SWOT分析は、数あるフレームワークのなかでも地方自治体に活用されるほど比較的わかりやすく汎用性があります。そのためSaaS・BtoB企業のマーケターにとっても、活用しやすい分析のひとつだといえるでしょう。
SWOT分析の起源は古く、ハーバード大学にて現在の型で確立される以前から、米スタンフォード大学のAlbert Humphre(アルバート・ハンフリー)教授などに使用されていたそうです。権威もない時代に自然に広まっていたのも、やはりその実用性ゆえだと考えられます。
本記事では、SWOT分析のやり方と実例を解説します。SWOT分析はあくまで戦略を立てる前の状況整理、大筋のプランニングに役立つツールです。本記事の内容を、自社や自部署におけるプロジェクトでの戦略立案に役立ててください。
SWOT分析とは、自社をとりまく「内部環境(強み × 弱み)」「外部環境(機会 × 脅威)」とを分析するフレームワークです。「SWOT」とは、それらを表す以下の4つの言葉の頭文字を組み合わせた造語です。
4つの象限にそれぞれの分析結果を入れて、マトリックスとして表示することで、自社をとりまく環境を整理し、現時点でのチャンスと脅威を把握可能です。新規市場の参入時から現状分析まで、さまざまなシーンで活用できます。
SWOT分析の目的は、現時点で自社が置かれた環境を客観的に分析し、事業の方向性を決めることにあります。特にSaaSビジネスの場合、技術トレンドの変化やニーズの陳腐化が激しく、毎年さまざまな企業が参入・撤退を繰り返している領域です。
そのような状況下において、SWOTの4項目を分析すれば、「ビジネス環境の変化に素早く対応しつつ、機会に乗じて成長する」「内部環境と外部環境のギャップを理解して差別化戦略を採る」といったことも可能です。現状のビジネスで足りないところを理解することも可能でしょう。
ただし、SWOT分析はあくまで「ある側面を切り取る分析方法のひとつに過ぎない」という前提は踏まえておかなければなりません。
SWOT分析に限らず、1つのフレームワークだけで複雑な事象を網羅的に分析し、最適解をだせるフレームワークは存在しないでしょう。大切なのは「自社は◯◯をするべき」という大元の論点設計であり、そういった問いを解決する手段と捉える必要があります。
ただし、可視化しやすい内部環境はともかく、外部環境は非常に複雑かつ抽象的。そのため、よりマクロな視点で分析を行える外部環境分析フレームワークを合わせて活用し、外部環境と内部環境の両方を正しく捉えることが不可欠です。
マクロ分析が浅いままにSWOT分析をしてしまうと「そもそも市場にニーズがない領域でのプロダクト開発」「市場の方向性とは異なる戦略設計」などに繋がりかねません。以上を踏まえて、“分析しただけ”で満足しないように注意しましょう。
SWOT分析は汎用的なフレームワークなので、組織や個人のさまざまな目的のために活用できます。例えば、以下のようなタイミングです。
以下より、個別に見ていきましょう。
内部環境とは、自社を構成するリソース(例:人、物、カネ、情報、カルチャーなど)です。こういったリソースは普遍のものではなく、経年とともにたちまち変化してしまいます。
内部環境の変化の例としては、次のようなものがあります。
自社の強みを最大化するために、内部に大きい変化があったときには、改めてSWOT分析を行い、戦略を再定義するのが有効です。
例えば、今やビジネスチャットツールとしては主要なサービスである「Slack」は、もともとはゲーム開発企業でした。
(出典:Slack)
当時、SlackのファウンダーであるStewart Butterfield氏らは、オンラインゲームを開発する際の内部コミュニケーションツールを、自分たちの使いたいように次々に拡張していきました。
社内でツールを使用する人数が増えるにつれて必要とされる機能が大きく変わることにより、多くのノウハウ・フィードバックが蓄積され、2013年のプレビュー版Slackのリリースに繋がりました。
Slackのように内部環境が目まぐるしく変化するタイミングでは、SWOT分析も活用することで、「潜在的な市場ニーズに応える」革新的なサービスローンチの可能性を上げられるでしょう。
2020年代を迎え、ますます外部環境の変化が激しくなり、将来予測が難しいVUCAといわれる時代が到来しています。新型コロナウイルスのパンデミックやウクライナ危機、円安など、まさにビジネスに影響を与える大きな出来事が連続的に生じている状況下です。
IT業界だけみてもGoogle・MS・Amazon・Metaなどが大規模な人員削減をするというニュースが出るなど、ちょっと前まではこの世の春であったSaaS業界も違う変化が起きつつあります。
このように外部環境が変化しているタイミングでは、SWOT分析を行い、以下のような論点に対する回答を明確化するべきでしょう。
SaaS領域に限っていえば、前述のように変化の激しい環境ですので、逆に時代の波に乗り、勢いのあるプロダクトを開発するという選択肢もあります。
例えば、GOGEN株式会社は不動産売買に特化した電子契約サービス「レリーズ電子契約」を2022年8月にローンチしました。
(出典:レリーズ電子契約)
この背景にあるのは、2022年5月に施行された宅建業法の改正による不動産売買取引における電子契約の完全解禁です。不動産売買流通総額(GMV:Gross Merchandise Value)は3000億円を上回ると見込まれておりますので、まさに外部環境の変化に乗り、明確な強みを持ったプロダクト開発を行なった事例といえるでしょう。
企業では経営戦略を筆頭に、大小さまざまな部門が戦略立案に関わります。戦略の失敗は戦術でカバーできないといわれるほど重要であり、事業戦略を立案する前の環境分析・自社の方向性把握では、SWOT分析による正確な状況分析も必要でしょう。
一例として、2023年6月にSalesforceはエンタープライズ向けの生成AI「AI Cloud」を発表しましたが、製品発表時のプレスリリースを参照すると、同製品はSalesforceが実施した最新の調査も踏まえて立ち上げられた計画だとわかります。
(出典:Salesforce)
このように綿密な調査・分析を戦略立案前に行うことは、事業の成功確率を上げることはもちろん、投資家をはじめとする外部ステークホルダーへの説明責任という意味でも重要でしょう。
SWOT分析は、事業・マーケティング戦略の立案では欠かせない競合分析にも役立ちます。他社の内部情報はもちろん簡単にはわかりませんが、第3者視点に立ったフラットな目線で分析することでみえてくる要素もあるでしょう。
例えば、米Adobeは2011年に売り切り型のビジネスモデルからサブスクリプションモデルへ移行しましたが、この思い切った方向転換の背景にあるのは徹底した市場・競合分析でした。
Adobeが競合の動きを注視していることは、同社Bryan Lamkin(ブライアン ラムキン)氏の「『イノベーション』の速度が変わってきた」という発言や、公式から公開されているAdobe製品と他社製品の比較表からも明らかです。
自社でも競合分析を行うなら、1社ずつ分析して深掘りしてもよいですし、自社と競合他社の比較するテンプレートを活用するのも方法のひとつです。
ここからは、SWOT分析を行う基本ステップを、以下の6段階に分けて解説します。
次項より、具体的にみていきましょう。
まず、SWOT分析の目的を定義します。なぜならSWOTの各要素の解釈は、目標によって解釈が違うためです。さらにいえば、分析の目的によって集める情報やデータの範囲も変わってきます。例えば経営戦略立案のためなら自社の業務フローや財務状況、資金調達計画まで勘案することが必須です。
しかし、マーケティング戦略のための分析なら、主にプロダクトの強みや弱み、市場ニーズや競合の動向などに着目するのが効率的といえます。
このように、SWOT分析の目的に基づいて「どのような情報を、どこまでの粒度で分析するのか」が異なるため、事前に施策のゴールを定義しましょう。
次に、企業の内部環境を分析し、自社の「S(強み)」「弱み(W)」を定義します。
強みとは、企業が持つ競争優位を生み出す能力や資源のことで「技術的な専門知識」「自社サービスのシェア」「エリア的優位性」「強力なブランドエクイティ」「顧客ロイヤルティ」などが含まれます。
一方で弱みとは、企業が改善する必要のある部分、または競争上不利になる可能性のある要素のこと。これには「技術力の不足」「不十分なリソース(例:人材や資金、設備など)」「ブランド認知度の低さ」などが当てはまります。
強みと弱みを明確化するための問いとしては、以下のようなものが挙げられます。
<S(強み)を見出す問い>
<W(弱み)を見出す問い>
では、実際に内部調査はどのように行えばよいのでしょうか。方法はさまざまですが、以下より代表的なものを紹介します。
内部調査とは自社内に蓄積された情報について、経理部門や営業部門、技術部門をはじめとする多くの情報を抱える部門を中心に調べる方法です。
内部調査では、主に以下の要素を明確化しましょう。
内部調査は従業員へのインタビューやアンケート、財務データの詳細な分析、事業プロセスのレビューなどを通じて行うのが一般的です。これにより、自社の強みや弱みを正確に把握できます。
顧客調査ツールは、企業が直接顧客からフィードバックを収集するためのツールを指します。ツールを活用して「顧客満足度」「製品やサービスの利用体験」「顧客の要望やニーズ」などのデータを収集することで、自社サービスの強みや弱みの明確化が可能です。
例としては、米Momentiveのアンケート作成ツール「Survey Monkey」などが挙げられます。同ツールでは、アンケートの作成を中心に、集計や分析までをワンストップで行えて、専門家が作成した1600件以上の質問事項が用意されているため、自社が欲しい顧客情報を効率的に収集できるでしょう。
(出典:Survey Monkey)
さらに顧客の声を拾う方法としては、ソーシャルリスニングツールの活用も選択肢になります。ソーシャルリスニングとは、SNS上での会話やトレンドをモニタリングし、分析する手法です。
例えば、国内初のTwitter全量データ分析ツール「Buzz Finder」を使えば、商用利用可能なTwitterデータをリアルタイムで収集、キーワード指定によるトレンド分析や関連語分析を行えます。
(出典:Buzz Finder)
ユーザーレビュープラットフォームは、製品やサービスについてのリアルなユーザーの意見や経験を収集するためのサービスです。ユーザーレビュープラットフォームの活用でも「自社の製品やサービスを顧客はどのように評価しているのか」「顧客が何を求めているか」を理解できるでしょう。
BtoB向けのサービス例を挙げると、アイティクラウド株式会社の「ITreview」などがあります。
(出典:ITreview)
ITreviewはBtoB領域のIT製品・ITサービスのレビュープラットフォームで、2022年時点で投稿企業数が1万社超えで、10万件のレビューが集まっています。多くのSaaS企業にとっても、自社製品のブラッシュアップに役立っているとわかります。
内部環境を可視化したら、次は自社の外部環境を分析し、「O(機会)」「T(脅威)」を特定しましょう。
機会は「ニーズの顕在化による新規市場の誕生」「新技術の登場(または開発)」「法規制の変更」など、企業が利用できる可能性のあるチャンスを指します。
一方、脅威はコロナウイルスのパンデミックやウクライナ危機など以外にも、「新たな競合他社の登場」「市場ニーズの飽和」「規制の厳格化」など、企業の成長や成功を妨げる可能性のある要素全般です。
機会と脅威を可視化するための問いは、以下のようなものです。
<O(機会)を見出す問い>
<T(脅威)を見出す問い>
次項より、外部分析の代表的な手法を解説します。
市場調査は、企業が現在の市場状況や将来のトレンドを把握し、新たな機会や脅威を見つけ出すのに役立ちます。とはいえ、市場調査で調べるべき要素は「市場動向」「顧客ニーズ」「競合調査」など多岐にわたるのが実情です。
市場動向を調べるためには、デスクトップ検索やフィールドリサーチ、前述したソーシャルリスニングといったオンライン・オフラインも交えた調査が必要です。そのため、ときには外部コンサルタントや調査会社への調査依頼も選択肢になるでしょう。
(出典:ビザスク)
日常的に業界のトレンドや新サービスの動向などを把握するために、ニュースサイトや業界誌、専門家のブログ、アナリストのレポートなどを購読することも有効です。
SaaS系企業なら米GartnerやForresterが定期的に公開している業界の分析レポートは、有力な情報源となるでしょう。
(出典:Gartner)
不特定多数のニュースを拾いたいなら、Googleアラートも効果的。Googleアラートとは、登録キーワードを含む情報がインターネット上に公開されたときに、メールで教えてくれるサービスのことです。
例えば、自社が気になるキーワード(例:人材管理システムの会社なら「人材管理 DX」「人材管理 サービス」など)を登録しておくと、それに関わるニュースを日々受け取れます。
法規制調査も、新たな規制が企業のビジネスにどのように影響を与え、どのような脅威や機会をもたらすかを理解するために必要です。
日本では、レクシスネクシス・ジャパン株式会社が提供している法律情報データベース「LexisNexis」などのデータベースを使用して、関連する法律、規制、判例などを調査可能です。
(出典:LexisNexis)
特に、法規制は数年をかけて議論・施行されるもの。早い段階から法令の変化に合わせた戦略を練ることで、前述したGOGEN株式会社のようなタイミングのよいプロダクトローンチができるでしょう。
以上の手順でSWOTの各要素を抽出できれば、それぞれをまとめて記載し、自社が採るべき戦略を以下のようなテンプレートに落とし込みましょう。
戦略立案の際には、内部環境と外部環境を掛け合わせて勘案することが大切。例えば、4要素を以下のように掛け合わせる方法です。
その上で、具体的な戦略のストーリーを描いていきます。自分でいろいろな仮説を立てて何パターンかアウトラインを策定し、その中から優れた戦略プランを選択することで、フレキシブルな戦略立案が可能です。
ここからは、実在するSaaS企業を基にして、SWOT分析の例についてみていきましょう。
(出典:Chatwork)
Chatwork株式会社の提供するチャットツール「Chatwork」(チャットワーク)は中小企業に人気のソリューションです。Slackほど高機能ではないものの、必要十分な機能と手ごろな価格、何よりシンプルで使いやすい操作性に特徴があり、2023年時点で国内37万9000社に導入実績があります。
ここ数年、官民あげたテレワーク推進が追い風となり業績は順調ですが、Slack、Microsoft teams、Line worksと有力な競合サービスも伸びている状況です。
(出典:ChatWork)
ChatWorkを前述の手順でSWOT分析してみましょう。各要素を当てはめると、以下の要素が考えられます。
初見としては、業績順調で安心感はあるものの、堅実さゆえに他社の派手なマーケティングに押されている印象があります。特に、2023年には利用料金が値上げされたことも、ユーザー間で話題になりました。
(出典:ChatWork)
加えて、有料プランからフリープランにダウングレードするためには、使用しているアカウントを削除するしかないという仕様変更も、一部では批判されています。
(出典:Catchy)
株式会社デジタルレシピは、AI搭載の文章作成ツール「Catchy」を提供する企業。Catchyは、広告・資料作成、webサイト制作、セールスレターなどさまざまなシチュエーションに対応した100種類以上の生成ツールが使えることが特徴です。
さらには、PowerPointファイルをアップロードすると、レイヤーを判定して自動でHTML、CSSのコーディングを行い、Webサイトを公開する「SliderFrow」も提供しています。
そのような株式会社デジタルレシピについてSWOT分析を行うと、次の要素がみえてくるでしょう。
※2023年7月時点の情報を基に、当社にて作成
Catchyは、米OpenAI社が提供する自然言語処理モデルGPT-3を活用したAIコピーライティングツールが日本でも登場ということで注目を浴び、2022年6月にリリース後4カ月で会員が2万人を超えるなど、急速に普及しました。これはAIテクノロジーの進歩という「機会」を捉え、自社の強みに変えた例といえます。
しかし2023年現在では、多くのSaaS系企業がChatGPTをはじめとするAIテクノロジーのAPI連携を活用したサービスを展開。徐々にプロダクトの優位性が失われつつあります。
さらに、GoogleがAI生成コンテンツに関するGoogle検索のガイドラインを発表したように「AIを使って、低品質なコンテンツが乱造される恐れ」については、各所で警鐘を鳴らす向きもあります。
もちろん、これはコンテンツを作成する側の問題であり、サービス提供側の問題ではないのですが、社会情勢的に懐疑的な声が強まる可能性がある点については、デジタルレシピにとっても「脅威」といえるでしょう。
(出典:SmartHR)
株式会社SmartHRは、クラウド型労務管理ソフト「SmartHR」の企画・開発・販売・運営を主に行っているSaaS企業。SmartHRは人事・労務管理に関する使い勝手のいい機能が揃っており、2023年時点では国内5万社以上に導入されているほどです。
そのほかには、グループ企業がバックオフィスのための業務管理プラットフォーム「BYARD」や外国籍労働者特化SaaS「AIRVISA」など、SmartHRと親和性の高いプロダクトを展開している点も特徴です。
実際に、2022年8月時点のARR(年次経常収益)は84.3億円だったが、2023年3月時点では足元ARRは100億円突破するなど、脅威的な成長を続けています。
※2023年7月時点の情報を基に、当社にて作成。
ただし「SmartHR」はクラウド労務管理シェアNo.1とはいえ、労務管理市場はこれからも更なる拡大が予想されるマーケット。今後、競合他社の成長・新規参入も十分に予想されますので、継続的なプロダクトのアップデートや新規開拓が求められるでしょう。
そういった背景が踏まえられているのかは定かではありませんが、同社はタレントマネジメント領域にも注力しています。
タレントマネジメント市場は、トップ5社のSaaSの導入企業数が1600~3000社規模 ですが、2023年3月時点でSmarHRの各サービスは導入が500社を超え、1000社に近づいているとのことでしたので、市場ニーズを明確に捉え、自社の強みを新領域でも発揮しているとわかります。
(出典:エムスリー株式会社)
エムスリー株式会社は、医療業界全体に渡りさまざまなサービスを展開しています。医療従事者の情報ニーズに応える会員制サイト「m3.com」を軸に、製薬企業の薬剤プロモーション・マーケティングを総合的に支援する「MR君」など、20以上のプロダクトを運営しているのが特徴です。
同社は新型コロナウイルスのパンデミック下で時価総額が大幅に伸び、2021年時点で時価総額が5兆円超えと、脅威的な規模にまで成長しました。同社についてSWOT分析を行なってみると、次の要素がみえてきます。
※2023年7月時点の情報を基に、当社にて作成。
コロナ禍で大きく成長したエムスリーですが、世界的にパンデミックが収束しつつあり、日本でも第5類に移行した現在においては、オンライン医療のニーズも落ち着いていくと予想可能。社会的には望ましいことですが、同社の事業展開の観点からは「脅威」であるといえます。
しかし、エムスリーはM&Aや新規展開に長けた企業でもあります。2019年にはいち早くフランス最大のクラウド電子カルテ企業を買収したように、今後もフレキシブルな事業展開を行なっていくことでしょう。
(出典:株式会社ビズリーチ)
株式会社ビズリーチは、2009年から管理職・グローバル人材の会員制転職サイト「ビズリーチ」を展開しているベンチャー企業です。2017年には中小企業を対象とした事業継承M&Aのプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード(現M&Aサクシード)」もローンチし、事業拡大を目指しています。
そんなビズリーチをSWOT分析すれば、次のような要素が浮かび上がってきます。
※2023年7月時点の情報を基に、当社にて作成。
ビズリーチのハイクラス転職という強みは、今後数年は維持され続けるでしょう。さらに、転職市場自体が新規参入も激しい領域であることを考えると、「ハイクラス転職領域における未利用企業の獲得」と同時に、新規領域への進出にも注力する必要があると考えられます。
SWOT分析とは自社の「S(強み)」「W(弱み)」「O(機会)」「T(脅威)」を分析するフレームワークであり、自社内のさまざまなフェーズでの戦略策定に活用できます。
ただ、フレームワークを活用した経験のある人はご存知のように、SWOTをはじめとするフレームワークとは最適な戦略を可視化できる魔法のツールではなく、情報を整理し、思考を促進するための、いわばプランニングツールです。
それでも自分の脳内で考えるより、はるかに思考の幅は広がり、効果的な戦略のヒントが得られることが多々あります。大切なのは使い慣れること。あまり難しく考えず、まずは気軽に活用してみましょう(なお、SWOTは個人の人生戦略にも使えます)。
ビジネス戦略に100%正しい答えはありません。フレームワークを活用して可能性をできるだけ探し、リスクをできるだけ潰した上で、あとは腹を決めて意志決定するしかないのです。市場ニーズや社会情勢が加速度的に変化する時代においては、最終的には胆力・決断力が大事だと理解することが大切です。