自社メディアの記事の読了率が気になっている方は多いようです。帝国データバンクの調査では、BtoBマーケティングで今後強化したい取り組みとして、47.6%の企業が「ホームページからの問合せ獲得・資料請求強化」を挙げました。目的であるリード獲得につなげるためには、記事を最後まで読んでもらうことが重要だと考えている企業は少なくありません。
しかし実は、BtoBにおいて読了率は、さほど大切ではないのです。その点も含めて、本記事では以下の内容を詳しく解説します。
読了率について理解を深めることで、ブログやオウンドメディアの改善に役立てられるようになります。改善の結果、リード獲得を増やせれば、製品サービスの販売数増加につながるでしょう。ぜひ最後までお読みください。
(読了率)
読了率とは、ある記事ページを訪れた人のうち、最後まで読んだ人の割合のことです。
なお、どの部分を「記事の最後」と見なすかによって、読了率は変動します。一般的には記事の内容が最後まで読まれれば「読了」と考えます。
記事の内容の下には「関連記事リンク」や「フッター」などが配置されていますが、それらが読まれることは重要でない場合が多いです。そのため、記事が読了されたかを判断する際には、関連記事などは考慮に入れないのが自然だといえます。
企業のマーケティング担当者が読了率を気にすることが多い理由は、主に以下の3つです。順に解説します。
訪問者の行動につながりそうかを確認するための指標として、読了率は気にされます。読了率が高ければ、問い合わせや資料請求などの行動を、記事を読んだ後に起こしてくれやすいと考えられるからです。
ブログやオウンドメディアの記事の末尾には、訪問者の行動を促すボタンやリンクなどが置かれることが一般的です。そうした行動を促す部分を「CTA(Call To Action)」と呼びます。
(無料eBook)
たとえば、株式会社OKANが運営するオウンドメディア「おかんの給湯室」では、記事の末尾で無料eBookのダウンロードを促しています。こうしたCTAを設置しておくことで、記事を訪れた人の一部が、資料をダウンロードすると見込めるでしょう。ダウンロードの際には、訪問者に以下の情報の入力を求めています。
連絡先を獲得して、オウンドメディアの記事からリードジェネレーションを達成しているのです。
「おかんの給湯室」では、記事の内容によって、ダウンロードを促す資料の種類を変えています。たとえば、健康経営に関する記事であれば、上図のように「健康経営のすすめ」の資料を訴求しています。一方、女性社員向けの福利厚生に関する記事では「福利厚生ガイドブック」のダウンロードを促しているのです。
記事の内容に関連性の高いCTAのほうが、訪問者が興味を持ちやすいため、行動を起こしてもらいやすいと考えられます。CTAは複数種類用意しておき、記事内容との相性を考えて、どれを設置するかを決めるとよいでしょう。
記事が訪問者の目的に合っていたかを推測するために、読了率は役立ちます。途中で離脱されずに最後まで読了された割合が高ければ、記事は訪問者の目的に合っていたと判断できるからです。
記事が読まれた回数は「ページビュー(PV)数」で確認できます。しかし、PV数には「訪問した直後に離脱した場合」と「読了された場合」の違いが反映されません。読了率もあわせて見ることで、PV数だけではわからない情報が得られるのです。
読了率が低い記事があれば、「訪問者の目的と合っていないのではないか」と推測できます。その場合は、記事内容を変更したり、見出しの順番を入れ替えたりすることで、訪問者の目的に近づけることが可能です。
変更後の記事を公開し、再び読了率をチェックすれば、変更が有効だったかを確認できます。こうして内容の変更とチェックを繰り返すことで、記事を改善していけます。
読了率を記事ごとに分析することで、ブログやオウンドメディア全体の改善に生かせます。読了率が高い記事の内容やジャンルなどの傾向がわかれば、似た記事を増やすことで、訪問者のニーズに応えられると考えられるからです。
たとえば、自社のブログを分析した結果、「オンライン会議のノウハウ」についての記事の読了率が高い傾向があったとします。この場合、「ブログの読者はオンライン会議に役立つ情報に興味がある」と推測できるでしょう。
読者のニーズに合った記事を増やすことで、ブログや自社に対する信頼感が高まり、将来的な製品の購入につながりやすくなります。逆に、読了率が低い傾向がある記事の特徴がわかれば、ニーズに合わない記事の作成を避けることも可能です。
このように、作成する記事の方針を決める際に役立つため、多くのマーケティング担当者が読了率を分析しています。
実は読了率は、BtoBにおいてさほど大切ではありません。その理由は以下の3つなので、順に解説します。
BtoBマーケティングにおいては、訪問者が目的を達成できたかのほうが、読了率よりも重要です。目的を達成できたのであれば、自社への信頼や好意、関係構築につながるからです。
例として、SaaSで人材育成サービスを提供しているピーシーフェーズ株式会社が運営する「shouin+ブログ」の記事を紹介します。
(eラーニングとLMSについての記事)
上図の記事に訪問した人は、「eラーニングとLMS(Learning Management System)の違いを知りたい」と考えていると予想されます。「eラーニングとLMSの違いとは」というタイトルを見たうえで、この記事をクリックしているからです。
この記事の最初の章を読めば、当初の目的であった「eラーニングとLMSの違い」は理解できるでしょう。すると、その後の文章は読まずに、ページを閉じる人もいるはずです。結果として、読了率は低くなる可能性があります。しかし、訪問者にとっては知りたい情報をすぐに手に入れられたので、むしろ好ましい記事だったといえるでしょう。
読了率を高めたいのであれば、「記事の最後まで訪問者が知りたいことを述べない」という方法が考えられます。しかしそれをすれば、読み手はすぐに情報を手に入れられないせいで、ストレスを感じてしまうかもしれません。結果として、ブログの書き手である自社に悪い印象を持つ可能性があります。
読了率を気にしすぎて、訪問者が目的を達成しにくい記事を作ってしまってはいけません。読了率を高めることは、必ずしも良いこととは限らないのです。
また、ダウンロードを促す資料の存在も、強引に読み手の情報を取得するのではなく、読みに来た目的に沿ったものであればダウンロードされるものであり、目的とコンテキストが合致していれば自然と行われるものです。
BtoBでは最初の訪問でコンバージョンさせる必要性が低いことも、読了率がさほど重要ではない理由です。コンバージョンとは、問い合わせや資料請求など、訪問者に期待する行動を意味します。
BtoBはBtoCよりも、購入までに多くの関係者の決済が必要であり、比較検討の期間が長いという特徴があります。そのため、ブログやオウンドメディアにおいても、買い手と長期的な関係を築くことを意識すべきなのです。
読了率が高かったとしても、買い手との関係が構築できなければ、最終的に購入に至る可能性は低いといえます。記事を最後まで読んでもらうことよりも、「有益な情報を提供してくれる企業だ」と、買い手に感じてもらうことが大切です。
流し読みで最後まで読まれた回数が多くても、読了率は高くなります。そのため、読了率はあまり当てにならない面があります。
訪問者がどれだけじっくりと記事を読んだかは、読了率に考慮されていません。読了率が高かったとしても、実際にはあまり記事が読まれていない可能性があるのです。
記事が本当に読まれているかを判断するには、記事の「滞在時間」なども組み合わせて見る必要があります。読了率は数多くある指標のひとつに過ぎないので、重要視しすぎないように気をつけましょう。
(Googleアナリティクス)
「Googleアナリティクス」を使うことで、読了率を推察できます。Googleアナリティクスで読了率を推察する方法として、以下の2つを紹介します。
(Scroll Depth)
読了率を推察するための代表的なツールが「Scroll Depth」です。無料ツールであるScroll Depthを使うことで、訪問者のうちどれだけの人が、ページを読み進めたのかを測定できます。ページ全体を100%とした場合、以下の割合までスクロールされた回数を計測可能です。
記事本文の下に関連記事などがあまりない場合は「100%」、関連記事やフッターのボリュームが多い場合は「75%」までスクロールされたら、読了と判断するとよいでしょう。
Scroll Depthを設定する際の手順は以下の通りです。
設定後にはGoogleアナリティクスで、指定の箇所までスクロールされた回数と割合を確認できます。
(Googleタグマネージャー)
無料で利用できる「Googleタグマネージャー」を使って、読了率を推測する方法もあります。Googleタグマネージャーでさまざまな計測条件を設定して、Googleアナリティクスで結果の確認が可能です。
Googleタグマネージャーの計測条件のひとつに、「スクロール距離」があります。スクロールの割合を「100%」や「90%」などと自由に設定して、そこまで読み進めた訪問者の数を計測できます。
Googleタグマネージャーを使う場合の設定手順は、以下の通りです。
設定後には、Googleアナリティクスの「イベント」として、指定の位置までスクロールされた回数と割合を確認できます。
Googleタグマネージャーを使ったほうが設定に手間はかかりますが、スクロールの割合を自由に設定できるメリットがあります。詳細なデータを把握したい場合は、Googleタグマネージャーを利用するのがおすすめです。
読了率とは、ある記事ページを訪れた人のうち、最後まで読んだ人の割合のことです。記事を最後まで読んでもらうことで、訪問者に問い合わせや資料請求などの行動をしてもらいやすくなるため、読了率は気にされやすい傾向があります。
しかし、BtoBマーケティングにおいて、読了率はさほど大切ではありません。ブログやオウンドメディアの記事では、すぐにコンバージョンさせることよりも、買い手と長期的な信頼関係を構築することを意識すべきだからです。
Googleアナリティクスで読了率を推察する方法として、Scroll DepthとGoogleタグマネージャーを使う方法を紹介しました。記事ごとに読了率を確認して、メディアの改善に生かしつつも、数字だけに振り回されることのないように注意しましょう。