が緊密に協力し、リードジェネレーションからクロージングまでのプロセスをシームレスに繋げることで、パイプライン全体の効率が向上します。

実際にガートナー社の調査によれば、マーケティングとの連携を優先する営業組織は、新規顧客獲得目標を3倍近く上回る可能性が高いと判明しています。

たとえば、マーケティングが生成したリードをセールスがどのようにフォローアップしているか、どの段階で顧客にアプローチするのが最も効果的かを定期的に見直すことで、効果的な戦略を立てることができます。これには、月に一度のレビュー会議が有効です。

この会議では、リードの質や進捗状況、成功事例や課題について情報を共有し、次のアクションプランを立案します。定期的なレビュー会議を通じて、マーケティングとセールスの活動を調整し、情報を共有することで、両部門が一致団結して目標を達成できるようになります。

適切なツールの選択と活用

パイプライン管理には、適切なツールを選び、効果的に活用することが不可欠です。CRMシステムやSFAツールは、パイプラインの管理を効率化し、営業活動の可視化を助けます。しかし、ツールの導入が目的化してしまい、実際の運用が不十分になると効果を発揮できません。

この問題を避けるためには、まずマーケティングとセールスの両部門のニーズを明確にすることが重要です。たとえば、マーケティングがリードを追跡し、セールスがそのリードを効果的にフォローアップできるようなツールが求められます。

適切なツールを選定するためには、以下のステップを踏みましょう。

① ニーズの洗い出し

両部門の具体的な要件をリストアップします。たとえば、マーケティング部門はデジタルチャネルでリードジェネレーションからクオリフィケーションまで一貫して行えるツール、営業部門は高い購買意欲を示すリードを迅速に特定し、フォローアップの優先順位を決定するためのリードスコアリング機能を求めるなど。

② ツールの比較
市場にある複数のツールをコスト、操作性、サポート体制などの観点から比較します。

③ 試用期間の活用

導入を決定する前に、現場の社員が実際にツールを試用し、両部門のフィードバックを収集します。

④ 教育とサポート

ツールの効果的な活用を促進するために、従業員へのトレーニングとサポートを提供します。

適切なツールを選び、効果的に活用することで、パイプラインの管理が効率化され、営業活動の成果を最大化することが可能です。

パイプライン管理にはツールを活用

パイプラインの効果的な管理には、適切なツールの導入が不可欠です。これらのツールは、リードの追跡、顧客情報の管理、営業プロセスの可視化など、多岐にわたる機能を提供します。以下に、代表的なパイプライン管理ツールを紹介します。

HubSpot

(出典:HubSpot

HubSpotは、CRM(顧客関係管理)システムを中心に、営業、マーケティング、カスタマーサポートなどの業務を効率化するためのソフトウェアです。

HubSpotのパイプライン管理ツールを活用すれば、取引ステージの追加や編集、移動を簡単に行えます。また、パイプライン全体を一元管理できるため、ボトルネックの特定が容易になります。さらに、HubSpotには以下のような機能があります。

  • CRMのコンタクトから新規取引を自動的に作成
  • 営業担当者ごとにアプローチすべきコンタクトのリストを毎日自動生成
  • パイプラインの各ステージの進捗を追跡し、健全性についてレポートを作成

顧客への連絡が全て一元化され、どの担当者が誰にいつどんな連絡をしたのかを管理できるため、引き継ぎや顧客対応が円滑に行えるでしょう。

Sales Hubの有料版を利用すれば、カレンダーによるアポイント登録機能のカスタマイズや、資料などドキュメントの詳細な行動履歴の記録が可能になります。これにより、次のアクションやフォローアップのタイミングをデータにもとづいて判断でき、効率的な営業活動が実現可能です。

HubSpotは、SFAとしての自由度とUIのバランスが絶妙であり、設計に手間がかからず、インターフェースの操作感も優れています。営業プロセスの見える化により、メンバー相互のフォローと安定した受注管理が実現し、プロパティ設定も充実しているため、必要な分析がすぐに出せる点が評価されています。

Salesforce

(出典:Salesforce

Salesforceは、その幅広いカスタマイズ性と多機能性から、SFAとCRMの分野で高い評価を得ています。HubSpotとよく似ていますが、Salesforceは高度なカスタマイズが可能であり、費用も高額なため、大企業向けのツールです。一方、HubSpotは中小企業向けのツールといえます。

Salesforceでは、パイプラインステージの細かな設定、一元管理、AIによる売上げ予測と案件の成立予測などの機能の活用が可能です。最大の魅力は、そのカスタマイズ性にあります。進捗をフェーズごとに確認できる機能や、チャットやメールの送信など、多岐にわたる操作ができます。これにより、営業活動に必要なほとんどのタスクをSalesforce内で完結できるため、ツールの使い勝手が非常に高いです。

しかし、自由度が高い反面、どの機能をどのように活用すべきか迷うこともあります。また、ライセンス費用が高いため、そのコストメリットを十分に引き出すためには、ツールの使いこなしが必要です。大規模な営業チームや、グローバルでパイプライン管理を統一したい場合などに有効なツールといえます。

Zoho CRM

(出典:Zoho CRM

Zoho CRMは、その高いカスタマイズ性と機能の豊富さから、営業活動を一元管理するための強力なツールとして評価されています。SFAとCRMが融合しており、営業プロセスの見える化が実現可能です。特にプロフェッショナルプランでは、従来のExcel主体の案件管理や契約管理が大幅に効率化され、業務負荷が軽減できるでしょう。

ワークフロー機能を活用することで、契約期間満了アラートを設定し、更新漏れを防ぐことができる点も便利です。また、オプションのZoho Campaignsと連携することで、CRMデータを活用したメルマガの配信が可能となり、営業管理の幅をさらに広げることができます。

これまで顧客管理や請求管理をアナログで行っていた企業、導入コストを抑えたい企業におすすめです。

GENIEE

(出典:GENIEE

GENIEEは、日本発のSFAツールであり、そのシンプルなデザインと高い柔軟性から、案件管理に最適なツールとして多くの企業に支持されています。デザインが見やすく、項目のアレンジがしやすい点が特に評価されており、営業活動の可視化によって状況把握がスムーズに行える点が大きな魅力です。

また、商談ステータスや達成率グラフなどの可視化機能があります。これにより、営業個人やチームの進捗が一目で分かるようになり、社内連携や案件進行が容易になるでしょう。同一顧客に複数の商材を提案する場合も、階層分けで登録が行えるため、管理が非常にしやすくなります。

商談が一定のステータスに達したタイミングでSlack通知を自動化することで、手動での通知作業を省くことができ、無駄を削減することも可能です。

まとめ

パイプラインを適切に管理し、リードの状況、案件の進捗具合を可視化することは、以下のようなさまざまなメリットがあります。

  • リードの質と量の最適化
  • 案件の進捗状況の可視化
  • 速やかなボトルネック特定と対策
  • マーケティングのROI
  • 営業パフォーマンスの向上

結果として収益も拡大につながります。

そもそもベンダーの視点だと、ついマーケティングとセールスを分断して考えがちですが、ユーザー側から見たら連続したひとつのプロセスです。全体最適を意識して、マーケティングと営業チームが連携し、パイプライン管理を行っていきましょう。