「自社でもABテストを行いたいけれど、どうやればよいのかわからない」とお悩みではないでしょうか。
ABテストを行うことで、Webマーケティングの成果を高める大きな効果が期待できます。インターネット利用率が83.4%に達し、多くの企業活動がWebを通して行われる現在では、その重要さは増しているといえます。
しかし、マーケティング熟練者が少ないBtoB企業やSaaS企業では、ABテストが実施できていないケースが少なくありません。Eメールやランディングページなどの改善が思うように進められず、お困りの方も多いでしょう。
そこで本記事では、ABテストを実施したいと考えているBtoB企業やSaaS企業のマーケティング担当者に向けて、以下の内容を解説します。
本記事を読めば、多くの人がやりがちな失敗を避けつつ、ABテストを使いこなすための方法を理解できるでしょう。ぜひ最後までお読みください。
(ABテスト)
ABテストとは、スプリットテストとも呼ばれ、2つ以上のバージョンの変数(Webページ、ページ要素など)を異なるセグメントの訪問者に同時に表示して、どのバージョンが最大の影響を残し、ビジネス指標を推進するかを決定する無作為化実験プロセスを指します。(引用元:VMO)
ABテストでは一般的に、オリジナルのバージョンが「A」、オリジナルに変更を加えたバージョンが「B」と呼ばれます。全体の50%の人にA、残り50%の人にBを見せて、どちらがより成果を得られるのかを確認するのです。
ABテストが重要である背景には、「個人の感覚ではなくデータに基づいて判断する」という目的があります。
Eメールやランディングページはさまざまな要素から構成されており、どの要素がユーザーの行動にどんな影響を与えたのか、見極めるのは困難です。そのため、Eメールやランディングページをどう改善するかは、個人的な感覚で判断されてしまうリスクが常にあります。
もしかしたら、まだABテストを行っていないBtoB企業やSaaS企業の方であれば、思い当たる部分があるかもしれません。
一方ABテストでは、AとBのどちらが優れているのかを、客観的なデータから判断します。具体的には、2つのバージョンを多数のユーザーに見せて、以下のようなデータを比較します。
これらを確認することで、個人の感覚を排除しつつ「どちらがどれだけ良い結果を得られたのか」を正確に把握できるのです。
ABテストは、あらゆるものを対象として行えます。その中でもよくテスト対象とされるのが、以下の4つです。
これらについて、順番に解説します。
Eメールでユーザーの行動を促せれば、売上げアップなどの成果につながります。Eメールでは、以下のような要素についてのABテストが有効です。
メールマガジンを一斉送信する場合、保有するメールアドレスが多いほど、ABテストによる改善の効果が大きくなります。Eメールをきっかけとした受注が多いBtoB企業やSaaS企業であれば、優先してABテストを行いましょう。
商品の販売などに使われるランディングページは売上げに直結するため、ABテストがとくに重要です。ランディングページでは、たとえば以下の要素についてABテストが行われます。
ランディングページは、ABテストを行うべき要素がたくさんあります。焦らずに長い期間をかけて、成約率を高めていく意識を持っておくとよいでしょう。
Webサイトのトップページを改善する際にも、ABテストが使えます。
Googleなどで自社名を検索すれば、自社のWebサイトが上位に表示される場合が多いでしょう。せっかくユーザーが検索結果からWebサイトを訪れてくれたとしても、トップページの質が低ければ、すぐに離脱されてしまいかねません。
ユーザーが探している情報をすぐに見つけられて、他のページへとスムーズに移動できることが、トップページには求められます。それを実現するには、ABテストを繰り返して、ユーザーが迷わずに使えるように改善していくことが欠かせないのです。
(入力フォームの例)
入力フォームについてもABテストがよく行われます。「商品の購入」や「資料請求」などのユーザー行動を促す、重要な部分だからです。
入力フォームでは、以下のような箇所についてABテストが実施されます。
入力フォームを改善するだけで、成約率が大幅にアップすることは珍しくありません。そして、データに基づいて適切な改善を行うには、ABテストが最適なのです。
「ABテストを行わなければ」という思いが強すぎると、あまり意味のないテストを行ってしまう場合があります。よくある失敗を紹介するので、自社が当てはまっていないかチェックしてみてください。
ABテストで有効な結果を得るためには、十分なサンプル数が必要です。少数のユーザーのみを対象にしたテストでは、誤差が大きすぎてデータを信頼できないからです。
たとえば、Eメールアドレスのリストを50人分しか保有していない状態であれば、ABテストを行ってもほとんど意味がないでしょう。むしろ誤差が大きいデータを信じることで、誤った判断をする原因になってしまいます。
統計学に基づいて計算すると、サンプルが400あれば誤差は約5%以内に抑えられます。まずは各バージョンに400、つまり全体で400 × 2 = 800程度のサンプルを集めることを目指すとよいでしょう。もっと精度を高めるためには、さらに多くのサンプルが必要です。
小規模なBtoB企業やSaaS企業では、サンプル数が不足した状態でABテストを行ってしまいやすいので注意しましょう。
(ABテストと多変量テスト)
一般的にABテストでは、AとBの2つのバージョンを比較します。一方、もっと多くのバージョンを同時にテストする方法もあり、「多変量テスト」と呼ばれます。
多変量テストには「短期間に多くのバージョンをテストできる」というメリットがあるのですが、ABテストを使いこなせていない状態で取り組むのはおすすめしません。あらゆる手順がABテストよりも複雑になるため、慣れていないと正確に実施するのは難しいからです。
多変量テストでは、多数あるバージョンのそれぞれについてサンプル数を確保するため、全体としてより多くのサンプルが必要となります。その意味でも、ABテストを行ったことのない企業には向いていません。
また、ABテストを行おうと準備を進めていたのに、知らぬ間に多変量テストになってしまうこともよく起こります。「バージョンは2つしか作らない」ことを徹底して、まずはABテストをしっかり行いましょう。
ABテストが成功すれば成果をどれだけ改善できそうなのか、数字を事前に予想しておくことも大切です。その数字が小さいのであれば、工数をかけてABテストに取り組む価値はないかもしれません。
たとえば、メールアドレス獲得を目的としたランディングページを改善するとします。そのランディングページへのアクセスが少なければ、ABテストによって獲得率を数%改善したとしても、獲得件数は月に数件しか変わらない場合があります。
あまり成果が得られそうになければ、わざわざランディングページのABテストを行う必要はありません。それよりも、ランディングページへのアクセスを増やすことに注力すべきでしょう。
ABテストは成果を得るための手段に過ぎないので、それ自体が目的となってはいけません。ABテストを行う際には、どれだけの成果が見込めそうかを事前に計算しましょう。
テスト対象の種類ごとに、ABテストの行い方を解説します。以下のテスト対象について、順番にみていきましょう。
これからABテストを始めるBtoB企業やSaaS企業が取り組みやすいように、優先してテストすべき要素も紹介します。なおABテストの行い方については関連記事でも詳しく解説してるので、あわせてご覧ください。
EメールのABテストでは、まずは開封率を改善することを目指しましょう。メールが開封されなければ、メール内のリンクがクリックされることもなく、商品の販売などにつながらないからです。
もしメールの開封率を計測していないのであれば、メールマガジン配信スタンドの設定を変更したり、専用のツールを導入したりするなどして、すぐに対応しましょう。
メールの開封率に大きく影響するのは、以下の3つの要素です。
たとえば差出人名であれば、これまで「会社名」で送っていたものを「担当者名」に変更してみるとよいでしょう。個人名だと宣伝メールだと思われにくくなり、開封率が上がると期待できます。
送信のタイミングに関しては、曜日を平日から休日に変えたり、時間帯を午前中から夕方に変えたりといった工夫が考えられます。
差出人や送信のタイミングについては、1通だけでなく複数のメールを送りつつ成果を確認することが可能です。何度もメールを送ることでサンプル数を増やせるため、保有するメールアドレスがまだ少ない時期にもテストしやすいでしょう。
ランディングページのABテストでは、まずはファーストビューのABテストを行うのがおすすめです。ファーストビューはユーザーが必ず最初に目にして、ランディングページの続きを読むかを判断する部分だからです。
どんなに中身がすばらしいランディングページでも、ファーストビューを見ただけで離脱されてしまえば、成約には至りません。改善すべきファーストビューの構成要素は以下の通りです。
これらを同時に変更してしまうと、どの変更が成約率に影響したのかが判断できなくなってしまいます。「今回はキャッチコピーのテストをしよう」などと決めて、1つずつ確実にテストすることが大切です。
なお、ランディングページがどこまで読み進められているかを確認するために、ヒートマップツールを導入することをおすすめします。ユーザーがどの箇所で離脱しているのか、正確なデータを把握できるようになります。
ファーストビューのABテストには時間がかかるかもしれませんが、それだけ重要な部分なので焦る必要はありません。繰り返しテストを行い、LPの成約率を徐々に高めていきましょう。
WebサイトのトップページのABテストを行うのであれば、まずはメインビジュアルの画像をテストすることをおすすめします。
最初に表示される画像でユーザーの興味を引ければ、サイト内の他のページも見てもらいやすくなるからです。一方でメインビジュアルにセンスがないと、会社自体の印象が悪くなる恐れがあります。
企業の公式サイトのトップページに表示する画像としては、たとえば以下のものが考えられます。
さまざまなパターンを試しつつ、Webサイトを訪れた人の離脱率や滞在時間など解析して、最適な画像を探しましょう。
(Googleアナリティクス)
離脱率や滞在時間といったユーザーの行動に関するデータは、「Googleアナリティクス」などのツールを使えば、簡単に調べることが可能です。まだ導入していない場合は、ABテストに取り掛かる前に準備しておきましょう。
入力フォームの改善を行う際には、まずは入力情報の数を厳選すべきです。たくさんの情報の入力を求められるほど、ユーザーは面倒に感じてしまい、成約率が下がる傾向があるからです。
そのうえで、ユーザーに入力を求めるかを迷う項目があれば、ABテストを行うとよいでしょう。その項目が成約率に影響するかどうかを、テストによって確かめるのです。たとえば以下のような入力項目が、ABテストの対象として考えられます。
テストの結果、項目があることで成約率が下がると明らかになれば、その項目は削除することを検討しましょう。もし成約率に影響がないとわかれば、より多くのユーザー情報を収集するために、その項目は残しても問題ありません。
まずは入力項目を確定させて、それからデザインなどの改善に取り掛かると、入力フォームの改善を効率よく進められるでしょう。
ABテストを行うことで、個人の感覚ではなくデータに基づいて、マーケティングに関わるさまざまなものを改善できます。本記事では、以下の4つについて具体的に解説しました。
これからABテストを始めるBtoB企業やSaaS企業であれば、まずはこの中のどれかを対象にして、実施してみることをおすすめします。
ただし、ABテストを行うこと自体が目的にならないように注意しましょう。もしABテストをしても成果に結びつかないようであれば、あえてテストを行わないという判断も必要です。