「沈没船ジョーク」をご存じでしょうか?
沈没しかけている船の船長が、乗り合わせるさまざまな国の人たちを海に飛び込ませようと、それぞれの国民性を利用して説得を試みる話です。
船長は、アメリカ人には「飛び込めばヒーローになれます。」といい、ドイツ人には「飛び込むのがルールです。」といい、フランス人には「決して飛び込まないでください。」といい、イタリア人には「さきほど、もの凄い美人が飛び込みました。」といい、われらが日本人には「皆さんもう飛び込んでます。」といいます。すると全員無事に海に飛び込んでくれ、難を逃れました、という話です。
『「選ばれる人」はなぜ口が堅いのか?』という書籍で引用されたことで、ご存じの方も多いこの「沈没船ジョーク」。倫理的な正誤は別として、「国」という属性別の乗客に対してもっとも「刺さる」アプローチを行った船長は、マーケティングの観点から見て100点満点といえるのではないでしょうか?
この話で船長が乗客の振り分けに使用した「国」という属性は、今回ご紹介する「デモグラフィックデータ」のひとつです。ぜひ最後までお読みいただき、自社のマーケティング活動にお役立てください。
(出典:Investpedia)
デモグラフィックデータ(Demographics)とは、顧客の年齢、性別、人種、年齢や職業など、その人個人を表す事実をベースとした統計学的情報のことです。日本語では「人口統計学属性情報」と呼ばれます。
デモグラフィックデータについて理解するには、まず先に「STP理論」について知っておくとわかりやすいかと思います。
(出典:Oxford College of Marketing)
STP理論(STP分析)とは、アメリカの経済学者Philip Kotler(フィリップ・コトラー)氏が提唱したマーケティング理論。企業のマーケティング活動を「S:セグメンテーション」「T:ターゲティング」「P:ポジショニング」の3つの過程に分けて考える理論です。
そしてデモグラフィックデータは、このSTP理論の最初の過程である「セグメンテーション」で使用されるデータのひとつ、と捉えられます。
「属性情報」と呼ばれる通り、マーケティングにおいて顧客をその特徴ごとにグループ分けする(セグメンテーション)際に、デモグラフィックデータは振り分けの指標のひとつとして使用されます。
セグメンテーションで市場や顧客を細分化し評価・分析することで、自社製品にマッチしている顧客層とそうでない層を明確に分類します。本当に自社がターゲットとするべき層を見極める(ターゲティング)ことができ、さらにはターゲティングしたセグメントにおける自社の最適な立ち回りを検討する(ポジショニング)ことにもつながるのです。
そのため、STP理論の入り口であるセグメンテーションを左右する指標のひとつ「デモグラフィックデータ」は、企業のマーケティング活動の成否に大きくかかわる重要なデータとなります。
STP理論については、当ブログのこちらの記事でも詳しく紹介していますので併せてご一読ください。
(出典:Oberio)
マーケティングで市場をセグメンテーションする際には、デモグラフィックデータ以外にサイコグラフィックデータ(心理的属性情報)、ジオグラフィックデータ(地理的属性情報)、ビヘイビアルデータ(行動学的属性情報)を指標として活用します。それぞれの違いを解説します。
サイコグラフィックデータ(Psychographics)とは、日本語で「心理的属性情報」のことです。顧客の特性や興味・関心、社会的な立場や意見、行動原理など心理的な背景や要素に関する情報を指します。
具体的には個人のニーズ、ライフスタイル、価値観、趣味、消費習慣といった心理的特性についてのデータであり、顧客の購買の際の判断基準や習慣に大きな影響を与えます。
一方でデモグラフィックデータは、年齢、性別、人種、婚姻状況、健康状態、経済状況、教育水準、雇用状況、話す言語、趣味や関心などその人の社会的、経済的属性を示す事実ベースのデータです。
デモグラフィックデータは「どのような人が購入するかを示すデータ」、サイコグラフィックデータは「なぜその用品を購入するかの理由を示唆するデータ」とイメージするとわかりやすいでしょう。
ジオグラフィックデータとは、国、地域、州、都市、気候、地形など、市場とする地域の地理的特性を示す「客観的なデータ」です。マーケティングでは、エリアごとの顧客のライフスタイル、購買行動の傾向や、ニーズを課題を理解するために活用します。
たとえば、日本国内でも地域によって気候や人口密度、自然環境に違いがあるものです。北海道と沖縄では気候が大きく異なり、東京と地方都市は人口密度に大きな差があります。また、同じ都道府県でも海沿いと山あいとでは自然環境が異なります。
ジオグラフィックデータは、こうした地域特有のニーズを把握できるため、BtoC市場では不可欠なセグメント軸。地域の特性に合わせて商品を企画し、マーケティング施策を考えるのに役立ちます。
なお、デモグラフィックデータはターゲット層の性別、年齢、収入などの「個人の属性についてのデータ」。一方でジオグラフィックデータは「居住エリアの地理的情報」です。両者を掛け合わせることで市場の全体像がつかめます。
ビヘイビアルデータとは、おもにデジタル環境で収集できるユーザーの行動データのことです。CRM(顧客情報管理システム)や自社サイト、アプリ、外部の広告プラットフォームから収集できます。
このようなデータはパーソナライゼーションや、自社アプリケーションでの予測モデルに役立ちます。たとえば、Netflixはユーザーのデモグラフィックデータよりビヘイビアルデータを重視することで成功したといわれます。
デモグラフィックデータ、サイコグラフィックデータ、ジオグラフィックデータ、そしてビヘイビアルデータは、それぞれが顧客の行動原理や需要を評価、予測するのに適している指標です。
デモグラフィックデータ (人口統計学属性情報) |
サイコグラフィックデータ (心理的属性情報) |
ジオグラフィックデータ (地理的属性情報) |
ビヘイビアルデータ (行動的属性情報) |
事実 |
背景や心理 |
事実 |
結果 |
35歳 男性 |
チームのリーダーとして貢献したい |
千葉県船橋市在住 |
リーダーシップのセミナーを受講 |
既婚 子持ち |
家族が安心して暮らせる環境を整えたい |
東京都の東隣。首都圏の主要なターミナル駅「船橋駅」から東京まで約30分 |
マイホーム購入を検討中 |
◆◆会社営業課長 |
部下のマネジメントが上手くいかない 残業する部下を残して帰れない |
温帯(夏の最高温度〇度、冬の最低温度〇度) 東京湾に面し海岸線が発達 |
業務効率化ツールについてネットで情報収集 |
会社利益○億円 |
業務改善にはある程度コストをかけられる |
人口:約64万人 |
業務改善の予算を申請 |
人間は誰もが一人ひとり違う個性をもっていますが、生まれた年代、性別、現在の社会的地位などによって受ける外部からの影響により、同じ属性の集団には一定の傾向があります。
たとえば、男性と女性、20代と40代、経営者と一般社員、年収1000万円台と年収300万円台などの集団でわけると、ライフスタイルや欲求、ニーズは異なるでしょう。
デモグラフィックデータを把握すると、顧客理解が進み対象のニーズをつかみやすくなります。
デモグラフィックデータとは、年齢、性別、人種、婚姻状況、健康状態、経済状況、教育水準、雇用状況、話す言語などの情報で構成される、セグメンテーションの基盤となるデータです。
デモグラフィックデータによる分類で、自社が訴求したいターゲットを明確に絞りこめます。年齢や性別、年収を掛け合わせるだけでも多様なターゲティングが可能です。
たとえば化粧品会社であれば、女性の年代ごとの特有の悩みを解決できる商品を作り、ユーザーにとって手の届く価格で市場に出すことができます。
また、近年の企業の中間管理職はミレニアム世代、Z世代が占めてきました。デジタルネイティブである彼らの特性を踏まえることで、欲求、ニーズ、購買のスタンスを探れるでしょう。
デモグラフィックデータを分析することで、世代の移り変わりにともなう市場のトレンドを把握することも可能。さまざまなマーケティング施策に活かせます。
顧客をデモグラフィックデータで絞り込むと、適切なチャネルの選定が可能になります。対象の層がよく見ているメディアに広告を出稿すれば、社名を認知してもらえる期待ができます。
ターゲット層がよく使うSNSで情報発信すれば、ファンになってもらい直接コミュニケーションがとれる可能性もあるでしょう。対象が明確なので、どこの誰に向けているかわからない状態よりも、ストレートに伝わるマーケティングメッセージが作成できるようになります。
デモグラフィックデータをもとに、商品に関心の高い層に絞りこんでマーケティング施策が展開できると、効率的に成果を高められます。
たとえば不動産会社であれば、住宅購入年齢の中心ゾーンである30代、自社が提供する価格帯の住宅を購入できる年収のユーザーをターゲットにマーケティングを実施することで、成果をあげやすくなります。
あまり住宅購入への関心が高くない層に無駄にマーケティング予算を使うこともなくなるので、マーケティングROIを最大化できるでしょう。
それでは、デモグラフィックデータにはどのようなものがあるのでしょうか? ここでは、デモグラフィックデータの代表的なセグメントについていくつか紹介します。
顧客の性別に関する情報は、デモグラフィックデータにおける非常に大きな要素のひとつです。
総務省統計局によると、2022年8月現在の日本の総人口は約1億2508万人。そのうち男性は約6081万人(49%)、女性は約6427万人(51%)です。また、国連による世界統計でも総人口に対する男女比率はおおよそ50:50と、日本の統計とほぼ似たような数字です。
性別の違いにより顧客の購買行動は非常に大きく変化します。たとえば、以下はForbesによる女性の購買行動の特徴の一例です。
このように、性別は顧客の嗜好や習慣、意思決定の特徴を推測する上で非常に有用なデータとなりえます。顧客がどのような思考や経験を経て自社製品にたどり着くのか、「カスタマージャーニー」を分析する上でも、顧客を性別ごとに細分化することは有意義に働くでしょう。
また最近では、男女の分類に加えて「LGBT」の購買行動の分析の重要性も提唱されています。データ取得の難易度が少し上がりますが、可能であればこちらも検討すべきでしょう。
性別と同じく顧客の購買行動を大きく左右するデモグラフィックデータのひとつが、顧客の年齢に関する情報です。
同じ人でも年齢と共に嗜好は変化していきます。たとえば、小さい頃は虫が大好きだったのに、大人になった今は見るのも嫌だという人は多いのではないでしょうか? ほかにも、好きな色は年齢によって特徴が分かれるという下図のようなデータもあります。
(出典:Scott Design Inc.)
また顧客を年齢により世代別に分類することは、顧客の購買力や思考パターン、さらには市場のトレンドなどを分析するのにも有用です。
たとえば、「ミレニアル世代(Y世代)」は1981-1996年に生まれた世代のことをいいますが、この世代は比較的若い段階でIT革命を経験しており、前の世代の「X世代」に比べ格段にデジタルに親しみがあるという特徴があります。さらに、ミレニアル世代はすでにアメリカのテック系BtoBバイヤーの約60%を占めており、今後世代交代が進んでいくにつれ購買力はさらに大きくなっていくでしょう。
Z世代はミレニアル世代の後、1996-2015年に生まれた世代のことです。この世代は物心ついたときにはすでにIT技術が普及していた、生まれながらのデジタルネイティブであるという特徴があります。アメリカではすでに労働人口の25%を占めており、今後10年の間で購買力・影響力ともにどんどんと大きくなっていく世代です。
このように年齢は、企業がマーケティング戦略を練る上で短期的だけでなく中・長期的な方針を決定する指標として、非常に有用なデータとなり得ます。
家族構成によっても顧客の購買行動は変化します。
たとえば、顧客が一人暮らしか家族とともに暮らしているかというのも重要です。一人暮らしであればある程度自由に製品やサービスの購入意思決定ができるかもしれません。しかし、高齢の両親や小さい子供をもつ顧客は、一人暮らしの顧客と比べて抱える課題や必要とする製品は異なるでしょうし、責任感から意思決定が慎重になるかもしれません。
また、同じく顧客が未婚か既婚か、兄弟の有無やペットを飼っているかどうかというのも自社が提供する製品やサービスによっては重要な要因になり得ます。
国籍や文化の違いも、デモグラフィックデータとして細分化できる要素のひとつです。国籍が違えば文化が違ってきます。そして文化が違えば、好まれやすいものごとや嫌われがちなものごとも変わってきます。
たとえば2005年の研究では、スイス・ドイツの人々は平均的に新しい経験を求める傾向が強く、反対に香港・アイルランド・クウェートはその傾向が低いという結果が出ています。また2007年の別の研究では、日本・アルゼンチンの人々は神経症傾向が高く、反対にコンゴ・スロベニアの人々はその傾向が低いというデータも出ています。
本記事の冒頭でご紹介した「沈没船ジョーク」も、この国籍や文化による特徴の違いを面白おかしく言い表したものです。
上記はほんの一例ですが、国籍や文化によって好まれる製品やサービス、マーケティングのアプローチは異なると理解するのには十分でしょう。
ただ一点、ジョークになっていることからもわかりますが、国籍や文化の分析は非常に先入観によるバイアスがかかりやすい要素であるため、実際にターゲットの分類・分析を行う際は注意が必要です。
顧客の職業や年収もデモグラフィックデータのひとつです。職業や職種による顧客の分類は、自社製品のターゲットをはっきりとさせる上で重要になります。
たとえば自社が、BtoBで顧客管理ツール(CRM)や営業支援ソフト(SFA)を販売する会社だとしたら、多くの潜在顧客や既存顧客を抱える会社の営業マネージャーといった顧客層の優先度がおのずと高くなります。反対に開発・研究がメインとなる技術者層は、分類により優先度を下げた方がよいかもしれません。
また、顧客の年収はそのまま顧客の購買力に直結します。BtoBの場合は個人ではなくアカウント(会社)別の売上げを基準にしてもよいかもしれません。いくら気に入ってくれても、自社の製品やサービスを購入できる予算がなければ、最終的に受注は見込めません。個人の年収や会社の売上げをもとに分類を行い、優先度別に効率的なアプローチを試みましょう。
デモグラフィックデータは、企業の製品開発の市場調査やマーケティング施策、顧客サポートのサービス向上など、さまざまな目的のために有効活用できます。
新製品を開発する際は、一般にどのような人のどのような課題を解決するかをまず決めます。仮説をたてたらどのくらいの需要があるかを市場調査しましょう。デモグラフィックデータを指標に対象年代、性別などの人口がどのくらい存在するかボリュームを調べ、ビジネスとしての採算性を判断します。
デモグラフィックデータで市場をカテゴライズすることにより、対象のニーズをより明確につかめるため、課題解決につながるサービスや機能を実装できる可能性が高まります。
商品の機能だけでなくパッケージやロゴの作成においても、対象グループの年齢、社会階級、性別などに合わせて好まれるデザインを追求できるでしょう。
見込み客をデモグラフィックデータにもとづいてグループ化することで、リーチする最適なチャネルを見つけやすくなります。
たとえば、SNS広告やオンライン広告を配信する際、年齢、性別、居住地、職業などのデモグラフィックデータを活用し、最も関心の高い顧客層に限定して広告を配信可能です。
ターゲット層の嗜好に合わせて広告の作成、イベントやキャンペーンの企画などが可能になるので、マーケティングの効果も高まるでしょう。
デモグラフィックデータをもとに顧客の属性や背景を理解したカスタマーサポート体制を構築できます。たとえば顧客にシニアの割合が多い企業なら電話サポートのチャネルを増やすと親切。若手が多いなら多様なコミュニケーションチャネルがあるほうがよいでしょう。
法人向けサービスで、顧客に不動産業や流通業の企業が多い場合は、土日のカスタマーサポート体制を充実させる判断ができます。
デモグラフィックデータを分析し、適切な対応方法やコミュニケーションチャネルを用意することで、顧客満足度とロイヤルティを高めることができます。
デモグラフィックデータは、アンケートや登録フォーム、フォーカスグループ、使用している広告プラットフォームなどを介して収集できます。外部の市場調査会社に依頼して収集してもよいでしょう。
店頭あるいはメールやSNSを介してアンケートを実施し、デモグラフィックデータを収集する方法です。店舗アンケートなら自社顧客のデモグラフィックデータを、メールマガジンやSNS経由のアンケートなら自社商品に関心のある層のデータを入手できます。特定の顧客、たとえばヘビーユーザーにインタビューを依頼することも有効です。
オンラインアンケートの場合、年齢、性別、学歴、勤務先の規模といったデモグラフィックデータを聞かれることが一般的なので、ヒアリング項目が多めでも比較的データを収集しやすいメリットがあります。ただし、アンケートで個人情報(氏名、電話番号、メールアドレス等)を取得する場合は個人情報保護法を遵守する必要があります。
Webアンケートのテンプレート、システムの例
無料会員登録、資料請求などの際の問い合わせフォーム、商品購入時にデモグラフィックデータを入力してもらい収集する方法です。
登録フォームへの記入項目が多すぎると途中で離脱する人が増えるので 、必要最小限の項目数がのぞましいでしょう。また、すぐ終えられるように回答の選択肢を用意しておき選んでもらうなど、負担を減らす工夫が必要です。
GoogleアナリティクスなどのWeb解析ツールを用いて、自社サイト訪問者のデモグラフィックデータを分析できます。また、オンライン広告プラットフォームのターゲティング機能を利用すれば、間接的にユーザーのデモグラフィックデータを取得できます。
特にソーシャルメディアプラットフォームは詳細な人口統計データの宝庫。FacebookやInstagramは、年齢、性別、居住地区、さらには興味関心のデータまであります。Linkedinは、勤務先、役職まで網羅されています。フォロワーの人口統計を分析すると自社の顧客やファンのデモグラフィックデータも分かります。
フォーカスグループとは、少人数のグループを集め商品やサービスについてディスカッションしてもらい、企業が情報収集するマーケティングリサーチの手法です。
「性別」「年代」「世帯構成」「商品ブランドの使用状況」などでグループを作ることで、属性による商品への評価やニーズがわかります。逆説的に考えれば自社商品を評価する層のデモグラフィックデータの把握が可能です。
自社で行わず、外部の市場調査会社にアンケート作成からデータ収集、レポート作成まで委託できます。市場調査のプロなので、どのようなデータを収集したいか、マーケティングでどのように活用したいかなどを目的を伝えて実施しましょう。以下のようなアンケート代行企業があります。中にはアンケート代行だけでなく、インタビュー、フォーカスグループの実施まで対応する企業もあります。
ただし、分析結果にデモグラフィックデータ(例:年齢、性別、居住地、職業など)が含まれるものの、個人情報(氏名、住所、電話番号、メールアドレス)は、含まれないことが一般的です。
例
ネットリサーチ、インタビュー・会場調査、他 |
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定量調査、定性調査、オンライン、オフライン |
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アンケート画面作成~回答収集、ローデータ・GT表の納品まで対応 |
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認知度調査、新規サービス検討用調査他 |
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オンライン、オフライン(郵送・店頭)、オンラインインタビュー他 |
デモグラフィックデータの活用事例を3件紹介します。大手企業がマーケティングセグメンテーションを行う際、デモグラフィックデータだけで市場を決めることは少なく、前述の他3つのデータもあわせて活用していますが、最初のデモグラフィックデータによる分類がマーケティングの成功に大きく影響した事例としてご覧ください。
(出典:asosplc.com)
英国のファッションブランドASOSは、ファッション好きの「20代の男女」をターゲットにしたことで成功したブランドです。進出市場の「言語・文化」に徹底してローカライズを徹底することでも知られます。たとえば、同じ英語圏でも米国圏、英語圏内で使われているそれぞれの単語を使用するなど、きめこまやかなコンテンツ戦略を展開しました。
マーケティングでも、メインユーザーであるZ世代の傾向、たとえば購買について自身の価値観を反映させ行動していく特徴を踏まえ、#asseenonmeキャンペーン(ユーザーが投稿した写真をECサイト商品ページに掲載するキャンペーン)を実施。このキャンペーンは多数拡散され、コミュニティの形成につながっています。
「ASOS Insiderインフルエンサー プログラム」では、さまざまな体型や背景の社員のインフルエンサーを起用。インスタグラム、TikTok、スナップチャットなどのソーシャルチャンネルに登場させ、多様性を重視するZ世代に向けてメッセージを送るこのプログラムは、20代ユーザーとのコミュニケーションを強固にしました。
このように世代、言語、価値観といったデモグラフィックデータを活かしたマーケティング戦略で成功しています。
(出典:株式会社マンダム)
日本で男性向け化粧品が売れるようになってからまだそれほど長い歴史はなく、いまだ化粧品は女性のものという固定観念は根強く残っているでしょう。しかし、一部の化粧品メーカーは化粧品の「男性市場」に着目し、市場を開拓し近年の市場規模は順調に5年で1.5倍に拡大中です。(2024年に497億円規模/株式会社インテージの調査)
男性向け化粧品市場草分けの企業の株式会社マンダムは、これまで「若い男性」向けに商品を展開していましたが、2024年8月から「55歳~74歳のアッパーミドル男性」向け化粧品ブランド「ZFACE」をリリース。「男性」×「55〜74歳」というデモグラフィックデータで明確に絞り込んだ新商品です。いずれも年代、性別というデモグラフィックデータでターゲットを絞り込んだ例です。
少子高齢化が進む日本では、ミドルシニアは人口の多いボリュームゾーン。いろいろな領域でシニアマーケティングが注目されています。男性化粧品は現状ニッチマーケットですが、今後男性の意識が変化すれば大きな市場になる可能性があります。リリース後、新たな顧客層の獲得につながる期待からか株価も反発しました。
(出典:https://nike.jp/nikebiz/news/2019/04/19/2183/)
ナイキのマーケティング戦略の成功には、詳細なデモグラフィックデータの活用があります。ナイキは、年代、性別、そして顧客の経済状況といった多様な顧客属性に基づいて市場を細分化し、ティーンエイジャー、若者、中高年層、女性など、それぞれのセグメントに合わせた幅広い製品ラインナップを展開。一説には、24の顧客セグメントが存在するといわれます。
ナイキのスローガンを銘打った「Just Do Itキャンペーン」では、スポーツ好きの若者に影響力のあるアスリートが起用される傾向があります。日本での2019年のキャンペーンにおいては、アジア初の世界ランキング1位を果たしたプロテニスプレイヤーの大坂なおみが登場しました。
ナイキは、人口統計分析を活用することで効果的な商品企画やキャンペーンを実施し、顧客エンゲージメントと売上げを向上させています。
(参考:https://businessmodelanalyst.com/、https://reads.alibaba.com/)
デモグラフィックデータは、あくまでマーケティングのSTPのなかの最初の過程「セグメンテーション」で使用される顧客分類指標のひとつです。単体でもデータ収集から一定効果が期待できますが、やはりほかの3つのセグメンテーションデータと併せて活用することでさらなる効果が期待できるものでもあります。
とはいえ、顧客の心理状況の深堀りが必要なサイコグラフィックデータ、顧客の何かしらの行動を分析するビヘイビアルデータと比べ、デモグラフィックデータとジオグラフィックデータは顧客の現在の情報をもとにするため、データの入手難度は比較的低いです。
まずはデモグラフィック・ジオグラフィックのデータを入手し、サイコグラフィック・ビヘイビアルへと深堀りを進めていくのがよいでしょう。