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統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)とは?マーケターであれば知っておきたい基本と事例を解説

現在は多くの人が、1日にオンラインニュース記事、ブログ、SNS、動画などさまざまなチャネルの情報にふれます。おそらく10年前と比較してもはるかに多くの情報を、自然に取捨選択しているでしょう。

現在の人はオンラインとオフラインを行き来して生活しているので、BtoBマーケティング手法も、このような環境変化にあわあせて、伝統的なマーケティング手法とデジタルマーケティング手法を統合していく必要があります。

本記事では、マーケターであれば知っておきたい「統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)」の基本と事例、進めるための5つのステップを解説します。

統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)とは

統合マーケティングコミュニケーション(IMC)とは、広告、ソーシャルメディア、Web、ダイレクトメール、展示会、自社スタッフなど、顧客とのタッチポイントにおけるさまざまなマーケティング戦略を統一したコンセプトにもとづいて実施する手法です。

発展の背景と考え方

IMCは、「統合型マーケティングの父」と言われる、ノースウェスタン大学のDonald Schullz(ドン・シュルツ)氏が定義した概念です。

シュルツ氏は1980年代からIMCを提唱しました。企業は、消費者とブランドや企業とのすべての接点をメッセージ伝達のチャネルと考え、コミュニケーションをとるべきだと説いていました。1991年に、IMCはアカデミックな領域で学術的意義を認められます。

また、シュルツ氏は、その後のインターネットの普及、SNS、AIなどの進化を踏まえ、IMCの定義を3種類に分類しています。

  • IMC1.0:広告、PR、ダイレクトマーケティング、セールスプロモーションなど、社内で縦割りで行われているマーケティングコミュニケーションを統一する概念
  • IMC2.0:より顧客視点にたったチャネル戦略、マーケティングコミュニケーションを行うIMC
  • IMC3.0:顧客、メディア、チャネル、社内組織をひとつのプラットフォームと考え、ビッグデータなどを活用しマーケティングの成果を最大化するIMC

(参考:IMC3.0の時代に必要なのはデータマネジメント - HBR

上記の分類から考えると、マーケティングにあまり力を入れてこなかった企業なら、まずIMC1.0から取り組むことが望ましいでしょう。すでにデータ活用に取り組めている企業は、支援ツールなども活用しデータマネジメントをさらに進化させるなど、自社のマーケティング組織のフェーズにあわせた統合型マーケティングの取り組みを行います。

統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)の具体事例

ここでは、IMCの成功事例を4社紹介します。

具体例1:GoProの「Be a Hero」キャンペーン

(出典:GoPro

GoProは、アメリカGoPro社が販売している革新的なアクションカメラです。耐久性があり携帯可能なこのカメラは、これまで撮影しにくかったドライブ中、レジャー中などの動的な瞬間を記録できます。

「Be a Hero」というキャンペーンで、波に乗るサーファー、スキー場での滑走、子育て中ペットとのアクティビティなどの素晴らしい瞬間を撮影できることを動画、雑誌、デジタルメディア、ビルボード店頭など複数のチャネルでアピールしました。

GoPro Awardsというコンテストがあり、入賞者には賞金や景品が贈られます。Webから簡単に応募でき、多数の受賞者の画像が世界に紹介されることで、GoProの魅力をますます拡散しています。

「Be a Hero=ヒーローになろう」という、カメラの機能ではなく、使う人の楽しさ、チャレンジ、感動にフォーカスしたコンセプトは、人々の感情を刺激し、キャンペーンは大成功していると言えるでしょう。

具体例2:Salesforces

(出典:Salesforces.com

セールスフォース社は、統合型マーケティングにおいても他SaaS企業のお手本となる企業です。CEOのMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏は創業当時、ほとんどの人が知らないSaaSの概念と自社のサービスの意義を、市場に知らしめる必要がありました

ベニオフ氏が初期に特に力を入れたマーケティングは「顧客の声(口コミ)」「パブリシティ(メディアの取材記事)」だと言われます。

これはオラクル社でBtoB取引に携わってきたベニオフ氏が、BtoBエンタープライズ向け市場でのブランディングには信用、権威性が重要だと理解していたからでしょう。ちなみに、2018年には『タイム』誌を買収しています。

もちろん、他にも書籍、SNS、展示会、ビルボードなどさまざまなチャネルを活用した統合型マーケティングを実践してきました。近年のCMビルボード、SNS、紙のDM(SNSでも話題の動画が流れるDM)、社会貢献の姿勢、セールスフォースの優秀な営業パーソンたちなどからも、統一感のあるメッセージを感じることができます。

具体例3:freeeの初期の統合型マーケティング

(出典:freee

freeeは、日本で成功した有数のSaaS企業として知られています。「スモールビジネスを、世界の主役に。」をかかげるfreeeは、創業当初からSMB向けの統合型マーケティングが非常に巧みでした。

中小企業、個人事業主の多くが、苦手としている会計業務、確定申告業務などで何か調べようと「確定申告 簡単」「確定申告 やり方」などで検索すると、検索結果1ページでfreeeのブログ、freeeを活用するフリーランスのブログ、動画などを見つけられました。まだコンテンツマーケティングがそれほどさかんでない時期、注目度はかなり高かったでしょう。

動画マーケティングで「5行以上の文章は全て動画にしたい」と語っているように、freeeのコンテンツはいずれも「面倒なタスクを簡単にできる」と感じさせる特徴があり、中小企業、個人事業主を惹きつけます。

現在も、CEOブログ開発者のブログバックオフィスなどのfreeeでの日々の取り組みなど面白くかつ役に立つコンテンツを幅広く提供しています。

具体例4:スポーツイベント、レースもフル活用

Red Bull( レッドブル)

(出典:RedBull.com

レッドブルは、オーストリアのレッドブル社(Red Bull GmbH)が販売するエナジードリンクで、2019年には1年間で75億缶が販売され、エナジードリンク=レッドブルと第一想起されるようになったドリンクです。

レッドブルは、「翼をさずける」という統一コンセプトで、ブログSNSテレビイベント、レッドブル・クリフダイビング・ワールドシリーズレッドブル・エアレースなど独自のスポーツイベントシリーズをタッチポイントにする統合型マーケティングで認知度を高めました。

また、複数のスポーツチームのオーナーシップ、セレブリティのエンドースメント、レコードレーベルのレッドブル・レコードなど音楽も含めた手法は従来のマスマーケティングとは路線が異なるものの、統合型マーケティングの成功例だと言われています。

(参照:fabrikbrands.com

統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)から得られるメリット

ここでは、統合型マーケティングコミュニケーションのメリットを解説します。

メリット1:費用対効果が高い

IMCは、広告、CM、ポスター、SNSなどのチャネルで表現方法は媒体によって異なるもののコンセプトは統一されており、素材も共有できます。そのため、ばらばらな戦略でコンテンツを一から制作するよりもトータルのコストを押さえられます。一方、相乗効果によってマーケティングの成果は高まります。


SNSまで含めたIMCは、費用をかけずにユーザーがブランドの情報を拡散してくれるため、さらに費用対効果がよくなるでしょう。

メリット2:CMのような効果

表現手法が異なっていても、ひとつのコンセプト、統一されたメッセージを受け取る顧客はデジャブを感じやすくなります。ザイオンス効果によってCMのような効果につながることが期待できます。そのブランドをSNSで見かけて、広告で見て、動画で見て、パブリシティでも見かけると自然にエンゲージメント(愛着)は高まるでしょう。

Gartnerの調査では、リードマネジメントが目的のIMCの場合、4つ以上のチャネルを統合したマーケティングは、単一チャネルと比較して約300%良い結果になるというデータがあります。

メリット3:顧客から信頼される

IMCは企業への信頼度を高める効果があります。どのようなチャネルでも、一貫性のあるメッセージが発せられている企業は、顧客にとって安心して信頼できる企業だからです。

また、IMCでは各部門が連携しているため顧客に届くメッセージの量が適切になります。一人の見込み客に異なるコンセプトのメッセージが過剰に届き、マイナスな印象を持たれることを避けられます。

近年は、SNSなどを介してインタラクティブなメッセージのやりとりが可能です。ここを個人にまかせると不適切な発言をして炎上することもありますが、IMCを導入し、初期にコミュニケーションを設計(SNS上のガイドライン等)しておくと、担当者が個性を出しつつ企業イメージも保つことができます。

統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)から受ける可能性のあるデメリット

デメリット1:運用は難しい

マーケティングと一口に言ってもその領域は非常に幅広く、広告、広報、展示会、デジタルマーケティングと多岐にわたります。また、それぞれ専門性が高いところも特徴です。本格的にIMCに取り組む場合、営業、サポート部門と連携する必要があります。

ご存知のとおり、どの企業にもセクショナリズムがあります。組織の縦割りをなくしてマーケティング戦略を統合するのはなかなか難しいものです。日本の場合、海外のようにマーケティング部門が社内で強力な権限をもたないのでなおさらです。そのため、現実的には限定的な活動になりがちです。

デメリット2:アイデアに制限がかかる

統合マーケティングキャンペーンに着手すると、それまである程度自由に行ってきた各領域のクリエイティブもそれに合わせる必要があります。場合によっては、そこで軋轢が起きるかもしれません。

また、統合型マーケティングコミュニケーションは、素晴らしいコンセプトが生まれた場合は非常にうまくいきますが、新しいコンセプトを出したがぱっとしない場合、全体の戦略が停滞することがあります。

デメリット3:短期で成果を出そうとするとうまくいかない

IMCの成果の多くは中長期的に見るべきものです。しかし、ビジネスマンはKPIで成果を測られます。今は転職も当たり前なので、普通のビジネスマンは短期的なマーケティング戦略がうまくいくこと、自分のPerformanceを発揮することが目標になりがちです。

中長期の目標と短期目標および成果に対する基準が明確でないと、IMCに対して担当者のモチベーションが上がらないことがあります。

以上のように、総じてIMCは実行段階でのハードルの高さがデメリットと言えるでしょう。

統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)の進め方とは?

ここでは、統合型マーケティングコミュニケーションを進めるステップを解説します。

ステップ1:目的を決める

IMCに取り組む目標を明確にしましょう。例えば、中長期的なブランディングなのか?マーケティング部門の収益への貢献(見込み客の育成)なのか? 自社のWeb、広告、広報、SNSなどのコンセプトを一つにまとめてIMC1.0を実行するのか? 企業によって目的はさまざまです。

マーケティング部門のスタッフの数、成熟度、確保できる予算も考慮して、実現可能な目標を設定することがポイントです。広報部門、営業部門などにも取り組む場合、最終権限が誰にあるかを決めることが重要です。

ステップ2:ペルソナを明確にする

自社の統合型マーケティングコミュニケーションは誰に向けてのものかを明確にします。具体的にはペルソナ(半架空の理想の見込み客プロファイル)を作成して、チームメンバー全員で共有します。

ペルソナを作成し、共有することでクリエイティブの方向性に一貫性がもたらされます。メンバーが個々の理想の顧客像をもって、バラバラなメッセージを送ることを避けられるでしょう。

BtoBであれば業界、企業規模、担当者の所属部門、役職、年齢層、抱えているであろう課題などまでペルソナ作りこみます。そうすることで、顧客がどのチャネルに接触しどのような情報を探すかがクリアになります。

ステップ3:統一コンセプトを決めて共有する

IMCを成功させるには、各チャネルでの統一されたメッセージが伝わる必要があります。もちろん、チャネルによって表現はちがいますが、共通コンセプトを決めることで各メッセージの整合性がとれるようになります。関わるメンバーがそのコンセプトを理解しておかなければいけません。

コンセプトを自社スタッフだけで作るのが難しい場合、外部のエージェンシーやコンサルタントの力を借りましょう。

ステップ4:マーケティングプロモーションを設計

統一コンセプトが決まったら、実際にコミュニケーションプランを設計していきます。ペルソナに対し、オンライン、オフラインの各チャネルでどのようなプロモーションを実施するか計画を立てます。

複数部門でIMCに取り組む場合、当初のミーティングで徹底して話し合い、目標や選択したチャネル、各プランを共有し、自分の担当しているマーケティング戦略が全体の中でどのようなパートか理解することが大切です。

例:

  • どのような広報活動をしていくか?
  • どのような動画戦略をとるか?
  • どのような広告宣伝活動をするか?
  • どのような展示会に出典するか?
  • 営業部門の販促物はどのようにすべきか?
  • SNSではどのようにメッセージを発信していくか?
  • 営業・サポートスタッフはどのような振る舞いをすべきか?

ステップ5:PDCAを回す

定期的にミーティングを実施し、各担当者が進捗を報告し共有します。マーケティングメッセージに齟齬はないか? どのようなキャンペーンが順調に成果があがり、どのような課題があるのかを話し合い改善していきます。デジタルマーケティングなど効果測定ができるものは極力数値を共有します。

ただし、マーケティングには効果測定が容易な領域と難しい領域があります。リードジェネレーションについてはデータ測定が容易になりましたが、ブランディングの成果などはいきなりすぐには表れません。いたずらにKPI至上主義にならず、中長期的に成果を出すスタンスで取り組むことが大切です。

まとめ

中小企業、スタートアップはマーケティングに予算をそれほどかけられません。すべてのチャネルを統合する以前に、すべて手がつけられないのが現実かと思います。

しかし、近年はSNS社会、シェアする時代です。ブログ、動画、SNSなどを取り入れれば何倍、何百倍に情報が拡散することも珍しくありません。以前より統合型マーケティングの成果を出しやすくなっていることはたしかです。

IMCは、統一したコンセプトを最初にきちんと決めて進めることがポイントです。実現可能な目標のもと、オンラインとオフラインのチャネルを決定し、統合型マーケティングに取り組んでいきましょう。