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Webトラッキングとは?できることできないこと、おすすめツールをご紹介

インターネットでの商品購入やサイト訪問などの行動は監視されている、と聞いて驚く方は多いのではないでしょうか? これは嘘のような本当の話です。Webトラッキングとは、ユーザーのサイト内の行動を追跡・分析する手法であり、Web広告やWeb解析など、さまざまなマーケティング施策で活用されています。

今やWebトラッキングはデジタルマーケティングに欠かせない技術でありながらも、消費者のデジタルプライバシーへの関心が高まっているため、適切に取り扱わなければブランド毀損のリスクが生じます。

本記事では、マーケティング担当者が適切にWebトラッキングを活用できるように、仕組みや歴史、おすすめのツールなどを紹介します。

Webトラッキングとは

Webトラッキングとは、ユーザーのサイト内の行動を分析・追跡することです。楽天やAmazonで商品検索をした後、他サイトでその製品に関する広告が表示された経験はないでしょうか。これはGoogleやYahoo!などの広告配信企業が、インターネット上でのあなたの行動を追跡し、興味を持ってくれるであろう広告を選定しているためです。

このようにWebトラッキングを活用すれば、企業はユーザーの興味関心や好みを把握でき、ターゲティング広告の最適化やパーソナライズ化した顧客体験の提供が可能となります。顧客にとっては、興味関心にあった広告やコンテンツのみを閲覧できるメリットを得られるのです。

発展の歴史

Webトラッキングは、Web広告と共に発展したと言っても過言ではありません。Webトラッキングの中核を担う技術がCookie(クッキー)であり、1994年にネットスケープ・コミュニケーションズ社のプログラマーであるLou Montulli(ルー・モントゥーリ)氏が、ショッピングサイトのカートに商品データを保存できるようにするために開発しました。

クッキーの仕組み

(出典:総務省)

そもそもクッキーとは、Webサイト上におけるユーザーの行動を記録したファイルです。The New York Timesは、インターネットの歴史で初めてWebサイトのデータをユーザーのコンピューターに保管できるようになったと報じています。

クッキー誕生と同じ年には、世界初となるオンライン広告が掲載されました。当初はメディアの広告枠に掲載する純広告が中心でしたが、次第に外部のアドサーバーから広告を配信する方式に移行し、2008年ころには多数のWebサイトに広告を配信するアドネットワークの時代が到来します。

多くのWebサイトに広告配信できるようになると、ユーザー属性や行動などをもとにターゲットを絞って広告配信をする、ターゲティング広告が存在感を集めました。

(出典:Yahoo! JAPAN広告

勘のいい方はお気づきかもしれませんが、広告主はクッキーを利用してユーザー情報を収集し、ターゲティング広告を配信するようになるのです。しばらくはクッキーを使ったWeb広告のパーソナライズ化が続きますが、個人情報保護の意識が高まり、クッキーの履歴削除やプライベートブラウズでトラッキングを回避するユーザーが増えます。

そこで広告主たちは、ブラウザーフィンガープリントやWebビーコン(技術の詳細については後述します)などの、新たなトラッキング技術を活用するようになったのです。

クッキーとプライバシー問題

2022年のWebマーケティングにおいて重要なキーワードが「クッキーレス」。クッキーレスとはその名の通り、クッキーが使えなくなることを意味します。

ただし、クッキーには訪問したサイトと同一のドメインが発行する「ファーストパーティクッキー」と別のドメインのサーバーが発行する「サードパーティクッキー」の2種類があり、クッキーレスの対象となるのはサードパーティクッキーです。

(出典:総務省)

サードパーティクッキーは、複数のドメインを横断し、ユーザーの情報を記録・管理できるため、主にWeb広告で使用されています。

企業が直接獲得するファーストパーティクッキーとは異なり、第三者サービスを介して個人の特定に十分な情報を持つサードパーティクッキーを、ユーザーが見知らぬところで流通・利用するのは、プライバシーの侵害やセキュリティリスクになるのではないかという懸念が生じました。

それでは、なぜ個人情報への関心が高まったのでしょうか。大きなきっかけとなった出来事は、2018年に起きたFacebook騒動とGDPRの施行です。Facebook騒動とは、データ分析会社のケンブリッジ・アナリティカが8,700万人ものFacebookユーザーのデータを、2016年のアメリカ大統領選キャンペーンに利用していたことが発覚した事件です。

同年にはGDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)の施行により、ユーザーの同意を得てからのクッキーの使用や、クッキーの利用目的の説明などが義務になりました。これら2つの出来事をきっかけに、クッキー廃止の動きが加速し、SafariやFireboxはサードパーティクッキーの規制を強化したのです。

(出典:総務省)

国内に目を向けると、2019年にリクルートキャリアが就活中の学生の行動履歴をもとに作成した内定辞退率を、採用企業に提供していた不祥事が発覚し、クッキーの利用に法規制がかかります。

(出典:statcounter

(2022年7月時点の国内デスクトップのブラウザシェアはChromeが59.8%でトップ)

世界的なプライバシー保護に関する動きを受け、2024年後半には国内デスクトップシェアで圧倒的なシェア率を誇るChromeで、サードパーティクッキーの廃止が段階的に実施される予定です。それではサードパーティクッキーが廃止されると、企業にはどのような影響が生じるのでしょうか。

大きな影響が生じるのはWeb広告、中でも一度自社サイトに訪問したユーザーを追跡し、再度広告を配信するリターゲティング広告でしょう。また、サードパーティクッキーを使用したコンバージョン解析サービスの精度が落ちる可能性も指摘されています。今後はWebマーケティング戦略やサイト設計の見直しをしつつ、規制の対象外であるファーストパーティクッキーの活用が重要となります。

Webトラッキングの仕組み

Webトラッキングと一口に言っても、その手法はさまざまです。以下では、4つのWebトラッキングの仕組みについて解説します。

IPアドレスによるトラッキング

IPアドレス分配の流れ

(出典:一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター

IPアドレスとは、スマートフォンやパソコンなどのネットワーク接続機器に割り振られる識別番号のことで、データの送信元や送信先の識別に使用されます。

一般財団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)が、国内のIPアドレスを都道府県→市区町村→家庭・オフィスの順に割り当てます。全てのインターネット接続機器にはユニークなIPアドレスが割り当てられるため、IPアドレスから位置情報を取得し、地域ごとの訪問者の把握が可能です。

2021年BtoBユーザーの製品サービスの情報源

(出典:トライベック・ブランド戦略研究所

また、独自IPアドレスを使用している企業に限りますが、日本ネットワークインフォメーションセンターでIPアドレスを逆引きすれば、自社サイトに訪問した企業を特定できます。

トライベック・ブランド戦略研究所の調査によると、BtoBサイトユーザーの75%が「製品・サービスの購入検討や情報収集における今後のコミュニケーション手段として『企業のウェブサイト』を利用したい」と回答しています。この調査結果から、多くのBtoB担当者がWebサイトを確認していると考えられるため、IPアドレスの逆引きで自社に興味を持っている企業を特定できるでしょう。

HTTPクッキーによるトラッキング

最も主流のWebトラッキング方法といえば、おそらくHTTPクッキーでしょう。ただし先にも解説した通り、今後はサードパーティクッキーの利用が制限されるため、今後は自社サイトで収集したファーストパーティデータをいかに活用できるかがポイントになります。

ファーストパーティデータの有効な収集方法は、自社サイト内にユーザーの興味関心を惹くコンテンツを系統立てて用意し、ユーザーにサイト内をしっかりと回遊してもらえる設計にして、顧客行動から興味関心を把握できるようにすることです。

また、メインのWebサイトとは別にキャンペーンサイトやコンテンツサイトなどの異なるドメインサイトを運用している場合、ドメインの統合を検討すべきでしょう。同じ企業が運営していても、異なるサーバーで発行されたクッキーはサードパーティクッキーとみなされるからです。

Webビーコンによるトラッキング

Webビーコンとは、WebサイトやEメールに埋め込まれた目に見えない小さな画像ファイルのことであり、ユーザーのサイト訪問回数やメール開封の有無などの行動を追跡します。Webビーコンの利用には、ユーザー行動を追跡したいWebページやEメールのHTMLに、アクセス解析ツールが発行したタグを記述しなければいけません。

(出典:三菱総研DCS株式会社

Webビーコンもまたクッキーと同様に、ユーザーに気づかれることなくアクセス情報を取得します。顧客プライバシーを尊重するためにも、Webビーコンの取り扱いについて説明するページを設けるようにしましょう。

ブラウザーフィンガープリント

ブラウザーフィンガープリントとは、スマートフォンやパソコンなどのデバイスでブラウザーを使うたびに、サーバーによって収集される情報の束のことです。

ブラウザーフィンガープリントの構成情報は、言語やタイムゾーン、OSのバージョン、画像解像度など多岐にわたり、同じブラウザーフィンガープリントを持つデバイスがいる確率は286,777分の1と極めて低いゆえに、「ブラウザーの指紋(フィンガープリント)」と呼ばれます。

(出典:明治大学 | 情報セキュリティ研究室

ブラウザーフィンガープリントの使用用途は、リスクベース認証やデジタル・フォレンジクスなどさまざまですが、ここではターゲティング広告の活用について解説します。

ユーザーが広告サービスを利用しているWebサイトに初めて訪問すると、ブラウザーフィンガープリントが作成され、広告配信サーバーに送信されるのです。広告サーバーは、フィンガープリントを保管し、Webサイトに適した広告を配信します。

(出典:明治大学 | 情報セキュリティ研究室

ユーザーが他のサイトへ訪問すると、同様にフィンガープリントの採取と広告サーバーへの送信が行われ、広告サーバー側ではデータベースでフィンガープリントの照合を実施し、ユーザーの行動履歴や興味関心に基づいた広告を配信します。

脱クッキーの流れを受けて、ブラウザーフィンガープリントの活用が急速に進み、2020年の調査では世界トップ10万のWebサイトの約10%が、ブラウザーフィンガープリントを活用していると判明しています。

存在感を高めるブラウザーフィンガープリントですが、ユーザーの操作で削除できるクッキーとは異なり、ユーザーはブラウザーフィンガープリントによる追跡を拒否することが困難なため、SafariFireboxなどのブラウザーは、フィンガープリントの採取をブロックする機能を搭載しています。

Webトラッキングのよくある利用シーンとできないこと

Webトラッキングの主な活用シーンは、Web解析・ユーザビリティテスト・広告の3つです。以下では、それぞれの活用シーンの詳細とできないことについて解説します。

Web解析

Web解析とは、サイトのPV数やセッション数、ユーザー属性と行動などのさまざまなデータを解析し、サイトの状態を把握することです。Web解析で把握できるデータは、大きく以下の3つとなります。

  • 流入(ユーザーはどこから来たのか)
  • 閲覧状況(どのようなコンテンツを閲覧したのか)
  • コンバージョン(購入や問い合わせなどをしたか)

Web解析をすれば、Webサイト内におけるユーザー行動を可視化し、ユーザーインサイトの把握およびデータドリブンマーケティングの推進が可能になります。一方、Web解析ではユーザーが特定の行動を起こした理由やその際の感情までは把握できないため、数値化されたユーザー行動から、一人のユーザーを想起し、その行動の裏にある心理を理解しなければいけません。

ユーザビリティテスト

ユーザビリティテストとは、Webサイトやアプリなどのプロダクトを実際のユーザーに使用してもらい、ユーザーエクスペリエンスの評価をする手法です。

HotjarでユーザーがWebサイトを使う様子を録画した画面

(出典:Hotjar

インド最大のフィンテック企業Razorpayは、支払いページのリリースに当たり、サイト分析ツールを提供するHotjarのビジターレコーディング(ユーザーのサイト内での動きを録画)機能でユーザビリティテストを実施し、実際のユーザーがどのようにサイトを利用するのかを観察し、デザインの改善点を特定しました。

ユーザビリティテストでは、ユーザーがWebサイトやアプリを操作する様子を観察できますが、ユーザーがページの離脱などの特定の行動をとった理由までは把握できないため、ユーザーのフィードバックを求めるようにしましょう。

広告

Webトラッキング技術が最も活用されている分野は、ディスプレイ広告とリターゲティング広告を始めとしたWeb広告でしょう。

例えば、筆者がHotjarの公式サイトに訪れた直後、別のWebサイトの広告枠にHotjarのディスプレイ広告が表示された仕組みは、ディスプレイ広告を配信するGoogleがサイトへの訪問歴や滞在時間などをもとに、筆者がHotjarの広告に興味があると判断したためです。

また、Web広告のパーソナライズ化だけではなく、ユーザーの流入経路やコンバージョン数などの広告効果の検証にもWebトラッキングが利用されています。

Webトラッキングで成果を出すために

3つの利用シーンを見てみると、一つの共通点に気づくのではないでしょうか。その共通点こそが、Web解析やユーザビリティテスト、広告ではユーザー属性や行動を可視化できる一方、ユーザーの感情やニーズまでは明らかにできないことです。

あくまでもWebトラッキングの役割は、ユーザー行動の数値化であり、収集したデータに人を反映させなければ、施策に活かせません。Webトラッキングを有効活用するためにも、数値から顧客を想起し、顧客心理を理解するようにしましょう。

また、トラッキングに関する規制が広まっている点も踏まえると、Webトラッキングに依存するのではなく、顧客の悩みや課題を解決する情報を提供し、顧客が自発的に情報を渡してもいいと思える信頼関係の構築が必要です。

Webトラッキングができるおすすめツール

Webトラッキングができるおすすめのツールを3つ紹介します。

Google Analytics

(出典:Google マーケティングプラットフォーム

Google Analyticsとは、Googleが提供する無料のアクセス解析ツールであり、Webサイトに訪問したユーザー属性や行動などを追跡できます。Google Analyticsは無料で本格的な機能を利用できるため、上場企業の約84%が利用するほど、多くの企業に支持されています。

2005年にリリースされて以来、複数回のアップデートが行われ、現在主流で使われているのが第三世代のUA(ユニバーサルアナリティクス)ですが、2023年7月1日以降はUAでのデータ収集ができなくなります。代わりに使用されるのが、2020年10月にリリースされた第4世代GA4です。

2021年BtoBユーザーの製品サービスの情報源

(出典:トライベック・ブランド戦略研究所

GA4誕生の背景には、タッチポイントの増加とクッキー以外でのユーザー識別方法が必要になったことが挙げられます。インターネットやスマートフォンの普及によって、顧客は製品購入を決めるまでに、Webサイトやアプリ、実店舗などのさまざまなチャネルで情報収集をするようになりました。

また、LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)の重要性が増したこともあいまって、カスタマージャーニー全体の計測が必要になったのです。こういった事情から、GA4ではWebとアプリの統合計測ができるようになり、カスタマージャーニーを一元的に把握できます。

また、UAはクッキーによるユーザー識別が基本だったのに対し、GA4では確度の高い順にユーザーを識別する方法を用います。

どういうことかというと、まずはUser ID(会員IDやログインID)を利用し、User IDが利用できないWebサイトではGoogleシグナル(ユーザーのGoogleアカウントを利用して識別情報を取得)の利用、Googleシグナルがなければブラウザ別クッキーを利用してユーザーを識別するのです。

UAとGA4は大きく異なるツールであり、猶予期間に余裕がないため、素早い移行をおすすめします。

AIアナリスト

株式会社WACULが提供するAIアナリストは、Googleアナリティクスに連携することで、AIがデータを自動で分析し、改善施策の提案まで行うマーケティングDXツールです。

3万5千サイト以上の導入サイトの分析結果と、同社がWebコンサルティングで蓄えた知見にもとづき、AIが分析と提案をするため70%以上の提案成功率を誇っています。Webサイトの分析と改善案の立案を最適化し、高速で改善のPDCAを回したい方におすすめのツールです。

HubSpot(のトラッキングコード)

(出典:HubSpot

HubSpotのトラッキングコードを設置すれば、Webサイトやランディングページ、ブログページのパフォーマンスを、ドメイン、言語、国といった観点で詳しく分析できます。この説明だけ聞くと、「無料で使えるGoogle Analyticsのほうがいいのでは」と考えられる方もいるでしょう。

Google AnalyticsとHubSpotには、明確な違いが一つあります。それは、Googleアナリティクスはオーディエンスやグループ単位でのユーザー解析を得意とするのに対し、HubSpotは特定のコンタクトが「いつ、どのページを閲覧したのか」などの個人レベルでのユーザー解析を得意とする点です。

HubSpotのWebトラッキングの仕組みは、トラッキングコートを設置したWebサイトにユーザーが訪問すると、クッキーが生成されHubSpotはクッキーとデータベースを照合します。

CRMなどのデータベースにコンタクト情報がない場合、匿名ユーザーとして追跡され、ユーザーがフォームなどを入力した瞬間に、コンタクトの生成およびコンタクトとクッキーが紐づき、個人単位でのトラッキングができるようになるわけです。

HubSpotとGoogle Analyticsを併用すれば、鳥の目と虫の目でカスタマージャーニーを把握できます。

まとめ

クッキー情報やWebトラッキングは主に、Web広告のパーソナライズ化とWebトラフィックの分析に活用されます。営業担当に例えるならば、営業電話やメールシステムの分析をしているものに近いです。

成果を出す営業担当者になるには、顧客の課題や状況理解に努め、最適な情報を提供しなければなりません。マーケティング担当者も、獲得した見込み客が「どのようなコンテンツを見て、どのような課題を解決しようとしているのか」という視点に立ち、Webトラッキングで収集したデータから顧客理解に努めるようにしましょう。