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わかりづらい「プロスペクト」の意味とは?リードの違いも併せて解説

見込み客との商談をなんとか取り付け、完璧と思える営業施策や方針を引っ提げて訪問し商談を進めてみるも、相手は時計をチラチラと見ているばかりで、こちらの提案に全く興味を示してくれない……。そんなことはないでしょうか? もしかしたらそれは「見込み客」と「潜在顧客」を間違えて認識していることが原因かもしれません。

「見込み客」と「潜在顧客」(それぞれセールス・マーケティング用語で「プロスペクト」と「リード」)は、似ているようで全く違う意味を持ちます。どんなに「見込み客」に対して有効な施策でも、「潜在顧客」に対しては全く効果がない、ということも十分考えられます。

そこで本記事では、間違えやすい「プロスペクト(見込み客)」と「リード(潜在顧客)」の違いと、いかにしてリードをプロスペクトへ引き上げることができるか、について解説していきます。

「見込み客も潜在顧客も、意味は一緒でしょ? 」と思っていた方は、ぜひ本記事を一読していただき、営業施策改善の参考としていただければ幸いです。

プロスペクトとは?

プロスペクト(Prospect)とは、広義で「近い将来に現実化・実体化する可能性のあるものやことがら」を指す英単語です。基本的には何かしらのよい結果に対する期待値や可能性を指すことが多く、英文では「成功のプロスペクトは……」や「天候が好転するプロスペクトは……」といった使い方がされます。

プロスペクトという単語が使われるようになったのは古く、アメリカのゴールドラッシュの時代からです。広大な土地を掘り進み、地下に眠るわずか一握りの金を掘り当てる可能性に人生を賭けた人々のことを「プロスペクター(Prospector)」と呼んだのが始まりでした。

ビジネスにおいてのプロスペクトも同じく、「成功につながる可能性のあるもの」という意味を持ちます。特にセールスやマーケティングの業界では、自社製品が満たすニーズにマッチした、「見込み客」という意味で使われることが多いです。

世界中に数多くいる人々の中から、自社製品にマッチする一握りの層を「掘り当てる」という意味では、ゴールドラッシュ時代のプロスペクターたちも企業のセールスやマーケターも似ているところがあるかもしれませんね。

自社製品の潜在ニーズとプロスペクトの見つけ方については、こちらの記事でも紹介していますので、ぜひご一読いただければと思います。

プロスペクトとリードの違いとは?

日本語における「潜在顧客」を表すセールス用語としては、「Lead(リード)」という言葉が広く知られていますね。では、「プロスペクト(見込み客)」と「リード(潜在顧客)」の違いについて、しっかりと分けて説明ができるでしょうか?

リードとは、「先導する」という直訳が示す通り、広義で「ある一定の条件が指し示す集団や状況」のことを指します。英文では、良い意味で「手がかり」という意味で使われることもあれば、「容疑者」というような悪い意味で使用されることもあります。基本的に良い結果を期待する「プロスペクト」とは広い意味では少しニュアンスが違います。

ビジネスにおいての「リード」は「プロスペクト」と比べ、「手がかり」のニュアンスを大きく含みます。「自社製品を買ってくれるかもしれない層」はまとめて全て「リード」と呼べますし、名刺交換などでコンタクト先を入手しただけの相手も、売上げの「足がかり」となる「リード」になります。

(出典:HIPB2B

  • Lead - An individual who has provided contact information and, in doing so, pointed toward a potential sales opportunity.

リード:自身のコンタクト情報を開示した人、またそうすることで潜在的に売上げの可能性が高まった人のこと。

プロスペクトとリードは、「Purchase Funnel(パーチェスファネル)」で照らし合わせてみるとその違いがよくわかります。

パーチェスファネルは、上図のように顧客が商品やサービスを認知してからどのような経験を経て実際に購入に至るか、その道筋を示した「漏斗(Funnel)」状の図をいいます。上から「TOFU(潜在顧客)」、「MOFU(見込み客)」、「BOFU(購入を検討中の見込み客)」となっており、企業が営業活動を進めるに従い、ふるいにかけられて絶対数が少なくなっていきます。

パーチェスファネルについては、こちらの記事で取り上げていますので、よろしければ目を通してみてください。

(出典:HIPB2B

パーチェスファネルにおいて、リードは「潜在顧客」の名が示す通り、「TOFU」つまりファネルの最上層の集団に当たります。自社の製品に対する彼らの認知度は最も低く、また企業側も彼らの情報をほぼ把握していないため、具体的なセールス施策を打ち出せないというように、良くも悪くもまだまだこれから、という段階の層が「リード」です。

対してプロスペクトは「見込み客」ですから、ファネルの「MOFU」、「BOFU」、つまり中〜下層の集団を指します。すでに課題が顕在化しており、さらには課題解決のため製品の購入を検討している、というある程度育成が進んだグループであり、企業側としても彼らの顕在化している課題に対して個別に有効な施策を検討することにある程度期待が持てる、という層が「プロスペクト」です。

リードをプロスペクトに引き上げる プロスペクティングとは?

前項では、リードはまだプロスペクト(見込み客)になりきれない潜在顧客だ、ということがご理解いただけたかと思います。それではリードをプロスペクトに引き上げる、つまりパーチェスファネルの中で下層に落としていくには、どうすればよいのでしょうか?

営業活動を進め、パーチェスファネル内でリードをプロスペクトに昇格させていくためには、「プロスペクティング」を行います。プロスペクティング(Prospecting)とは、潜在顧客に対し営業活動の段階ごとに有望性の評価・選別を行い、自社製品の購入に至る可能性のある見込み客へと絞り込んでいくプロセスです。

リードクオリフィケーションプロセス」と目的は似ています。自社の製品を使用するのはどのような人物か? といった情報を元に潜在顧客を年齢・性別・職業や住んでいる地域などごとに分類していき、有望とされるプロスペクトの割り出しを行った上で、彼らの購入における障害をひとつひとつ取り除いていく作業を含みます。

セールスプロスペクティングでは、主に下記の5つのプロセスが踏襲されます。

(出典:HubSpot)

Research: リサーチ

セールスプロスペクティングの第1段階目、リサーチのプロセスでは、広く自社製品にマッチしそうであるとされる潜在顧客(リード)をさらに深くリサーチします。彼らが抱える課題や問題点、さらには予算などさまざまな観点から、実際に自社製品を購入する可能性が高い見込み客(プロスペクト)を割り出します。

プロスペクトの割り出しをする際にはQuolifying Dimensions(有望客要因)と呼ばれる、リサーチ対象の潜在顧客が自社製品を購入し「顧客」となる可能性を評価する要因のリストが用いられることが一般的です。ですので、企業としては自社製品の購入可能性が高いと判断する要因にはどのようなものがあるかを検討し、この有望客要因のリストを作成することが第一のステップとなるでしょう。

また有望客要因のリストに沿ってプロスペクトの評価と割り出しをする際には、その評価結果を潜在顧客ごとに記録、追跡するため、CRM(顧客管理ツール)が役に立ちます。

Outreach: アウトリーチ

リサーチによってプロスペクトの評価と割り出しを行ったあとは、セールスプロスペクティングの第2段階、アウトリーチに進みましょう。

アウトリーチのステップでは、割り出したプロスペクト(ターゲット企業の取引上のキーパーソンとなりえる人物)へ実際にアプローチをかけます。このステップではまずはEメールなどを用いてのファーストコンタクトを図ります。

HubSpotでは、この際にアプローチをかける相手をGatekeeper(ゲートキーパー)とDecision-maker(決済者)に分類することを推奨しています。

(出典:DealsInsight)

  • Gatekeeper(ゲートキーパー)

企業間の取引において決済者への橋渡し、もしくは情報のブロックを行う人物。例として、受付担当者やアシスタント、秘書係など。

  • Decision-maker(決済者)

企業間の取引において最終的な購買の判断を行う人物。多くの場合、ゲートキーパーを通じてアプローチが可能になる。

Discovery Call: ディスカバリーコール

アウトリーチを通じてゲートキーパー、もしくは決済者へのアプローチができたら、次はセールスプロスペクティングの第3段階目、ディスカバリーコールのステップです。

ディスカバリーコールでは、決済者と実際に電話や面会でのミーティングをセットアップし、ヒアリングを通して彼らの事業における課題や問題点を明らかにしていきます。

ヒアリングした情報から正確にプロスペクトの評価を行い、プロスペクティングのサイクルを回していくためには、このヒアリングでどのように先方の情報を引き出せるかが鍵となるでしょう。

ディスカバリーコールでプロスペクトの情報を正確に引き出すために、HubSpotでは「BANT」の活用を強く推奨しています。BANTとは、プロスペクトからヒアリングする情報をその内容に沿ってBudget(予算)、Authority(決済権)、Needs(需要)、Timeframe(導入時期)に分類し、プロスペクトの有望性を評価するフレームワークです。

(出典:Sales Odyssey)

BANTについてはこちらの記事でも紹介しています。プロスペクトの有望性を評価する上では必要不可欠とも言えるフレームワークですので、ぜひ一度目を通してみてください。

Educate and Evaluate: 育成と評価

ディスカバリーコールを通してプロスペクトの課題やニーズを引き出したあとは、それらが実際に自社製品が提供する解決策にマッチしているかを元にプロスペクトを評価・選別し、必要であれば育成を行う、第4段階、育成と評価のステップです。

HubSpotでは、育成と評価のステップにおいて以下の2点を重点的に評価することを推奨しています。

  • 課題・問題

プロスペクトの事業における課題や問題点は、自社製品が提供する解決策で解決できるものであるか?

  • 障害

プロスペクトが自社製品の購入を決定するうえで、障害となるもの・ことにはどのようなものがあるか? (例:予算、納期、機能、価格など)

Close: クロージング

ここまでの全ての段階をクリアし、必要な情報(ビジネス上の課題、問題点、購入における障害物)が集まったプロスペクトに対しては、セールスプロスペクティングの最終段階である、クロージングのステップを踏みます。

クロージングでは、プロスペクトがもつ課題に対し実際に自社製品が提供できる解決策を提示し、自社製品の購入を促します。この段階での目的はプロスペクトを「現実化」する、つまり製品を購入してもらいプロスペクトから「Customer(顧客)」に昇格してもらうことです。

とはいえ、ここまでのステップを全て順調にクリアしてきたプロスペクトであっても、必ずしもクロージングがうまくいくわけではありません。クロージングを行う上では必ず、以下の2つの結果のうちどちらかがもたらされます。

  • Closed-win

取引先のバイヤーが製品を購入し、商談クローズ。

  • Closed-lost

取引先のバイヤーが商品を購入せず、商談クローズ。

企業はこの2つの結果から「Closing ratio(成約率)」を割り出すことができ、成約率をトラックすることは自社のプロスペクティングのプロセス全体を評価・改善することに繋がります。たとえ商談がロストしてしまっても目を背けずに、プロセス改善のためにしっかりと成約率の評価をすることが大切となるでしょう。

まとめ

本記事では、分かりやすくプロスペクト=見込み客、リード=潜在顧客という訳し方をしましたが、実際のところは先進の英文記事を日本語訳したサイトなどで、両者の訳し方が違っていたり、同一の日本語で訳されていたりと、日本語で情報収集をする際には情報のソース元によってかえって混乱してしまうことが多々ある印象を受けます。

今回解説したように、パーチェスファネル内で両者がどの層を占めているかといった、「意味」の部分で理解を深めておくと、そのような混乱は避けられるかと思います。

「プロスペクト」と「リード」、それぞれの意味や違いが理解でき、今後の営業施策や方針決定を行う上で、本記事が参考となっていただければ幸いです。