自社コンテンツのSEO対策を行う際に、必ず注視すべき点がサイトの「ドメインパワー」です。ドメインパワーが強ければ、検索エンジン上で上位表示されるだろう、とイメージする方が多いと思います。
しかし実際に、ドメインパワーがSEOにどのように影響するのか、その仕組みを深く理解している方は少ないのではないでしょうか。
本記事では、ドメインパワーとはそもそも何か、ドメインパワーが重要な理由、実際に記事コンテンツを書く前に最低限知っておくべきポイントなどについてご紹介していきます。
ドメインパワーとは、検索エンジンの検索結果ページ(SERPs)上で、そのページがどれくらいランキング上位に表示されやすいかを計測したスコア値です。(出典:MOZ-Domain Authority)
ドメインパワーを測るためのツールとして有名なのが、Moz社やAhrefs社が提供する、「Domain SEO Analysis Tool」と「Site Explorer」です。
元々はサイトの権威性を測る指標としてMozが定義したものが「Domain Authority」、Ahrefs社が定義したものが「Domain Rating」です。その数値・概念が広く普及し、日本国内では使用するツールに限らず、共通用語として「ドメインパワー」と形を変え使用されることが多いです。
ドメインパワーはサイトの被リンクの数、その質や有効性など多くの要因から、そのサイトへの検索エンジンからの流入量を自動分析し、1〜100のスコアが付与されます。そのスコアが高ければ高いほど、SERPs上で上位に表示されやすいと言われています。
また、そのページで多く検索されるキーワードやサイトのタイプなどから、最もマッチする計算アルゴリズムが適用される仕組みになっており、そのスコア計算方法は非常に複雑です。
なお、「100点満点でサイトを評価する」という性質上、多くの企業がドメインパワーを「絶対的なスコア」と捉え、自社サイトで「100点」を獲得することを目標にしたり、闇雲にスコア値を高めたりする施策を打ってしまいがちです。
ところが、サイトのタイプや検索されるキーワードのカテゴリーなどで計算方法が変わってしまうことから、実際には自社と競合するサイトとの「相対的な指標値」を比較するツールとしての運用が正しい使い方となります。
ドメインパワー計測サービスを提供しているMoz社は、公式に「ドメインパワー(Domain Authority)はあくまでGoogleのランキング順位を予測するためものであり、ランキング決定に使用される要因ではない」としています。(出典:MOZ-Domain Authority)
しかし一方で、Ahrefs社の研究によりドメインパワーとSERPsでのランキング順位との間に、極めて正確な関連性が認められることが立証されています。
つまり、ドメインパワー値は「SERPs上の順位を直接決定するものではないが、その順位を正しく予想する上では極めて信憑性の高い指標である」といえます。
SEO(Search Engine Optimization)は「自社サイトの検索エンジン上でのランキング上位獲得を目指す活動」です。SERPs上の順位を高めるSEO活動において、ドメインパワーは自社サイトの「現在地」を知る上で極めて重要な指標であるとされ、現在注目を集めています。
自社サイトのドメインパワーを今よりも強化することは、それだけ検索順位の上位獲得の可能性を高めることに直結し、結果的にサイトへのアクセス流入量の増加を見込めます。
ただしここで注意したいのは、上記で説明した通り、ドメインパワーは「絶対的スコア」ではなく「相対的指標」であるということです。
計測されたドメインパワーが○点以上だから良い(もしくは悪い)、ということはありません。大切なのは、同じキーワードやカテゴリーを扱うライバルサイトに対して、自社のドメインパワーが高いか(もしくは低いか)を相対的に確認することです。
仮に、あるキーワードでの検索結果ページに自社サイトよりも順位が高い別のサイトがあったとし、自社のドメインパワーが30、そのライバルが35としましょう。
SEO活動での目標は、「35点以上のドメインパワーを獲得すること」ではありません。「現在ライバルとの間にある5点の差を埋める(もしくは追い抜く)」ことです。
なぜなら、サイトを改良する間にライバルも同じだけドメインパワーを向上させており、その差が縮まらなかった場合、検索結果の順位はやはりライバルが上位となるからです。
つまりSEOにおけるドメインパワーについては、自社のスコアだけでなく、同じキーワードを扱う競合サイトのスコアも同時に追うことが非常に重要な鍵となります。
「MOZ」はドメインパワーの計測では非常に有名です。1日3件までの計測であれば無料、それ以上の計測が必要であれば有料メンバーシップへの登録が必要です。本記事では無償での計測方法を紹介します。
まず、MOZのドメインパワー計測ページにアクセスします。
(出典: MOZ-Free Domain SEO Analysis Tool)
(画像出典: MOZ-Free Domain SEO Analysis Tool)
アドレス入力欄に調べたいサイトのURLを入力し、"Analyze domain"をクリックします。すると結果ページが表示され、”Domain Authority"という欄に記載されている数値がドメインパワーです。
また、結果ページにはドメインパワー以外にも、サイト内のリンクの量や質、リンク先サイトのドメインパワー、サイトの検索キーワードや、似たキーワードを扱う競合サイトなどの情報も表示されます。
「Ahrefs」もMOZ同様、サイトの被リンク量や質などからサイトの有効性を測るツールを提供しています。ドメインパワーを確認する場合は、同社のAhrefs Site Explorerを使用します。
ただしこちらはMOZと違い、ツールの使用は有償のみのプランです。詳しくは公式サイトをご確認ください。
(画像出典: Ahrefs-サイトエクスプローラー)
使用方法はMOZと同じく、検索欄に調べたいサイトのURLを入力して検索するだけです。MOZと違い、DR("Domain Rating")という欄の数値がドメインパワーとなります。
またAhrefs Site Explorerでもサイト内のリンクの量や質、サイトの検索キーワードや競合となり得るサイトを確認することができます。
サイトのドメインパワーを決定する大きなファクターは、そのサイトへのリンクの量と質です。
もちろん、計算には他にも数々の要因が含まれますが、基本的にはそのサイトに、「どれだけ有効かつ質の高いインバウンドリンクが張られているか」という点から、「どれだけの流入が見込めるか」を機械が自動計算します。
ですので自社サイトのドメインパワーを強化する上では、有効なリンクの量を増やすか、質を増やすか、どちらかの戦略を進めることが有効です。
ここではそれらを進める上で、有効になり得る6つのステップを紹介します。
ドメインパワー強化の戦略を練る上で、最初にして最重要なステップが、ライバルサイト、ベンチマークの設定です。
前述の通りドメインパワーは、自社サイトの「相対的な立ち位置」を測るための指標です。
例えば、Moz社が計測するドメインパワーのトップ500サイト(出典: Moz-The Moz Top 500 Websites) には「youtube.com (100)」「facebook.com (96)」などが上がっていますが、SEO活動を進める上で必ずしもこれらの大手サイトに並ぶドメインパワーを獲得する必要はありません。
むしろ、自社が狙うキーワードにおいてこれらの強豪サイトがライバルにいる場合は、ターゲットとするキーワードの変更を視野に入れた方がよいかもしれません。
自社が十分戦える戦場となるキーワードを選んだ上で、現実的に手が届きそうなライバルを設定することが大事です。
ターゲットとするキーワード検索で自社よりも上位にいるサイト、もしくは度々似たようなキーワードの検索結果で並ぶサイトなどは、自社の相対的な立ち位置を測るベンチマークとして最適です。
ライバルとなり得るサイトを見つけたら、継続的にそのサイズやコンテンツ内容、ドメインパワーをチェックしておきましょう。
ベンチマークとなるライバルサイトを設定したら、今度はそのサイトと自社サイトの被リンク(インバウンドリンク)を比較してみましょう。
基本的に、あるページから外部ページにリンクが張られると、リンク先となるページの価値が上がります。よって、有効かつ質の高いインバウンドリンクが多ければ多いほど、自社サイトのドメインパワーは上がりやすくなります。
ただし、リンクの数を増やせば言い訳ではありません。
リンク元のページの信頼性が低い、もしくは全く関連性がない、ページが古いまたはリンクが有効ではないといった場合は、逆に自社サイトのドメインパワーを下げてしまう可能性もあります。
ライバルサイトにあって自社サイトにはないインバウンドリンクはないか、またそれはどのようなものか詳しく比較・分析することで、この後の戦略がより立てやすくなります。
自社サイトに望む形でのインバウンドリンクを引き込むべく、「このサイトにリンクを貼りたい」と思わせるようなコンテンツ作りをしましょう。
ここでも、自社サイトとライバルサイトの比較が必要になります。
双方のトップページを比較し、ライバルがどのようなコンテンツ作りをしているのか、ターゲットとなる読み手や市場に向けて魅力的にするために、どの様な施策を打っているのか、といったことを確認してみましょう。
自社サイトのドメインパワーを強化する上で、加えて重要になってくるのが、ページ内のリンクの継続的な整理です。
ページ内に設置されている、リンクが全て有効でアクセス可能な状態になっているかを再確認しましょう。
特に自社で管理していない外部ページへのリンクがいつの間にか無効になっており、「404」ページを表示させてしまっていたら、サイトのドメインパワーには大きな痛手です。
また、無効とはいかないまでも更新日時が古くなっていたり、方針変更などで自社ページとの関連性が薄くなったりしているなどということも考えられます。
無効や質が悪いリンクがあると「扉が閉じている・アクセスが悪い」とみなされ、ドメインパワーに影響が出ます。
自社サイトのリンクの状態は常日頃からチェックする様にしましょう。
インバウンドリンクを増やすためには、良いコンテンツを作って待っているだけでは不十分であることもあります。
より質の高いサイトからのインバウンドリンクや流入を増やすために、広告などのプロモーションを打つことも、ドメインパワーの強化に有効な手段です。
サイト閲覧のストレスを軽減してサイトの評価を高め、結果サイトへの流入や被リンクを獲得するという間接的な手法が、サイトスピードを改善することです。
KISSmetricsの調査によると、サイト閲覧者の約40%は3秒以上のページロードに耐えられずサイトを離脱すると言われています。
<画像出典: NEILPATEL-How Loading Time Affects Your Bottom Line>
いくら自社サイトのコンテンツがライバルと比べ充実していても、ロードに莫大なストレスがかかると、閲覧者は自社サイトから離れ、ライバルサイトへ移ってしまうでしょう。
残念ながら、ドメインパワーの計測に直接の影響があるかどうかは定かではありません。
しかし、ライバルサイトと自社サイトの各ページのロード時間を調べ、どちらがよりストレスフリーに閲覧ができるかのチェックも継続的に行って損はないでしょう。
それでは実際に、SaaS企業でBtoBサービスを提供している国内大手企業のウェブサイトについてドメインパワーを調べてみましょう。
SmartHR 、Freee 、HubSpot はいずれも、会計や労務、顧客情報などを管理するSaaS手企業です。
MOZの「Domain SEO Analysis Tool」を用い、これらのウェブサイトのドメインパワーを計測した上で、実際にGoogleの検索結果上での順位がどうなっているのかを比較してみます。
(画像出典: MOZ-Free Domain SEO Analysis Tool)
SmartHRのドメインパワーの計測結果は2021/12/13時点で47 で、3社中2番目に高得点でした。
(画像出典: MOZ-Free Domain SEO Analysis Tool)
Freeeのドメインパワーの計測結果は2021/12/13時点で59 で、今回計測した3社の中では最も高い数値でした。
(画像出典: MOZ-Free Domain SEO Analysis Tool)
HubSpotのドメインパワーの計測結果は2021/12/13時点で45でした。3社の中ではドメインパワーが最も低い結果となっています。
ドメインパワーのスコアだけ見ると、Freee→SmartHR→HubSpotの順番でSERPs上に表示されそうです。
試しに「労務管理システム」というキーワードでGoogle検索をしてみます。
すると、労務管理システムのまとめ記事サイトに続いてSmartHRが検索上位に上がりました。Freeeはというと……。なんと2ページ目の後半になるまで出てきません。
なぜドメインパワーで劣っているはずのSmartHRのサイトはFreeeよりも上位に表示されたのでしょうか?
これは、メインで狙っているキーワードが違うためです。確かにFreeeも労務管理システムを扱っていますが、同社の主力は会計システムでしょう。その証拠に「会計システム」でGoogle検索をすると、しっかりFreeeが上位に表示されます。
結果的にこれは、ドメインパワー上では弱者であるSmartHRが、強者Freeeの比較的不得意とする「労務管理システム」という分野で勝利を掠め取ったと言えるでしょう。ドメインパワーでライバルサイトを追い抜くだけでなく、このようにキーワードを「ズラす」戦略もSEOでは大切になってきます。
それでは、上記のキーワード検索ではどちらにも上位表示されなかった、HubSpotはどうでしょうか?
HubSpotの主力はマーケティング製品であり、近年では後発の製品である無料のCRM(顧客管理ツール)が製品導入のきっかけになることも増加しています。
もちろんそれらのキーワードで検索をかけた場合には上位に表示されますが、同社サイトがSmartHRとFreeeと検索結果で共存している検索キーワードはあまりありません。扱うキーワードに多少重なりがある前2社と比べ、HubSpotは分野が少し離れていそうです。
SmartHRを基準に考えると、Freeeはライバルサイトとして設定ができそうですが、HubSpotはベンチマークとして動向を追うには適していないのかもしれない、と仮定ができます。この様にドメインパワー強化の前にベンチマークを正しく選り分けることが大切です。
自社サイトのSEO対策をする上で、ドメインパワーの強化は切っても切れない課題となります。
ただし、ドメインパワーは単に高ければ良いというだけのスコアではありません。あくまで同じキーワード検索で表示されるサイトの中での順位を予測するための指標です。どんなにドメインパワーが強くてもキーワードがズレていれば意味がありません。
記事コンテンツを書く際は、ライバルをしっかりと把握し、それらのサイトに対しての自社の現在の立ち位置を確認することが大切です。
ドメインパワーを強化し勝負を仕掛けるのか、それともキーワードをズラして勝負を避けるのか、どちらが有効なのかを判断するのもWEBマーケティングでは重要と言えるでしょう。