レプトのBtoBマーケティングのブログ|株式会社LEAPT(レプト)

IaaS、PaaS、SaaSとは?IaaS、PaaS、SaaSの定義と読み方を具体例を交えてわかりやすく解説

世界的にクラウドサービス市場は着実に成長しており、Canalysによれば、2023年第2四半期の世界のクラウドサービス支出額は16%増の724億ドルに達したとのこと。競争が激化する現代において、AIやデータ分析などの高度な技術を迅速に活用できるクラウドサービスは、ビジネスの成長に必要不可欠です。しかし、クラウドサービスは大きく3種類に分類できることはご存知でしょうか。

IaaSは、仮想化されたコンピューティングリソースを提供し、ビジネスに柔軟性と拡張性をもたらします。PaaSは開発者にアプリケーションの構築と展開を容易にし、ビジネスのイノベーションを促進。一方でSaaSは、ソフトウェアへのアクセスを簡素化し、即座の価値を提供します。

クラウドサービスの導入を検討する場合、まずはIaaS、PaaS、SaaSについて理解する必要があります。本記事では、クラウドサービス導入を検討している担当者が押さえておくべきIaaS・PaaS・SaaSの定義や活用シーン、代表的サービスなどを解説します。

クラウドサービスとは

IaaS・PaaS・SaaSを理解するためには、まずはクラウドサービスそのものの基本を押さえましょう。総務省によれば、クラウドサービスとは従来の方法とは異なり、データやソフトウェアをユーザーにネットワーク経由で提供する新しい形態のサービスです。これには主に以下の特徴があります。

(出典:総務省

  • どこからでもアクセス可能: インターネットがあれば、職場や自宅からでもアクセスできます。
  • 簡単な情報共有: ファイルやデータを簡単に共有でき、協力がスムーズに行えます。
  • データの安全性: データは安全に保管され、自動的なバックアップが行われます。

具体的な例として、多くの人が利用しているGmailやOutlookを考えてみましょう。これらのメールサービスでは、メールはGoogleやMicrosoftのサーバーに保存されるため、自分のコンピューターにメールを保存する必要はありません。インターネットに接続できる場所なら、どこからでもメールにアクセスできます。

この例のように、クラウドサービスを利用すれば、ユーザーは手元のコンピューターにデータやソフトウェアをインストールする必要がなく、ネットワーク経由でこれらを利用できます。そしてクラウドサービスは、IaaS、PaaS、SaaSの3つのカテゴリに分類されるのです。

IaaS、PaaS、SaaSとは

この項では、IaaS、PaaS、SaaSの読み方と定義についてみていきましょう。

IaaSの読み方と定義

IaaS(アイアース、イサース:インフラストラクチャ・サービス)は、インターネットを介して提供するハードウェアやインフラストラクチャを指します。具体的には、仮想マシン、ストレージ、ネットワーキングなどのテクノロジーを動かすための基盤です。

IaaSの最大のメリットは、スケーラビリティ(拡張性)です。ビジネスの成長に合わせてリソースを柔軟に調整できるため、新しいアプリケーション開発やテスト環境の構築、急激なトラフィックの増加への対応などに適しています。

たとえば、アプリケーションのユーザー数が急増したとしましょう。オンプレミスのデータセンターの場合、構築するまでに数週間はかかるため、迅速な対応は困難です。

一方、IaaSだと数分間で必要なコンピューティングやストレージなどが提供されるため、急激なアクセス数にも対応可能。その他のメリットには、従量課金モデルにより使用したリソースにのみ料金が発生する点、インフラの完全なコントロール、必要に応じての拡張や縮小、物理サーバーの購入やメンテナンスが不要などが含まれます。

その一方、IaaSの利用にはITに精通した人材が必要というデメリットがあります。ネットワークエンジニアやDevOpsエンジニア、データ管理者などがいなければ、効果的な開発は困難でしょう。

PaaSの読み方と定義

PaaS(パース:プラットフォーム・サービス)は、アプリケーションの開発や運用に必要なプラットフォームを提供するサービスです。これは開発者向けのプラットフォームで、開発者がデータの保管、管理、煩わしい運用に時間を費やすことなく、オンラインでカスタムアプリケーションを構築できるようにします。

具体的には、アプリケーションコードの管理、デプロイメント、スケーリングなどが、PaaS上でシンプルかつ迅速に実行できるため、新しいアプリケーションの素早い開発や既存アプリケーションの拡張に役立つでしょう。

PaaSを使うメリットは下記のとおりです。

  • チームで簡単にコラボレーションできる
  • ローカルドライブにアプリ構築をする必要がない
  • チーム全体で簡単にコラボレーションできる
  • バックエンドのソフトウェア維持管理が不要
  • スケーラビリティに優れている

一方で、いくつかのデメリットもあります。最も大きなデメリットは、プラットフォームが提供する環境内でしかアプリケーションのコントロールができないことでしょう。

たとえば、PaaSプラットフォームのHerokuを使用する場合、アプリケーションはHerokuの提供するリソースと制約に従わなければなりません。開発者はサーバーやミドルウェアを完全にカスタマイズする自由が制限され、PaaSのハードウェアやオペレーティングシステムに問題が発生した場合、ソフトウェアも一緒に停止する可能性があります。

その他のデメリットには以下が含まれます。

  • アプリケーションコードのみコントロールできる
  • データのセキュリティリスクが存在
  • カスタマイズが制限される

SaaSの読み方と定義

SaaS(サース:ソフトウェアサービス)は、ソフトウェアやアプリケーション自体がクラウド上で提供され、ユーザーはブラウザを通じてアクセスできるサービスです。オンプレミスとは異なり、ユーザーはコンピューターにアプリケーションをインストールする必要はありません。代表的なSaaSには、Salesforce、HubSpot、Slackがあります。

SaaSの大きなメリットは、高い利便性と効率性です。ソフトウェアのセットアップやメンテナンスをすることなく、ログインだけですぐに利用できます。その他の主なメリットは以下の通りです。

  • 効率性:ソフトウェアのメンテナンスはSaaSベンダーの管理となるため、ユーザーはソフトウェア管理の負担から解放されます。
  • IT部門不要:セットアップと管理のために専用のIT部門を必要としないため、中小企業でも容易に導入できます。
  • シンプルな契約:通常SaaSの契約はベンダーの公式サイトで数分で終了します。
  • リソース効率:SaaSはローカルリソースに依存しないため、個々のコンピューターシステムにかかる負担が軽減されます。

一方で、SaaS製品が動作するクラウドベースのインフラをコントロールできないため、プロバイダに障害が発生した場合、業務が停止する可能性があります。たとえば、2023年1月マイクロソフトのWANに大規模障害が発生した影響で、ユーザーはAzureやMicrosoft365などにアクセスできなくなりました。

また、既存のツールと互換性がなかったり、SaaS側で情報漏えいが発生した場合、自社情報が流出したりするリスクもあります。

IaaS、PaaS、SaaSの特徴のまとめ

IaaS、PaaS、SaaSの特徴を表でまとめました。

IaaS、PaaS、SaaSの担う責任範囲

IaaS、PaaS、SaaSはベンダーが管理する範囲とユーザーが管理する範囲が異なります。以下が、各クラウドサービスの責任範囲です。

SaaS:ベンダーがサーバーからソフトウェアまで、すべてを管理します。ユーザーはアプリケーションの利用に集中し、インフラストラクチャやソフトウェアの運用について心配する必要はありません。

PaaS: ユーザーがソフトウェアの開発と管理を担当し、ベンダーはそれ以外のサーバーやランタイム環境などの管理を行います。ユーザーはソフトウェアの開発に注力できます。

IaaS :ベンダーはサーバーのみを管理し、ユーザーはその上でインフラストラクチャや仮想マシン、オペレーティングシステム、アプリケーションなどの管理を行います。これにより、ユーザーは柔軟なコントロールとカスタマイズが可能です。

IaaSではユーザーがハードウェアとプラットフォームの多くを管理し、SaaSではベンダーがほぼすべてを管理します。 PaaSはその中間に位置し、開発者がアプリケーションの管理に焦点を当てることができます。

IaaS、PaaS、SaaSの活用シーン

クラウドサービスは、ビジネスのさまざまな側面で活用されており、IaaS、PaaS、SaaSの最適な活用シーンはそれぞれで異なります。以下では、それぞれのサービスがどのように活用されているかを詳しく見ていきます。

IaaSの活用シーン

IaaSは、インフラストラクチャ(ハードウェア)を提供するサービスです。ユーザーが仮想マシン、ストレージ、ネットワーキングなどのリソースを管理できるため、主に以下のシーンで活用されます。

  • 機械学習モデルの構築

IaaSベンダーが提供するインフラストラクチャは、高い処理能力と拡張性を提供しており、大量のデータを迅速に処理し、高精度の機械学習モデルを構築するのに適しています。

  • 費用対効果の最適化

IaaSを使用することで、ペタバイト単位の大容量データを迅速に処理でき、物理的なデータセンターの購入やメンテナンスの必要がありません。通常、IaaSは従量課金モデルを採用しており、実際に使用したリソースに対してのみ支払うため、費用対効果が向上します。

  • スケーラビリティ

スケーラビリティでIaaSを活用する企業は多いです。たとえば、新型コロナ感染症の影響でNetflixやSnapchatなどの多くのサービスは、急激に増加するトラフィックに対応するため、IaaSで迅速にスケーリングをしています。

  • ウェブホスティング

ウェブサイトやアプリケーションのホスティングにもIaaSが活用されます。トラフィックの増減に応じて、仮想サーバーのスケールアップやダウンが可能で、高い可用性を提供できます。

これらの活用シーンからわかるように、IaaSは大規模データ処理が必要な大企業や急成長中の企業、ビッグデータ分析やAI開発などデータを中心に取り扱う企業などに適しています。

PaaSの活用シーン

PaaSには、コンピューティングやストレージ、データベースなどアプリケーションの開発・テスト・デプロイ・管理・更新に必要な機能がそろっているため、さまざまなシーンで活用されます。代表的な活用シーンは下記のとおりです。

  • アプリケーションの高速開発

PaaSはフレームワークや事前にコーディングされたコンポーネントを提供し、アプリケーション開発を迅速かつ効率的に行うためのプラットフォームを提供します。

これにより、アプリケーションの開発にかかる時間を短縮できます。また、コンポーネントの活用により、特定のスキルを持つ人材が不在でも新しい開発スキルの獲得が可能です。さらに、インターネットを通じた開発により、地理的に分散したチームでも効果的なコラボレーションを実現できます。

  • データ分析と探索

PaaSの多くは高度なビジネスインテリジェンスを提供しており、大量のデータ分析と探索が可能です。分析結果は視覚的な図表で表示され、効果的に洞察とパターンを発見し、データ駆動の意思決定を行うのに役立ちます。

  • IoT(モノのインターネット)プロジェクト

PaaSは、IoTプロジェクトに必要なデバイス接続、データ収集、データ解析、リアルタイム応答の機能を提供します。これにより、IoTソリューションを迅速に構築および展開できます。

  • 追加機能の実装

PaaSベンダーは、さまざまな追加機能を提供しています。たとえば、ユーザー認証を実現するディレクトリ管理、データベースの定期的なバックアップ、スケジューリングによるレポート生成などがあります。高度な開発ツールを手頃な価格で提供する点が、PaaSの魅力のひとつです。

PaaSは、即座にフレームワークや高度な機能を活用できるため、ITリソースや技術スキルに制約のあるスタートアップや中小企業、新しい機能やサービスを素早く展開する必要がある企業に特に適しています。

SaaSの活用シーン

SaaSは、既存のアプリケーションやサービスに簡単にアクセスできるため、どこからでもデータやツールに瞬時に接続でき、業務を効率的に進められます。SaaSの提供範囲は、顧客管理システム、チャットツール、オフィススイート、Eコマース、データ分析など多岐にわたります。

企業は必要な機能を必要な期間だけ利用できるため、業務の効率化、社内デジタルトランスフォーメーション(DX)、短期プロジェクトなどのシーンでSaaSを活用することが一般的です。一方で、既存のアプリケーションを利用する性質上、カスタマイズ性は低いです。

IaaS、PaaS、SaaSの具体的な代表例

具体的なイメージができるように、ここからはIaaS・PaaS・SaaSの代表例をご紹介します。

IaaSの代表例

以下はIaaSを理解するうえで重要な用語です。

  • 仮想マシン:仮想化技術を使用して作成される仮想のコンピュータ。IaaS上で複数の仮想マシンを作成・実行できる。
  • スケーラビリティ:インフラストラクチャのリソースを必要に応じて増減できる機能。IaaSはスケーラビリティが高いのが特徴。
  • ネットワーキング:仮想マシン間やインフラストラクチャとの通信を可能にするネットワーク設定と構成。
  • ストレージ:データの永続的な保存を可能にするためのストレージリソース。ブロック、ファイル、オブジェクトストレージなどがある。
  • リージョン :IaaSプロバイダーのデータセンターが配置されている地理的エリア。異なるリージョン間で冗長性や災害復旧を実現する。
  • アベイラビリティゾーン:同じリージョン内で障害に対する冗長性を提供する複数のデータセンターゾーン。

Google Compute Engine

(出典:Google

Google Compute Engine(GCE)は、Google Cloud Platform(GCP)のクラウドコンピューティングサービスで、柔軟でスケーラブルな仮想マシンを提供します。さまざまな用途に合わせられるように、以下5種類の仮想マシンタイプを提供しており、CPUとメモリのリソースを最適化できます。

  • スケールアウトワークロード(T2A、T2D):最もコストを抑えられる仮想マシン。x86またはArmベースのVMから選択可能。
  • 汎用ワークロード(C3、E2、N2、N2D、N1):価格とパフォーマンスのバランスに優れた仮想マシン。データベースやアプリケーションなどの幅広い開発に対応。
  • 超高メモリ(M2、M1):メモリ容量が最も大きい仮想マシンで、単一のインスタンスに最大12テラバイトのメモリを搭載。大規模なインメモリデータベースやインメモリ データ分析などに向いている。
  • コンピューティング負荷の高いワークロード(C2、C2D):1コア当たりのパフォーマンスが最も高い。ハイ パフォーマンス コンピューティング(HPC)、ゲームサーバー、レイテンシの影響を受けやすい APIなどに向いている。
  • 特に要求の厳しいアプリケーションとワークロード(A2):NVIDIA Ampere A100 Tensor Core GPU を基盤とし、旧世代の GPU と比較して、GPU 1 個あたり最大 20 倍のコンピューティング パフォーマンスを誇る。

GCEは、高い可用性と信頼性を備えており、Googleの世界規模のデータセンターネットワークを活用して、サービスの中断を最小限に抑えます。ユーザーはカスタムイメージを使用し、プリエンプティブVMを活用してコスト効率の高い計算リソースを確保できます。

また、トラフィックの増減に応じて、仮想マシンの数を自動的に調整する「オートスケーリング機能」や特定のニーズに合致する仮想マシンの作成など、豊富な機能を提供しているのも特徴です。GCEはGoogle Cloudプラットフォームの一部であり、既存のGoogle Cloudサービスとの統合がスムーズなため、すでにGoogle Cloudプラットフォームを利用している企業に適しています。

また、高負荷な計算タスクやデータ処理を実行するため、高性能なプロセッサーやGPUを提供している点を踏まえると、機械学習や大規模データ分析が必要な企業にも向いているでしょう。

Amazon EC2

(出典:aws

Amazon EC2は、Amazon Web Services(AWS)の提供するクラウドコンピューティングサービスのひとつです。柔軟性に富んでおり、必要に応じてリソースをスケーリングできるため、アプリケーションの需要に迅速に対応できます。

また、異なる用途に合わせた多彩なインスタンス(仮想マシン)タイプを提供し、ユーザーは自身の要件に最適な設定を選択できます。支払いモデルも多様で、従量課金、コミット、ボリュームディスカウントなどから最適な料金プランを選ぶことが可能です。

Amazon EC2はAWSのエコシステムの一部であるため、多くのAWSサービスと連携し、データベース、ストレージ、ネットワーキング、AI、IoTなど他のサービスと組み合わせて多彩なアプリケーションを構築できます。

EC2はAPIでコントロールされる性質上、開発者は任意の数のサーバーインスタンスを同時に委託して、迅速に容量を増減できるのが特徴です。仮想マシンを社内に置くのと同じくらい簡単かつシンプルに運用できるでしょう。

さまざまなオペレーティングシステム(WindowsやLinuxなど)やソフトウェアが事前に設定されたAmazonマシンイメージ(AMI)が用意されています。これにより、異なるソフトウェア要件に合わせた選択ができます。

さらに、必要なときにインスタンスを自動的に増減させるAmazon EC2 Auto Scaling、複数のEC2インスタンスのコンピューティング性能を最適化するAmazon EC2フリートなど、コストとパフォーマンスを最適化するためのツールも豊富です。

これらの特徴を踏まえると、既存のAWSサービスを使用している企業や将来的に多くの追加機能を実装する可能性がある企業、豊富な料金プランを求める企業などに向いています。

PaaSの代表例

数あるPaaSの中でも、AWS(Amazon Web Services)、Azure(Microsoft Azure)、GCP(Google Cloud Platform)は代表的なプラットフォームとみなされています。ここからは、それぞれのサービスの特徴をご紹介します。

Amazon Web Services(AWS)

(出典:AWS

AWSは、Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービスです。コンピューティングや機械学習、ロボティクス、IoT、ビジネスアプリケーションなどの200を超えるツールが提供されており、必要なときに必要なだけ最先端のツールを活用できます。クラウドサービスの幅広さはトップクラスであり、幅広いビジネスニーズに対応可能です。

また、APIを経由してシステムと連携するマイクロサービスアーキテクチャを採用することで、連携先のシステムが異なるOSやデータベースを使用していたとしても、容易にツールを利用できます。さらに、バージョンアップや機能改修による影響を最小限に抑えられるため、障害が発生することはほぼありません。

初期費用無料、かつ、利用料に応じた従量課金のため、スモールスタートや撤退コストの最小化を実現。また、サービス開始から129回以上の値下げを実施しているのも大きな強みです。

Microsoft Azure

(出典:Microsoft

Microsoft Azureは、最大30日間無料で利用できるクラウドコンピューティングサービスです。AWSと同様、多くの国にリージョンとアベイラビリティゾーンを保有しているため、システムに障害が発生しても、迅速に復旧します。また、Microsoft製品との統合を得意とし、特にPower BI、Azure Machine Learningなどのデータ分析とAIサービスに強みがあります。たとえば、Azure OpenAI Serviceでは大規模な生成AIモデルを活用して、編集や要約、質問への回答などをするAIの開発が可能です。

さらに、Azureは容易にIoTデバイスと連携できます。たとえば、Azure IoT Hubを使用すると、コードを書くことなく、工場や製造プラント内のセンサーや機器からのデータをAzure IoT Hubに送信し、デバイス状態を把握できるようになります。

また、高いセキュリティもMicrosoft Azureの特徴です。Microsoft社はサイバーセキュリティの研究と開発に年間10億ドルを超える投資を行っている、かつ、データ セキュリティとプライバシーを専門とする 3500 人を超えるセキュリティ エキスパートが在籍しているため、安全性が極めて高いサービスだといえます。

これらの特徴を考慮すると、AzureはMicrosoft社のテクノロジーを積極的に利用する企業、AIやIoTプロジェクトを推進する企業などに向いています。

Google Cloud Platform(GCP)

(出典:Google Cloud

GCPは、コスト管理からデータ管理、ウェブ上でのウェブやビデオの配信、AIや機械学習ツールに至るまで、あらゆることを行うための一連のコンピューティングサービスを提供するクラウドベンダーです。

特に、生成AIとデータ分析に強みを持ちます。Googleのデータと機械学習の専門知識を活用し、BigQueryやTensorFlowなどのツールを提供しており、高度なデータ分析や機械学習プロジェクトのサポートが可能です。

リージョン数が他の2つに比べて少ないですが、Google検索やGmail、YouTubeなどと同じ高性能なネットワークの活用により、高速かつ信頼性の高いパフォーマンスを実現しています。また、Google社と同じセキュリティ機能も利用できるため、安全な運用ができるでしょう。

SaaSの代表例

SaaSの種類は多々ある中、今回はBtoB企業が導入を検討すべきCRM製品2つとチャットツールを1つご紹介します。

Salesforce

(出典:Salesforce

SalesforceはクラウドベースのCRMソフトウェアで、主要なプロダクトである「Customer 360」は、営業、サービス、マーケティングなどが収集する顧客情報を統合し、円滑な共有ができるようにします。

Salesforceは、Sales CloudやMarketing Cloudなど各部門の業務を効率化するさまざまな製品を提供しており、自社ニーズに合わせた選択が可能。たとえばSales Cloudは、過去のリードとのコミュニケーションやリードの活動など商談に必要な情報をクラウド上で確認し、高精度のAIによって最適な商談タイミングの通知や、自動生成されたメールや顧客情報の要約を提供します。

また、外部ツールや独自開発ツールと連携し、業界やビジネスプロセスに合わせて柔軟にカスタマイズできます。ただし、カスタマイズにはITに精通した人材が必要です。適した人材がいなければ、開発に多くの時間がかかってしまうでしょう。

HubSpot

(出典:HubSpot

HubSpotは、Salesforceと同様に高い評価を得ているクラウドベースのCRMプラットフォームです。基本的な仕組みもSalesforceと類似しており、CRMプラットフォームを基幹に、Marketing Hub、Sales Hub、Service Hubなど各部門の業務を効率化するソフトウェアが搭載されています。

ユーザーは、CRMとMarketing Hub、CRMとMarketing・Sales Hubのように事業にあった組み合わせで製品を利用できます。

それでは、HubSpotとSalesforceにはどのような違いがあるのでしょうか。大きな違いは、HubSpotはインバウンドマーケティングに重点を置いているのに対し、Salesforceはセールスに注力している点です。なおインバウンドマーケティングとは、顧客にとって最適なタイミングで、最適な情報を届けることで、顧客からブランドを選んでもらうようにする手法を示します。

また、HubSpotは1つのコードベースで開発されている性質上、操作性が一貫しています。ITに慣れていない方でも簡単に使いこなせるため、早い段階での社内への定着を見込めます。初めてCRMを導入する企業やITに精通していない中小企業、本格的にデジタルマーケティングに取り組む企業などにおすすめです。

Slack

(出典:Slack

Slackは、ビジネス向けのコミュニケーションプラットフォームで、リアルタイムでのコラボレーションとコミュニケーションをサポートします。チームメンバーはテキストベースのチャットを通じて、個別またはグループチャットでコミュニケーションを行えます。

Slackは、多くのサードパーティーアプリケーションやサービスと統合でき、Google ドライブ、GitHub、Trelloなどと連携し、情報の一元管理を実現。チャット内でファイルを共有し、過去のメッセージやファイルも簡単に検索できます。

また、Slackはカスタマイズ性が高いです。ユーザーはテーマやカスタム絵文字を調整できます。さらにワークフロービルダーを使えば、クリック&ドロップ操作で簡単に自動化の構築が可能です。

Slackは単なるチャットツールではなく、プロジェクト管理、リモートワーク、チームコラボレーションなど、さまざまなビジネスシーンで使用され、生産性向上と効率的なコラボレーションを促進する強力なツールです。

まとめ

競争の激化や多様な働き方が進む現代において、インターネットを介して必要なときに、必要な機能のみを利用できるクラウドサービスは、必要不可欠といっても過言ではありません。

多くのビジネスリーダーがクラウドサービス導入の必要性を認識しているものの、「どこから何を始めればいいのか」と悩む方は多いでしょう。この問いに対する答えは、企業によって異なります。ただ、まずはIaaS、PaaS、SaaSの特徴や責任範囲などを理解することが必要です。幸いなことに、どのクラウドサービスも従量課金制であり、スモールスタートができるため、恐れることなく積極的に行動に移していただけると幸いです。