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CMSとは? CMSの基本機能とメリット・デメリット、比較検討の際に見るべきポイントもわかりやすく紹介

「CMSを利用すべきだろうか」「導入するCMSをどう選べばよいのか」とお悩みではないでしょうか。Webサイトのうち7割弱は何らかのCMSを導入しているというデータがあり、自社に合ったCMSを選ぶことは、業界・業種を問わず多くの企業にとって重要な課題です。

しかし、マーケティング熟練者が少ないBtoB企業やSaaS企業では、CMSを選ぶ基準がわからなかったり、導入しても使いこなせていなかったりするケースがよくあります。

そこで本記事では、CMSの活用を目指すBtoB企業やSaaS企業のマーケティング担当者に向けて、以下の内容を解説します。

  • CMS利用のメリット・デメリット
  • 有名かつ利用実績の多いCMS
  • マーケティングに活用できるCMS

本記事を読めば、CMSのメリットとデメリットを理解でき、自社に合ったCMSを選ぶ考え方も身につけられるでしょう。ぜひ最後までお読みください。

CMSとは?

CMSは「Contents Management System」の略称で、Webサイトを構築し、運用していくためのシステムのことです。

CMSを利用することで、HTMLなどの専門知識がない方でも、コーディング後のWebページの追加や更新といった作業を簡単に行えるようになります。また、近年ではno-codeやlow-codeと言われる、コーディングが必要なかったり、コーディングの負担を軽減できたりするCMSも登場しています。

CMSの発展と歴史

(画像引用:https://opensource.com/article/20/7/history-content-management-system

1991年に「World Wide Web」が生まれてCMSが発展するまでは、パソコン内にWebページのデータが保存されており、それを更新の度にアップロードする必要がありました。そのため、特定のパソコンからしか更新ができなかったり、複数人での管理が難しかったりといった課題があったのです。

それに対して、現在使われているCMSは「クラウド型」が一般的です。クラウド型のCMSでは、データはすべてWebサーバー上に保管されています。そのため、場所を問わず誰でもWebサイトの更新が可能になりました。

また、CMSが登場した1990年代には「フルスクラッチ型」で企業が自社専用に開発するか、システム会社が提供する「商用パッケージ型」を購入するのが一般的でした。フルスクラッチ型のCMSの構築は非常に高額であり、商用パッケージ型もある程度の費用がかかります。

しかし2000年代からは、無料で利用できる「オープンソース型」のCMSが急速に発展し、機能も充実していきました。オープンソース型のCMSの代表例が、2003年に登場したWordPress(ワードプレス)です。

現在では、オープンソース型の無償CMSも多くの機能を備えているため、BtoB企業やSaaS企業が利用するうえで十分に候補になります。

CMSの基本的な機能とは?何ができる?

CMSを活用することで、可能になる項目を具体的に紹介します。

簡単にWebコンテンツ(LP・ブログ・HP)の作成ができる

CMSを使うことで、マーケティング担当者がエンジニアやデザイナーの手を借りずとも、自分自身で直接Webサイトを容易に更新・管理できるようになります。そのため、ページ更新のたびにエンジニアやデザイナーのスケジュールを押さえる必要はなくなり、エンジニアやデザイナーの稼働によって生じる時間・人件費も削減可能です。

また、搭載(提供)されているデザインテンプレートを活用することで、ページ作成のためにHTML・CSSを記述する必要がなくなります。たとえばHubSpotでは、マウスのドラッグアンドドロップ操作だけでページを作成することが可能です。

(出典:ドラッグ&ドロップテンプレート|HubSpot(ハブスポット)

マーケティング担当者が「ランディングページを少しだけ改善して、もっとユーザーの反応が良くなるかどうかを検証したい」などと考えた際、自分自身の手元でページ更新作業まで完結できるので、施策実行のスピードが加速するでしょう。

作成したコンテンツを編集・管理・改善することができる

CMSの活用により、コンテンツの編集・管理・改善が容易になるので「既に公開している記事に関して、集客やリード獲得の成果をもっと向上させたい」といった場面でも、素早く打ち手を実行できます。

特に注目すべきは、BtoBマーケティングに特化したCMS製品です。集客を強化し、デジタルマーケティング戦略を支える豊富な機能を活用できます。

たとえばHubSpotのCMS Hubは優れた一例です。Webサイト内のコンテンツを継続的に、SEO強化・集客強化できるよう調整してくれます(AIが、リライトに関して具体的なヒントをくれるなど)。このような機能を活用することで、記事を読むユーザーの満足度を向上させ、その結果としてコンバージョン促進が期待できるでしょう。

(出典:Free AI Paragraph Rewriter | HubSpot

また、BtoBマーケティング向けCMS製品では、Webサイトの分析・レポーティング機能を備えている場合も多いです。Webサイトのパフォーマンスを簡単に追跡し、集客チャネルや、実施中の施策がトラフィックやコンバージョン獲得にどう貢献しているか、数値を根拠に把握できます。

MAやCRMと連携することで見込み客の一連の文脈を把握できる

MAやCRMと連携できるCMSを導入することで、BtoBマーケティングに大きな利点をもたらします。

たとえば、Webサイト上のコンテンツから獲得したリード情報(氏名、会社名、連絡先など)をMA・CRMツールと連携させます。ここでCookie(クッキー)を活用することで、訪問者のWebサイト上での行動に関する解析が可能になります。

たとえば、「どのページを見ていたか? 」「特定のページや、サイト内での滞在時間はどれぐらいの長さだったか? 」といった点を追跡可能に。訪問者が問い合わせフォームを利用して、連絡先を提供してくれた後の行動も、継続的に追跡可能です。

つまり、Webサイト訪問者の行動や興味を追跡し、CRMに蓄積されたデータを基に、ターゲットに合わせたマーケティング上のアプローチ(リード獲得後のナーチャリングなど)を実行することが可能になります。具体的には、「この見込み顧客は、サイト訪問時にこんなページを見ていたから、興味に合いそうなウェビナーをメールで案内しよう」といったアプローチが可能になるでしょう。

このような一連の取り組みにより、見込み客のニーズに応じたコンテンツの最適化、リードナーチャリング、そして商談・成約獲得などがよりスムーズに進むことが期待できます。

整ったデザインのページを手軽に作成することができる

多くのCMSでは、プロのデザイナーが手掛けた数百〜数千種類ものデザインテンプレートが豊富に搭載されています。デザイン経験のない人でも、わずか数クリックでブランドに合わせてカスタマイズし、視覚的に魅力的なWebサイトを迅速に制作できます。

(出典:WordPress テーマ | WordPress.org

さらに、テンプレートのマーケットプレイス(有償版の配布)が提供されている場合も。特定のビジネスや、ページの目的(リード獲得、問い合わせ窓口など)に合わせたテーマを、豊富な選択肢から探し出すことができます。

CMS利用のメリット・デメリットとは?

CMSを導入すべきか迷っている方に向けて、CMS利用のメリットとデメリットを紹介します。

CMS利用のメリット

CMSを利用するメリットは、主に以下の5つです。

  • テンプレが利用可能
  • プラグインが豊富
  • no-codeでサイトを構築可能
  • SEO最適化を容易にできる
  • データに基づく意思決定をサポートしてくれる

テンプレが利用可能

CMSに用意された「テンプレート」を利用することで、簡単な操作で短時間のうちに記事を追加できます。

あらかじめデザインが整えられているため、文字の入力や画像の追加だけで、読みやすいコンテンツが完成するのです。

現在はスマートフォンでWebサイトを閲覧するユーザーが多いので、画面サイズに合わせてレイアウトを整えることが欠かせません。パソコンとスマートフォンで自動的にデザインが切り替わるテンプレートもCMSに用意されているため、レイアウトを自分で考える必要がなくて便利です。

プラグインが豊富

(プラグインの役割の例)

WordPressなどのCMSには「プラグイン」が豊富に用意されています。プラグインとは、機能を増やすためのソフトウェアのことで、簡単な操作でCMSに追加できます。

たとえば、以下のような機能を持つプラグインが利用可能です。

  • 目次の自動生成
  • スパムコメントの削除
  • データのバックアップ
  • 問い合わせフォームの設置

必要に応じてプラグインを導入することで、Webサイトを思い通りにカスタマイズできます。

no-codeでサイトを構築可能

CMSならno-codeでサイトを構築できるので、プログラミングの知識がなくても問題ありません。

HTMLのコードを直接編集しなくても、ほとんどの作業はクリックやドラッグ&ドロップなどの直感的な操作で完了します。

コーディングが苦手な方にこそ、CMSの利用をおすすめします。

SEO最適化を容易にできる

SEOに関する深い理解がなくても、効果的なSEO対策を行うことができます。たとえば、WordPressにおけるYoast SEOのようなプラグインを利用することで、ページのSEOスコアを手軽に改善しやすくなります。

(出典:the #1 WordPress SEO Plugin • Yoast

たとえば、特定の記事のSEOスコアを分析し、改善点を具体的に示してくれます。たとえば「上位表示を目指しているキーワードが、記事内に十分に含まれているか? 」「メタディスクリプションの内容は適切か? 」「画像の代替テキストは適切に設定されているか? 」「内部リンクは適切に設定されているか? 」など、SEOに影響を与えるさまざまな要素について具体的にアドバイスをしてくれます。

また「記事がユーザーにとって読みやすいかどうか」を分析してくれる機能もあります。たとえば文の長さ、段落の構造、見出しの配置の適切さなどを分析したうえで改善点を指摘してくれるため、ユーザーエクスペリエンスの向上も期待できるでしょう。

データに基づく意思決定をサポートしてくれる

多くのCMSでは、Webサイトのトラフィックや、サイト訪問後のユーザーデータを収集し、分析する機能を提供しています。

これにより、マーケティング担当者はデータに基づいた意思決定を行うことができるので、集客戦略なども、より立案しやすくなるでしょう。

(出典:無料のマーケティングアナリティクスでレポートを最適化|HubSpot(ハブスポット)

たとえばデータ分析をすることで、「どのコンテンツがもっともユーザーの関心を引いているか? 」といったことを明確に把握できます。特定の記事が多くの訪問者を引き付け、長い滞在時間を記録している場合、そのトピックや、記事の見せ方(専門用語の解説記事なのか、インタビュー記事なのか、など)がターゲットオーディエンスに響いていることがわかります。

多くの支持を得られるコンテンツとはどんなものかを理解したうえで、サイト内の記事の充実化を図ることで、より多くの訪問者を惹きつけ、エンゲージメントを高められる可能性が高まります。

また、訪問者がWebサイト内でどのように行動しているかを理解することで、UX上の改善点を見つけ出すこともできます。たとえば、特定の記事で離脱率が高い場合、そのページのデザインやコンテンツに問題がある可能性も。改善を行うことで、集客やエンゲージメント率の向上につながります。

さらに、訪問者の属性情報(年代や、性別や、地域)も分析することで、よりターゲットに合ったマーケティング戦略を立案できるでしょう。たとえば、特定の地域や業界からの訪問者が多い場合、そのオーディエンスに特化したコンテンツを作成することで、より興味関心に合致した情報提供が可能です。

CMS利用のデメリット

CMSを利用するデメリットは、主に以下の5つです。

  • セキュリティ面での脆弱性
  • プラグインを使いすぎることによるパフォーマンスへの影響
  • ツール癖により対応可能なデザイナーが限られる場合がある
  • テンプレがあるとはいえある程度のコード知識が必要
  • カスタマイズの制限がある場合も

セキュリティ面での脆弱性

WordPressなどの人気のCMSは、多くのユーザーに利用されているがために、サイバー攻撃の標的にされやすい傾向があります。

オープンソース型のCMSでは、セキュリティ面での脆弱性に運営者が十分に対応していない場合が少なくありません。そして、セキュリティの問題で何か損害を受けたとしても、あくまでも「利用者の自己責任」になってしまうのです。

セキュリティ面に不安があることは、CMS利用のデメリットだといえます。

プラグインを使いすぎることによるパフォーマンスへの影響

複数のプラグインを多用している場合、サイトのパフォーマンスに影響を与える可能性があります。多くのプラグインを導入すると、ページの読み込み速度が遅くなり、ユーザーエクスペリエンスに悪影響を及ぼすことがあるからです。

この点をあらかじめ理解して、導入するプラグインを精査する必要があると言えるでしょう。

ツール癖により対応可能なデザイナーが限られる場合がある

CMSはそれぞれがオリジナルのテンプレートを利用しており、デザインに独自の癖があります。

そのため、デザインをカスタマイズしたくても、そのCMSに精通しているデザイナーでなければ、対応できない場合があるのです。デザイナーが自由に手を加えられる「フルスクラッチ型」とは、この点が異なります。

デザインにこだわりがある場合は、CMSを利用することで、自由な変更がしにくくなってしまうかもしれません。また、CMSによっては独特の言語があることがあります。そのため導入を考える際は、必ずコーディングをどのようにすべきかを確認することが大切です。

テンプレがあるとはいえある程度のコード知識が必要

CMSでは、ほとんどの操作をno-codeで行えますが、コードの知識が必要になる場合もあります。

せっかく時間をかけて途中までサイトを作っても、コーティングが行えないために、サイトに必要な機能を実装できないこともありえます。

コード知識を突然求められることがある点は、CMSのデメリットです。

カスタマイズの制限

多くのCMSではカスタマイズが可能ですが、デザインテンプレートの変更や、外部のCRM・MAツール連携など、技術的な制限がある場合もあります。

「他社と重複しない、自社ならではのオリジナリティのあるデザインにしたい」「特定の外部ツールと連携したい」といった想定をしていても、導入したCMS製品が技術的に対応不可であれば、やりたいことが思うように実現しません。まったく不可能ではないにしても、追加で開発作業が必要な場合もあります。

そのため、製品選定時に「どのような活用目的でどのようなモノを作りたいのか」のイメージを明確にして、カスタマイズの必要性をよく確かめる必要があります。その上で、自社のニーズに合ったCMSを選定しましょう。

CMSの種類

ひとくちにCMSと言っても、「Webサイトのコンテンツを一元管理するためのツール」だけではありません。CMSとは広義には「コンテンツ管理システム」です。

よって、さまざまなCMS製品の特徴を詳細に見ていくと「大企業において、重要なファイルやデータを一元管理するためのシステム」「画像、動画、文書などのデジタル資産を効率的に管理するためのシステム」など、いくつかのタイプに大別されます。以下で5つのタイプを簡単に紹介します。

Web コンテンツ管理システム (WCMS)

Webコンテンツ管理システム(WCMS)は、Webサイトのデジタルコンテンツ、テキスト、画像、動画などを管理するシステムです。

プログラミングの専門知識がなくても、Webページの作成、編集、公開が簡単に行えるため、Webサイトの管理をエンジニアでなくても効率的に行うことが可能です。

コンテンツの公開を容易にし、制作・改善過程も効率化でき、Webサイト開発・運用にかかる人手・時間を節約できます。

代表的なWCMS製品には

  • WordPress
  • Drupal
  • Joomla

などがあります。

(出典:https://ja.wordpress.org/

エンタープライズ コンテンツ管理システム (ECM)

エンタープライズ コンテンツ管理システム(ECM)は、大規模な組織・企業が重要な情報を整理・管理するためのシステムです。

ECMの導入により、文書、記録、電子メールなどのさまざまな種類のコンテンツを効率的に管理可能に。組織内のメンバーが必要なコンテンツに簡単にアクセスし、プロジェクトの完了や重要な意思決定を行うことが可能になります。

代表的なECM製品には

などがあります。

たとえば、大手楽器メーカーの「YAMAHA」では、社内ポータルの構築に「SharePoint」を活用しています。以前は、「社内通達を掲示するための、グループ内ポータルサイト」「国内従業員が、勤怠管理システムなどにアクセスする際の入り口となるポータルサイト」「従業員向けのコミュニケーションサイト」という、3つのサイトをそれぞれ別々で運用していました。

しかし、従業員に向けて周知すべき重要な情報が散在してしまい「どこからアクセスすればよいのかわかりづらい」といった課題が。そこで、社内コミュニケーションツールの「Microsoft Teams」とも連携させやすい「SharePoint」を導入し、社内ポータルサイトをグローバルで導入、比較的短期間で新たなポータルを構築することができたそうです。

(出典:Microsoft Office SharePoint Online - コラボレーション ソフトウェア | Microsoft 365

コンポーネント コンテンツ管理システム (CCMS)

コンポーネント コンテンツ管理システム(CCMS)は、大規模な文書や多言語コンテンツを扱う企業に適したシステムです。

単語や段落、写真などのコンテンツを細かく管理し、中央リポジトリ(=システムの中心にある、データの蓄積場所)に保存します。

CCMSを活用することで、必要な文書・コンテンツがどこに格納されているのか細かく管理し、必要なときに手早くアクセスして利用できます。

代表的な製品には

などがあります。

たとえばスマートフォン・家電メーカーとして知られるXiaomi社は、世界中のユーザーに向けて正確、最新、わかりやすい、製品の取扱説明文書(Webページや、PDFなど)を配信する必要があります。その効率化のために、Tridion Docsを活用しているそうです。

(出典:Tridion Docs:業界NO.1の企業向けDITA CCMS - RWS

ドキュメント管理システム (DMS)

ドキュメント管理システム(DMS)は、主にビジネス文書をデジタル形式で管理、保存、追跡するためのシステムです。

紙の文書を扱う代わりに、クラウド上で文書を管理し、アップロード、処理、共有を自動化します。リモートで文書にアクセスし、編集することも可能です。これにより、印刷、コピー、スキャンの手間が省け、資源・コストに配慮した運用ができるようになります。

代表的なDMS製品には

などがあります。

これらのシステムは、文書の安全な管理と迅速な共有を実現し、ビジネスプロセスの効率化に貢献します。

(出典:個人向けのクラウド ストレージおよびファイル共有プラットフォーム - Google

デジタルアセット管理システム (DAM)

デジタルアセット管理システム(DAM)は、企業や組織が画像、動画、文書などのデジタル資産を効率的に管理するためのシステムです。

大量のデジタル資産を一元保存し、簡単に検索、整理、共有することができます。クラウドベースであるため、どこからでもアクセス可能。ソーシャルメディアや、配信サービス(例:YouTubeや、広告プラットフォームなど)にデジタルコンテンツを配信することもできます。

代表的なDAM製品には

  • Adobe Experience Manager
  • Bynder

などがあります。

たとえば自動車メーカー・マツダは、日本だけではなく世界に向けてCM・広告・SNSなどマーケティング施策を展開しています。施策実行時に必要なクリエイティブ(写真や動画、テキストなど)をDAMで一元管理することで、キャンペーン実施の効率化を図っているそうです。

(出典:Adobe Experience Manager

CMSを活用する際におすすめのツール例

ここからは、有名かつ導入実績の多いCMS製品を、具体的に紹介します。

オープンソースCMS

オープンソースCMSは、ソースコードが公開されているため、誰でも自由に使用、変更、配布が可能です。高いカスタマイズ性と、多機能性が特徴だと言えます。

コストパフォーマンスの高さも大きなメリットで、ライセンス料が不要なため初期投資を抑えることができます。さらに、世界中の開発者コミュニティによるサポートと定期的なセキュリティ更新により、安全かつ効率的なWebサイト運営が可能です。

WordPress

(URL:https://wordpress.org)

WordPressは、世界で最も利用者が多いCMSです。Web調査会社の「W3Techs」のデータによれば、2022年4月の世界でのシェアは64.2%であり、日本でのシェアは84.4%に達しています。

WordPressの最大の特徴は、豊富なプラグインが利用できることです。多数の利用者がいることから、開発者がWordPress向けのプラグインの開発に注力して便利になることで、ますます利用者が増えるという好循環が生まれています。

デザインのテンプレートである「テーマ」も豊富に用意されています。テーマやプラグインは、無料・有料のどちらも充実しており、費用をかけずに高機能なWebサイトを構築することが可能です。

Joomla

(https://www.joomla.org/)

Joomlaは、Webサイト・アプリ構築のために、世界中で利用されているCMSです。

豊富なテンプレートと拡張機能を通じて、企業の独自のブランドやスタイルに合わせたカスタマイズが可能。スマートフォンやタブレット向けのページ作成も容易です。サイト管理をする複数のユーザーに対して、異なる権限レベル設定も可能なので、チームでのWebサイト運営がスムーズに行えます。

また、コンテンツの多言語対応が可能なので、グローバルなマーケティング展開を目指す企業にもおすすめです。

Drupal

(URL:https://www.drupal.org)

Drupal(ドルーパル)は、「モジュール」を追加することで機能を増やせるCMSです。大手企業に導入されている実績があり、大規模なサイトにも対応可能です。

DrupalでWebサイトを作る際には、まずWebサイトに最低限必要な機能がセットになった「コアモジュール」を導入します。そのうえで、目的に応じて「拡張モジュール」を追加していくことで、思い通りのWebサイトを構築していく仕組みです。

また、複数のモジュールがあらかじめ組み合わされた「ディストリビューション」を利用する方法もあります。「コーポレートサイト」「コミュニティサイト」など、よく利用される型どおりのサイトであれば、規模のわりに少ない手間で作業が完了するでしょう。

ベンダー独自のCMS

ベンダー独自のCMSは、専門的なサポートと高度な機能を提供できるのが大きな特徴です。

HubSpot CMS

(URL:https://www.hubspot.com/products/cms)

月額料金:Starter:2,700円、Professional:43,200円、Enterprise:144,000円

HubSpot CMSは、HubSpot内に用意されたCMSです。HubSpotはCRM(Customer Relationship Management)プラットフォームとして世界的に広く使われているツールで、Webサイトを通じて製品サービスの買い手との関係を築くために利用されます。

HubSpot CMSは、システム開発者やマーケティング担当者が期待する豊富な機能を備えている点が特徴です。

たとえば、Webサイトの訪問者を一人ひとり識別したうえで、ページの内容をパーソナライズできます。過去に問い合わせをした人や製品サービスを購入した人に向けて、最適な内容を表示することで、売上げアップにつなげられるでしょう。

HubSpot CMSには3つのプランが用意されており、利用したい機能や予算に合わせて柔軟に選べます。

Adobe Experience Manager

(Adobe Experience Manager Sitesのコンテンツ管理 | Adobe for Business)

月額料金:要問合せ

Adobe Experience Managerは、デジタルアセット管理(DAM)とコンテンツ管理システム(CMS)を組み合わせた製品です。

膨大なデジタルコンテンツ(画像、動画、3Dモデルなど)を一元管理し、Webサイトやアプリといった、複数チャネルをまたいで効率よく管理・配信できます。

読者一人ひとりに合わせた言語、興味関心に即したコンテンツ提供など、パーソナライズされたユーザー体験を、すばやく容易に構築、配信できる点が大きな特徴です。

たとえば、事業のグローバル展開をしていて、「世界各国のユーザーに向けて、魅力的な広告を継続して配信したい」「SNS、YouTubeも、オウンドメディアも世界各国のユーザーに向けて取り組んでいる」「そのために言語やコンテンツのパーソナライズを手軽にやりたい」といった企業に適していると言えるでしょう。

Sitecore

(URL:https://www.sitecore.com)

月額料金:要問い合わせ

Sitecoreは、買い手の「デジタル体験」を向上させることに注力しているCMSです。パーソナライズやマーケティングオートメーションなど、高度なマーケティング機能を利用できます。

Sitecoreのライセンスは以下の3種類に分類されます。

  • Experience Management(XM):基礎となるコンテンツ管理機能
  • Experience Platform(XP):マーケティング機能
  • Experience Commerce(XC): ECサイト構築機能

それぞれ、必要とする機能によって費用が大きく変動するのが特徴です。そのため料金がわかりにくい点は、Sitecoreのデメリットといえます。

費用をかけてでも高機能なマーケティングツールを使いたい場合は、Sitecoreの導入を検討するとよいでしょう。

Wix

(URL:https://www.wix.com)

Wix(ウィックス)は、無償CMSの中でも手軽にWebサイトが作れる点が特徴です。

WordPressでは、サーバーやドメインの準備が必要になる場合がありますが、Wixでは不要です。サーバーやドメインの費用をかけることなく、Webサイトを構築できます。

無料で利用を始められる一方で、有料のプランも複数用意されています。必要に応じてプランを選ぶことで、余計な費用負担なしでサイトを運用可能です。

Wixには「ビジネス」「イベント」など、用途に合わせたテンプレートが豊富に用意されています。選ぶだけでサイトの大枠ができあがるため、短時間でWebサイトを完成させられるでしょう。

CMSを比較検討する際のポイント

CMS(コンテンツ管理システム)を選ぶ際に、必ず着目すべき5つのポイントをお伝えします。

CMSを使う目的を明確にする

まず、導入目的を明確にすることが重要です。

たとえば、

  • 単にWebサイトを作成したいのか
  • ブログを通じてトラフィックやリードを獲得したいのか
  • ランディングページを作成・運用して、CV獲得を目指したいのか

などによって、最適なCMSは異なります。

「まずはWebサイトの構築をしたい」なら、簡単な操作でデザインやコンテンツを管理できるCMSを選んでもよいかもしれません。作成していくにあたってさらに必要な機能が出てきた際や、運用の体制やWebサイトでやりたいことが増えてきた際に、再度ツールを見直してみましょう。

「トラフィックやリード獲得を目指す」なら、SEO対策を支援してくれる機能やリードを獲得するためのLP、フォームを容易に編集できる機能を搭載したCMSが望ましいと言えます。まずはLPを作ってみて「どのくらい申込み(コンバージョン)がされるのか」などを分析していき、必要に応じてLP内の訴求やフォーム項目の見直しをしていく必要があるためです。

「LPをたくさん作って運用したい」なら、ページを容易に作成・管理ができるCMSだとよいでしょう。LPを1つ作るだけでも、実はかなり時間を割かれてしまう作業になります。

1つひとつ時間をかけていては作業に忙殺されて、肝心な「考えること」に割く時間がなくなってしまいます。テンプレートなどを複製して量産できる機能や、特定の文言を変えるだけで編集が済むような設計を構築できる機能があると便利です。

デザインや機能の自由度・機能拡張性を確認する

特にBtoBマーケティングを強化したい企業にとって重要なのが、デザインや機能の自由度と拡張性です。サイトの目的やブランドイメージに合わせて、どの程度デザインや機能をカスタマイズしていきたいかが鍵となります。

高度なカスタマイズが可能なCMSを選ぶことで、独自のブランドイメージや特定のニーズに合わせたWebサイトを作成できます。

そして、マーケティングに関するさまざまな施策を継続的に実行し、ビジネスの成果を獲得するには、リード管理、アクセス解析ツールといった機能も必要です。これらの機能をプラグイン導入などによって拡張可能かどうかを確認することが重要です。

セキュリティ対策がされているか

CMSのセキュリティ対策は非常に重要です。セキュリティ対策が不十分なCMSは、企業の信頼性や顧客データを危険にさらす可能性があります。

自社でサーバー保守を行う場合、セキュリティ対策の知識・人手が必要です。

一方、ベンダーに依頼する場合は、ベンダーが提供するセキュリティレベルを確認し、自社が求める要件を満たしているか(データの暗号化、アクセス管理、定期的なセキュリティアップデートなど)、検討する必要があります。

カスタマーサポート・サクセスの体制は整っているか

カスタマーサポートや、カスタマーサクセス体制も必ず確認しましょう。CMSの操作でつまずいてしまったときに、適切なサポートが提供されるかどうかは、Webサイト運用における実作業や施策実行のスピードに直結します。本来、業務効率を上げるために導入するツールにもかかわらず、活用方法が分からず業務が進められないというのは本末転倒です。

  • 導入初期フェーズ:オンボーディング(新規導入サポート)があるか
  • 運用フェーズ:電話、メール、チャット、定例ミーティングなどで、分からない点はすぐ回答してもらえるか

運用費用はどのくらいかかるか

運用費用も重要なポイントです。初期投資だけでなく、長期的な投資対効果を考慮しましょう。特にCMSはWebサイトの土台となるツールです。Webサイトを作り上げてしまった後では、別のCMSに切り替えることは容易ではありません。(切り替えるための作業が発生してしまいます。)

作った後に、「想定以上の費用がかかってしまう……」とならないように、事前に確認しておくことをおすすめします。

  • 初期費用:CMSの導入時に、ライセンス費用、設定・カスタマイズ、操作レクチャーなどの初期費用がかかる(ベンダーに支払う必要がある)場合も
  • 継続的な運用費用:月額または年額の使用料金、サーバー費用、保守・サポート費用など、継続的に発生する運用費用も考慮する
  • 投資対効果の見積もり:長期的な視点で、CMS導入によるコストと、それによって得られるであろうリターン(リード獲得など)を比較評価する

マーケティング専用CMSを強く勧める訳

BtoB企業やSaaS企業がマーケティングのためにCMSを導入するのであれば、専用CMSを選ぶことをおすすめします。

WordPressなどの汎用的なCMSは、さまざまな目的のWebサイトに対応できる一方で、高度なマーケティング施策への対応は難しいからです。

すでに自社でCMSを運用している場合は、それを利用してマーケティングも行いたくなるかもしれません。しかし長期的に見ると、導入費用をかけてでもマーケティング専用CMSを利用したほうが、会社の利益が増えることがよくあります。

たとえばBtoB企業でよくあるのが、CMSをWordPressにし、マーケティングオートメーション(MA)を有償のツール、顧客管理システム(CRM)を別の有償ツール、もしくは連携が可能なツールにするというツギハギのツール利用状況です。

こういった運用の仕方は筆者の経験上、運用コストが非常に高くなります。

その理由は、各ツールを全て利用できるマーケティング担当者は日本の市場にほとんど存在しておらず、ツール数が増えると運用に関わるマーケターの数が多くなる傾向が高くなり、運用が軌道に乗らなくなることが多いからです。

また、ツール間のデータの連携などが複雑になり、運用のオンボーディングに時間が必要になっていきます。CMSがマーケティング専用でないと、データを見るツールがウェブ解析やウェブ分析視点のツールになってしまうことが多く、リードを獲得するために時間を費やすべきところが、自社の運用プロセスを作り上げるために時間を費やすことになってしまいます。

そのような理由から、マーケティングの専用CMSを利用することをお勧めすることが多いです。

まとめ

CMSの活用は、BtoB企業やSaaS企業のマーケティングにおいて多くのメリットをもたらすと言えます。

大きな利点は、豊富に提供されているデザインテンプレートや、プラグインの利用により、専門技術がなくても洗練されたWebサイトを簡単に構築できることです。そして、SEO対策に容易に取り組めるようになったり、データに基づく意思決定を進めやすくなったりすることも、心強いポイントです。

ただしその一方で、セキュリティ面での脆弱性に注意しなければならない点や、サイトパフォーマンスへの影響、カスタマイズの制限などのデメリットもあります。

本記事で紹介したCMSのメリット・デメリット、そして具体的なプロダクト例を、「自社にとってベストなCMS製品とは? 」と比較・検討を進める際に役立てていただければ幸いです。