Googleの検索回数は2016年に年間2兆回を超え、なおも増え続けていると見込まれています。検索で情報を探す人が増える中で、ほとんどの企業にとって、検索エンジンからの見込み客獲得は非常に重要です。検索エンジンの重要性はBtoB企業でも同様で、特に非常にニッチな製品サービスを扱っている場合は、露出するための媒体やメディアなどが非常に限定的になるため、重要度がさらに増します。
とは言いつつも、なかなか検索エンジン経由で見込み客を獲得しているBtoB企業は少ないものです。SaaS企業であれば、会社自体が比較的若く、マーケティングの熟練経験者が少ないこともあり、検索エンジンがどのように変化してきているか、今後どのような方向に向かっていくかを理解されている方も少ないのではないかと思います。
検索エンジンは特定の企業が開発し、実は明確な指針のもと運用されているものです。そのため、効率よく見込み客を獲得するには、検索エンジンのルールや違いを理解したうえで、対策を考える必要があります。この記事では、以下について詳しく解説します。
検索エンジンの違いを理解することで、検索エンジンで上位表示させるための施策(SEO)を、より効果的に行えるようになるでしょう。ぜひ最後までお読みください。
検索エンジンとは、ウェブ検索を行うためのソフトウェアシステムで、テキストによるウェブ検索クエリで指定された特定の情報を体系的に検索します。
また、検索結果は一般的に、検索エンジン結果ページ(SERPs)と呼ばれる検索結果の列で表示され、情報はウェブページへのリンク、画像、ビデオ、インフォグラフィックス、記事、研究論文、その他の種類のファイルなどが混在していることがあります。
インターネットユーザーの多くが、必要な情報を探すために検索エンジンを利用します。そして、多くのユーザーに自社の検索エンジンを利用してもらえれば、コンテンツを制作している企業は検索がされる限り、半永久的に有料広告に頼ることなく安定的な収益を得るチャンスを作ることができます。
そのため、自社に関連する情報が検索結果ページ上で表示されることは有効な戦術であり、検索結果上でのシェアを獲得することを目指し、多くの企業が激しい競争を繰り広げています。
現在、世界でも日本でも圧倒的に多く使われている検索エンジンが「Google」です。インターネットに関する統計を確認できるサイト「statcounter」によれば、2020年12月〜2021年12月の期間の世界全体におけるGoogleのシェアは91.94%に達します。
また、同時期の日本における検索エンジンのシェアは、下図の通りです。
2021年12月時点でのシェア上位4つの検索エンジンは、以下の通りです。
このように、日本でもGoogleが飛び抜けて高いシェアを獲得しています。
検索エンジンが発展してきた背景には、インターネット上の情報が爆発的に増えている状況があります。ユーザーが膨大な情報の中から必要なものを探し出してアクセスするために、効率のよい方法が求められたのです。
(当時のYahoo!のトップ画面「ディレクトリ型」 引用:Internet Archive)
検索エンジンが発展するきっかけとなったのが、1994年に開発された「Yahoo!」です。人が一つひとつWebサイトの概要を入力していく「ディレクトリ型」を採用することで、ユーザーに正確な情報を届けることが可能になりました。しかし「ディレクトリ型」では人が入力する手間がかかるため、加速度的に増えていく情報量にいずれ対処できなくなるのでは、という課題がありました。
そして、1997年に開発されたのが「Google」です。Googleが採用したのは、「ディレクトリ型」ではなく「ロボット型」でした。「ロボット型」は、「クローラ」と呼ばれるプログラムがWebの情報を自動的に整理する仕組みのため、人手が不要な点に強みがあります。
当初は「プログラムは有益な情報を見分けられないのでは? 」といった意見もありましたが、Googleは改良を続けることで、検索の精度をどんどん向上させていきました。現在ではGoogleの有用さが世界的に認められ、世界で最も使われる検索エンジンとなっています。
日本におけるシェア上位4つの検索エンジンを、それぞれ詳しく紹介します。
運営者:Google
サービス開始:1997年
Googleは、世界で最も多く利用されている検索エンジンです。トップページからは広告が排除され、リンクも絞り込まれています。検索ボックスが大きく配置されただけのシンプルなデザインです。
Googleのユーザーは非常に多いため、検索結果上位に表示されることには、大きな集客効果があります。そのため多くの企業が上位表示を目指して、さまざまな施策が行われているのが現状です。
そうした動きに対してGoogleは「Googleが掲げる10の事実」を表明しています。Googleは「ユーザーにとって使いやすくなること」を追求しており、ユーザーの利益にならないページが上位に表示されないように、検索アルゴリズムの改良を続けています。
また、Googleは検索エンジン以外にも、世界的にユーザーが多いサービスを多数運営しています。たとえば以下の通りです。
Googleの検索エンジンは、これらのサービスとも一部連携しています。豊富なサービスにアクセスしやすい点も、Googleの強みです。
運営者:Yahoo!JAPAN(日本における運営者)
サービス開始:1997年
Yahoo!は、日本ではGoogleに次いで多く利用されている検索エンジンです。2010年12月からは、検索エンジンの内部では、Googleの検索アルゴリズムが使用されています。そのため、GoogleとYahoo!の検索結果はほぼ同じです。
Yahoo!のトップページは、さまざまな情報を集めたポータルサイトです。Yahoo!の情報やサービスの例としては、たとえば以下があります。
いずれも日本においては、多くのユーザーに利用されているサービスです。ポータルサイトとしてのYahoo!の人気が高いこともあり、検索エンジンとしてのYahoo!も高いシェアを維持しています。また、高い比率で部分的に「ディレクトリ型」が残っていることがわかります。
運営者:Microsoft
サービス開始:2009年
Bingは「利用者の意思決定を支援する」というコンセプトが掲げられた検索エンジンです。Windowsのパソコンに搭載されたブラウザ「Microsoft Edge」において、デフォルトで設定されています。Bingは地域別ではアメリカでのシェアが比較的高く、日本でもGoogleとYahoo!に次ぐシェアがあります。
Bingの検索技術は、独自に開発されたものです。そのため、GoogleやYahoo!とは違った検索結果が表示されます。ちなみにアメリカにおいては、Yahoo!はBingの検索技術を使用しています。
Bingは検索結果での動画の表示方法に特徴があります。検索結果に表示された動画のサムネイルにマウスポインタを重ねると、動画のプレビューがポップアップ画面で再生されるのです。BingにはひとつのYouTubeチャンネル内の動画が複数表示される機能もあり、動画を検索する際に使いやすい検索エンジンだといえるでしょう。
運営者:DuckDuckGo
サービス開始:2008年
DuckDuckGoは、個人情報を保護することに注力している検索エンジンです。ユーザーの個人情報を保存せず、閲覧状況を追跡しないことをユーザーに約束しています。そのため、検索におけるプライバシーを重視するユーザーから支持を集めています。DuckDuckGoは独自の検索技術を使いつつ、Yahoo!やBingなど多数のサービスからの情報を利用しているのが特徴です。
2013年、DuckDuckGoの利用者が急増する出来事が起こりました。アメリカの国家安全保障局(NSA)がGoogleやYahoo!、MicrosoftなどのWebサービスから、個人情報を収集していたことが、当時NSA勤務者だったEdward Joseph Snowden(エドワード・スノーデン)氏によって暴露されたのです。
この出来事の後も「個人情報の収集はどの程度まで許されるか」は、インターネット全体で大きなテーマとなっています。そんな中で、DuckDuckGoは「個人情報を収集しない」という姿勢が明確です。検索エンジン市場におけるシェアはあまり大きくありませんが、自分の個人情報が利用されることを嫌うユーザーを中心に利用されています。
BtoB企業にとって、検索エンジンの違いによって、施策の打ち手などが微妙に異なってくることは明確に理解することが必要です。例えば、DuckDuckGoは検索データを収集していないため、当然ながら検索者はリターゲティングなどの広告の標的にされることはありません。
個人情報に対して慎重な姿勢の方が見込み客で、DuckDuckGoやシークレットウィンドウを利用するような傾向がある場合は、そのような施策が通じないことも知っておくべきです。
ここでは前章で紹介した日本でのシェア上位4つの検索エンジン(Google、Yahoo!、Bing、DuckDuckGo)について、違いを3つ紹介します。
4つの検索エンジンのうち、DuckDuckGoの検索アルゴリズムのみが、外部サービスの情報ソースを使用しています。DuckDuckGoが使用している情報ソースの例は、以下の通りです。
DuckDuckGoでは、これらを含む多数の情報ソースと、独自のクローラである「DuckDuckBot」で集めた情報に基づいて検索順位を決定しています。それに対してGoogleやYahoo!、Bingでは、外部の情報ソースではなく、独自のクローラからの情報を主に使用しています。
企業の情報収集に例えるならば、GoogleやYahoo!、Bingは、自社の営業マンが集めた情報のみを頼りにしている状態です。それに対してDuckDuckGoでは、政府機関やシンクタンクが公表している情報も参考にしているといえるでしょう。
情報収集能力が高い営業マンを多数抱えている大企業であれば、外部からの情報は必要としないかもしれません。しかし、営業マンをあまり雇えない小さい企業にとっては、外部の情報をうまく活用する方が賢い戦略だといえます。
DuckDuckGoはGoogleなどとは規模に大きな差があるため、検索の質を高めるためには、外部サービスからの情報を利用する必要があるのです。
前述した通り、Yahoo!はGoogleの検索アルゴリズムを採用しています。しかし、Yahoo!は検索結果に自社サービスを掲載するため、Googleの検索結果とは違いが生じるのです。
(引用画像:Yahoo!ショッピング)
たとえば「会計ソフト」とYahoo!で検索してみます。すると検索結果の上位には、「Yahoo!ショッピング」内で「会計ソフト」と検索したページが表示されます。ユーザーがそのページをクリックすると、スムーズにYahoo!ショッピングでの購入手続きに進むことが可能です。
さらに検索順位5位の位置には「Yahoo!知恵袋」内の「会計ソフトに関するQ&A」のページが表示されました。Yahoo!ショッピングやYahoo!知恵袋は、Googleでは表示されないページです。
このようにYahoo!の検索アルゴリズムは、Yahoo!関連サービスを積極的に表示するという特徴があります。Googleの検索アルゴリズムとまったく同じではないので、留意しておきましょう。
BingはSNSからの流入を重視する点が、Googleとは異なります。いずれの検索エンジンも、検索アルゴリズムそのものは公開されていません。ただし、GoogleとBingでは「ウェブマスター向けガイドライン」が公開されており、どのようなコンテンツがアルゴリズムに評価されるかが明らかにされています。
ウェブマスターガイドラインを確認すると、BingにおいてSNSからの自然な流入が多いコンテンツは、検索エンジンから高い評価を受けることが読み取れます。一方で、GoogleではSNSからの流入は評価されません。この点は、GoogleとBingの大きな違いといえるでしょう。
各検索エンジンの検索結果の違いを、実際に検索して確認しました。使用したキーワードは「人材教育 ソフトウェア」です。端末によって表示のされ方が異なるので、パソコンとスマートフォンに分けて、結果を紹介します。
表示される広告ページ数に大きな違いがありました。GoogleとYahoo!は広告が多いので、検索直後の画面では、ほぼ広告ページしか見えません。
(引用画像:Google)
広告が多いと、SEOによって自社のページが「人材教育 ソフトウェア」のキーワードで1位を獲得できたとしても、ユーザーには発見してもらいにくい可能性があります。ユーザーが画面をスクロールしない限り、自然検索で上位のページは表示されないからです。
Bingでは広告は自然検索枠の上下に1件ずつのみでした。そして、DuckDuckGoでは広告は表示されませんでした。他のキーワードでも検索した結果、DuckDuckGoでは検索結果画面に広告は表示されないことが確認できました。
自然検索で表示されるページはGoogleとYahoo!はほぼ同じでしたが、BingやDuckDuckGoと比べると、それぞれ異なる検索結果でした。
スマートフォンでも、GoogleとYahoo!では広告が多く表示されました。ただしどちらも広告数は、パソコンよりも少し減っています。スマートフォンは画面が小さいため、ユーザーが自然検索枠にたどり着くためには、パソコンよりも多くのスクロールが必要です。
(引用画像:Google)
BingとDuckDuckGoでは、広告は1件もありませんでした。Bingはスマートフォンでは広告を表示しないわけではなく、検索するキーワードによっては広告が表示されます。
GoogleとYahoo!、DuckDuckGoでは、パソコンとスマートフォンで、検索結果には少しの違いしかありませんでした。その一方で、Bingでは大きく異なっています。たとえば、パソコンでは1位だったリクナビのページが、スマートフォンでは5位まで落ちていたのです。
このような検索エンジンによる検索結果の違いは、キーワードによって傾向が異なる可能性があります。自社に関連するキーワードで、実際に検索してみるとよいでしょう。
検索エンジンのシェアは、世界全体でも日本でもGoogleのシェアが圧倒的に高いのが現状です。日本では、Yahoo!の検索エンジンがGoogleのアルゴリズムを利用している特異な点も見逃せません。SEOを考える際には、まずはGoogleの検索エンジンを理解し、アルゴリズムへの対策を優先して行いましょう。
ただしBtoBの企業の業種によっては、ユーザーが極端にGoogleに偏るSaaS企業があったり、伝統的な製造業や人事担当者などであればYahoo!の利用割合が高くなったりします。これらの見込み客の購買行動を正確に理解することがまず最初で、その後に検索エンジンの違いを理解するという順番を忘れないでください。