突然ですが、一般的なインターネットユーザーが企業のウェブサイトやブログに訪れる際、その平均的な滞在時間はどれくらいかご存じですか?
答えは、たったの「54秒」です。
コンテンツマーケティングの一環として自社ブログやオウンドメディアの運用を行うなか、どうしてもそれらのコンテンツにおけるコンバージョン率が高まらない、というお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
もしかしたらその原因は、せっかくコンテンツ内に散りばめた「コンバージョンにつながる内容」をユーザーが読み飛ばしてしまっていることにあるかもしれません。なぜなら、ほとんどのユーザーはコンテンツの内容をすみずみまで熟読してはくれないからです。
コンバージョンに誘導するためのタッチポイントを確実にユーザーに届けるには「ポップアップバナー」の活用が効果的です。(当ブログでも上画像のようなポップアップバナーを設置しています。)
本記事では「ポップアップバナー」について、その効果やメリット・デメリット、さらには効果的な運用のためのアドバイスについて詳しく解説していきます。
ポップアップバナー(Pop-up ads)とは、ウェブサイトを閲覧している最中に画面の中央もしくは上下左右に現れるバナー状の広告のことで、「ポップアップ広告」と呼ばれたりもします。
ポップアップバナーは、「ポップアップマーケティング(Pop-up marketing)」と呼ばれるマーケティング手法のひとつとされています。
ポップアップマーケティングとは、ユーザーに対して瞬間的もしくは短期的な接点(タッチポイント)を提供し、新たなリードの獲得、新製品や新しいコンセプトへのフィードバックの収集を行うマーケティング手法です。
ポップアップマーケティングには、ポップアップバナーのほかに数日〜数週間程度の短い期間限定で開設される「ポップアップストア(Pop-up shops)」と呼ばれるものもあります。
ポップアップバナーもポップアップストアも、スクロールが画面長さの特定の%を超えたら出現させたり、ブラウザのタブを閉じる仕草を感知すると出現させたりするなど、現れてすぐに消えてしまうのが多くの特徴。ユーザーの印象に残りやすく比較的短期間で効果を生みやすいため、ポップアップマーケティングは多くの企業に取り入れられているマーケティング手法のひとつです。
ポップアップバナーは前述のとおり、ウェブサイトを閲覧中に突然現れるという特徴を持つことが多いため、より多くのユーザーの印象に残りやすく、また同時に、企業のオファーを見逃してしまうユーザーの取りこぼしを減らせるという効果があります。
ポップアップバナーは、たとえばあなたがアパレルショップで洋服を見ている最中に「こちらのTシャツ今なら40%オフなんです。どうですか?」と聞いてくれる店員のようなものです。
よく見たらそのTシャツのタグには確かに「40%オフ」と書いてあるのだけど、言われるまで気づかなかった、なんてこともあるでしょう。せっかくのオファーもユーザーの目にとまらなければ意味がありません。ポップアップバナーを使用することで企業が本当に伝えたいオファーをしっかりとユーザーに届け、取りこぼしを減らす効果が期待できます。
また、企業のオファーに対するユーザーの反応を素早く収集できる、というのもポップアップバナーの効果のひとつです。
多くのポップアップバナーは、ウェブサイトに表示された際にユーザーに何かしらの行動(アクション)を強制します。
(出典:UserGuiding)
上画像のZendeskのポップアップバナーでは、ウェブサイトに訪れたユーザーに対し製品デモをオファーしています。これに対してユーザー側は、下記のいずれかの行動を起こします。
放っておいてもバナーは消えないので、ユーザーは必ずどちらかのアクションを起こすことになります。
この時のユーザーの反応(行動)を追跡することでオファーに対する市場の反応の統計を素早く得られたり、たとえばそのデータを流入経路ごとに追跡しコンバージョンにつながりやすいユーザーの解析を行うことができたり、ポップアップバナーの設置から期待できる効果は際限がありません。
ポップアップバナーを置くことには、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか? ここでは企業が期待できる点と反対に注意すべき点について紹介します。
効果の項でも触れましたが、ポップアップバナーは閲覧中のコンテンツ上に突然現れ、ユーザーに何らかの行動を促します。
そのため、ポップアップバナーは他の広告と比べユーザーに与える印象が強く、また「無視」することを難しくさせるという特徴があります。
先のアパレルショップの店員のたとえでもそうですが、「どうですか?」と聞かれた以上、ユーザー側としては何かしらの反応を返さなければいけません。そうしないといなくなってくれないので、興味があるか、ないかをその場で回答する必要があります。
ターゲットに対して適切なオファーが行えていれば、ユーザーは無駄に悩む必要なく素早くコンバージョンに進むことができますし、万一オファーに興味がなかったとしてもその結論を早くに得ることができます。どちらにしても企業・ユーザー双方にとって決断までの時間を短縮することができるのです。
ウェブページやコンテンツで企業が伝えたいことを確実にユーザーに届けられる、という点もポップアップバナーを置くことの大きなメリットのひとつです。
(出典:Contentsquare)
本記事の冒頭でもお話ししましたが、一般的なユーザーが企業のウェブページやブログに訪問する際、その滞在時間の平均はたったの54秒と言われています。
どれほどコンテンツが緻密に作られていても、1分にも満たない時間でユーザーがコンテンツから得られる情報の量には限りがあります。ユーザーをコンバージョンに導くため、企業がそのコンテンツに散りばめている「本当に伝えたいこと」が読み飛ばされてしまう可能性さえあるでしょう。
その点、ポップアップバナーはページに訪れたユーザーに必ず見てもらうことができ、なおかつそれに対しての反応を(良くも悪くも)強要することができます。
これにより、通常であれば読み飛ばしてしまうようなオファーやコンバージョンにつながる内容などを確実にユーザーに届け、より多くの新規リードの創出につなげることができます。
注意すべき点として、ポップアップバナーを「邪魔」と感じるユーザーが一定数いることは意識しておく必要があります。
ブログなどのページに訪れるユーザーの大半は、そのコンテンツを読むことを目的としています。当然ですが、ポップアップバナーを目的にそのページに訪れるユーザーはほぼいないでしょう。
せっかく「有用かもしれない」とページに訪れてくれたユーザーが、突如現れるポップアップバナーによってコンテンツ閲覧が遮られてしまい、不快な思いをしてページを去ってしまうことは極力避けたいところです。
どのような内容で、どのような手法で、またどのようなタイミングでポップアップを表示させるかは、バナーを表示させるコンテンツの内容なども考慮しつつ、慎重に決める必要があります。後述する「ポップアップバナーの違い」を参考にしてください。
ひとくちにポップアップバナーと言っても、さまざまな種類があります。ここではいろいろなポップアップバナーの違いについていくつか例を挙げて紹介します。
ポップアップバナーが表示される位置が変わるだけでも、ユーザーが受ける印象はガラッと変わります。
(出典:Dashly)
先に挙げた当ブログとZendeskの例では、ポップアップバナーは画面の中央全面に閲覧中のページを遮るようなかたちで表示されていました。しかし、ポップアップバナーのなかには上のDatanyzeのウェブサイト画像のように画面のすみにスッとスライドで現れるものもあります。
両者のコンバージョン率の違いをみると、画面中央にページを遮るかたちで表示されるポップアップバナーはコンバージョン率が7.93%(モバイル環境)、スライドインのポップアップバナーのコンバージョン率は4.20%(モバイル環境)。中央前面表示の方が倍近く高い効果が期待できそうです。
(出典:Getsitecontrol)
しかし、デメリットの項で前述したとおり、中央前面にコンテンツを遮るように表示されるポップアップバナーは、ユーザーに嫌がらる可能性も否めません。
特に純粋にコンテンツを読みたいと感じているユーザーにとっては、突如画面全面に現れるポップアップは邪魔でしかありません。そのようなユーザーをできるだけ自然な流れでコンバージョンへと誘導するためには、コンテンツを遮らないスライドインのバナーの方が効果が高いかもしれません。
ポップアップバナーを表示するコンテンツの内容やユーザーの傾向、またオファーの内容に沿って適切な表示方式を選択することが大切になります。
ポップアップバナーで表示する内容によっても、ユーザーの印象やコンバージョン率が変わってきます。
ポップアップバナーに特化したマーケティングツールを提供する欧州OptiMonkでは、クライアントの自社ツール使用データから、さまざまなタイプのポップアップバナーにおけるコンバージョン率の統計が紹介されています。
(出典:OptiMonk)
たとえば、以下のような統計です。
……などなど。
また、バナー内に画像を使用するか否かによるコンバージョン率の違いについても紹介されており、OptiMonkの見解では、興味深いことに画像のあるなしの違いはコンバージョン率への影響はさほど大きくないとされています。
(出典:OptiMonk)
これらのコンバージョン率の数値はあくまで一例ですが、自社でポップアップバナーを運用する際にどのタイプを使用するのが適切かを判断するうえでは、ひとつの材料となるかもしれません。
ポップアップバナーを表示するウェブページやコンテンツが、デスクトップPCからの閲覧をターゲットとしているか、もしくはiPhoneなどのモバイルデバイスからの閲覧を想定しているかという点も重要です。
前述したポップアップバナーが表示される位置によるコンバージョン率の違いを表すグラフを見てもわかるように、画面中央の場合とスライドインの場合でモバイル媒体におけるコンバージョン率は大きく違いが出ました。しかし、デスクトップPCでの両者の違いはそこまで大きな差はありません。(画面中央が4.44%、スライドインが3.49%)
また、デスクトップPCとモバイル端末でのトータルのポップアップバナーのコンバージョン率を見比べてみても、デスクトップPCの9.7%に対しモバイルは11.1%と、モバイル環境下でのコンバージョン率が高くなっています。
(出典:OptiMonk)
両者のモニター画面の表示領域の違いや、それによるユーザーのポップアップバナーに対する印象度合いの差など、考えられる要因は多くありますが、いずれにせよポップアップバナーの運用を検討する際には、モバイル環境下の方が期待できる効果が大きくなるという傾向は頭の片隅においておくとよいかもしれません。
すでに紹介したOptiMonkのほかにも、企業のポップアップバナーの運用を手助けしてくれるツールは数多く存在します。以下にいくつか例を紹介します。
HubSpotのマーケティングツールでは、ポップアップバナーのフォーム作成はもちろん、ウェブサイトに訪れる訪問者の情報や行動に基づいて、特定の訪問者に合わせたポップアップが表示されるよう、ターゲティングルールの調整まで行うことができます。
HubSpotのツールを使用することのメリットは、同社のCRMツールとの連携が可能なため、ポップアップバナーの運用やリードデータの収集を一括して行えることです。
(出典:HubSpot)
設定したポップアップバナーは、HubSpotでホスティングしているウェブサイト上での表示はもちろん、WordPressで作成したサイトでもHubSpotのWordPressプラグインを使用することで表示可能となるため、活用の幅が広いのも特徴です。ちなみに弊社のポップアップバナーはHubSpotを用いてノーコードで運用されています。
(出典:HubSpot)
Hello Barは、非常に手軽にポップアップバナーを自社サイトに設置できるWordPressプラグインです。
フルページのポップアップからページ上部に表示されるバナー、スライドインなどさまざまなポップアップの設定が素早く手軽に行えるほか、トリガーオプションの設定によりサイトの訪問者へ適切なタイミングでのポップアップ表示を行うことができます。
設定できるポップアップの数や月ごとの表示回数に制限のある無料バージョンのほか、それらが無制限となる有償バージョンがあります。
ポップアップバナーは、サイトに訪れたユーザーの特性や行動に合わせて、適切かつ確実に企業の伝えたいことを提供できるだけではありません。短時間で数多くのウェブサイトを渡り歩くユーザーに対して自社サイト内でのコンバージョンを促し、リードへと昇格させる道筋を作るうえでも非常に有用なツールです。
しかし、運用方法を間違うとサイトを訪れたユーザーに「邪魔」「煩わしい」といった印象を与えてしまいます。逆にサイトの滞在時間を短くしてしまったり、ブランドに対して悪印象を与えてしまったりといった危険性も併せ持つ、いわば「諸刃の剣」です。
本記事を参考に、自社の扱う製品や運用するコンテンツに合わせた、適切なポップアップバナーの運用に役立てていただければ幸いです。