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バリュープロポジションとは?作り方を具体例を用いてわかりやすく解説!

最近は、ビジネスで「価値創造」「価値の提案」といったフレーズが使われるようになってきました。製品・サービスがコモディティ化しやすい現代、いかに競争上の優位性を創り上げオンリーワンの価値を提供できる存在になれるかは、非常に重要です。

しかし、価値の提供と語ることはたやすくても、アップルの『Think different』、スターバックスの 『Third place(第三の場所)』のような独自のコンセプトを、素敵な一文で見事に表明することは難しいものです。

バリュープロポジションは、企業理念ではないため「我が社は〇〇を提供したい」という企業視点のビジョンとはやや異なり、徹底した顧客視点、顧客ニーズに紐づいて価値を語る必要があります。ベースに深い顧客理解がなければ、なかなか簡単には構築できないでしょう。

本記事では、自社や製品・サービスの「バリュープロポジション」を見つける重要性、バリュープロポジションの作り方、フレームワークなどを解説します。

バリュープロポジションを図解して説明

バリュープロポジションとは、顧客に求められる、競合他社では提供できず自社だけが提供できる価値のことです。いわゆるオンリーワンの価値です。

願望ではなく事実にもとづいて、顧客のニーズを起点として、製品・サービスの機能、企業のカルチャー、ブランドの信頼性などの領域で自社だけが提供できる価値のことを指します。

バリュープロポジションは、1988年に米McKinsey & CompanyのMichael Lanning(マイケル・ラニング)氏とEdward Michaels(エドワード・マイケルズ)氏の論文『ビジネスは価値提供システムである』で使用されたことがきっかけで世にでてきた言葉です。

当時の定義は「企業が顧客に対して提供する利益(有形・無形を問わず)を、各顧客セグメントの価格とともに、明確かつシンプルに記述したもの」でした。

現代の一般的な解釈は、「特定の製品またはサービスを購入することによって顧客が受けるメリットを明確に特定するステートメント(声明文、文章)」です。

ただし、バリュープロポジションは使われる文脈によって「ステートメント」を指す場合と、「ステートメント『領域』」を指す場合があります。

「領域」として捉える場合、主にその商品・サービスが存在する市場や、ターゲットとする顧客層という意味です。つまり、どのような市場にどのような価値を提供し、それによってどのような顧客を満足させるか、ということを示します。

いずれにせよ、バリュープロポジションは、事業戦略やマーケティングの核となるものです。バリュープロポジションを明確にすることで、他社が真似できない強みに磨きをかけ、製品企画、マーケティング、サービス、組織カルチャーなどで競争上の優位性を持つことができます。

以下、ひとつの例として、HubSpotのバリュープロポジションを紹介します。

(出典:Unique Selling Proposition: What It Is & How to Develop a Great One )

(訳)

"HubSpotのオールインワンのマーケティング、セールス、そしてサービスプラットフォームは、あなたがインバウンドマーケティングを実装し、より良い成長を達成するために設計されています。すべては同じデータベースによって動かされているため、あなたの組織内のすべての人々  — マーケティング、セールス、サービス、そしてIT — は同じシステム上で作業を行っています。"


つまり、「HubSpotは、全社的で一元化して使えるプラットフォームを提供し、担当者がインバウンドマーケティングを促進し、組織成長に貢献する。」ということを言い表しています。

バリュープロポジションは、製品を競合他社から区別する主要な要素を伝えるために、多くの場合、営業担当者が活用するステートメントです。ブランドの価値を伝え、どのように顧客に利益をもたらすかを明示し、特に販売プロセスの初期段階で使用されることが多いと言えます。

バリュープロポジションを顧客へ効果的に伝えるには?

競合他社と明確に差別化し、自社の強みを際立たせるためには、明確かつ説得力を込めて伝える必要があります。

具体的には、見込み顧客との口頭での会話の中に盛り込むのが最適だと言えるでしょう。そのため、バリュープロポジションとは「見込み顧客に向けたもの」とピンポイントに想定して作成する必要があります。「自社のビジネスが提供する、競合他社との違いは何ですか?」と自問しながら作り込むのがおすすめです。

HubSpotは「バリュープロポジションは、メールで伝えると迫力が失われることがあります。電話や、対面で伝えることで、顧客は営業担当者の言葉の力強さ、口調、自信を感じ取ることができます。」と主張しています。

このHubSpotの主張の根拠は、対面コミュニケーションは、より相手に対してパーソナライズされ、感情的な要素を含むことができるという点にあると推測できます。パーソル総合研究所が行った実験結果によると、「自分の意図が伝わった」「相手の意図を理解できた」と感じる度合いは、「対面」が最も高い傾向にあるというデータも。

口頭で直接会話を行うと、製品やサービスのバリュープロポジションを特定の見込み客のニーズ、関心事、疑問に応じて調整しながら伝達することができます。声の調子、強弱、表情などを使って情緒を伝えることも可能です。これにより、製品やサービスの価値を強調し、説得力を増すことができると言えるでしょう。

一方、メールは一般的に一方的なコミュニケーションであることが多く、個々の見込み顧客の具体的な反応にリアルタイムで対応するのが難しいと言えます。声の調子、強弱、表情など非言語的な要素を伝えるのも難しいため、その結果、メッセージが乏しく感じられることもあると考えられます。

最初に知っておきたいバリュープロポジションと似たものたちとの違い

あなたの会社のバリュープロポジションは、あなたのビジネスのアイデンティティです。バリュープロポジションを明示できなければ、顧客はあなたが販売しているものを購入する理由を見つけることができません。

企業がマーケティング施策や販売プロセスの中で自社のバリュープロポジションを明確に伝えていなければ、その理由だけで顧客は競合他社を選択してしまうこともあり得ます。

ここで、「バリュープロポジションは、会社のスローガンと置き換え可能なのでは?」と思った方もいるかもしれません。

しかし、その答えは「NO」です。バリュープロポジションは「ミッションステートメント」「スローガン」「キャッチフレーズ」などと混同しやすいものですが、これらは実際には異なります。

以下に、その違いを詳しく説明します。

バリュープロポジションとミッションステートメントとの違い

  • バリュープロポジション

顧客に何を提供するのか、なぜ顧客があなたを選ぶべきなのかを、製品・サービス視点で詳しく説明したもの。

  • ミッションステートメント

組織としての目標を、会社視点で詳しく説明したもの。

例:HubSpotの場合

バリュープロポジション:「"An easy-to-use CRM."(使いやすい CRM)」。

ミッションステートメント:「"To help businesses grow better."(ビジネスの成長を支援する)」。

[参考]How to Write a Great Value Proposition [7 Top Examples + Template]

バリュープロポジションとスローガンとの違い

スローガンとは、ブランドが特定の製品を販売するためのマーケティング活動で使用する、短くてキャッチーなフレーズのことです。ブランドを象徴する覚えやすいフレーズで、顧客を惹き付けて、ブランドのことを覚えてもらったり、購買など特定の顧客行動を促したりするために設定されます。

企業はキャンペーンや製品ごとに異なるスローガンを設定できます。

例:デビアスグループの場合

バリュープロポジション:「Exquisite diamonds, world-class designs, breathtaking jewelry.(絶妙なダイヤモンド、世界クラスのデザイン、息を呑むようなジュエリー)」。

スローガン:「A diamond is forever.(ダイヤモンドは永遠です。)」

(出典:「A Diamond Is Forever(ダイヤモンドは永遠の輝き)」 に込められた意味 | Forevermark 

[参考]How to Write a Great Value Proposition [7 Top Examples + Template]

バリュープロポジションとタグラインとの違い

タグラインは、ブランドやビジネスの特定の側面を具体化する短い言葉で、ビジネスを代表するコンセプトやアイデアを表すものです。

ほとんどの企業には、ブランドと結びつくタグラインが 1 つだけあります。タグラインはブランド自体を象徴する短いフレーズであり、そのブランドが中心に据える理念や価値を表現するために使われます。

タグラインは、ブランドのエッセンスを短く鮮やかに表現し、ブランドの個性を表現するためのツールです。いわゆる「ブランディング(ブランドアイデンティティの強化)」のために作成されるものであり、そのブランドが何を目指しているのか強調し、消費者に印象付けて覚えてもらうためのフレーズです。

例:Apple

バリュープロポジション:「The best experiences. Only on Apple.(最高のエクスペリエンス。Apple だけで。)」

タグライン:「Think Different.(異なる思考を)」

[参考]How to Write a Great Value Proposition [7 Top Examples + Template]

「Think different」キャンペーンを担当 伝説のクリエイティブ・ディレクターが見たアップル | 宣伝会議デジタル版

バリュープロポジションの作り方とは

バリュープロポジションの作り方には、いろいろな手法があり、テンプレートも豊富にあります。フレームワークやテンプレートは、バリューポジションを活用する目的や活用する人の知識にあわせて、使いやすいものを選択して問題ありません。

チェックリストを活用

バリュープロポジションを構築するためには、前提として顧客視点、競合企業の強み・弱み、自社の強み・弱みを知っている必要があります。

もし、その知識が浅い場合は、最初に知識の棚卸をしたほうよいので、フレームワーク作成前にチェックリストを活用しましょう。知識・スキルが豊富な人は、バリュープロポジションのフレームワークに直接書き込んでも問題ありません。

以下のような詳細なチェックリストを活用するのがおすすめです。以下の12項目が、バリュープロポジションの作成のうえで自問すべき項目です。もし、各項目で少し悩んでしまったら、顧客視点からプロダクトの捉え方が甘いのかもしれません。

バリュープロポジションを作成するためのチェックリスト

 

対象となる顧客は誰ですか?

 

顧客があなたの製品やサービスを購入する理由は何ですか?

 

その製品やサービスは何を行うのですか?

 

その製品やサービスを使用するとどんな感じですか?

 

特徴は何ですか?

 

顧客の購入の背後にある、理性的および感情的な動機は何ですか?

 

顧客の隠れたニーズは何ですか?

 

その製品やサービスを使用することによる顧客ベネフィットは何ですか?

 

その製品やサービスへの切り替えには何かリスクがありますか?

 

顧客は現在、その製品やサービスが解決できる問題を、どのように解決していますか?

 

あなたの製品やサービスが提供するユニークな差別化要素は何ですか?

 

そのユニークさの価値は何ですか?

[参考]Free Value Proposition Templates | Smartsheet

上記のチェックリストは、自社のバリュープロポジションを明確に定義し、競合からの差別化を図るために必要な項目を網羅しています。

それぞれの項目が重要な理由は、以下の通りです。

  1. 対象となる顧客は誰ですか?

製品・サービスが提供する解決策が、顧客の具体的な問題やニーズに適合しているかを捉えるための重要な項目です。

  1. 顧客があなたの製品やサービスを購入する理由は何ですか?

これを明確にすることで、バリュープロポジションを顧客にとって魅力的で説得力のあるものにするための強力なヒントが導き出されます。

  1. その製品やサービスは何を行うのですか?

製品・サービスの基本的な機能や目的を明確にすることで、あなたが顧客に提供できる要素を理解する助けとなります。

  1. その製品やサービスを使用するとどんな感じですか?

顧客が製品を使う体験や感情を理解することで、顧客の感情・心理を理解できます。

  1. 特徴は何ですか?

あなたの製品の特性を詳述することは、それが他の製品とどう違うか、またそれが顧客にとってなぜ、重要なのかを強調するのに役立ちます。

  1. 顧客の購入の背後にある、理性的および感情的な動機は何ですか?

顧客の購入動機を理解することは、マーケティングとセールスのメッセージを最適化するために不可欠です。

  1. 顧客の隠れたニーズは何ですか?

顧客自らがまだ認識していない可能性のあるニーズ(潜在ニーズ)を特定することで、製品

・サービスをより深く顧客のライフスタイルや仕事にフィットさせるヒントを見つけることができます。

  1. その製品・サービスを使用することによる顧客ベネフィットは何ですか?

顧客が製品・サービスの使用からどのような具体的なベネフィット(利益)を得られるのかを強調することは、バリュープロポジションを強化するのに重要です。

  1. その製品・サービスへの切り替えには何かリスクがありますか?

顧客があなたの製品・サービスを試す際の潜在的な障壁を理解し、それを軽減する策を考えることで、顧客の獲得を促進できます。

  1. 顧客は現在、その製品・サービスが解決できる問題を、どのように解決していますか?

現在の解決策を理解することで、あなたの製品やサービスがそれらに対してどのような改善策を提示できるかを把握します。

  1. あなたの製品・サービスが提供するユニークな差別化要素は何ですか?

ユニークな差別化要素は、競合他社からあなたの製品・サービスを区別し、顧客があなたを選択する理由となります。

  1. そのユニークさの価値は何ですか?

顧客にその製品・サービス価値を理解させ、あなたの製品・サービスに対する認知度を高めるために重要です。

バリュープロポジションにおすすめのフレームワーク

次にフレームワークを活用します。ここでは、3種類のバリュープロポジションを導き出すフレームワークを紹介します。

1.We help (X) do (Y) by doing (Z).

元GoogleのSteve Blank(以下ブランク)氏が、開発したシンプルなフレームワークです。

私たちは(Z)をすることで(X)が(Y)をするのを助ける。

  • X=お客様
  • Y=お客様が望むこと(ニーズの充足、ペインの解決など)
  • Z=自社の製品・サービス

3項目を書き込むだけで、顧客視点に立った簡潔なバリュープロモーションを考えられるようになるでしょう。バリュープロポジションを導くフレームワークは、一般に複雑ですがこのフレームワークを活用すると、最終的な出口を見失わず、必要以上に迷わず、顧客価値を考えられます。

(出典:smartsheet

同サイトには、バリュープロポジションを導き出す、以下のような比較的シンプルな無料テンプレート(英語)が何種類か紹介されています。

  • Geoff Moore’s Value Proposition (For、WHO、OUR、IS、THATの4項目)
  • Information Technology Services Marketing Association's Value Proposition
    (IT業界マーケティング用)
  • Venture Hacks’ Value Proposition(ベンチャ―用),etc

自身の業界に合いそうなものを選択して活用してみましょう。

ここで例として、HubSpotのバリュープロポジションを考えるうえで、ブランク氏のフレームワークを活用してみましょう。

(出典:Unique Selling Proposition: What It Is & How to Develop a Great One )

(訳)

"HubSpotのオールインワンのマーケティング、セールス、そしてサービスプラットフォームは、あなたがインバウンドマーケティングを実装し、より良い成長を達成するために設計されています。すべては同じデータベースによって動かされているため、あなたの組織内のすべての人々  — マーケティング、セールス、サービス、そしてIT — は同じシステム上で作業を行っています。"

 

  1. X: 顧客

HubSpotの顧客は、マーケティング、セールス、サービス、およびIT部門を含む組織です。

  1. Y: 顧客が望むこと(ニーズの充足、ペインの解決など)

顧客は、インバウンドマーケティングを実装し、より良い成長を達成したいと考えています。

  1. Z: 自社の製品・サービス

HubSpotはオールインワンのマーケティング、セールス、およびサービスプラットフォームを提供しており、それは同じデータベースによって支えられています。これにより、顧客の組織内のすべての部門が同じシステム内で作業することができます。

HubSpotのバリュープロポジションでは、顧客ニーズに応えるためにどのような付加価値を提供しているかが明確に述べられています。また、顧客の組織内の異なる部門が同じシステムで作業することで、効率的な情報共有と連携が可能になるという利点も強調されています。

バリュープロポジションビルダーモデル

バリュープロポジションビルダ―モデルは、6つ構成要素 (市場、価値経験、提供、利点、代替品および差別化要因、証明)を明確に定義・分析し、顧客価値に基づいたビジネスを展開し、収益を向上させるためのフレームワークです。

6つの領域を分析
  1. 市場
    価値と収益性をもたらす可能性のある市場セグメント、特定の顧客を分析。
  2. 顧客価値体験
    顧客価値体験の定義。「良い経験」「悪い経験」「中立的な経験」を定義します。
  3. 価値提案の有効性
    ターゲットに価値経験を提供できる製品・サービスの組合せを定義。顧客価値体験の有効性を分析します。
  4. 顧客価値体験の観点から提供物のメリットを評価
    ここでは、価格や顧客リスクなどのコスト要素が含まれているため、「価値=利益ーコスト」という価値の計算が可能です。
  5. 代替品と差別化
    市場に自社製品・サービスに対してどのような代替品があるか、どのように競合と差別化するかを分析します。
  6. 上記のエビデンスを揃え、すべてを裏付け、実質的な価値提案が行われていることを確認します。

例として、HubSpotのバリュープロポジションについて、バリュープロポジションビルダーの6つの要素を基に詳しく説明します。

(出典:Unique Selling Proposition: What It Is & How to Develop a Great One )

(訳)

"HubSpotのオールインワンのマーケティング、セールス、そしてサービスプラットフォームは、あなたがインバウンドマーケティングを実装し、より良い成長を達成するために設計されています。すべては同じデータベースによって動かされているため、あなたの組織内のすべての人々  — マーケティング、セールス、サービス、そしてIT — は同じシステム上で作業を行っています。"

 

  1. 市場(中小企業):

HubSpotの主なターゲット市場は中小企業です。彼らの製品・サービスは、特に成長を促進しようとしている中小企業に対してデザインされています。

  1. 顧客価値体験(インバウンドマーケティングの成功):

HubSpotの提供する価値の一つは、インバウンドマーケティングの成功を体験できることです。つまり、HubSpotのツールとサービスを利用することで、顧客はより多くのリードを引き付け、コンバージョンを増やし、顧客満足度を向上させることができます。

  1. 価値提案の有効性(ツールとサービス):

HubSpotはCRM機能を軸として、マーケティング活動を一元管理する機能、営業支援の機能、CMSの機能、カスタマーサービスの機能を一つにまとめたソフトウェアを提供しています。これにより、ユーザーは異なるツールを別々に管理する必要がなく、一元化されたプラットフォームからビジネスを管理できます。

  1. 提供物のメリット(ビジネスの成長):

HubSpotの製品・サービスを利用することで、顧客はビジネスの成長を達成することができます。これは、より多くのリードと顧客を獲得し、長期的な顧客関係を構築することを可能にします。

  1. 代替品および差別化要因(一元化されたプラットフォーム):

HubSpotは他のマーケティングツールやCRMソフトウェアと異なり、一元化されたプラットフォームを提供します。これにより、ユーザーは複数のツールを別々に管理する必要がなく、すべてのマーケティング活動を一箇所で行うことができます。

  1. 証明・エビデンス(成功事例):

HubSpotはウェブサイト上で多くの成功事例を共有しており、その製品・サービスが実際にどのように顧客のビジネスを成長させたかを証明しています。

バリュープロポジションキャンバス(ハイブリッド型)

「バリュー プロポジション キャンバス」は6つの項目を埋めていくことでバリュー・プロポジションに貢献する構成要素を探ります。領域を埋めるプロセスを経ることで、自社の強みが明確になり、最終的に1文のバリュープロポジションに絞り込むことが容易になります。

(画像出典:Google

図の矢印がしめすように右側の丸い図を先に埋めていきます。

CUSTOMER(顧客ニーズ)

  • Desires:顧客の欲求(感情的な原動力)
  • Job to be done:顧客自身がニーズを満たすためにすべきこと
  • Anxieties:不安、懸念、心配事

顧客の欲求(感情的な原動力)、ニーズ(合理的な動機)、恐怖(望ましくない結果)を顧客視点にたってできるだけ想像して書き込みます。

PRODUCT(製品・サービスの顧客提供価値)

次に左の四角形の図を埋めます。

  • Benefits:顧客の利益
  • Features:製品・サービスの特徴
  • Customer Experience:顧客の体験

いずれの項目も顧客の視点で思考して埋めます。顧客にとっての製品・サービスの利点、顧客から見た製品・サービスの特徴、顧客体験を書き出してみます。右のCUSTOMERの図に書き込んだ要素をもとに、PRODUCTを思考することがポイントです。

左右の図を比較すると、良い製品・サービスは提供価値(四角形)が顧客ニーズ(〇)の図に紐づいているので矛盾がありません。顧客ニーズに提供価値が紐づいていない場合は、現在のバリュープロポジションを再定義しましょう。

例として、HubSpotのバリュープロポジションについて、バリュープロポジションキャンバス(ハイブリッド型)に当てはめて詳しく説明します。

(出典:Unique Selling Proposition: What It Is & How to Develop a Great One )

(訳)

"HubSpotのオールインワンのマーケティング、セールス、そしてサービスプラットフォームは、あなたがインバウンドマーケティングを実装し、より良い成長を達成するために設計されています。すべては同じデータベースによって動かされているため、あなたの組織内のすべての人々  — マーケティング、セールス、サービス、そしてIT — は同じシステム上で作業を行っています。"

 

CUSTOMER(顧客ニーズ)

Desires(欲求):

業績を改善し、成長を達成したい

Job to be done(すべきこと):

顧客獲得のために効果的なマーケティング戦略を設計・実行すること。

Anxieties(不安):

市場に存在する他のマーケティングツールとCRMソフトウェアの効果的な統合や管理の困難さ。

PRODUCT(製品・サービスの顧客提供価値)

Benefits(利益):

HubSpotのソフトウェアを使用することで、顧客は一元化されたプラットフォームでマーケティング、営業、サービス活動を効率的に管理し、ビジネスの成長を達成することができます。

Features(特徴):

ユーザーフレンドリーなインターフェース、高度なリードジェネレーションと顧客関係管理ツール、独自のインバウンドマーケティング戦略。

Customer Experience(顧客体験):

ユーザーはHubSpotの統合プラットフォームを通じて簡単かつ効率的にマーケティング、営業、サービス活動を管理する体験ができます。

バリュープロポジションの使い方を具体例とともに説明

ここでは、4社を例にバリュープロポジションの使い方を説明します。

使い方の具体例:Invision

バリュープロポジション:"Design Better. Faster. Together."

顧客起点での価値:

InVisionは世界をリードするプロトタイピング、コラボレーション、ワークフローのプラットフォームです。デザイナーは、InVisionを活用することで、複数のツールを使用せずに、オンライン上で堅牢なプロトタイプやモックアップを迅速に作成できます。InVisionは、デザイナーが独自のデザインを作るための総合的なソリューションプラットフォームです。

InVisionならではのバリュー:

さまざまなタスクに特化したツールやサード・パーティとの統合できる広大なエコシステム

Invisionのバリュープロポジションを「We help (X) do (Y) by doing (Z)」 のフレームワークに当てはめると:

使い方の具体例:Slack

バリュープロポジション:仕事をよりシンプルに、より快適に、より生産的にする

顧客起点での価値:

Slackは、シンプルで使いやすいチームのためのコラボレーションツールです。社内のメッセージのやりとりを効率化するとともにコミュニケーションをスムーズにします。複数のプロジェクトを一元管理できるタスク管理にも適しています。セキュリティも堅牢なため、Fortune 500企業の77%がSlackを利用しています。

Slackならではのバリュー:

  • シンプルな操作性、ベンチャー、スタートアップに好まれる先進性
  • NASAのような大規模な組織でも安心して活用できる堅牢性
  • 2600以上ものアプリと連携が可能(2023.6時点)

Slackのバリュープロポジションを「We help (X) do (Y) by doing (Z)」 のフレームワークに当てはめると:

使い方の具体例:Google Drive

バリュープロポジション:すべてのコンテンツに簡単かつ安全にアクセス

Google Driveは、Googleが提供するオンラインストレージサービスです。GoogleDriveのバリュープロポジションはシンプルながら、「すべて」「簡単」「安全」というキーワードで製品・サービスの機能、保存するものはすべて安全であることを伝えています。

顧客起点での価値:

ユーザーはモバイル 、タブレット、パソコンからファイルやフォルダを保存、共有、共同編集できます。時間をかけてメールからダウンロードするなど時間をかけることなく、瞬時にタスク完了です。

Microsoft Office をはじめ、 PDF、CAD ファイル、画像など、100 種類以上のファイルを編集、保存できます。また、オフライン作業が可能なため、通信インフラが整っていない場所でも仕事に集中することが可能です。面倒なことや煩雑なことを、簡単にシンプルにできるようになります。

Googleならではのバリュー:

  • シンプルなUI、徹底してムダを省いた簡単なプロセス
  • 大容量(18GB)を無料提供
  • AIを活用した のGoogleの検索機能によりファイル検索速度がスピーディ
  • 検索エンジンとしての知名度、信頼性

Google Driveのバリュープロポジションを「We help (X) do (Y) by doing (Z)」のフレームワークに当てはめると:

使い方の具体例:Optimizely

バリュープロポジション:Unlock digital potential(デジタルの可能性を広げる)

Optimizelyは、マーケターがWebやモバイル上でA/Bテスト、多変量テストツール、パーソナライゼーション機能を活用するためのプラットフォームです。「世界No.1A/Bテスト」「A/BならOptimizely」評価され、世界8000社以上で活用されています。

顧客起点での価値:

マーケターにとって、デジタル市場で見込み客を分析して絞り込むことは簡単ではありません。Optimizelyを活用することで、デジタル上での最適な顧客体験価値を提供できるとともに、「CVR(コンバージョン率)」「CTR(クリック率)」を改善できます。

Optimizelyならではのバリュー:

  • すべてのデバイス、チャネルのタッチポイントで最適な顧客体験を提供できる。
  • 創業者Dan Siroker氏は、2008年米国大統領選でオバマ陣営の分析ディレクターであり、ABテストを駆使して選挙運動収益を1億ドル以上増加させた実績がある。

Optimizelyのバリュープロポジションを「We help (X) do (Y) by doing (Z)」のフレームワークに当てはめると:

バリュープロポジションをマーケティング戦略に落とし込むには?

バリュープロポジションをより広い見込み顧客に届けるためには、マーケティング戦略に落とし込むことも重要です。次のような取り組みを通し、顧客はあなたの製品・サービスが他の選択肢と違っていて、彼らにとって最良の選択肢であることを理解できるでしょう。

ブランド戦略とメッセージングを再考する

ブランド自体をプロモーションする際には、顧客が最も価値を見出す要素を第一に訴求すべきです。もし、現在のブランド戦略とメッセージングがそれを満たしていないなら、市場に対してブランドアイデンティティを提示できるよう、再考を図るべきでしょう。

例えば、HubSpotのバリュープロポジションは、マーケティング、セールス、カスタマーサービスを一つのプラットフォームで統合し、ビジネスの成長を促進することです。

これは、顧客が最も価値を見出す要素、つまり時間と労力の節約、一貫したカスタマーエクスペリエンスの提供といった点を反映しています。

マーケティングの全チャネルでバリュープロポジションを最初に提示

すべてのマーケティングチャネルでバリュープロポジションを先頭に立てるべきです。ブランドの価値を伝え、どのように顧客に利益をもたらすかを明示し、あなたの製品・サービスを選ぶべき理由を表現した声明だからです。

もしそうでない場合には、Webサイト、ソーシャルメディア、広告、販売プレゼンテーションなどマーケティングの全チャネルで最前面に出るように整備し直しましょう。

HubSpotの場合、彼らのWebサイト、ソーシャルメディア、広告、セールス資料など、顧客や見込み顧客と関わるすべての場所で、そのバリュープロポジションが前面に出ています。

スタッフの一貫したトレーニングを徹底する

あなたの会社の全スタッフが、なぜ顧客があなたと取引をするのか、そして顧客が最も価値を見出すものは何かを理解することが重要です。

スタッフのトレーニングプログラムでは、顧客からのフィードバックを共有し、顧客視点を深く理解するプロセスを取り入れましょう。自社ブランドが市場においてどのような評価を受けているのか、またバリュープロポジションが顧客獲得にどのような役割を果たしているのかを、全スタッフが理解するために不可欠です。

自社のビジネスが競合他社とどのように異なるかを客観的に理解し、その結果をマーケティング戦略に反映させることで、他社との差別化が成功します。

HubSpotは、顧客がマーケティング活動全般を一体化させられるだけのソリューションと、パワフルなインバウンドマーケティング手法を提供することで、他のBtoB SaaSプロバイダーとの差別化に成功しています。

HubSpot Japanの日本語ブログや、ユーザーが無料でダウンロード可能な資料の質と量は非常に高く、これらに加えてさらに英語版のブログやナレッジ資料を追加すると、より多様で深い情報にアクセスできます。

これは、HubSpotの「インバウンドマーケティングメソッド」を基軸として、一貫したコンテンツ制作を可能にするスタッフ教育体制も備わっていることを示しています。この効果的なコンテンツマーケティングの推進体制こそが、HubSpotが提唱する「インバウンドマーケティング」を促進し、見込み顧客を確実に引き付ける力となっています。

まとめ

自社製品・サービスを市場や顧客の視点から理解することは、決して容易な取り組みではありません。

しかし、本記事で紹介したバリュープロポジションのフレームワークを利用することで、自社製品・サービスの真価を明らかにし、それを顧客に対して明確に伝達するうえで役立つことでしょう。自社が競合他社とどう違うのか、理由を鮮明にプレゼンテーションする手助けにもなります。

魅力的なバリュープロポジションは、顧客満足度の向上、コンバージョン率や成約率の増加、さらには顧客維持率の改善など、ビジネスに大きな利益をもたらすでしょう。

本記事を通じて、バリュープロポジションの概念、その作り方、そして活用方法について深く理解していただけることを願っています。自社製品・サービスが顧客にとって欠かせない存在になるよう、日々のビジネスにおいてチャレンジを続けていってください。