リターゲティング広告は、自社サイトに訪問履歴のあるユーザーに広告を配信する手法です。Web広告からのコンバージョンを増やすための有力な手段として、多くの企業に活用されています。
しかし、広告で獲得した新規ユーザーがコンバージョンまで到達する割合は、Google 広告のベンチマークレポートでも、0.5〜3%程度しかないというデータがでています。1回だけの接触では購入などにつながらない場合が多いため、ユーザーに再訪問を促す施策が必要なのです。
本記事では、BtoB企業やSaaS企業のマーケティング担当者に向けて、リターゲティング広告について以下の内容を解説します。
リターゲティング広告の基本や、効果的に運用するための考え方を詳しくお伝えします。ぜひ最後までお読みください。
リターゲティングとは、自社サイトに訪問したことのあるユーザーに広告を配信し、再訪問を促す手法です。
せっかく自社サイトに集客できても、なかなか購入や問い合わせに至らないという悩みは、多くのBtoB企業やSaaS企業に共通しています。Webサイトの設計に問題がある可能性もありますが、そもそも新規訪問ユーザーがコンバージョンに至る割合は低いことを前提に、マーケティング戦略を考えるべきです。
ユーザーがサイトの1ページだけを閲覧して離脱する割合である「直帰率」は、平均で58.18%というデータがあります。半数以上のユーザーは、最初に訪れたページしか見ていないのです。
コンバージョン率は、検索広告で1%台〜10%弱、GDN(Googleのディスプレイ広告)で0%台〜3%程度と、業界ごとのデータが示されています。こうしたデータが示す通り、広告のクリックがコンバージョンにつながらないケースが多いのは、ある程度は仕方がないことです。
そこでコンバージョン率を上げるための手段として有効なのが、リターゲティング広告です。
自社サイトに訪問履歴のあるユーザーは、製品サービスに関心があると想定されます。そうしたユーザーに絞って広告を配信することで、コンバージョン率の向上が期待できます。
過去にWebサイトから離脱したユーザーの中には、「購入を検討していたが他のサイトを見ているうちに忘れてしまった」という人もいるでしょう。リターゲティング広告によって、そういったユーザーに製品サービスのことを思い出してもらえます。
広告のROIやROASを高めるためにも効果的なので、すでにWeb広告を出稿しているBtoB企業やSaaS企業であれば、リターゲティング広告の活用はおすすめです。
リターゲティング広告は、主に以下の媒体で利用できます。
媒体によって名称が異なりますが、目的や用途は同様です。
インターネット黎明期においては、以下のような種類のWeb広告が主流でした。
インターネットの発達とともに、見込みの高いユーザーにより効率よく広告を配信するため、広告技術も進化していきました。そして「ユーザーの行動を分析してターゲティング」するという、行動ターゲティングの概念が2005年ごろから提唱され始めたのです。
ユーザーの行動や興味関心に連動した広告配信は、「人」をベースとしたターゲティング手法「オーディエンスターゲティング」と呼ばれます。2008年、リーマンショックで金融エンジニアがWeb業界へ流れ、アドテクが盛んになったことも追い風となり、ターゲティングの技術が発展していきました。
GDNでは2010年、YDAでは2013年にリターゲティング広告サービスを開始しています。「人」に対してピンポイントで広告を配信する手法の効果が認められ、発達していったのです。
リターゲティング広告の掲載場所や見え方は、媒体によって異なります。以下の媒体について、どのように広告が表示されるかを紹介します。
(Yahoo! JAPANに表示された広告)
ポータルサイトの代表例は、Yahoo! JAPANです。上図のように、トップ画面右上に大きく広告(赤枠で囲った部分)が表示されています。
(Yahoo! JAPANニュースに表示された広告)
Yahoo! JAPANのサービスサイトであるYahoo! JAPANニュースにも、上図のように画面中に広告が表示されます。このような広告枠に、リターゲティング広告の配信が可能です。
(教えて!gooに表示された広告)
上図はGDNの掲載パートナーである「教えて!goo」に表示された広告の例です。このように、Webサイト内にある広告枠に対して、リターゲティング広告を配信できます。
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(YouTubeに表示された広告)
上図はYouTube内の広告枠です。動画一覧の上部と動画内に、広告が表示されています。
このように、リターゲティング広告はWeb上のさまざまな場所に掲載できます。リターゲティング広告の効果を高めるためには、自社の見込み客がよく訪れるサイトに広告を出稿することが大切です。
(Facebookに表示された広告)
上図はFacebookに表示された広告の例です。タイムラインと連絡先一覧の上部に、広告が配置されています。リターゲティング広告は、SNS内のこうした広告枠にも配信可能です。
(Twitterタイムライン上に表示された広告)
(おすすめユーザー一覧に表示されたプロモアカウント)
(トレンド一覧に表示されたプロモトレンド)
Twitterのリターゲティング広告の配信先には、以下の3種類があります。
それぞれが上図の広告枠に対応します。「Promoted」と表記されているコンテンツが広告です。
SNS内の広告は、ユーザーの投稿と同じ形式で配信されるため、広告だと意識されにくい点が特徴です。BtoB企業やSaaS企業にとっても効果的な媒体ですので、広告の出稿先の選択肢として検討してみるとよいでしょう。
(HubSpotのFacebook広告)
たとえば、マーケティングツールをSaaSで提供するHubSpotは、無料でツールを使えることをFacebook広告で訴求しています。CRMに関心を持つマーケティング担当者がこの広告を見て、「無料ならとりあえず試してみようか」と反応してもらえることを期待できます。
ターゲットとするユーザーが思わず目をとめる広告として、参考になる事例です。
たとえば、以下はSticker.style という無料スタンプのアプリを見ている際に表示された、旅行チケットのトラベロカ(Traveloka)のアプリのリターゲティング広告。一度サイトを訪問したユーザーが見ているアプリに、自社アプリのインストールを促す広告を表示しています。この他、アプリをアンインストールしたユーザーに再インストールを促すリターゲティング広告も可能です。
(Travelokaのリターゲティング広告(広告主))
(広告が掲載されたアプリ Sticker.Style)
前述のように、YouTubeでは動画の右上などにディスプレイ広告を配信することや、視聴者が動画を再生する前、再生中、再生後などにリターゲティング動画広告を配信できます。ニコニコ動画でも、YouTubeと同じように右上部や側面にディスプレイ型のリターゲティング広告が配信できます。コメント機能のすぐそばの位置なのでユーザーに注目されやすいでしょう。
動画サイトによって広告が表示されるタイミングや形式が異なります。どの媒体が自社のターゲット層に合っているかを検討し、最適な場所にリターゲティング広告を掲載することが重要です。
(出典:ニコニコ動画)
(リターゲティング広告の仕組み)
リターゲティング広告の仕組みは、以下の2段階で説明できます。
まず自社サイトに、リターゲティングのためのタグ(グローバルサイトタグ)を設置しておきます。これにより、訪問したユーザーをCookieで特定して、リスト化できるようになるのです。
その後、作成したユーザーリストを使用することで、リターゲティング広告を配信できます。
また、リターゲティング広告の配信方法は以下の2種類です。
スタティックリターゲティングは、自社サイトに訪問履歴のあるユーザーに、あらかじめ設定した広告を配信する手法です。取り扱う製品サービスの種類が少ないBtoB企業やSaaS企業であれば、この手法が扱いやすいでしょう。
一方ダイナミックリターゲティングでは、機械学習によって最適な広告クリエイティブを選んで配信します。システム開発やSaaS製品のサブスクリプションプランなど、ユーザーに合わせて多種多様なサービスを訴求したい場合におすすめです。
(Criteo公式ホームページ)
ダイナミックリターゲティング広告を配信するツールの例として、Criteoが挙げられます。CriteoはGoogleとYahoo!の両方と連携できるため、非常に多くのサイトに広告を配信できる点が特徴です。
こうしたツールを用いることで、リターゲティング広告の出稿が簡単になります。Web広告の管理に使える工数が限られている企業であれば、手間を減らすためにツールを導入することもおすすめです。
Web広告には、リターゲティング広告だけでなく、バナー広告、アフィリエイト広告、リスティング広告、メルマガ広告などの仕組みがあります。しかし、一見似たような広告のことが多く、見ただけではどのタイプの広告かわかりにくいので以下に違いを解説します。
種類 |
対象 |
表示箇所 |
リターゲティング広告 |
自社サイトに訪問履歴のある人 |
対象が訪問するメディアを追跡して表示 |
バナー広告(純広告) |
特定サイトの訪問者 |
特定のサイトの固定位置(上部や側面等) |
アフィリエイト広告 |
ASPに加盟しているブログ、SNS、動画、メディアの読者 |
第三者が運営するブログ、SNSなどに表示 |
メルマガ広告 |
メールの受信を許可した人 |
ユーザーのメール受信ボックス |
リスティング広告 |
特定のキーワードで検索した人 |
検索エンジンの検索結果ページに表示 |
バナー広告とは、特定のWebサイトの上部や側面などの固定された位置に掲載されるディスプレイ広告です。常に同じ位置に表示されるため、サイト訪問者全員の目に触れます。
一方、リターゲティング広告は、広告主のサイトを訪問したことのあるユーザーが訪れたさまざまなメディアに掲載。しかも、その人だけに表示されます。デザインの印象に違いはありませんが広告のターゲット層が異なります。
また、バナー広告は通常、月額または年額の固定料金で提供されます。一方、リターゲティング広告はクリック数などの成果報酬型の料金体系が一般的で、料金形態も異なります。
バナー広告は、ユーザー層が限定されるサイトに適しています。以下はあるリゾート地の海外在住日本人向け情報サイトのバナー広告。訪問者のほとんどがそのエリアの在住者や移住希望者なのでバナー広告は効果的でしょう。
例:Cebu pot
(出典:https://www.cebupot.com/cebupot-survice/cebupot-ad/)
アフィリエイト広告とは、第三者が運営するブログ、SNS、比較サイト、動画などのメディアに、ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダー)経由で掲載する広告です。
リターゲティング広告は、自社サイトを訪問したユーザーが訪れたサイトでそのユーザーのみに表示される追跡型の広告です。広告の対象者が異なります。
アフィリエイト広告の料金形態は、リターゲティング広告と同じく成果報酬型が一般的です。ユーザーがメディアに表示された広告をクリックしたり、広告主のサイトで商品を購入したりすると広告費用が発生します。
アフィリエイト広告の長所は新規ユーザーへの認知度向上。有力なメディアへのアフィリエイト広告掲載により、ブランド認知度が向上するメリットもあります。
例: アフィリエイトプラットフォーム大手 A8.net
(出典:アフィリエイトとは?仕組みと報酬振込までの流れ - A8.net)
メール(メルマガ)広告とは、個人のメールアドレスに直接送信するプロモーションメールやメールマガジン形式の広告です。宣伝を目的としたプロモーションメール、情報提供を目的としたメール、再アクションを促すメールなどがあります。メルマガも間接的な宣伝なのでメール広告に含まれます。
一方、リターゲティング広告はメールだけでなく多様なメディアに表示されます。
Gmailの例
(注: 「スポンサー」と表示されているのは、Google広告のGoogleディスプレイネットワークの一種です。)
リスティング広告とは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンの検索結果ページに掲載されるテキスト形式の広告です。特定のキーワードで検索した人にのみ表示させられます。上記の画像は、Googleで「AI マーケティング」とキーワードで検索した検索結果ページ。「スポンサー」と表示されているのがリスティング広告です。
一方、リターゲティング広告は、まったくの新規層を想定しておらず既にWebサイトやコンテンツに訪問履歴のあるユーザーのみに表示される広告であり、広告のターゲットが異なります。
また、リスティング広告がそのキーワードに関心を持つ人すべてを対象するのに対し、リターゲティング広告は一度自社と接触がある人に再度認知を深めてもらうことやアクションをとってもらう目的で活用されます。
一度サイトを訪れたユーザーの中には、商品に関心を持ち続けている層が存在します。リターゲティング広告を実施することで、再来訪の促進、購買率の向上、ブランディングの強化など、さまざまなメリットが得られます。
購買の際、一旦決断を保留する人は少なくありません。情報収集の段階で「後でまた見よう」と考え、そのままになってしまうケースも多いでしょう。米国のCRO専門エージェンシーInvespの統計によると、リターゲティング広告によりユーザーの26%がウェブサイトに再訪するとされています。
リターゲティング広告には、一度自社サイトに訪問した見込み客に再度自社を認識してもらい再来訪や購買を促す効果があります。その他多くの調査結果が効果を裏付けており、たとえば、2025年の米国の統計情報によると、ECサイトで商品をカートに入れたままのユーザーにリターゲティング広告を配信した結果、カート放棄率が6.5%改善しました。
また、業界を問わずディスプレイ広告の平均クリック率(CTR)が0.07%であるのに対し、リターゲティング広告のCTRは0.7%です。約10倍の差があります。
リターゲティング広告は、全員に同じようにアプローチするのではなく、ユーザーごとの行動履歴や興味関心をもとにパーソナライズした広告を配信できる点がメリットです。
たとえば、ある商品ページを閲覧したユーザーにその商品の広告を配信したり、カート放棄客にセール情報を配信したりなど、関心度に合わせてメッセージを送れます。一度購入した顧客に対して継続購入を促すために、定期的にリターゲティング広告を配信することも有効です。
顧客グループごとにきめこまやかなアプローチを行えるため、広告効果を高められます。前述の米国の統計では、ユーザーにリターゲティング キャンペーンを実行することで、広告エンゲージメントが4倍に増加したというデータもあります。
リターゲティング広告では、広告主側が「最適な接触回数」をコントロールできます。過度にしつこくない、適度なリターゲティング広告を配信することで、受け手にも好印象を与え、ブランド力を高めることができます。
前述の米国統計によると、マーケティング担当者の70%がブランド認知度を高めるためにリターゲティングを活用しています。
また、リターゲティングにより、B2B企業はブランド認知度を71%向上させ、顧客維持率を59%向上させ、売上げを伸ばしたというデータがあります。購買プロセスが長いB2B業界で、ブランディングを目的としたリターゲティング広告が重要視されている現れでしょう。
(出典:2025年に知っておくべきリターゲティングの統計とトレンド72選-demandsage)
リターゲティング広告を配信できる代表的なプラットフォームを紹介します。利用者層や配信方法の違いを把握したうえで、自社に最適な媒体を選びましょう。
プラットフォーム |
配信先 |
Google ディスプレイネットワーク(GDN) |
Googleが提携する200万以上のサイトに配信 |
Yahoo!広告(YDA) |
Yahoo! JAPANの提携サイトに配信 |
各種SNS |
Facebook・Instagram・X |
Google広告では、リターゲティング広告は以下の媒体で配信されます。200万以上の 広範な提携サイトによるリーチの広さ、Google Analyticsとの連携による詳細なデータ分析が可能です。
(Googleの利用者層)
Googleの利用者層の割合は、20代〜30代男性が50%台、女性ユーザーは年代問わず30%台です。特に検索広告を利用する場合は、こうしたユーザー層の傾向を意識しておきましょう。
広告のターゲットが若年男性である場合は、Google広告の利用が適しているといえます。
Yahoo!広告では、リターゲティング広告は以下の媒体で配信されます。日本国内での高い認知度があるYahooニュースをはじめ、さまざまな提携サイトにもリターゲティング広告を配信可能です。特に40代以上のユーザーへのリーチ力があります。
Yahoo!のサイト外でも、広告が表示されることを押さえておきましょう。
(Yahoo! JAPANの利用者層)
スマートフォンからYahoo!JAPANを利用しているユーザーは、主婦や経営者のユーザーが多い傾向があります。
BtoB企業やSaaS企業の場合、意思決定者である経営者に広告を見てもらうことが有効です。経営者に直接アピールするために、リターゲティング広告を出稿する場合は、YDAの利用を検討するとよいでしょう。
FacebookやX(旧 Twitter)といったSNSでも、リターゲティング広告を配信できます。配信先はそれぞれ以下の通りです。
Facebookページを訪れたことがある人、自社サイト、アプリなどに訪れた人、既存顧客(CRMと連携)に広告表示可能。詳細なユーザー属性(年齢、性別、興味関心、行動履歴)に基づく高精度なリターゲティング広告が可能です。広告の形態も、画像+テキストや動画の広告、コレクション広告(ユーザーにあわせたカタログのアイテム表示)などさまざまです。
過去に、自社ツィートを表示したり、Xリンクから自社サイトを表示したりしたユーザーなどへ配信可能。画像、動画、カルーセル広告などスタイルも複数選べます。
(SNSの利用者層)
利用者層については、Facebook・Twitterともに男女比の偏りは少ないですが、年齢層に違いがあります。X(旧 Twitter)は10代〜20代、Facebookは30代〜50代の割合が多いのが特徴です。
好まれるコンテンツの傾向は、SNSによって違います。アカウントを運用しつつ、自社と相性が良いプラットフォームを見極めましょう。
リターゲティング広告は前述のようにやや複雑なプロセスが必要であり、難易度が高めです。とはいえ目的を明確にし、適切なKPIを設定し、初期はターゲットオーディエンスもシンプルにすればマーケティング初心者も慣有十分活用できるようになるでしょう。以下にステップを解説します。
(リデザイン)
まずは、「リターゲティング広告で何を達成したいのか?」という目的を設定しましょう。初心者なら1〜2つの主要な目的に絞るとよいでしょう。たとえばリード獲得や商品の購入などの目的です。目的が明確になると、具体的なKPIも設定しやすくなります。さらに、効果測定や改善がスムーズに行えるでしょう。
ECショップでは「カート放棄客」にリターゲティング広告を配信し購入を促すことがよく行われます。この場合、KPIは「カート回収率」や「クリック率(CTR)」が適しています。
BtoB企業でリードを集めることが目的なら、対象は商品ページや価格ページを閲覧にしたユーザーで、KPIはサイト訪問率や資料ダウンロードにしてもよいでしょう。
目的例 |
KPIの例 |
商品ページを離脱したユーザーを再訪・購買へ促す |
再訪率、コンバージョン率(問い合わせ率、購買率) |
カート放棄客へのリマインダー |
カート回収率、CTR |
既存顧客へのアップセル |
アップセル、広告費用対効果(ROAS) |
過去に接触したユーザーへのブランド認知 |
サイト訪問率、広告クリック率、資料ダウンロード |
次に、自社サイトでユーザーがどのような行動をとるか把握するために、自社サイトに「タグ」や「ピクセル」を埋め込みます(例: Google広告の場合はGoogleリマーケティングタグ、Facebook/Instagram広告の場合はMetaピクセルなど)。
タグやピクセルを正しく実装しないと、リターゲティング広告に必要なデータを適切に取得できません。データがないと広告の効果もわからないため必ず埋め込みましょう。なお、タグやピクセルを設置する際は、ユーザーからWebトラッキングへの同意(例: クッキー同意バナー)も取得する用意する必要があります。
プラットフォームごとに異なります。以下は、GDNでGoogleタグマネージャー(GTM)を利用した手順です。
タグを公開した後、GoogleタグアシスタントやGoogle広告の管理画面でタグが正しく動作しているか確認しましょう。
自社サイトにタグを設置したら、どの媒体・プラットフォームでリターゲティング広告を配信するかを決めます。前述のようにGoogle、Yahoo!、各SNSがあります。Googleでかなりの範囲のメディアをカバーができますが、目的や予算、自社商品のターゲットの属性によってSNSが適している場合もあるので、比較検討しましょう。複数メディアを一括管理できるプラットフォームもあります。
プラットフォーム
設置したタグやピクセルで集められたデータをもとに、リターゲティング広告の配信対象を決めるオーディエンスリストを作成します。サイトに訪れたすべての人を対象にすると関係ない層も多く含まれるので、特定の製品ページの閲覧やカートへのアイテムの追加などのアクションを起こした関心度合いの高い可能性のあるリストを設計しましょう。
セグメント例
グループ1 |
過去30日以内に特定商品ページを閲覧したユーザー |
グループ2 |
過去30日以内に複数回訪問または複数商品を閲覧したユーザー(高関心ユーザー) |
グループ3 |
過去90日以上前に購入したが最近訪問がない休眠ユーザー |
リターゲティング広告は、「ユーザーが自社のサイトに訪問した際に見た情報をもう一度思い出してもらうこと」が目的です。たとえば商品ページを閲覧したユーザー向けには、商品名、価格、割引情報が一目で分かるシンプルなディスプレイ広告を作成すると、思い出してもらいやすいでしょう。
BtoBの場合は、購買プロセスが長いため、「事例ダウンロード」「デモ予約」「無料トライアル」などを強調し、興味関心層〜検討段階の層を惹きつけることが大切です。
広告をクリックした後のランディングページ(Facebookであればページ)のクリエイティブも重要。広告の内容と調和する信頼感を感じられるデザインがおすすめです。ランディングページであれば、資料ダウンロードや、無料デモなどに特化したページを作成し、目立つCTA(「デモに申込」「資料ダウンロード」「今すぐ購入」等)を作成しましょう。
各広告プラットフォームでキャンペーンをセットアップしましょう。ここでは、Googleディスプレイネットワーク(GDN)でリターゲティング広告のキャンペーンを作成する手順を解説します。
Google広告の管理画面で「キャンペーンを作成」を選択し、「ディスプレイ」キャンペーンを選びます。作成済みのリターゲティングリスト(セグメント)を指定し、広告を配信する地域(例:日本国内)、デバイス(例:モバイル、デスクトップ)を設定しましょう。
入札戦略(自動入札・手動入札など)では、目的(コンバージョン重視、クリック単価重視など)に応じて選択してください。テスト運用期間(例:2週間)と1日あたりの予算を設定し、運用中にCTRやコンバージョン率を確認しながら調整します。
広告グループを作成または選択し、リターゲティング用のオーディエンスを設定します。以下の手順で進めます。
運用をスタートしてから、継続的にKPIの数値を測定しながら広告の最適化を進めていきます。まずは、コンバージョン数、コンバージョン率(CVR)、広告1件あたりのコスト(CPA)といった主要指標を確認します。
次に、クリック率(CTR)を調べて、どのクリエイティブが魅力的かを把握します。また、インプレッション数や広告の表示頻度を見て、ユーザーに広告が出すぎていないかもチェック。こうして、気軽にデータを確認しながら広告を最適化していくだけで、効果がぐっと上がっていきます。
広告効果がおもわしくない場合は、オーディエンスのリストの見直しや、複数のクリエイティブをA/Bテストで比較し効果を検証するなどの対策を行います。
自分が一ユーザーとしてネットを見ているときに、リターゲティング広告で買い物途中の商品を思い出した経験もあれば、何度も同じ広告が流れてうんざりした経験もあるのではないでしょうか?
リターゲティング広告には適切な回数やタイミングがあります。ちょっとした設定でユーザー体験を損なうことが防げるので、以下を確認して対策しましょう。
せっかく商品に関心を持ってくれた層のユーザー体験を損ねないようにしましょう。広告の品質が重要なのは前述のとおり。複数のクリエイティブを用意して定期的に切り替えるなど、ユーザー体験を向上させるなどの工夫も必要です。
同様に重要なのは広告の配信タイミング。サイト離脱直後に表示するとユーザーは追いかけられているように感じるでしょう。ただし、期間が空きすぎるとユーザーが他社で購買完了する可能性もあります。たとえば、カート放棄後1週間以内など自社商品の平均的な購買検討期間をもとに設定してください。
また、何回も同じ広告を表示しないように、1ユーザーあたりの広告表示回数を制限する「頻度制限(フリークエンシーキャップ)」を設定します。期間はできるだけ短期間がベターです。
リターゲティング広告を連日出し続けないこともポイント。米国Marketing Chartsの2019年の調査では、消費者はリターゲティングの期間が短いことを好みます。1日を許容する人が最も多く39%をしめます
(出典:https://financesonline.com/retargeting-statistics/)
パーソナライズすることで好印象を持ってもらえることも多いものの、ゆきすぎたパーソナライズは人を不快にさせる可能性があります。リターゲティング広告はユーザーの行動履歴(Cookie情報など)を使うため、個人情報保護やプライバシーに配慮した運用が欠かせません。法律や規約を守り、信頼される広告を配信しましょう。
米国Invespの調査では、54%のユーザーはリターゲティング広告を見たときに多少または非常に不安を感じているそうです。懸念を感じる人も多いからこそ厳しい法令が定められているので、少なくとも法令は遵守しましょう。
まず、WebサイトでCookieの使用をわかりやすく説明し、ユーザーが同意したりオプトアウトを選んだりできるようにします。次に、プライバシーポリシーをしっかり整備し、収集する情報やその利用目的を明確に記載して、定期的に見直してください。また、GoogleやMeta(Facebook/Instagram)などのプラットフォームのガイドラインに従い、設定や配信ルールを守ります。
さらに、GDPR(EU一般データ保護規則)などの最新のデータ保護規制に対応するため、常に新しい情報をチェックしましょう。
リターゲティング広告が効果的なことは確かですが、それはサイト訪問者の一部。ブランディングを重視する場合、リターゲティング対象外のユーザーにも好印象を与える広告配信を心がける必要があります。
また、せっかく関心をもったユーザーも広告がしつこいと購買意欲がむしろ減退するかもしれません。ブランドイメージへの悪影響を防ぐポイントを記載します。
リターゲティング広告にはさまざまな配慮が必要であり、いろいろと懸念する人もいるかもしれません。
しかし、Amazon、セールスフォース、大手BtoCメーカーのリターゲティング広告に不快感を感じた人はあまりいないでしょう。適切な対策をした上で活用すれば、リターゲティング広告は効果的であり、ブランディングにもつながります。
リターゲティング広告は、Web広告のコンバージョン率や費用対効果の向上が期待できる手法です。
自社に関心を持ったユーザーに絞って広告を配信することで、効率よくコンバージョンへと導けます。
リターゲティング広告は、GoogleやYahoo!、SNSなどのプラットフォームを通じて配信します。利用者層の傾向や特徴を把握したうえで、自社に合った媒体を選び、リターゲティング広告を活用しましょう。